でん粉 でん粉分野の各種業務の情報、情報誌「でん粉情報」の記事、統計資料など

ホーム > でん粉 > 調査報告 > 平成26年度でん粉の需要実態調査の概要
〜コーンスターチ・化工でん粉編〜

平成26年度でん粉の需要実態調査の概要
〜コーンスターチ・化工でん粉編〜

印刷ページ

最終更新日:2015年6月10日

平成26年度でん粉の需要実態調査の概要
〜コーンスターチ・化工でん粉編〜

2015年6月

調査情報部

【要約】

 食品製造企業などを対象にコーンスターチおよび化工でん粉の需要実態を調査したところ、平成26年(1〜12月)の調査対象企業における仕入れ動向に大きな変動はみられなかった。仕入れ価格については、一部の企業で為替の変動による上昇がみられた。

はじめに

 当機構は、でん粉の需要実態を把握するため、でん粉使用企業36社(菓子類、飲料、乳製品、パン、調味料、練製品・珍味などの食品製造企業32社、糖化製品製造企業4社)に対して、平成25年および26年(1〜12月)における国内産ばれいしょでん粉、輸入ばれいしょでん粉、国内産かんしょでん粉、小麦でん粉、コーンスターチ、化工でん粉(でん粉誘導体、デキストリン、酸化でん粉、アルファでん粉)の需要状況について聞き取り調査を実施した。

 調査項目は、使用しているでん粉ごとに、「使用製品」「使用理由」「仕入れ量の動向および今後の見込み」「仕入れ価格の動向」「品質面および調達面に関する評価」などとした。

 本稿では、コーンスターチおよび化工でん粉の調査結果を報告する。

1. コーンスターチの需要実態

 コーンスターチは、平成25でん粉年度(10月〜翌9月)の供給量が226万6000トンと、でん粉供給量の85.9%を占めており、わが国で最も多く供給されているでん粉である。

(1)使用状況
 コーンスターチを使用していたのは、36社のうち23社であり、調査対象企業の6割を占めた。製品分類別の使用企業数(延べ数)は、菓子類8社、パン1社、乳製品1社、飲料2社、調味料4社、練製品2社、その他食品7社であった(図1)。使用製品の種類は表1の通りである。

 使用理由は、「とろみ付けのため」「食感の向上のため」「モチモチした食感を付与するため」「小麦粉と良く混ざるため」「製品の特性に合っているため」「保水のため」などの他、「コスト削減のため」「低価格であるため」など、3社から価格メリットが挙げられた。
 
(2)調達状況
ア. 仕入れ価格の動向

 平成26年(1〜12月)の仕入れ価格の動向を見ると、「やや上昇」5社、「横ばい」16社、「やや下落」2社であった(図2)。上昇した理由として、すべての社が「円安の影響」を挙げた。一方、下落の理由として1社が、「米国のトウモロコシ相場の下落」を挙げた。財務省「貿易統計」によると、同年のコーンスターチ用トウモロコシの輸入価格は、主要輸入先国である米国においてトウモロコシの生産が大幅に増加したことなどから、前年に比べ18.0%安と大幅に下落しているものの、調査対象企業の多くが「横ばい」と回答しており、調査対象企業における仕入れ価格への影響は限定的であったとみられる。
 
イ. 仕入れ量の動向および今後の見込み
(ア)仕入れ量の動向(平成25年、26年)

 使用企業23社のうち、回答があった22社の動向について、26年の仕入れ量を前年と比較すると、「増加」1社、「横ばい」17社、「減少」4社であった(図3)。増加の理由は、「使用製品の生産量の増加」であった。減少の理由は、「使用製品の生産量の減少」3社、「期中に製品規格を変更したため」1社であった。
 
(イ)今後の仕入れ見込み
 今後の仕入れ見込みは、「やや増加」1社、「横ばい」21社、「やや減少」1社であった( 図4)。「やや増加」の理由は、「使用製品の生産量の増加」であった。また、「やや減少」の理由は、「製品規格の変更」によるものであった。
 
(3)品質面および調達面に関する評価
 品質面および調達面は、いずれの企業も「問題ない」との評価であった。

(4)国内産いもでん粉への切り替えの可能性
 コーンスターチから国内産いもでん粉に切り替える意向を持っている企業はなかったが、「価格が折り合えば検討する」3社、「物性が商品特性に合えば検討する」1社との回答があった。また、「物性が違うことから切り替えは行わない」との回答もあり、各企業では製品の特性を引き出すのに最適なでん粉を選択していることから、切り替えが難しいことがうかがえる。

