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鹿児島の伝統食「さつまいもでん粉」を次世代へ

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最終更新日:2014年4月10日

鹿児島の伝統食「さつまいもでん粉」を次世代へ

2014年4月

鹿児島女子短期大学 名誉教授 福司山 エツ子

1.鹿児島の伝統食「さつまいもでん粉」

 フランシスコ・ザビエルは、454年前の鹿児島の食事情を次のように記している。「この国では土地が肥えていないので、体のためにぜいたくなものを食べようとしても、豊かな暮らしはできない。家畜を殺して食べたりせず、時々魚を食べ、米と麦などを食べている。彼らが食べる野菜はたくさんあり、少しであるが数種類の果物がある」。

 これは、ヨーロッパと比べて、貧しい鹿児島の食生活を自国に伝えたものである。しかし、ザビエルはこの食生活をけなしてはいない。「この地の人々は不思議なほど健康で老人がたくさんいる。たとえ満足でないとしても自然のままに、わずかな食物で生きてゆけるものだということが、この地の人の生活を見ているとよく分かる」とも述べている。

 江戸時代に渡来したさつまいもは、本県にとっての「救世主」であった。江戸時代になっても、鹿児島の食生活は決してぜいたくでなく、幕末になっても、例えば武士、庶民ともに常食はさつまいも5、アワ3、ソバ1、米1の割合だったと言われている。

 しかし、当時のさつまいもを中心とする食生活は、現在の県民の健康維持につながる原点である。平成22年に本県で作成された「かごしま版食事バランスガイド」でもさつまいもを主食に挙げており、これは全国でも珍しい。

 本県はシラスなどの火山灰性土壌が広く分布し、干ばつ、台風などによる被害が多いという地域特性がある。このような中で、さつまいもは気象災害に強く土地利用型の作物であることから、重要な基幹作物として位置付けられ、平成24年において耕種部門では、米、茶に次ぐ農業産出額となっている。

 また、本県で生産されるさつまいもの4割から、さつまいもでん粉が製造されている。本県では、昭和39年に410のでん粉工場が操業していたが、輸入トウモロコシを原料とする価格の安いコーンスターチの製造が飛躍的に伸張し、糖化製品向け出荷が多くを占めていたさつまいもでん粉のシェアを侵食してきた。このため、国内のでん粉工場は急激に減少し、現在では鹿児島県の18工場でのみ製造されているが、現在も地域経済で重要な地位を占めている。このようにさつまいもでん粉は、大地の恵みを生かした鹿児島の特産品であり、郷土料理では「団子汁」「さつま揚げ」「ピーナツ豆腐」などに伝統的に利用されてきた。

 そして、平成22年には、さつまいも新品種「こなみずき」を原料とした、「こなみずきでん粉」が開発され、本県の伝統食を次世代の食へとつなぐ食品として注目されている。こなみずきでん粉は、幅広い世代にとって調理しやすく摂取しやすい、魅力的な食品であると実感している。高齢者や幼児に人気のこなみずきでん粉を用いた料理を紹介したい。
 

2.親子で楽しむ料理教室

 過日、小学校3年生以下の子どもとその親たちが、地産地消と食育を兼ねた料理に挑戦した。いわゆる親子で楽しむ料理教室である。そこで紹介したレシピは、さつまいもカレーやさつまいもスープなどである。近年、カレーにじゃがいもやさつまいもを入れない家庭も多いと言われている。その理由は「皮剥きができない」や「切れない」かららしい。

 そこで、今回はさつまいもを丸ごと茹でてから皮を除き、切ったり、牛乳とミキサーにかけてスープにした。子どもたちは「自分が全部やった」という達成感とそれなりの自信が得られたのではないか。うれしい光景だった。

 台所教育で必要なのは、まず、段取りと下処理だと思う。下処理からの手順を重視し、効率的な調理をすれば、料理は決して面倒なものではないことが納得できる。

 初めに古新聞や広告紙の上にピーマンを二つ割りにして種を除き、玉ねぎは上下を切り皮を除く、まな板は不要である。廃棄物を水にぬらさず、紙ごと廃棄する。これを私は「エコクッキング」と言う。全体を観察して、母親の所作が少々気になった。仕上げることを急がず、段取りと下処理を整えて子どもとの会話があればさらに料理は楽しくなる。自分の経験を振り返ると、台所の娘との会話ほど楽しい思い出に残るものはない。娘が幼稚園に通っていた頃、台所に立っていると、私の周りをうろちょろしているので「今、ほうれん草を茹でているの。見ていてちょうだい」と声を掛けた。「いくつ数えるまで」と問う娘に、「30数えるまで」と答えた。さらに、だし汁に浸しておくと「どうして煮ないの」と問う。「おだしに浸すからおひたしよ」と会話した。その時のほうれん草のおひたしが最高においしかったのが忘れられない。

3.家庭の食卓で「広い食育」

 幼児期や学童期は食生活の基礎づくりの時期であり、この期の肉体的、精神的発達を十分に理解しながら体験させたり、正しい食習慣と基本的なしつけをしっかりと行うことが重要である。しかし、これらを身に付けることは簡単ではなく、普段行っていることを繰り返し反復することにより自然に習得されるものだ。この時期の体験に裏付けられた達成感や自信などが子どもの安定した自尊感情を高めると言われている。

 食生活の基礎である家庭の食卓は家族のコミュニケーションの場だ。そこで、匂いや香りをかいだり、食材を観察したり、自分の五感で発見することによって、食べることへの関心が高められる。親は、本物に出会った子どもの心を大切にしながら基礎体験を積み重ねさせることにより、意欲や感動が高まり、人としての力を付けていく姿を見守ってほしい。

 食育は、健康や安全を目的とした「狭い食育」であってはならない。誰とどのようにして食べるか、つまり、人と人を結びつける精神的な満足感や心の豊かさを得るための「広い食育」を目指したい。

4.鹿児島の伝統食「さつまいもでん粉」を次世代へ

 その土地に適応した作物を食べることで健康に生きられるという、「身土不二(しんどふじ)」という考え方がある。さつまいもでん粉を使った食文化は、後世に残しておきたい知恵の結晶そのものである。貴重な食文化を次世代の人たちに伝えていく努力をしなければならない。とりわけ、21世紀を生きていく子どもたちに、料理の楽しさと食の大切さを、幼少期からの体験を通して豊かな感性を身に付けさせたい。食育活動を通じて、さつまいもでん粉を使った食文化の担い手となり、継承していきたいものだ。
(プロフィール)
福司山 エツ子(ふくしやま えつこ)
 鹿児島女子短期大学名誉教授。鹿児島女子短期大学教授などを歴任後、平成21年5月より現職。専門分野は「栄養・調理・応用栄養学実習」。最近の研究分野は「茶と食生活」「子どもの食事・高齢者の食事」。かごしま県食育シニアアドバイザー、鹿児島市食育推進計画策定委員長、農林水産省「地産地消の仕事人」など幅広い活動を行う。
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