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海外情報 米国 畜産の情報 2026年5月号

米国農畜産業の見通し 〜2026年米国農業需給観測会議から〜

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調査情報部 平石 康久
畜産経営対策部 菊入 真裕

【要約】

 米国農務省は、102回目となる農業需給観測会議を開催し、同国の主要農畜産物の短・中期需給見通しや直面する課題などが議論された。2026年も米国の牛の飼養頭数、牛肉生産量は減少が続き、牛肉価格は引き続き上昇すると見込まれている。一方、豚肉、鶏肉、鶏卵、生乳の生産量は増加見込みである。

1 はじめに

 米国農務省(USDA)は、2026年2月19・20日の2日間にわたり、今後の米国農業の動向を公表する「2026年農業需給観測会議」(以下「アウトルック会議」という)をワシントンDCに隣接するバージニア州アーリントンで開催した(写真)。アウトルック会議は今後の米国農業の動向を見通すものとして毎年開催されており、今回は通算102回目の開催となった。ロリンズ農務長官は今年の講演の中で、アウトルック会議はUSDAがどのような見通しを立てているかを関係者と共有する、市場分析では最も信頼すべき基準である 「ゴールドスタンダード」と評している。会議は対面・オンラインを併用して行われ、同国の農業関係者や政府関係者が多数参加した。
 本稿ではアウトルック会議の中から、ロリンズ農務長官による講演や、品目別発表を踏まえた同国の畜産(牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵、酪農)をめぐる情勢や需給見通しなどについて報告する。
 なお、単位の換算には、1ポンド=0.4536キログラム、1エーカー=0.4047ヘクタールを使用した。また、本稿中の為替レートは、1米ドル=160.88円(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2026年3月末TTS相場)を使用した。

2 ロリンズ農務長官による講演

 アウトルック会議の2日目に、ロリンズ農務長官の講演が行われた。
 同長官は、米国農業が直面している課題として、生産コスト上昇を取り上げるとともに、貿易赤字の増加に言及し、前政権時代に通商交渉が進まなかったことで貿易赤字が増加したと非難した(図1)。
 その後は政権交代後の成果を強調し、各国との貿易交渉を推進したことなどから海外市場へのアクセスが改善されたとした。
 一方、同日講演前に連邦最高裁判所が、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいて大統領が関税を課すことはできないとの判決を下したが、それに対する言及はなされなかった。
 

3 2026年農畜産物の需給見通し

(1)肉用牛・牛肉の需給見通し

ア 牛群の縮小が続く
 2026年1月1日時点の乳用種を含めた牛総飼養頭数は8616万頭(前年比0.4%減)と、減少幅は縮小しているものの、依然として牛群の縮小は継続している(表1、図2)。内訳を見ると、経産牛は3718万頭(同0.3%減)で、前年並みであったものの、このうち肉用種は2761万頭(同1.0%減)とわずかな減少となった。一方、未経産牛のうち肉用繁殖後継牛頭数は471万頭(同0.9%増)と、わずかに増加した。
 25年の年間子牛出生頭数は3290万頭(同1.6%減)と、わずかに減少した。
 26年1月1日時点のフィードロット飼養頭数は1145万頭(同3.2%減)と、やや減少した。肥育もと牛の供給がひっ迫する状況は継続し、フィードロット飼養頭数は26年も減少することが予測されている。25年の生体牛輸入頭数は98万頭(同52.1%減)と、大幅に減少した。これは、ラセンウジバエなどの影響により、メキシコからの輸入が一時停止したことが要因である。米国はメキシコから毎年110万〜120万頭の生体牛を受け入れていたが、24年末に国境を閉鎖した後、25年の初めに一時的に再開したものの、すぐに再閉鎖している。
 米国の牛総飼養頭数は19年以降、減少傾向が続いている。26年の分娩予定頭数は296万頭(同1.4%増)とわずかに増加すると予測されているものの、牛群再構築には時間を要するとみられることから、短期的に大きく牛の飼養頭数が回復するような状況は見通すことができないとしている。なお、牛の飼養頭数の回復については、4で現地の聞き取り結果を含め、詳細を説明する。
 


