(1)アンケートの内容および調査先
哺育・育成センターに対し、主に哺育・育成センターの預託牛の健康管理について、図に示した内容でアンケートを行った。
会社組織の4センター(AD, AE, AI, AJ)、組合組織の2センター(BA, BF)、家族経営の2センター(CH, CL)の計8センターから回答を得た。
(2)アンケートに対する回答
ア 子牛預託受け入れの条件としての予防措置
哺育・育成牛受託の条件としての疾病、けがの予防措置として、最も回答が多かったのは、「サルモネラ陰性の確認」と「健康状態良好の確認」であり、全8回答のうち6回答であった。次いで「初乳の給与済み」と「BVD陰性の確認」(BVD:牛ウイルス性下痢)がそれぞれ4回答であった。なお、1センターが「母牛のワクチン接種」と「除角」としていた。
イ 哺育・育成牛のセンター入牧日齢と下牧月齢
入牧は3日齢が4回答と最も多く、次いで7日齢が2回答、6日齢と17日齢がそれぞれ1回答であった。
下牧は、妊娠牛を受け入れる利用酪農家の都合や要請もあってさまざまであり、16カ月齢が2回答、その他は、12〜15カ月齢、17カ月齢、19カ月齢、20〜21カ月齢、22カ月齢がそれぞれ1回答であった。
ウ 導入牛舎への収容
手作業のみの牛舎もロボットを導入している牛舎も、新生子牛の導入時には、1頭ずつ個室のハッチあるいは牛舎の中に造成した屋根付きのペンで哺育し、数日後、手作業のみの牛舎ではそのままハッチやペンで哺育を続け、ロボットを導入している牛舎では個室から出して少数頭の集団でロボットを機能させて哺育を行う。従ってアンケートでは、すべての哺育・育成センターはハッチ、あるいはペンを所有しており、導入当初はいずれかに収容している。
エ 離乳の確立月齢
離乳は2カ月齢が3回答と最も多く、他は4〜6カ月齢、4カ月齢、2〜3カ月齢、1.5カ月齢など、各センターによって離乳確立月齢にはばらつきがある。
オ 哺育牛導入直後における暑熱対策、寒冷対策
哺育牛の暑熱対策として、換気扇による送風が5回答と最も多く、次いで遮光カーテンが2回答、ファーネス、ダクト、ミスト装置、送風機の設置がそれぞれ1回答であった。
寒暖差が大きく気温が低い根室振興局管内の寒冷対策は多様である。カーフジャケットの着用が3回答、ネックウォーマーの着用、赤外線ウォーマーによる暖房がそれぞれ2回答、他に防風カーテン、温風ファーネス、パネルヒータ―、湯たんぽ、ジェットヒーターなどがあり、中には寒冷地と豪雪地帯であることを逆手にとって、雪を利用したかまくらなどによる寒冷対策を行っている哺育・育成センターもあった。
カ 従業員数
深刻な労働力不足は、とりわけ中小・零細経営に大きな影響を及ぼしており、従業員数に如実に反映されている。従業員数については、16人が1回答、次いで10人と8人がそれぞれ2回答、6人、1人、0人がそれぞれ1回答であった。なお、従業員1人および0人は、家族経営のセンターであった。
キ 最初の人工授精
最初の人工授精については、12〜14カ月齢の2カ月間における都合のよい日を選んで行っているセンターが4回答、次いで11カ月齢、12カ月齢、13カ月齢に行っているセンターがそれぞれ1回答あり、さらに組合組織の1センターは、育成牛を10カ月齢で下牧させ、人工授精は家畜人工授精師の資格を持つ職員の豊富な農業協同組合(JA)で行っていた。
ク 運営上あるいは子牛の健康に問題等が起きた時の対応
運営上あるいは子牛に病気などの危急の問題が起きた時の対応としては、1回答を除いて、かかりつけの獣医師に相談すると回答していた。相談する対象として、「農業改良普及センターや普及員」、「近隣の親しくしている哺育・育成センター」を選択した回答はなかった。獣医師の診断を必要とする危急の病気などの場合を除いて、農業改良普及センターの定期的巡回と相談を通して子牛の疾病を早期発見し、死廃頭数の減少、死廃率の低下を達成する必要があると考える。
ケ 牛の管理に関わる講習会、見学会の有無と参加
