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平成24年度でん粉の需要実態調査の概要

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最終更新日:2013年6月10日

平成24年度でん粉の需要実態調査の概要
〜国内産の需給ひっ迫や価格高騰の中、仕入量の確保が課題〜

2013年6月

調査情報部
 


【要約】

 食品や工業品など、さまざまな製品の原料として利用されるでん粉について、平成24年の需要実態を調査した。コーンスターチ、国内産ばれいしょでん粉、化工でん粉の仕入量は前年を上回った一方、国内産かんしょでん粉、タピオカでん粉、輸入ばれいしょでん粉は減少した。

 国内産いもでん粉については、生産量減少などを受け、供給安定性への懸念が挙げられた。また、各種でん粉の仕入量は、原料として使用する商品の販売動向に大きく左右され、商品の風味維持のためには、仕入価格が上昇したとしても容易に原料を変えることができない、という状況が明らかになった。

1.はじめに

 でん粉は、製品の主原料となることは少ないものの、その用途は、食品や工業品など多岐にわたっている。わが国で消費されているのは、コーンスターチ、ばれいしょでん粉、かんしょでん粉、タピオカでん粉などの天然でん粉および天然でん粉から生産される化工でん粉であるが、原料作物の違いにより特性が異なるため、ユーザーはそれぞれの用途に応じたでん粉を使用している。

 農林水産省の公表によると、平成23でん粉年度(平成23年10月〜平成24年9月)におけるでん粉の需要量は、前年度を4.3パーセント下回る268万3000トンとなっている。

 当機構では、でん粉の需要動向を把握するため、各種天然でん粉および化工でん粉を対象とした需要実態調査を実施したので、その概要を報告する。

2.調査概要

 でん粉使用企業30社に対して、平成24年(1〜12月)におけるコーンスターチ、国内産ばれいしょでん粉、国内産かんしょでん粉、タピオカでん粉、輸入ばれいしょでん粉および各種化工でん粉の使用状況について聞き取り調査を実施した。

 調査対象企業は、糖化製品、水産練製品、乳飲料、即席麺、春雨、片栗粉、スープ、菓子、冷凍食品、調味料、ハム・ソーセージ、パンなどを製造する食品メーカー29社、糖化製品用にでん粉を使用している糖化製品メーカー1社とした。

 調査項目は、使用しているでん粉ごとの(1)使用開始時期および使用動機、(2)仕入量および今後の見込み、(3)仕入価格、(4)評価、(5)他の種類のでん粉などへの切り替えの可能性、(6)使用商品例などとした。

3.調査結果

(1)コーンスターチ
〜仕入価格は高値推移も、仕入量は増加〜
 
ア 平成24年の状況

 コーンスターチを使用していたのは22社(表1)で、水産練製品、春雨、スープ、菓子、冷凍食品、調味料、ハム・ソーセージ、パンなど幅広い製品分野で使用していた。使用理由としては、「食感を出す」、「粘性付与」、「価格が安い」、「とろみ付け」などが挙げられた。物性が安定しており、扱いやすいとのことから、本調査においても最多の使用企業数となった。

 仕入量について回答のあった21社における平成24年の仕入量の合計は1万6711トンで、前年比6.3パーセントの増加となった。前年に比べ増加とした企業は6社、前年並みとした企業は13社、減少とした企業は2社となった。主な増加理由としては「商品の好調な販売」によるものであった。このほか「スナック菓子や菓子の整形に用いるなど、用途の増加」、複数の企業から、小麦粉やばれいしょでん粉からの切り替えなど、コストダウンを図るためとする回答が得られた。一方、減少理由は「商品販売量の減少」によるものであった。

 仕入価格に関しては、とうもろこし相場の上昇により値が上がり、その後も高値で推移しているとの回答が多く得られた。また、価格の高止まりにより、翌年の製造コスト上昇の要因となり得ると懸念する回答もあった。