 
イ 牛肉生産量は減少後、横ばいとなる見込み
 2025年の牛肉生産量は1179万4000トン(前年比3.6%減)と、やや減少した(図3)。主な要因として、フィードロットからの供給減少により、と畜頭数が前年比6.4%減とかなりの程度減少したことが挙げられる。一方、平均枝肉重量は24年に続き、25年も同3.0%増と増加傾向が続いている。これは、飼料価格の下落により肥育により増加する生体重量1ポンド当たりの収入がコストを上回り、肥育期間が延長されているためである。
 26年の牛肉生産量は1170万7000トン(同0.7%減)と、わずかに減少する見通しである。
 

 
ウ 肥育牛平均価格は引き続き上昇見込み
 2025年の主要5地域(注1)の肥育牛平均価格は、1キログラム当たり4.94米ドル(795円、前年比19.9%高)と、大幅に上昇した(図4)。
 また、26年は同5.33米ドル(857円、同7.9%高)と、かなりの程度上昇すると見込まれる。堅調な牛肉需要と子牛供給頭数が限られることを背景に、肥育牛価格は高水準で推移すると予測されている。

(注1)1)テキサス州、2)オクラホマ州、3)ニューメキシコ州・カンザス州・ネブラスカ州・コロラド州、4)アイオワ州、5)ミネソタ州。
 

 
エ 牛肉輸出はかなり大きく減少、今後も減少見通し
 2025年の牛肉輸出量は116万9000トン(前年比14.3%減)と、近年続く減少傾向の中で、かなり大きく減少した(図5)。
 米国産牛肉の主要輸出先は、メキシコやカナダのほか、日本、韓国、台湾、香港、中国などのアジア市場である。25年には、香港を除く主要輸出先向けの輸出量はいずれも減少した。中でも中国向け輸出は、前年比で67.5%減と大幅に落ち込み、これは米中間の貿易摩擦や輸出施設登録の失効などが影響したものとみられる。
 26年の牛肉輸出量は108万6000トン(同7.1%減)と、かなりの程度減少する見通しである。この要因としては、米国内の牛群縮小に伴う生産量の減少などにより、国産牛肉の輸出価格の上昇が見込まれることが挙げられる。
 

 
オ 国内生産減少を背景に牛肉輸入は増加
 2025年の米国の牛肉輸入量は248万2000トン(前年比18.0%増)と、大幅に増加した(図6)。米国内のと畜頭数の減少により、特に加工用赤身肉の供給がひっ迫しており、主要供給国の豪州、ブラジル、ウルグアイ、メキシコからの輸入量が増加し、数量面で全体の増加をけん引した。また、欧州ではアイルランドおよび英国からの輸入量が大幅に減少したものの、オランダおよびフランスからの輸入量は前年度に引き続き増加した。26年の牛肉輸入量は、加工用赤身肉の堅調な需要が継続し、257万4000トン(同3.7%増)とやや増加すると見込まれている。
 

 

(2)養豚・豚肉の需給見通し

ア 豚総飼養頭数はわずかに増加
 2025年12月1日時点の米国の豚総飼養頭数は7541万5000頭(前年比0.5%増)となり、わずかに増加した(図7)。
 母豚は全米で前年比1.7%減とわずかに減少しており、インディアナ州やミネソタ州など一部の州で増加が見られたものの、ペンシルベニア州やミズーリ州などでは減少が目立った。一方、肥育豚は全米で同0.6%増とわずかに増加しており、アイオワ州、ネブラスカ州、オハイオ州などが増加をけん引した。
 この結果、肥育豚の増加が母豚の減少を相殺する形となり、米国の豚総飼養頭数は前年をわずかに上回った。
 

