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地域だより

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最終更新日:2013年12月24日

かんしょでん粉に関する出前講座の開催について

2013年12月

鹿児島事務所 丸吉 裕子
 

 当機構鹿児島事務所は、平成25年11月30日に、鹿児島市内の鹿児島女子短期大学において「かんしょでん粉に関する出前講座」(以下「出前講座」という。)を開催した。今回の出前講座は、将来、栄養学や食育の指導者などの立場で活躍する学生方に、県の特産物であるかんしょでん粉を支える価格調整制度やその特性と利用方法について詳しく知って活用してもらおうと、鹿児島女子短期大学および鹿児島県農業開発総合センター農産物加工研究指導センター(以下「農産物加工研究指導センター」という。)の協力を得て、実現した。出前講座の模様について、以下のとおり報告する。

 最初に、当機構鹿児島事務所の星所長が、「日本のでん粉を支える仕組み」と題して講演を行った。講演では 1)でん粉からつくられる製品 2)需給などのかんしょでん粉をめぐる状況 3)でん粉原料用かんしょが南九州(鹿児島県・宮崎県)地域の経済を支える基幹作物であること 4)かんしょでん粉が唯一鹿児島県内で製造されていること 5)輸入でん粉などから徴収した調整金を財源として、国内のでん粉原料用かんしょ生産者やかんしょでん粉製造事業者に対し当機構から交付金を交付している価格調整制度の仕組み−などについて、説明を行った。
 
 次に、鹿児島女子短期大学の福司山名誉教授から、「鹿児島とかんしょでん粉」と題して講演があった。福司山名誉教授は、「かんしょでん粉は国の政策によって支援されている地域の重要な農産物である。県の食事バランスガイドにて摂取が推奨されるかんしょを原料とした鹿児島県ならではの特産品であることから、利用方法を知って、地産地消や栄養学的な観点からも積極的に調理に取り入れるべき食品である」と、将来栄養士などを目指す学生方へ呼びかけた。また、「鹿児島の郷土料理とかんしょでん粉は切っても切れない関係がある。ぜひ家族と話をしながら、かんしょでん粉を使った郷土料理について調べつつ、新しい利用方法を考えてほしい」との提言があった。
 
 つづいて、農産物加工研究指導センターの時村研究専門員から、「かんしょでん粉の魅力と利用について―かんしょでん粉ってなに?どう使うの?」と題して講演があった。まず、農産物加工研究指導センターの施設紹介があった後、一口にでん粉と言っても原料によって粒子の形状や大きさ、粘度も異なるということについてクイズを交えた説明があった。

 各種でん粉に比べて中間的な特性をもつかんしょでん粉は、その約7割が海外産と代替しやすい糖化製品に利用されている。一方で、県内農地の有効利用の観点でかんしょの再生産が求められることから、食品用途向けの需要拡大が急務であるとして、新品種こなみずきでん粉が開発されたことについて紹介された。こなみずきでん粉は、その分子構造から低温糊化性を有し耐老化性やゲル成形性に優れるという特徴があり、食品に加工したときに一般のかんしょでん粉と比べて、食感や形状などに違いが現れる。この特徴について、科学的根拠や実際に県下で開発・販売されている、しっとりとした食感をもつベーカリー製品や歯切れがよく煮溶けが少ない餅製品などのさまざまな食品利用の例とともに説明された。

 最後に、「こなみずきでん粉は、耐老化性があり弾力性などの独特な食感を持つ、鹿児島県ならではの優れた天然食品。今回の講座を通じてその特性や利用方法をよく理解していただき、今後積極的に使ってみてほしい」と提案があった。
 
 その後、福司山名誉教授や時村研究専門員の指導の下、実際にこなみずきでん粉を使った調理実験が行われた。学生方は、温度管理や水分量などに注意しながら、手際よく調理していた。今回調理したメニューは以下のとおり。
 
 
 
 調理した料理は全員で試食し、こなみずきでん粉の特徴的な食感に驚きの声が上がった。学生方からは、「だんごがもちもちプルプルとした食感で、ブラマンジェは舌触りがよくて魅力的」「同じでん粉を使用しているのに、さまざまな料理に入れることで食感やなめらかさも異なっており、面白く感じた」「和風の料理にも洋風の料理にも合う」「自宅でも作って家族に食べさせたい」といった声があった。

 また、当日は、時村研究専門員が一般のかんしょでん粉とこなみずきでん粉をそれぞれ使って作ったういろうを用意してくださり、両方を試食した学生方は同じ調理法でもでん粉の違いによって全く異なる食感を楽しんでいた。
 
 
 質疑応答の時間には、学生方や先生方からこなみずきでん粉の入手方法について質問があったほか、時村研究専門員からかんしょペーストを用いた時間短縮調理方法や材料のバリエーションについて紹介があった。

 最後に、学生代表の方から、「普段調理する上ではかんしょでん粉を身近に感じていたが、知らなかったことを沢山学べる貴重な機会だった。こなみずきでん粉の素晴らしい特徴についても理解することができたので、今後自分たちが食育を実践していく立場として、今回の出前講座での経験を生かしたい」との言葉を頂戴した。

 当事務所の星所長からも、「今回の出前講座に貴重な時間を割いてくださった先生方には大変お世話になり、最後まで熱心に受講いただいた学生方には心より感謝申し上げる。将来、栄養士や栄養教諭などの指導的立場として活躍される学生の皆さま方であり、本日の出前講座内容を的確な栄養指導や食育の場にぜひ生かしていただきたい」とのあいさつがあった。
 
 今回の出前講座は、鹿児島女子短期大学の福司山名誉教授の研究室と農産物加工研究指導センターの時村研究専門員の全面的な支援によって開催が実現した。出前講座を終えて、福司山名誉教授からは、「栄養学や調理学を学ぶ上では、調理実習だけでなく(今回の講座であったような生産地の実態や支援する制度の仕組み、食品の科学的な特性など)理論も合わせて学ぶことが重要である」との意見を、時村研究専門員からは、「これまでもかんしょでん粉やこなみずきでん粉に関する講演をしてきたが、その後にでん粉を使って実際に調理してもらったのは今回が初めて。実際に調理をしてもらってこそ、その特徴を理解してもらうことができ、念願が叶い嬉しい機会となった」との感想を頂戴した。

 このような出前講座の開催は初めてであったが、将来、栄養学・食育の指導者を担う学生方にかんしょでん粉に触れていただく機会を設けることができ、大変有意義であった。さっそく講座終了後には、学生方から「クレープやゼリーなどのデザート類を作りたい」「高齢者向けの料理のつなぎやとろみ付けに使いたい」といったさまざまなアイデアが挙がり、かんしょでん粉の活用の場がますます広がることを期待する。

 改めて、鹿児島女子短期大学の福司山名誉教授、木戸先生ほか学生方、時村研究専門員をはじめ農産物加工研究指導センターの方々、協力いただいた県下の食品関係事業者の方々に感謝申し上げる。当機構としては、今後も、生産者の方々が安心してでん粉原料用かんしょを作り経営の安定に資することができるよう、交付金交付業務の適切な運営と併せて、このようなかんしょでん粉の生産振興・普及に係る支援について、微力ながら積極的に実施してまいりたい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713