 コーンスターチの品質・供給安定性に関しては、特に問題ないとの回答であった。

 小麦価格の上昇を背景に、小麦からコーンスターチへの原料切り替えを図る企業はあったものの、コーンスターチを他の原料に切り替える動きは見られなかった。食品においては、コーンスターチが主原料になるケースは稀である。他の原料に切り替える動きが見られなかったのは、コーンスターチの価格動向により、原料の切り替えを検討する必要が生じるほど各企業の仕入量が多くないためと考えられる。

イ 今後の見通し

 今後の仕入量については、増加を見込む企業が2社、横ばいを見込む企業が13社、減少を見込む企業が3社、非回答ないしは不明とする企業が4社となった。不明と回答した企業の理由としては、コーンスターチを使用した商品の今後の売れ行きに伴って仕入量が変動すること、また、需給や価格により使用量が変動することから見通しがつきにくい、というものであった。

(2)国内産ばれいしょでん粉
〜生産量の減少により、安定供給に懸念〜
 
ア 平成24年の状況

 国内産ばれいしょでん粉を使用していたのは17社(表2)で、糖化製品、水産練製品、即席麺、春雨、片栗粉、スープ、菓子、冷凍食品、調味料、ハム・ソーセージなど幅広い製品分野で使用していた。使用理由としては、「食感を出す」、「風味を出す」、「保水性を持たせる」、「国産しか使わないというコンセプト」などが挙げられた。

 仕入量について回答のあった14社における平成24年の仕入量の合計は10万2095トンで、前年比4.5パーセントの増加となった。これは、大口ユーザーである食品製造メーカーで「国内産ばれいしょを使用している商品の売り上げが増加した」ことによるものである。前年に比べて増加とした企業は2社、前年並みとした企業は9社、減少とした企業は3社であった。減少理由としては「供給不足により仕入量を制限された」、「震災の影響を受け、工場が閉鎖されたことによる生産の縮小」が挙げられた。この他、でん粉の安定的な確保を目指し「生産量の減少により、今後国内だけでは確保できない可能性があるため、輸入ばれいしょでん粉の購入ルートを確保しておきたい。また、かんしょでん粉の使用も検討している。」と、使用品目を多角化することで、今後、国内産ばれいしょでん粉の仕入量が減少する可能性もあるとの回答もあった。

 仕入価格に関しては、回答を得た企業のうち6割が上昇したとのことであった。なお、横ばいとした回答の多くは、安定はしていたものの高値で推移したというものであった。

 国内産ばれいしょでん粉の品質に関しては、「水産練り製品の品質維持には、ばれいしょでん粉が高い評価を受ける」、「国内ばれいしょでん粉は、食感が良くなる」など、多くの企業が高い評価を示している。

 しかし、北海道のばれいしょの生産量が減少しており、入手することが難しくなっているという供給面が不安視されていた。「生産量が少ないことから、新製品は輸入品を用いることも考える」、「必要量の8割しか入手できなかった」、「基本的に国内産のでん粉を使うことにしているが、国内産ばれいしょでん粉だけでは必要量を満たせないことから、一部輸入でん粉を使わざるを得ない」といった回答もあった。

 原料の変更については、一部企業が「輸入ばれいしょでん粉に切り替えた」ものの、ほとんどの企業が他の原料への切り替えを実施していなかった。切り替えない理由としては、「試行錯誤しながら作った商品なので、簡単には原材料を変えることができない」というものであった。しかしながら、複数の企業から安定的な確保を求め、コーンスターチやタピオカでん粉への切り替えを検討しているとの回答が得られた。

イ 今後の見通し

 今後の仕入量に関しては、増加を見込む企業はなく、横ばいを見込む企業が10社、減少を見込む企業が3社、非回答ないしは不明とする企業が4社であった。大半の国内産ばれいしょでん粉使用企業においては、使用量を減らすような傾向にはないが、国内産ばれいしょでん粉の供給確保に不安があるといった回答が多かった。

(3)国内産かんしょでん粉
〜仕入量はわずかに減少〜
 
ア 平成24年の状況

 国内産かんしょでん粉を使用していたのは5社(表3)で、糖化製品、水産練製品、片栗粉、春雨、菓子の製品分野で使用していた。使用理由としては「製品を作るに当たり国内産かんしょでん粉が最適」などが挙げられた。

