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鹿児島のさつまいもは今

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最終更新日:2012年2月10日

鹿児島のさつまいもは今

2012年2月

さつまいもの館 館長 三宅 康郎
 

【要約】

 さつまいもは江戸時代の天保の飢饉等から人々を救い、太平洋戦争後の日本の食糧難を救いました。栄養価にも富み、糖質やでん粉、ミネラル、ビタミン、食物繊維なども多く含み、いわば米などの穀類と野菜類の性格を備えた優れた食品です。

 さらに、単位当たりの生産量が米の約5〜6倍あり、茎や葉も食べることが出来ます。宇宙時代を担う食物として研究も行われてきました。将来の世界食糧不足や環境問題へ対応出来る作物だと考えます。さつまいもはワッゼカ(すごい)作物です。

1 鹿児島県のさつまいもの生産状況

 さつまいもは、太陽エネルギーを蓄積する能力が高く、シラス土壌など土壌がやせた所に良く生育し、台風に強い作物です。また、さつまいものツルは牛の格好の飼料ともなり畜産王国鹿児島を支えています。

 本県のさつまいもの生産は、でん粉用、焼酎用、加工用等の工業用の生産が85%以上を占め、他県で多い青果用の生産が少ないのが特徴です。

1)作付面積、生産量の推移
  さつまいもの作付面積は昭和38年をピークに減少が続いていましたが、焼酎用の需要が増えたため、平成16年産から増加に転じ、平成22年産は前年産より100ha増の1万4300haとなっており、全国の3割強を占めています。
 生産量は、概ね40万tで推移していましたが、平成22年産は気象条件が悪かったこともあって前年比84%の34万tとなっています。

2)主要産地
 県下各地で生産されていますが主要な産地は指宿、川辺、曽於、肝属、熊毛等です。
 
 
 
 

2 用途別動向

 さつまいもは従来からのでん粉原料用、焼酎用に加え、最近では新しい品種の開発等によりケーキ類などのお菓子用も増加してきています。さらに、焼きいも機械の普及に伴い安納紅やベニハルカなど青果用のさつまいもも増加傾向にあります。


1)でん粉原料用さつまいも

 でん粉原料用さつまいもの生産は、昭和38年をピークに、コーンスターチの増加に伴い減少してきました。平成17年には焼酎ブームで需要が伸びた焼酎用のさつまいもの生産がでん粉向けの生産量を逆転しています。

 これまで、さつまいものでん粉は主として糖化用として使われてきましたが、平成21年に国の支援を受けて新しく建設されたJA鹿児島きもつき新西南でん粉工場(鹿屋市)は、徹底した衛生管理や同時乾燥等により著しく白度などの品質向上が図られました。このため、お菓子等の食品用原料としての利用が可能になるなど用途の幅が広がりました。薩摩川内市にあります小城製粉株式会社の小城年久社長は「鹿屋の新工場で生産されたさつまいもでん粉は白度も良く品質向上が著しい。昨年は馬鈴薯でん粉が少なかった事もあって使ってみました。お菓子類は夏場の販売が厳しいので、夏場にさつまいものでん粉があると米粉と合わせすっきりした味のお菓子も出来るので大変よい。南薩知覧にも大型工場が建設されるなどさつまいもでん粉の今後が楽しみだ」と話してくださいました。大型のでん粉工場と低温糊化性でん粉を含む新品種こなみずきは、地域の食品産業とも結びついて新しい地域の特産品を創出するなど今後の地域振興におおいに寄与するものと考えます。
 
 
2)焼酎用さつまいも

 焼酎はこれまで3度のブームがありました。昭和50年代の6:4お湯割りブーム、昭和60年頃の酎ハイブーム、平成15年頃の酔い覚めすっきりブームです。これらのブームを経て全国的に焼酎が飲まれるようになりました。特に、3度目のブームは消費者の健康志向とマッチして、いも焼酎の消費量は飛躍的に伸びました。現在は、地理的表示(注1)の産地指定を受けた「薩摩焼酎」(注2)のブランド確立を目指して、安定した消費が続くよう努力しています。コガネセンガンを主な原料にアヤムラサキ、ジョイホワイト、安納紅、農林2号などを使用したプライベートブランドが多くなってきており、111ある焼酎工場で2000種類余りの銘柄が製造されているといわれています。

 各工場では原料の品質向上や白・黒・黄麹など様々な発酵菌を利用した製造技術の向上などが進められており、香りが良く、美味しいいも焼酎が薩摩料理とともに親しまれています。