 
イ 生産性の向上が豚肉生産量を下支え
 2025年の繁殖母豚群は過去のピークを下回る水準で推移しており、コスト環境や収益性の制約から大幅な拡大は見込まれ難いとされている。一方、一腹当たり平均産子数は増加傾向にあり、生産性が向上している。この結果、豚肉の生産量はおおむね安定的に推移している。25年の一腹当たり平均産子数は、年間平均で約11.8頭と、前年の年間平均約11.7頭(前年比0.9%増)からわずかに増加し、高水準で推移している(図8)。26年についても、この増加傾向が続くと見込まれている。
 

 
 25年の豚肉生産量は、繁殖母豚群の減少により1250万9000トン(同0.8%減)と、わずかに減少した。
 26年については、繁殖母豚群がおおむね横ばいで推移する一方、生産性の向上が供給を下支えすることで、1282万6000トン(同2.5%増)と、やや増加が見込まれている(図9)。
 

 
ウ 豚肉輸出量はわずかな増加見込み
 2025年の豚肉輸出量は316万2000トン(前年比2.2%減)と、わずかに減少した(図10)。メキシコ向けやその他中南米向けが増加した一方、主要輸出先であるカナダ、中国、韓国、豪州向けは減少に転じた。特に中国向けは、20年に94万743トンと前年比で約2倍に増加したものの、その後は年々減少傾向にあり、25年には15万5667トン(同25.8%減)と、大幅に減少した。
 日本向け輸出は、円安や現地相場高の影響を受けて22年以降減少基調にあり、25年は前年比8.9%減と、かなりの程度減少した。
 26年の米国の豚肉輸出量は、生産量の拡大や、為替環境の好転と欧州での豚の疾病にに伴う特定の市場へのアクセス改善を背景に、325万9000トン(同3.1%増)と、やや増加すると見込まれている。
 

 
エ 豚肉輸入量はわずかな増加見込み
 2025年の米国の豚肉輸入量は50万6000トン(前年比2.8%減)と、わずかに減少した(図11)。豚肉の主要輸入先であるカナダからの輸入量は前年比1.5%減とわずかに減少したものの、シェアは依然として約62.5%を占め、高水準を維持している。
 26年の米国の豚肉輸入量は、競争力のある小売価格や生産量の増加を背景に消費の拡大が見込まれることから、51万9000トン(同2.6%増)と、わずかに増加すると予測されている。
 

 
オ 肥育豚平均価格はほぼ横ばい見込み
 2025年の肥育豚の平均価格は、1キログラム当たり1.52ドル(245円、前年比8.5%高)と、かなりの程度上昇した(図12)。これは、特に第3四半期に疾病の影響で豚出荷頭数が減少したことにより、豚肉価格が上昇したことが主な要因である。
 26年の肥育豚平均価格は、供給増加が見込まれるものの、国内外における堅調な需要が肥育豚価格を下支えし、1キログラム当たり1.54ドル(248円、同1.7%高)と、わずかに上昇する見通しである。
 

 

(3)肉用鶏・鶏肉の需給見通し

ア 鶏肉生産量はわずかな増加見込み
 2025年の鶏肉生産量は、処理羽数の増加や1羽当たりの重量の増加によって2177万6000トン(前年比2.2%増)とわずかに増加した(図13)。種鶏(GP)の1羽当たりのひな生産羽数の向上も、この増加に貢献している。26年も飼料が安価であること、種鶏によるひな生産効率が引き続き向上傾向にあること、鶏肉需要が好調であることなどから、鶏肉生産量は2209万トン(同1.4%増)とわずかな増加が見込まれている。
 

 
イ 鶏肉輸出量は前年と同水準の見込み
 2025年の鶏肉輸出量は、302万6000トン(同0.1%減)と、23年比でかなりの程度減少した前年と同水準となった(図14)。26年は国内生産量が増加するものの、旺盛な国内需要に加えて、ブラジル産鶏肉との競合により、鶏肉輸出量は302万6000万トン(前年同)と見込まれている。
 