2. 化工でん粉の需要実態

 化工でん粉は、コーンスターチやタピオカでん粉などの天然でん粉に物理的、酵素的または化学的処理を行い、水への溶解性、糊化温度、加熱溶解時粘性の安定性、物性安定性などを改善したもので、さまざまな機能性を増強・付与したものである。本調査では、「でん粉誘導体」「デキストリン」「酸化でん粉」および「アルファでん粉」を対象とした。

(1)でん粉誘導体の需要実態
 でん粉誘導体は、でん粉にリン酸塩などの薬品を作用させたもので、無水酢酸などの薬品を反応させたエステル化でん粉、プロピレンオキサイドなどの薬品を反応させたエーテル化でん粉、複数の官能基を持つ薬品を反応させた架橋でん粉を総称したものであり、食品の他、製紙、繊維などの工業分野でも使用されている。

ア. 使用状況
 でん粉誘導体を使用していたのは、36社のうち11社であった。製品分類別の使用企業数は、菓子類3社、乳製品1社、調味料4社、練製品1社、その他食品2社であった(図5)。使用製品の種類は表2の通りである。

 使用理由は、「焼き菓子のパリッとした食感を出すため」「冷却時の製品の品質を安定させるため」「モチモチした食感を付与するため」「味を安定させるため」「粘度を高めるため」「とろみを継続させるため」「安価であるため」などが挙げられた。
 
 
イ. 調達状況
(ア)製造元

 使用企業11社のうち、回答のあった9社が使用するでん粉誘導体の製造元は、「国内」2社、「海外」8社と、海外が大半を占めていた。なお、1社は国産品と海外品を併用していた。最も多かった輸入先国はタイの4社で、タイの他、米国、オランダ、デンマークなどが挙げられた。財務省「貿易統計」によると、平成26年のでん粉誘導体の輸入先国は、タイ、中国などのアジア諸国の他、米国、豪州、EU諸国など21カ国に及んでおり、でん粉誘導体の調達先が多様化していることが分かる。

(イ)仕入れ価格の動向
 平成26年(1〜12月)の仕入れ価格の動向を見ると、「やや上昇」4社、「横ばい」6社、「やや下落」1社であった(図6)。「やや上昇」の理由として、4社すべてが「為替の変動」を挙げた。多くの企業で輸入品を利用していることから、昨今の円安傾向の影響を大きく受けていることがうかがえる。なお、財務省「貿易統計」によると、同年のでん粉誘導体の輸入価格は、前年比3.7%高とやや上昇している。「やや下落」の理由は、「安価なメーカーからの仕入れを増やしたため」であった。
 
(ウ)仕入れ量の動向および今後の見込み
a. 仕入れ量の動向(平成25、26年)

 使用企業11社のうち、回答があった10社の動向について、26年の仕入れ量を前年と比較したところ、「増加」4社、「横ばい」6社であった(図7)。増加の理由は、すべての企業で「使用製品の生産量の増加」であった。
 
b. 今後の仕入れ見込み
 使用企業11社のうち、回答のあった10社の今後の仕入れ見込みは、「やや増加」1社、「横ばい」9社であった(図8)。「やや増加」の理由は、「使用製品の生産量の増加」であった。
 
ウ. 品質面および調達面に関する評価
 品質面および調達面は、いずれの企業も「問題ない」との評価であった。調達を輸入に頼っていることもあり、「年間契約による数量の確保」や「常時3カ月分の在庫の確保」などにより安定供給に努めているとの声が聞かれた。

(2)デキストリンの需要実態
 デキストリンには、ばい焼デキストリン(酸を加えて加温したもの)と酵素変性デキストリン(酵素を加えて加温させたもの)がある。ばい焼デキストリンは、主に接着剤などの工業製品で使用されており、食品には、酵素変性デキストリンが主に使用されている。

ア. 使用状況
 デキストリンを使用していたのは、36社のうち12社であった。製品分類別の使用企業数(延べ数)は、菓子類4社、飲料2社、調味料1社、その他食品6社であった(図9)。使用製品の種類は表3の通りである。

 使用理由は、「粘度を調整するため」「飲料のコクや飲みごたえ感を出すため」「とろみ付け」「風味を出すため」「食感の調整のため」「保水のため」などが挙げられた。
 
イ. 調達状況
(ア)製造元

 使用企業12社のうち、回答があった9社が使用するデキストリンの製造元は、「国内」6社、「海外」3社となり、国産品を使用する企業が多く見られた。輸入先国は、中国、米国などが挙げられた。国産品を使用する企業の中には、安価な輸入品への切り替えを検討している企業もみられた。

(イ)仕入れ価格の動向
 平成26年(1〜12月)の仕入れ価格の動向を見ると、「やや上昇」3社、「横ばい」8社、「やや下落」1社となった(図10)。「やや上昇」と回答した3社は、「為替の変動」を理由に挙げた。
 
