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最終更新日:2013年9月24日

さつまいも新品種「こなみずき」でん粉利用推進研修会の開催について

2013年9月

鹿児島事務所 谷 貴規
 


 平成25年9月5日(木)、鹿児島市内で、さつまいも産業振興協同組合主催による、さつまいも新品種「こなみずき」でん粉利用推進研修会が開催された。同研修会は、「こなみずき」でん粉の特性を活かした新たな加工食品用途の開発などの実情について報告することを目的として開催され、県下の食品業界および菓子業界の代表など18名が参加した。本稿では、下記のテーマによる3者からの発表概要、「こなみずき」でん粉を利用した菓子などの試食会およびその後の意見交換会の模様について報告する。

テーマ・発表者

1.「こなみずき」でん粉の特性と食品への利用法について
 鹿児島県農産物加工研究指導センター研究専門員 時村 金愛 氏

2.新規さつまいも(こなみずき)でん粉開発の取り組みについて
 日本澱粉工業株式会社開発研究部次長 片野 豊彦 氏

3.「こなみずき」でん粉を利用した新商品開発への取り組みについて
 鹿児島県経済農業協同組合連合会米穀特産課次長 中畠 善郎 氏

発表概要

1.「こなみずき」でん粉の特性と食品への利用法について

 鹿児島県農産物加工研究指導センターでは、新規さつまいもでん粉の食品利用について研究を行っている。同センターは、「こなみずき」でん粉の特性などを研究し、他のでん粉との優位性を実証している。「こなみずき」でん粉の特性としては、ゲル保形性がよい、耐老化性・レトルト耐性、低温・少ない熱量での糊化(加工・調理時の加熱時間を短縮)などが挙げられる。これらの特性を活かして食品に利用すると 1)ゲル性菓子は、コシがあり、歯切れがよい 2)麺類は、弾力感があり、べたつかずのどごしがよい 3)水産練り製品は、モチモチ感と弾力感があり、数日から数週間後も硬くなりにくい 4)ベーカリー製品は、歯切れ・口どけがよく、ソフト感としっとり感に優れる−などの効果がある。「こなみずき」でん粉は、食品への高い利用適性、安全性に優れており、今後、食品加工分野での幅広い利用を期待できる。
 
2.新規さつまいも(こなみずき)でん粉開発の取り組みについて

 日本澱粉工業株式会社は、「おいしさのかけ橋」をテーマに掲げている。同社では、加工でん粉が添加物に指定される動きの中、機能性の高い国産でん粉のニーズが高まるとの判断から、新規さつまいもでん粉の開発に着手した。平成16年に「クイックスイート」でん粉の製造を開始し、平成18年からは、「こなみずき」でん粉を含む新規さつまいもでん粉の実用化に向けた産学官連携による技術開発事業に参画している。クイックスイートの用途提案およびこなみずきを含むさつまいもでん粉の特徴などについて明らかにした上で、さつまいもでん粉の品質向上への取り組みや食品メーカーへの新たな用途情報の発信を続けている。
 
3.「こなみずき」でん粉を利用した新商品開発への取り組みについて

 鹿児島県経済農業協同組合連合会は、平成24年5月、鹿児島県さつまいもでん粉プロジェクト『こなみずき』―消費者に支援される商品開発委員会―と称し、『こなみずき』を活用した商品開発をスタートした。

 さらに、食のモデル地域育成事業に参画するため、平成25年7月、「鹿児島県さつまいもでん粉食品用途拡大推進協議会」を立ち上げ、さつまいもでん粉を使用した商品開発・研究、消費拡大を目的とした食品コンテストやレシピ作成、開発商品などの商談会・販路開拓など食品用途への需要拡大を目的とした取り組みを順次行っていく予定である。JAが所有する近代的2カ所の工場で製造する「こなみずき」でん粉を含むさつまいもでん粉は、全量食品用途向け販売を目指している。
 

「こなみずき」でん粉を使用した菓子などの試食会

 鹿児島県農産物加工研究指導センター研究専門員時村金愛氏により、「こなみずき」でん粉を使用した菓子などの試食会が行われた。同試食会では、「こなみずき」でん粉、従来のさつまいもでん粉、ばれいしょでん粉をそれぞれ利用したかるかんやさつま揚げなどの食べ比べが行われた。参加者からは、「「こなみずき」でん粉を使用している方が、弾力感があり、モチモチして美味しい」、「利用するでん粉によって、こんなにも食感が違うのか」など、「こなみずき」でん粉の特性を実感した感想が多数寄せられた。
 
 

意見交換会

 意見交換会では、参加者一人一人が試食に対する意見などを発表した。「「こなみずき」でん粉を利用して新しい商品を開発していきたい」という声が多数あった。また、「鹿児島県内の菓子企業では、昔ながらの伝統的手法で製造している菓子も多く、「こなみずき」でん粉に代替するのは難しいのではないか。従来ある商品に利用するだけではなく、新商品の開発にも力を入れていくべき」など、「こなみずき」でん粉に期待する意見が多数あった。
 
 今回の研修会では、さつまいも新品種「こなみずき」でん粉を含むさつまいもでん粉の研究を通して、その特性および新商品開発の取り組み状況などについて、直接でん粉を利用する鹿児島県内の食品業界および菓子業界などの方々に紹介され、理解を深める大変良い機会となった。こうした取り組みを通じて、「こなみずき」でん粉を含むさつまいもでん粉の新たな加工食品への用途拡大および需要の拡大につながることを大いに期待したい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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