 
ウ 肉用鶏平均価格はわずかな下落見込み
 2025年の肉用鶏平均価格は、下半期の国内供給量の拡大に伴い、1キログラム当たり2.75米ドル(442円、前年比3.6%安)とやや下落した(図15)。26年は堅調な国内需要を背景に、年平均で同2.73米ドル(439円、同0.6%安)とわずかな下落にとどまると見込まれている。
 

 

(4)採卵鶏・鶏卵の需給見通し

ア 食用鶏卵生産量はやや増加する見込み
 2025年の鶏卵総生産量は、24年10月〜25年4月にかけて流行した高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の影響などにより、87億7100万ダース(前年比3.0%減)と前年をやや下回った(図16)。このうち、食用鶏卵生産量も75億ダース(同3.3%減)と前年をやや下回った。26年の食用鶏卵生産量は、採卵鶏羽数の回復により、78億6000万ダース(同4.7%増)と前年をやや上回ると見込まれている。
 

 
イ 鶏卵価格は大幅な下落見込み
 2025年の食用鶏卵価格(鶏卵卸売価格)は、HPAI発生に伴う採卵鶏の処分により鶏卵の供給が急激にひっ迫したことに加え、イースター(復活祭)やホリデーシーズンの需要が重なったことにより、第1四半期が1ダース当たり6.75米ドル(1086円、前年同期比2.6倍)と高騰したものの、第2四半期以降は下落し、第4四半期には同1.92米ドル(309円、同53.1%安)と前年同期を大幅に下回った(図17)。26年の平均卸売価格は、年間を通じて新たな疾病の発生がないことを前提に、同1.17米ドル(188円、前年比68.6%安)と前年平均を大幅に下回ると見込まれている。
 

 
ウ 鶏卵輸出量は大きく回復する見込み
 2025年の鶏卵・鶏卵製品輸出量は、価格の高騰と鶏卵供給の減少などから、殻付き換算で2億300万ダース(前年比14.1%減)とかなり大きく減少した(図18)。26年の輸出量は、国内の鶏卵供給が回復し輸出価格が下落すると見られることから、2億6000万ダース(同27.9%増)と大幅な増加が見込まれている。
 

 

(5)酪農・乳業の需給見通し

ア 乳用経産牛頭数は前年を上回る見込み
 乳用経産牛飼養頭数は、乳牛の供用期間延長などにより、2025年に急速に増加し、26年1月1日時点では、956万8000頭(前年比2.0%増)となった(図19)。26年の飼養頭数は、乳価の下落により年間を通じて減少が見込まれるものの、1月1日時点での飼養頭数が高水準であるため、25年を上回る水準となるとみられている。
 

 
イ 生乳生産量はわずかに増加見込み
 2025年の生乳生産量は、乳用経産牛頭数の増加に加え、1頭当たり乳量も1万1057キログラム(前年比0.8%増)とわずかに増加したことから、1億496万トン(同2.4%増)と増加した(図20、21)。26年の生乳生産量も、1頭当たり乳量の増加(同0.5%増)により、1億619万トン(同1.2%増)とわずかに増加すると見込まれている。
 



 
ウ 平均総合乳価はかなりの程度下回る見込み
 2025年の平均総合乳価は、生乳および乳成分の生産量が増加したことに加え、チーズをはじめとする乳製品の国内製造能力の増加に伴う供給増から、1キログラム当たり0.47米ドル(76円、前年比6.1%安)と前年をかなりの程度下回った(図22)。26年も0.43米ドル(69円、同7.1%安)と、前年をかなりの程度下回る見通しである。
 