(注1)「地理的表示」とは
 WTO(世界貿易機関)協定の付属書の一つである、TRIPS協定に基づき保護される知的財産のこと。
 商品の品質などが原産地に由来する場合に、その地域を指定することによって「その地域の原産であること」を特定する表示。
 現在、ぶどう酒及び蒸留酒が保護対象となっている。
 ※TRIPS協定:知的所有権貿易関連の側面に関する協定(1995年1月1日発行)
 (Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights)

(注2)「薩摩焼酎」とは
 米こうじ又は鹿児島県産のさつまいもを使用したさつまいもこうじ並びに水を原料として発酵させたもろみを、鹿児島県内(名瀬市及び大島郡を除く。)において単式蒸留器をもって蒸留し、かつ、容器詰めしたものでなければ「薩摩」の産地を表示する地理的表示を使用してはならない。
 ワイン:ボルドー、シャブリ、シャンパーニュ
 蒸留酒:スコッチ、アルマニャック、コニャック
 焼 酎:薩摩、壱岐、球磨、琉球
 
 
3)青果用さつまいも

 さつまいもの館鹿児島店では6〜7種類のさつまいもを焼き芋にして試食に供しています。「中がオレンジのこのいもと、白いいもはどちらも甘くて美味しいのに微妙に甘さが違うの。おもしろいね」、「こんなにさつまいもに多くの種類があるなんて!色も味も個性があって楽しいね」と試食した女性の声が聞かれます。

 焼き芋の一番の人気は甘くてねっとりした「安納紅」です。次いで安納紅よりちょっと皮色の薄い「安納こがね」、次いで今売り出し中の「べにはるか」です。甘い中にも何かすっきりした上品な味が特徴です。江戸時代のさつまいものレシピである「甘藷百珍」の絶品の1番に「塩蒸しやきいも」とあります。江戸の昔から今に至るまでさつまいものおいしい食べ方といえばはやっぱり焼き芋です。

 平成23年11月には埼玉県坂戸市の女子栄養大学で「国際焼き芋交流フォーラム」が開催され、焼き芋についての国際的な情報交流が図られました。今後、手軽に食べられる焼き芋は、焼き芋技術の向上や新しい品種の育成等があって若い女性を中心に増加していくものと考えます。焼き芋需要から目が離せません。
 
 
4)加工用さつまいも

 九州新幹線全線開通を契機に、県内で行われる食品コンクール等への出展数が増え、新しい特産品づくりが活発化してきました。鹿児島県新加工食品コンクールでは平成23年度の出展数は103で、そのうちさつまいも関係は17点でした。今回のコンクールでは、地域振興をにらんだもの、さらに、加工技術が高いものも多く、さつまいものスナック菓子や本県産のさつまいもでん粉を使った冷麺などがコンクールで入賞するなどさつまいもを使用した特産品作りが盛んになりました。また、鹿屋市では人気のべにはるかの産地化を図るために、べにはるかの食品コンクールの開催などの取り組みが始まっています。
 
 

3 課題と展望

 各でん粉工場では、さつまいもでん粉の品質向上に向けた取り組みがなされています。

 現在、数工場で試験的に栽培やでん粉の製造が行われている新品種「こなみずき」は耐老化性、低温糊化性といった優れたでん粉特性を有していることから食品用として用途の幅が広がり、地域特産品の開発が活発化していく中で、でん粉の食品用用途拡大に向けて今後の期待は大きいものがあります。

 いも焼酎は、消費人口が減少していく等の厳しい状況がありますが、県で製造された本格焼酎である「薩摩焼酎」のブランド確立に向けて、関係機関団体が一体となって需要拡大に向けて取り組まなければなりません。このためには、郷土料理等と併せた焼酎文化をPRしていくことが重要と考えます。

 青果用のさつまいもは、現在、スーパー等の店頭販売やネット販売などにより焼き芋の需要が増加しています。今後とも一定の安定した品質(スイーツと同様に美味しくて甘い)と年間を通して供給する集荷・貯蔵体制が整備されますと、安納いもやべにはるかなどの焼き芋に向く品種の開発等もあって、手軽に食べられる焼き芋の需要増加傾向は続くものと考えます。

 加工用さつまいもについては、加工適正品種の開発が進んでおり、九州新幹線の全線開通や地域振興の高まりなどにより、本場鹿児島を代表する一つであるさつまいもを使った特産品の開発が高まっていくものと考えられます。

 鹿児島にはなくてはならないさつまいもです。
 大事に育てていきたいと考えます。
 さつまいもは今後も人類に貢献していくものと考えます。 本当にワッゼカ作物です 。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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