 5社の平成24年の仕入量の合計は5,439トンで、前年比0.3パーセントの減少となった。前年に比べて増加とした企業はなく、前年並みとした企業が3社、減少とした企業は2社であった。減少の理由としては「商品販売の低迷に伴う」というもので、「入手しにくくなっている」という回答も見られた。

 仕入価格に関しては、2社が上昇、1社が横ばいとのことであった。

 国内産かんしょでん粉の品質・供給安定性に関しては、特に問題ないとしている企業が多かったが、「水分含量が不安定なので使いにくい」、「安定した色目になることを要望する」などの意見も挙げられた。

 商品イメージに合わせ、タピオカでん粉から国内産かんしょでん粉に切り替えた企業はあったが、国内産かんしょでん粉から他の原料への切り替えは、いずれの企業も行っていなかった。

イ 今後の見通し

 今後の仕入量に関しては、横ばいを見込む企業が4社、商品アイテム数が増加すれば仕入れを増やす可能性があるとする企業が1社であった。糖化製品を製造している企業からは、「今後、供給量が安定しているコーンスターチに変更したい」との回答があった。

(4)タピオカでん粉
〜供給安定性やコストメリットが高評価〜
 
ア 平成24年の状況

 タピオカでん粉を使用していたのは13社(表4)で、水産練製品、即席麺、スープ、菓子、冷凍食品、ハム・ソーセージ、パンなどの製品分野で使用されていた。使用理由としては、「もちもち食感のため」、「レトルト用の耐熱性が良い」の他、「コーンスターチより安価」など、コストメリットがあるためとする回答が多かった。

 仕入量について回答のあった11社における平成24年の仕入量の合計は4万9314トンで、前年比0.5パーセントの減少となった。前年に比べて増加とした企業は2社、前年並みとした企業は7社、減少とした企業は2社であった。増加理由として「商品の売れ行きが好調だった」、「商品アイテム数の増加による」が挙げられた。

 仕入価格に関しては、上昇とした企業は2社、横ばいとした企業は4社、下落とした2社とばらつきがあった。「需要の増加により価格が高騰しており、これ以上上昇すればコーンスターチに切り替える」とする企業もあった。

 タピオカでん粉の品質・供給安定性に関しては、特に問題ないとしている企業が多く、輸入でん粉の中では最も供給が安定している点を評価する回答が多かった。ただし、一部の企業からは、「まだ企業によって品質の違いが存在する」、「粘度が不安定」との指摘もあった。

 原料の変更については、多くの企業が他の原料への切り替えを行っていなかった。ただし、複数社で、今後の価格動向によって「コーンスターチに切り替える可能性がある」との回答があった。

イ 今後の見通し

 今後の仕入量に関しては、増加を見込む企業が3社、横ばいを見込む企業が9社、非回答ないしは不明とする企業が1社となっており、減少を見込む企業は見られなかった。「価格が圧倒的に安い」、「もちもちとした食感の製品の需要が増えている」など、増加を見込む理由が挙げられていたが、価格次第で他のでん粉に切り替える可能性を示唆する企業もあった。ばれいしょでん粉の代替として使用している企業については、今後ばれいしょでん粉の価格上昇が止まれば、タピオカでん粉の仕入量が増えることはない、とのことであった。

(5)輸入ばれいしょでん粉
〜商品の売れ行きが仕入量に影響〜
 
ア 平成24年の状況

 輸入ばれいしょでん粉を使用していたのは7社(表5)で、水産練製品、片栗粉、菓子、ハム・ソーセージ、パンなど幅広い製品分野で使用していた。使用理由としては、「国内産の供給不足のため」、「他のでん粉と混ぜて使用する」などに加え、「国内産よりも光沢が良く安い」と品質面での良さも挙げられた。

