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話題 畜産の情報 2026年11月号

家畜排せつ物の減容・資源化で目指す持続可能な畜産〜家畜排せつ物減容処理設備の実証と今後の展望〜

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デザミス株式会社 CEO室 今 洸乃

1 はじめに

 国内の畜産業においては、飼養戸数が減少する一方、1戸当たりの飼養頭数は増加傾向にあり、経営の大規模化が進んでいる。生産性の向上が期待される反面、一つの経営体から日々発生する家畜排せつ物の量も増え、その処理能力や保管場所の確保が経営上の重要な課題となっている。
 家畜排せつ物は、適切に堆肥化して農地へ還元すれば資源となる一方、発生する地域と利用する地域が一致するとは限らない。また、堆肥化には、発酵を進めるための切り返しに加え、保管、運搬、散布などに場所・人手・燃料費を要する。特に堆肥の需要が少ない地域や散布できる農地が限られる地域では、広域的な流通が必要となり、輸送距離の増加に伴い、さらに多くの時間と費用がかかるが、引き取り価格には反映されづらい。
 こうした課題に対し、デザミス株式会社(以下「当社」という)はパートナー企業と共に、家畜排せつ物を大幅に減容し、含まれる肥料成分を資源として回収する技術の実証試験を行った。本稿では、その仕組みと実証結果、今後の展開について紹介する。

2 畜産現場で顕在化する課題

 畜産現場では、堆肥の保管容量の不足、処理施設や重機の老朽化、燃料・電気代の上昇、堆肥の切り返しや搬出を担う人手の不足など、家畜排せつ物の処理について共通する課題がある。堆肥を販売していても、販売価格だけでは製造や運搬の費用を回収しきれない例や、需要が落ちる時期、発酵が滞る時期などに在庫が積み上がる例も見られる。受け入れ先の事情で出荷が止まれば、牛舎から家畜排せつ物を搬出・保管することが困難になるため、家畜排せつ物の処理能力や堆肥の保管容量が飼養規模そのものにも影響する可能性がある。
 また、堆肥は水分を含み、かさが大きいため、輸送には不向きである。加えて、家畜排せつ物が発生する地域と堆肥の需要がある地域は必ずしも一致せず、需要が見込まれる地域への広域的な流通が必要だが、輸送コストの面から難しい。一方、堆肥で補いきれない肥料成分は化学肥料に頼ることになるが、その原料となるリン・カリウムはほぼ全量を輸入に依存し、輸入先も特定の国に偏っている(図1)。国際情勢や輸出規制の影響を受けやすい構造であり、2022年12月には、肥料原料が経済安全保障推進法に基づく「特定重要物資」に指定された。このため、従来の堆肥化や地域内での耕畜連携を基本としつつ、地域の受け入れ可能な能力を適切に判断し、余剰分は運びやすい形に変える選択肢が求められている。

3 家畜排せつ物減容処理設備による減容・資源化の仕組み

 当社は、畜産現場が抱える家畜排せつ物処理の課題解決に向け、家畜排せつ物減容処理設備を使用した減容化・資源化の実証試験を行った。家畜排せつ物減容処理設備では、反応性が極めて高い「OHラジカル」を利用する。ラジカルとは、電子の状態が不安定で他の物質と反応しやすい分子や原子を指す。OHラジカルが有機物から電子を奪うと、有機物の分子結合が崩れ、段階的に分解が進む。家畜排せつ物減容処理設備はこの反応を利用し、家畜排せつ物中の有機物を分解して、最終的に多孔質のセラミック系粉末を得ることを目指す装置である(図2)。
 量の多い家畜排せつ物から分解できる部分を取り除き、分解後に残る無機成分を小さな粉末に集約する考え方である。家畜排せつ物を単に廃棄物として処理するのではなく、取り扱いやすい形に変え、肥料原料として資源化することが大きな特徴である。