 
エ 乳製品輸出量、乳脂肪分ベースが増加見込み
 2025年の乳製品輸出量は、価格競争力のあるバターおよびチーズがけん引し、乳脂肪分ベースで759万5000トン(前年比41.4%増)と大幅に増加した。一方、脱脂粉乳など無脂乳固形分ベースでは、乳脂肪とは異なり価格競争力の低下により海外からの需要が弱まったことから、2185万2000トン(同1.4%減)とわずかに減少した(図23)。
 26年の乳製品輸出量は、価格競争力を維持すると見られる乳脂肪分ベースでは816万5000トン(同7.5%増)と前年に続き増加すると見込まれるが、無脂乳固形分ベースは2190万9000トン(同0.3%増)と前年並みが見込まれている。

4 牛の飼養頭数の増加はいつ始まるのか

(1)上昇する牛肉価格をめぐる動き

 米国内では、牛肉価格が政治的に注目を集める問題となっている。
 牛肉の卸売価格(カットアウトバリュー、チョイス級)は、2025年には100ポンド当たり3.58ドル(1キログラム当たり1270円)となり、20年と比較して51.7%の上昇となった(図24)。この背景には牛の飼養頭数(牛群)の縮小に伴う生体牛価格の上昇があり、肥育もと牛価格は20年比2.5倍、肥育牛でも同2.1倍と大きく上昇している。特に肥育もと牛の重量当たり単価は、牛肉卸売価格を上回る特異な状況となった。
 トランプ政権は、牛肉の価格対策の一環として、26年2月にアルゼンチン産牛肉に対する関税割当数量を一時的に増加させる大統領布告を発表した。同布告では、米国の牛の飼養頭数が過去最低水準にまで減少し、牛肉(ひき肉)価格が統計を開始して以降最高値になったことに鑑み、同措置が必要であると強調している。
 一方、農業生産者団体であるアメリカン・ファーム・ビューロー・フェデレーション(以下「AFBF」という)は、コスト高などにより全米の農家が過去何年も赤字経営を強いられていたことを強調し、牛の飼養頭数は数十年来見られなかった水準まで減少しており、牛肉価格を下げることには慎重になるべき(牛の飼養頭数を回復させる施策が先決)と非難している。
 双方の立場は違うものの、政府側も生産者側も牛の飼養頭数が減少していることが、牛肉価格上昇の背景にあることを強調している。
 
 
 

(2)キャトル・サイクルによる頭数減少が継続

 米国では、8〜12年程度を周期として牛総飼養頭数や繁殖雌牛の頭数の増加と減少を繰り返す「キャトル・サイクル」と呼ばれる動きが見られる(注2)(図25)。なお、本稿においては、と畜頭数に密接に関係する総飼養頭数を対象としている。

(注2)『畜産の情報』2024年3月号「米国における肉用牛生産基盤の動向〜適切な価格形成に向けて〜」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_003135.html)をご参照ください。
 

 
 牛総飼養頭数を見ると、2004年(その前は1990年)に下降トレンドから上昇トレンドに転換し、再び下降トレンドから上昇トレンドに転換する14年まで10年のサイクルとなった。14年以降は、19年までの5年間、頭数の増加が続いたものの、その後7年間飼養頭数の減少が続いており、26年には1951年以降最低の頭数となった。
 26年に未経産牛(肉用繁殖後継牛)が17年以来9年ぶりに0.9%増と、わずかに増加したものの、USDAによると、繁殖雌牛が増加に転じるためには、未経産牛が2〜3年間継続的に増加することが必要とされており、繁殖雌牛が増加に転じるかは断定できない状況にある。
 

