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地域だより

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最終更新日:2015年3月19日

「馬鈴しょ栽培講習会」の開催について

2015年3月

札幌事務所 坂上 大樹

 公益社団法人北海道馬鈴しょ生産安定基金協会は、網走市と帯広市の2会場で、生産者や農協、農業改良普及センターの職員を対象とした「馬鈴しょ栽培講習会」を開催した。主催者によると、両会場で延べ約350名の参加があった。本講習会は、国産でん粉の生産と需給対策ならびに馬鈴しょ栽培に関する技術講習により、馬鈴しょの高品質かつ合理的な栽培と生産技術の普及・向上を図ることを目的として毎年開催されているもので、今年で22回目を迎える。

 本稿では、2月17日(火)に開催された網走会場での講習会の概要を報告する。

 農林水産省生産局農産部地域作物課の前田生産専門官の講演では、馬鈴しょおよび馬鈴しょでん粉の国内の生産状況、需給動向などの説明のほかに、でん粉の価格調整制度の仕組みを解説した。
前田生産専門官の講演の様子
前田生産専門官の講演の様子
 続いて、地方独立行政法人北海道立総合研究機構農業研究本部北見農業試験場の小野寺主査は、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種「コナユキ」を活用した安定多収栽培法について講演した。「コナユキ」は、「コナフブキ」(広く栽培されている品種であるが、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性が弱)の収穫特性に近いことに加え、でん粉の品質が優れている一方、小粒塊茎が多くなりやすいため、収穫時の掘り残しの懸念がある。このため、多収と小粒による掘り残し減少を両立させるためには、 1)「コナフブキ」よりも株間を3センチメートル広くすること、 2)催芽の有効積算温度を50〜160℃の範囲内(オホーツク沿岸地域では催芽日数7〜23日に相当)にすること、 3)開花期追肥を基本(「コナフブキ」と同様の施肥基準)とすること、により1個重を大きくすることが必要であるとした。

 また、でん粉原料用馬鈴しょについて、平成34年(2022年)までにジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種の普及率100%を目指す北海道の取り組みに貢献するために現在、国や道などの試験研究機関が育種を進めている新品種の特徴などについて紹介した。
小野寺主査の講演の様子
小野寺主査の講演の様子
 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構北海道農業研究センターの中山主任研究員は、ジャガイモモップトップウィルスのまん延防止対策について講演した。ジャガイモモップトップウィルス(以下「ウィルス」という)による病害(ジャガイモ塊茎褐色輪紋病)の発生が日本で初めて確認されたのは1980年(広島県広島市)のことで、国内2例目となる発生は2005年に北海道十勝地方で確認されたという。ウィルスに感染し、この病気を発病すると、塊茎にリング状の褐色の斑紋ができ、生食・加工用途の場合、商品価値の喪失による経済的被害が発生するという。

 ウィルスは、ジャガイモ粉状そうか病菌(カビの一種)によって伝搬され、いったん汚染が広がると根絶が極めて困難になるという。中山主任研究員の研究によると、道内615カ所のほ場を調査した結果、約3割のほ場でウィルスが検出されたという。ウィルスの拡散を防ぐため、酸処理またはサイレージ発酵により、ウィルスを保持したジャガイモ粉状そうか病菌を効率的に殺菌する方法を紹介した。
ジャガイモモップトップウィルスによる塊茎褐色輪紋病を発病したイモの様子(農業・食品産業技術総合研究機構北海道農業研究センター眞岡氏原図(北海道病害虫防除所提供))
ジャガイモモップトップウィルスによる塊茎褐色輪紋病を発病したイモの様子
(農業・食品産業技術総合研究機構北海道農業研究センター眞岡氏原図(北海道病害虫防除所提供))
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