(ウ)仕入れ量の動向および今後の見込み
a. 仕入れ量の動向(平成25、26年)

 使用企業12社のうち、回答があった11社の動向について、26年の仕入れ量を前年と比較したところ、「横ばい」8社、「減少」3社であった(図11)。減少の理由は、「使用製品の生産量の減少」であった。
 
b. 今後の仕入れ見込み
 使用企業12社のうち回答があった11社の今後の仕入れ見込みは、「やや増加」2社、「横ばい」8社、「やや減少」1社であった(図12)。増加の理由は、「使用製品の生産量の増加」2社で、飲料メーカーからは「コーヒー飲料を増産する」との回答があった。一方、減少の理由は、「使用製品の生産量の減少」であった。
 
ウ. 品質面および調達面に関する評価
 品質面および調達面は、いずれの企業も「問題ない」との評価であった。品質面では、「国内産ばれいしょでん粉を原料とするものは品質が高い」といった声があった。また、調達面では、「液状のものの他、在庫用に消費期限の長い粉末状のものも仕入れている」との声があった。

(3)酸化でん粉の需要実態
 でん粉を次亜塩素酸ナトリウムなどで酸化処理したものであり、食品の他、接着剤や洗濯のりなどの工業、繊維分野でも使用されている。

ア. 使用状況
 酸化でん粉を使用していたのは、36社のうち5社であった。製品分類別の使用企業数は、飲料1社、調味料1社、その他食品3社であった(図13)。使用製品の種類は表4の通りである。

 使用理由は、「とろみの調整のため」「粘度を増加させるため」「結着剤として」などが挙げられた。
 
イ. 調達状況
(ア)製造元

 使用企業5社が使用する酸化でん粉の製造元は、「国産」4社、「海外」2社であった。なお、1社が国産品と輸入品を併用していた。輸入先国は2社ともタイであった。

(イ)仕入れ価格の動向
 平成26年(1〜12月)の仕入れ価格の動向を見ると、「やや上昇」2社、「横ばい」3社であった(図14)。上昇の理由として、「為替の変動」が挙げられた。


a. 仕入れ量の動向(平成25、26年)
 使用企業5社のうち、回答があった4社の動向を見ると、「増加」1社、「横ばい」3社であった(図15)。増加の理由は、「使用製品の生産量の増加」であった。



b. 今後の仕入れ見込み
 今後の仕入れ見込みは、いずれの企業も「横ばい」との回答であった。

ウ. 品質面および調達面に関する評価
 品質面および調達面は、いずれの企業も「問題ない」との評価であった。

(4)アルファでん粉の需要実態
 アルファでん粉は、でん粉に水を加えてでん粉乳とし、これを加熱した鉄鋼ロール表面にかけて糊化し、乾燥、粉砕して得られたもので、冷水によく溶け、低粘度で接着力が強いことが特長である。食品の他、養鰻飼料などにも使用されている。

ア. 使用状況
 アルファでん粉を使用していたのは、36社のうち2社であった。製品分類別では、菓子類1社、その他食品(製粉製品)1社であった。

 使用理由は、「商品設計上欠かせない」「冷水でも溶けるため」であった。

イ. 調達状況
(ア)製造元

 使用企業2社のうち、回答があった1社が使用するアルファでん粉は輸入品であり、輸入先国は、米国およびEUであった。

(イ)仕入れ価格の動向
 平成26年(1〜12月)の仕入れ価格の動向を見ると、2社ともに「横ばい」であった。

(ウ)仕入れ量の動向および今後の見込み
a. 仕入れ量の動向(平成25年、26年)

 26年の仕入れ量を前年と比較したところ、「増加」1社、「横ばい」1社であった。増加の理由は、「使用製品の生産量の増加」であった。

b. 今後の仕入れ見込み
 今後の仕入れ見込みについては、2社ともに「横ばい」であった。

ウ. 品質面および調達面に関する評価
 品質面および調達面は、2社ともに「問題ない」との評価であった。

おわりに

 調査対象企業の平成26年の仕入れ動向に大きな変動はみられなかった。一方、コーンスターチや化工でん粉は原料や製品を輸入に頼っていることから、国内産いもでん粉に比べ、仕入れ価格が上昇している社が多かった。

 でん粉は原料作物や化工方法により性質が異なることから、調査対象企業は、生産する製品の特性に最も適したでん粉を選択しており、他のでん粉に切り替える意向を持っていない。品質面や調達面で問題がない限り、他のでん粉への切り替えは行われないとみられる。

 最後に、お忙しい中、本調査にご協力いただいた企業の皆さまに、改めて厚く御礼申し上げます。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713