(3)いつ牛の数が増加に転ずるのか

 アウトルック会議において、USDA経済調査局の担当官は、牛群の回復時期について具体的な言及は行わなかった。一方、同会議で経済調査局の担当官のすぐ後に発表したコンサルタントによれば、従来のようなX字回復ではなく、牛の飼養頭数が低水準で推移する期間が長いU字回復となり、牛群の回復には数年から10年近くかかるのではないかとの見方が示された。
 また、AFBFも2026年2月に発表したレポートにおいて、次のように分析をしている(表1も参照)。
● 26年1月1日時点の牛の総飼養頭数は75年ぶりの低水準を記録し、小幅になりながらも減少し続けている。
● 同時点の肉用繁殖雌牛の総数は前年比1.0%減の2761万頭となり、1961年以来の最低水準となった。一方、肉用繁殖後継牛は同0.9%増の471万頭。これは拡大に向けた最初の一歩と言えるが、これによって直ちに牛群が拡大するとは言えない。
● 25年の年間子牛生産頭数は3290万頭で、前年から1.6%減少し、2年連続で過去最低の頭数を更新した。牛の頭数が増加するためには、同年生まれの子牛を繁殖用に保留して、26年に交配、27年にそれらの牛が子牛を産むことで28年の頭数拡大につながるが、26年1月に入っても肉用繁殖雌牛の頭数の減少が続き、25年の子牛生産頭数も減少しているため、27年の子牛生産頭数も減少する見込みである。このため、28年までは牛の総飼養頭数が拡大に転じるとは予測しづらい。
● 生産者は需要が堅調であるにもかかわらず、牛群の拡大をためらっている。特に深刻な干ばつに見舞われる懸念を払しょくできていない。
 このように、米国肉用牛業界では、28年までは牛群の再構築は起きないのではとの見通しが示されている。
 

(4)牛群再構築に影響を与える諸要因

 今回の調査において、オクラホマ州立大学で肉用牛生産者に対する農業普及活動を担当している大学の研究者3人および同州肉用牛生産者協会に話を聞く機会を得た。その中で、牛群の再構築に影響を与える要因として、以下のような言及があった。

ア 干ばつへの懸念
 AFBFによる分析でも指摘されている通り、牛の飼養頭数の多い高地平原や南部の生産者は、現在進行している干ばつに対する懸念を払しょくできないでいる。多くの生産者は2011〜15年や22〜23年に干ばつを経験しており、25年後半からも干ばつ下にある地域が拡大していることから、飼養頭数を増加させることに慎重になっている(図26)。
 一方、今春以降の気象としては、これらの地域に高温・少雨をもたらすラニーニャ現象が終息し、平常の状態が続くか、または降雨をもたらすことの多いエルニーニョ現象に移行する確率が高いと予測されており、その場合には、今後の牛群の回復につながる好材料となり得る。
 

 
イ ラセンウジバエの影響
 オクラホマ州肉用牛生産者協会によれば、ラセンウジバエについては、牛だけでなく野生動物に寄生することができるため、国境まででなくパナマまで押し返すことが必要であり、現在の対策では不十分であるとの見方を示した。

ウ 過放牧や子牛不足の継続
 牛の体が大きくなるほど必要となる草地や飼料が多くなるが、現在は廃用牛の価格が高く、繁殖農家でも重くて大きな牛が長期間飼育され、過放牧の傾向にあることから、干ばつの発生に脆弱な状況にある。
 このため、今年わずかに増えた未経産雌牛も長期飼育された繁殖雌牛の後継牛として供され、繁殖雌牛の増加につながらない(未経産雌牛の増加と同じだけ長期飼育した繁殖雌牛を更新する)可能性がある。
 加えて、飼料価格が低廉な中、フィードロットも施設を有効活用させるため、若齢でサイズが小さく安価な牛を多く購入して長く飼育しようとしている。
 このように、子牛については、まだ不足感が強い状況にある。

エ 酪農の影響
 また、酪農生産者においても、肉用種との交雑子牛が高く売れるため、ビーフ・オン・デイリーと呼ばれる、乳用雌牛に肉用雄牛を交配させる動きが広く見られるようになった。このため、搾乳成績の悪い経産牛であっても、子牛を生産し続けるため長く飼育している。
 また、分娩回数の多い高齢雌牛が増加している一方、経産牛に対する乳用後継牛(未経産牛)頭数の割合が低下していることで、今後、多くの雌子牛を乳用後継牛に仕向ける必要が生じるため、交雑牛の供給が減少する恐れがある(表2)。