 仕入量について回答のあった4社における平成24年の仕入量の合計は235トンで、前年比74.8パーセントの減少となった。前年に比べて減少とした企業は1社、前年並みとした企業は3社、増加とした企業はなかった。減少理由は「商品販売の低迷」とのことであった。

 仕入価格に関しては、上昇が3社、横ばいが4社、下落はなかった。「購入量が少ない場合は、国内産ばれいしょでん粉よりも価格が高くなる」との回答もあった。

 輸入ばれいしょでん粉の品質・供給安定性に関しては、特に問題ないとし、品質も「国内産ばれいしょでん粉とあまり変わらない」との好評価もあった。

 原料の変更については、変更を考えているとの回答は得られなかった。

イ 今後の見通し

 今後の仕入量に関しては、増加を見込む企業が1社、横ばいを見込む企業が3社、減少を見込む企業が2社、非回答ないしは不明とする企業が1社となった。横ばいとした企業の中には、「国内産ばれいしょの生産状況によっては、仕入量を増やす可能性もある」とする回答もあった。

(6)化工でん粉
〜幅広い分野で使用され、仕入量は増加〜
 
ア 平成24年の状況

 化工でん粉を使用していたのは13社(表6)で、水産練製品、即席麺、スープ、菓子、冷凍食品、ハム・ソーセージ、パンなどの幅広い分野で使用されていた。使用理由としては、「パリッと感」、「ふわっと感」など製品の風合いを出す他、「増粘材として使用」などが挙げられた。この他、「化工でん粉は様々な形でメーカーより提案がある。トレンドを知っているメーカーと共に開発を行っている」との回答もあった。

 仕入量について回答のあった11社における平成24年の仕入量の合計は4万3757トンで、前年比10.7パーセントの増加となった。前年に比べて増加とした企業は6社、前年並みとした企業は5社、減少とした企業はなかった。増加理由として「商品アイテムの増加による」、「商品の売れ行きが好調だった」などが挙げられた。

 仕入価格に関しては、上昇とした企業は3社、横ばいとした企業は3社、下落とした企業は1社とばらつきがあった。これは、化工でん粉の種類が多く、価格も種類や化工度により異なるためと考えられる。また、「化工でん粉の価格は、原料となる穀物の相場に引きずられる」との回答もあった。

 化工でん粉の品質・供給安定性に関しては、特に問題ないとの回答であった。原料の変更については、ほとんどの企業が他の原料への切り替えを考えていないとのことであった。なお、その理由として、「規格書やパッケージ表示の都合上、切り替えが難しい」との回答があった。

イ 今後の見通し

 今後の仕入量に関しては、増加を見込む企業が5社、横ばいを見込む企業が3社、減少を見込む企業が2社となっており、非回答ないしは不明とする企業が3社であった。増加を見込む企業は、「冷凍食品やレトルト品が増えているため」などの理由を挙げていた。一方、「価格が高い」ことが仕入量の減少につながる可能性もある、とする企業もあった。

4.まとめ

 本調査においては、使用しているでん粉の種類を切り替えることは、でん粉の種類を問わずほとんどの企業で行われていなかった。しかしながら、特に国内産いもでん粉については、でん粉原料用いもの不作により生産量が減少したことから、必要量を満たすことができなかった企業もあり、今後の原料作物の生産状況によっては、供給面、価格面から他のでん粉への切り替えを検討せざるを得ない企業が複数みられた。また、国内産でん粉の他、コーンスターチ、輸入ばれいしょでん粉も高値で推移したことから、原料の確保が課題となった企業も少なくなかった。

 この様な状況にあっても、それぞれの商品の風味を出すためには、容易に原材料を変えることができないという現状もある。国内産ばれいしょでん粉使用企業には、安定的な確保のために仕入品目を増やしておきたいという意向もみられ、価格よりも重要なのは安定供給である、という意見も寄せられた。

 これらの要望を満たし、でん粉の需要拡大につなげるためにも、国内産いもでん粉の安定的な供給の実現が求められている。

 最後に、ご多忙の中、本調査に対してご協力いただいた各企業に、厚くお礼を申し上げる。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713