2024年度に講習会、見学会参加の機会が「2回あり、2回とも参加した」が2回答、「1回あり、1回参加した」が1回答あった。残りの5回答は一度も講習会などへの参加の機会がなく、飼養管理を牧場管理者の経験にのみに頼っていることになる。
講習会や同業のセンター見学会などは、会社経営者や職員、家族経営の経営主にとって、運営情報を獲得し、飼養技術、経営機能を高める重要な機会であり、哺育・育成センター自らが積極的に企画・推進し、飼養管理技術をさらに高める必要があると考える。特に飼養技術は次節以降で述べる哺育・育成牛の死廃頭数の減少や死廃率の低下に深く関わっている。
農業改良普及センターやJA、地方自治体などの関連団体は、講習会や見学会などを通して、地域センターの管理者、職員や家族経営主に対して情報を提供し、知見を高めるべく、啓発、教化の活動を増やすことが求められている。
(3)死廃頭数、死廃率
ア 根室振興局管内の高死廃率とその要因
生後2カ月齢までが牛の哺育期であり、この哺育期から育成期に至る時期は死亡や廃用の最も発生しやすい時期でもある。NOSAI北海道の資料によると、2024年度(24年4月2日〜25年4月1日)の1年間に、北海道では18万1452 頭のホルスタイン種の雌子牛が出生している。
北海道における子牛の月齢別の死廃頭数、死廃率を見ると、哺育期の死廃頭数は9787頭であり、出生頭数に対する死廃頭数の割合、すなわち死廃率(9787頭÷18万1452頭)は5.39%を占め、特に1カ月齢の死廃頭数が8894頭と多く、死廃率も4.90%と高い。3〜12カ月齢までの育成期の死廃頭数は3207頭であり、死廃率は1.77%である。24年度の北海道における乳用子牛の1〜12カ月齢までの死廃頭数は1万2994頭であり、死廃率は7.16%である。
また、同年度1年間に根室振興局管内では、6万5072頭の乳用子牛が生まれている。同管内における月齢別の死廃頭数、死廃率を見ると、哺育期の死廃頭数は3744頭であり、死廃率は5.75%である。3〜12カ月齢までの育成期の死廃頭数は1288頭であり、死廃率は1.98%である。24年度の同管内における乳用子牛の1〜12カ月齢までの死廃頭数は5032頭であり、死廃率は7.73%である(表2)。
北海道と根室振興局管内の死廃率を比較すると、哺育期については北海道の5.39%に対し、根室は5.75%と根室が0.36ポイント高く、育成期についても北海道の1.77%に対し、根室は1.98%と根室が0.21ポイント高く、24年度の1〜12カ月齢までについても、北海道の7.16%に対し根室は7.73%と、根室が0.57ポイント高いのである。つまり、根室振興局管内の急速な酪農の規模拡大に伴う労働力需要の急増に供給が追い付いておらず、とりわけ同管内の哺育・育成段階の飼養管理は、まだ手薄で不十分な状態にある。また、預ける子牛に給与する初乳が不足していたり、周産期病に罹患していたり、先天的に弱い牛であったりして、それらが著しく死廃率に影響する場合もある。このような農家の側の要因もかなりあると言えよう。
イ アンケート先8センターの高死廃率
表3は、NOSAI北海道の資料による2024年度の北海道と根室振興局管内の平均、そしてアンケートに回答した8センターのそれぞれの死廃率であり、同年度において北海道平均より高い死廃率を太い破線で示した。
哺育期については、北海道の4.9%に対し、ADセンターは5.9%と1ポイント、AJセンターは5.0%と0.1ポイントそれぞれ高い。次に育成期については、北海道の1.2%に対し、AIセンターは3.7%と2.5ポイント、AJセンターは5.7%と4.5ポイント、BFセンターは1.6%と0.4ポイント、CLセンターは2.6%と1.4ポイントそれぞれ高い。そして、2024年度の1〜12カ月齢については、北海道の7.6%に対し、AJセンターは10.7%と3.1ポイント高いのである。
以上のように、哺育期では2センター、育成期では4センター、2024年度1〜12カ月齢では1センターの死廃率が北海道平均を超過しており、少なくとも北海道平均の数値まで低減させる取り組みが求められている。