 
オ 今後の見通し
 今後、牛の総飼養頭数は2028年までは増加する可能性は薄いとの見方が示されているものの、今年は干ばつが発生せずに推移することになれば、同年には牛の飼養頭数は増加に転じることが期待される。一方、干ばつが継続する、あるいは生産者による干ばつへの警戒感が払しょくできないようであれば、生産者は雌牛を後継牛として残すことより、肥育向けの子牛として販売することを続け、雌牛頭数の増加時期はさらに遅れることになる。米国の主要産地における今後の降雨・干ばつの動向やラセンウジバエの封じ込めをはじめとする家畜衛生対策、酪農部門の影響を含めた肉用子牛の生産環境の変化が注目される。

コラム オクラホマ州生体牛取引市場

 今回の出張において、オクラホマ州生体牛取引市場(Oklahoma National Stockyards)を訪問する機会を得た。同市場には全米各州・カナダから牛が集められ、2025年には47万頭の牛を取引した大規模な生体牛取引市場であり、育成農家(ストッカー)へ販売される離乳子牛や、フィードロットへ販売される肥育もと牛の流通に大きな役割を果たしている。
 同市場には、1台当たり約4万ポンド(約18トン)分の重量の牛(500ポンド(227キログラム)の牛であれば、80頭程度)を積載できる生体牛運搬トレーラーにより運び込まれるが(コラム―写真1)、個人の生産者がピックアップトラックで小さな台車をけん引し、数頭を運び込む様子も見られた。なお、牛が大きくなりすぎると、背中をデッキにぶつけてしまい、高価な部位の歩留まりが悪くなることもあるという。また、生体牛取引市場には、事前予約なしで24時間搬入が可能である(コラム写真―2、3)。
 取引の仕組みとしては、生体牛の出荷者が市場で活動している販売委託会社9社のうち1社を選択し、販売を委託する。ただし、市場の運営は委託会社とは独立した運営者により行われている。その後、委託会社により、買参人に対して競りが行われる。競り上げ方式であり、表示板上で競り上げられた価格に最後に同意した参加者が落札する。(コラム―写真4)
 同取引所のような市場が存在することにより、1)生産者は自由に牛を出荷することができ、2)複数の委託企業が介在することで自身の希望に合う販売者を選択することが可能で、3)価格形成が透明である上に、4)買参人が登録制となっており、代金決済の心配も少ないこと―といったメリットがある。







5 おわりに

 今回のアウトルック会議で、2025年に続き、26年も特に牛肉価格は高値で推移するとの見通しが示された。一方で前年高騰した鶏卵価格は、26年には大きく下落するとされている。
 日本の関係者にとって関心の深い牛飼養頭数の増加、すなわち牛群の再構築の時期については、28年まで増加に転じる可能性が薄いとの見方があり、その回復の様態も頭数が伸び悩む時期があるU字の回復となる可能性を指摘する声もあった。米国国内での堅調な牛肉需要を考えると、当分の間、同国の牛肉需給はひっ迫基調が続くのではないかと思われる。
 特に今年が温暖で十分な降雨量もある天候で推移するか、干ばつ傾向で推移するかにより、今後の牛群回復の時期に大きな影響が現れると思われる。
 豚肉については、子豚の生産性向上により生産量は増加する見込みであるものの、母豚の増頭には制約があり、引き続き引き締まった需給が続くとみられる。鶏肉については、好調な需要を背景に、鶏卵についても採卵鶏羽数の回復により、生産量は増加傾向とみられる。
 乳製品については、無脂乳固形分は増加分が国内市場仕向けに仕向けられるとみられるものの、生乳生産量の増加に伴い乳脂肪分の生産も増加することで、バターなどの価格が下落し海外市場への輸出が増加することが見込まれる。
 同国の畜産物需給は、他国への輸出に大きな影響を与えることから、引き続き米国の動向を注視していく必要がある。