4 実証内容

 2025年10月から12月にかけて、鹿児島県内の肉用牛肥育農家において、家畜排せつ物減容処理設備の小型実証機による試験を行い、重量ベースで約95%の固形物減容率を確認した(写真)。また、処理後に生成された多孔質なセラミック系粉末を分析した結果、肥料の主要成分であるリンが約15%、カリウムが約11%検出された(表)。
 日本は、リンやカリウムなど主な肥料原料のほとんどを輸入に依存している。家畜排せつ物に含まれる成分を国内で回収し、再び国内で肥料原料として活用することで、資源循環の促進と肥料原料の安定確保の双方に寄与する可能性がある。



5 減容によってもたらされる効果

 家畜排せつ物減容処理設備の導入によって期待される効果は、大きく分けて四つある。
 
(1)保管・運搬負担の軽減
 家畜排せつ物は水分を多く含み、重量とかさが大きいため、保管場所の確保や農場外への運搬が課題となりやすい。家畜排せつ物減容処理設備によって処理後の重量を大幅に減らすことで、保管に必要なスペースを抑えるとともに、運搬に伴う負担の軽減が期待できる。
 
(2)処理施設の省スペース化
 家畜排せつ物減容処理設備の設置に必要な面積は、付属設備を含めて約200〜250平方メートルであり、同程度の飼養規模の農場で必要とされる堆肥処理施設の必要面積を大幅に下回る。農場によっては、処理施設の能力や面積が飼養規模の上限となり、増頭を検討しても踏み切れないことがあるが、必要な設置面積を小さくすることで、限られた用地を有効に活用し、こうした制約を緩和できる可能性がある。
 
(3)日常作業の省力化
 家畜排せつ物減容処理設備導入後の日常作業は、基本的に朝夕2回、家畜排せつ物を装置へ投入することで完了する。堆肥化に必要な切り返しや、水分調整に用いる副資材の調達が不要となるため、家畜排せつ物処理に充てていた時間を、牛の健康観察や飼養管理に充てることができる。また、副資材の価格高騰や供給不安の影響を受けにくくなることも、経営の安定につながる。
 
(4)肥料原料の流通可能性
 家畜排せつ物が発生する地域と、堆肥を必要とする地域が離れている場合、家畜排せつ物の重量とかさが広域流通の妨げとなる。家畜排せつ物減容処理設備によって減容し、取り扱いやすい粉末に変えることで、地域を越えて流通させやすくなる。さらに、処理後の粉末を一定品質の肥料原料として流通させる仕組みが整えば、畜産農家、耕種農家、肥料事業者を結ぶ新たな資源循環につなげることができる。
 ただし、これらの効果を判断するためには、減容率だけでなく、装置の処理能力、消費電力、保守費用、搬入・搬出方法などを含め、農場全体で評価する必要がある。温室効果ガスや臭気の低減についても、比較条件をそろえた計測が必要である。今後は、導入後の費用、作業時間、環境負荷を継続的に把握し、総合的な効果を検証することが重要となる。

6 実用化に向けた取り組みと国内展開

 当社では、実証結果を基に、複数の牧場などへの家畜排せつ物減容処理設備導入・受注に向けた具体的な取り組みを進めている(2026年8月時点)。
 また、処理後に得られるセラミック系粉末については、特殊肥料としての届出受理を見込むとともに、普通肥料としての登録取得を目指している。普通肥料として登録されれば、公定規格に基づく品質保証の下で流通させ、肥料原料としての利用先を広げることができる。
 国内展開に当たっては、装置の導入と併せて、処理後に得られるセラミック系粉末の利用先や流通経路を確保することが重要となる。当社としても、畜産農家、肥料メーカー、行政などの関係者と連携し、家畜排せつ物が発生する地域と、肥料原料を必要とする地域を結ぶ仕組みの構築を進めているところである。

7 おわりに

 家畜排せつ物の処理は、畜産物の生産を支える上で欠かすことのできない業務であり、畜産経営を継続するための基盤の一つである。農場によっては、その処理能力や経費が飼養規模や今後の経営を左右する課題となっている。今回紹介した家畜排せつ物減容処理設備の技術でこの課題の解決に寄与し、国内畜産業の発展に貢献していきたい。
 さらに、日本の畜産現場で培った技術と知見を生かし、環境負荷の低減と資源循環が求められる海外市場への展開を目指している。