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難消化性デキストリンの特性と用途

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最終更新日:2015年9月10日

難消化性デキストリンの特性と用途

2015年9月

松谷化学工業株式会社 研究所第一部1グループ
主任研究員 前田 栄彰

【要約】

 難消化性デキストリン(商品名:ファイバーソル2)は、優れた生理機能、物性を持つ水溶性食物繊維である。難消化性デキストリンはその使いやすい物性、安全性、生理機能のエビデンスの豊富さから、わが国のみならず世界中で利用されている。

はじめに

 消化・吸収されない食物繊維は、昔は栄養学的に価値のないものと考えられていたが、近年、さまざまな生理機能を持つことが明らかになってきた。現在では「第六の栄養素」としてその重要性が認識され、日本人の食事摂取基準においても成人について目標量が設定されており、不足しがちな栄養素としての認識が高まっている。

 本稿では、特定保健用食品(トクホ)の30%以上に採用され、新たに始まった機能性表示食品の素材としても注目されている水溶性食物繊維「難消化性デキストリン」(商品名:ファイバーソル2)について、その製法、物性・特徴、生理機能と難消化性デキストリンを利用した商品開発について述べる。

1. 難消化性デキストリン(ファイバーソル2)とは

 難消化性デキストリンは、トウモロコシでん粉に微量の塩酸を添加、加熱して製造した焙焼デキストリンをα‐アミラーゼおよびグルコアミラーゼにより加水分解を行った後、活性炭による脱色、イオン交換樹脂による脱塩などの精製を行い、イオン交換樹脂を用いたクロマト分画装置によりグルコースを分離し、食物繊維画分を分取して得られたものであり、酵素−HPLC法で分析した結果、食物繊維を85〜95%含有するものである。図1に難消化性デキストリンの推定構造を示す。難消化性デキストリンは平均分子量約2000程度のグルカンである。メチル化分析により、難消化性デキストリンは原料でん粉同様に1→4グルコシド結合を主としながら、1→6結合に加えて1→2ならびに1→3結合を持っており、原料でん粉よりも分岐構造が発達していることが明らかとなっている。
 
 難消化性デキストリンは米国食品医薬品局(FDA)より、21CFR,184,1444,マルトデキストリン(α1→4結合を主とするDE(ブドウ糖当量)20未満のでん粉分解物)に合致するとされ、GRAS認証(Generally Recognized As Safe:一般に安全と認められる食品素材)を1990年に得ており、わが国の特定保健用食品の関与成分として1992年に認定された。下痢発症の最大無作用量は男性は体重1キログラム当たり1.0グラム、女性は体重1キログラム当たり1.1グラム以上であり1)、他の難消化性糖質と比べ、下痢発症のリスクは低く、さまざまな安全性試験により十分安全性が確認された食品素材である。近年、食品素材について、食経験が安全性の面から重要視されている。難消化性デキストリンは原料の焙焼デキストリンが食品、医薬品の原料として半世紀以上用いられ、難消化性デキストリンも発売後25年以上経過し世界で使用されており、米国FDAが目安としている広範囲に最低25年、豪州・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)が提唱している2〜3世代、条件次第では10〜20年の条件を満たしていることから2)、十分な食経験のある安心して使用できる素材であると言えよう。

2. 難消化性デキストリンの物性

 難消化性デキストリンは、でん粉の加水分解物であるマルトデキストリンと同様に水に溶けやすく、その水溶液は透明、低粘性で異臭味がなく、わずかに甘味(砂糖の10分の1)を有する。分岐構造が発達していることから、マルトデキストリンと比較して冷蔵や冷凍に耐え、長時間、水溶液で保存しても濁りや沈殿が生じないという特徴を持つ。酸性条件下でもほとんど変化がなく耐酸性に優れ、レトルト処理でも分解されることなく安定であることが確認されている。褐変性については同じDEのマルトデキストリンと同程度であり、グルコースと比較すると褐変しにくい素材であることが分かっている。

3. 難消化性デキストリンの体内動態およびエネルギー値

 経口摂取した難消化性デキストリンのうち、約90%は小腸における消化吸収を免れて大腸に到達し、約半分が腸内細菌に資化(利用)され、残りは糞便とともに排せつされる(図2)。腸内細菌により資化される際に短鎖脂肪酸が生成され、それらは速やかに吸収されエネルギー源となる。難消化性糖質では腸内細菌により資化される割合によってエネルギー値が決定される。難消化性デキストリンのエネルギー値は、ヒト試験によって求められ3)、食物繊維部分のカロリーは1グラム当たり1キロカロリーである(食新発第0217001号:平成15年2月17日による)。
 

4. 難消化性デキストリンの生理機能

 近年、食物繊維の持つ生理機能が考慮されるようになり、コーデックスにおける食物繊維の定義は、「ヒトの小腸の消化酵素で消化されない10個以上の構成単位からなる炭水化物の重合体(3〜9個の重合体を食物繊維に含めるかどうかは各国で判断)で、 1)食品に自然に含まれているもの、 2)物理的、酵素的、化学的手段で得られたもの、 3)化学合成により作られたものである。ただし、 2)と 3)は健康に対して有益な生理学的効果があることを科学的根拠を持って監督官庁に対して証明していること」とされている4)。難消化性デキストリンはコーデックスの定義における 2)のカテゴリーのものであり、特定保健用食品における利用実績や査読付き論文が多数存在することから、十分な科学的根拠を持った素材である。
 この難消化性デキストリンの持つ6つの優れた生理機能を紹介する。

 1つ目は食後の血糖上昇やインスリン分泌を穏やかにする作用である。難消化性デキストリンは炭水化物の多い食事と共に摂取すると、物理的作用による吸収遅延により食後の血糖値の上昇が抑えられ、インスリンの上昇も穏やかになる(図35)。一方で、難消化性デキストリンを空腹時に単独で摂取しても血糖値はほとんど変化せず、低血糖を誘発しないことも確認されている6)
 
 2つ目は食後中性脂肪の上昇を穏やかにする作用である。脂肪を含む食事(ハンバーガーとフライドポテト)と共に難消化性デキストリン配合飲料あるいはプラセボ飲料を摂取させた食事負荷試験の結果を図4に示す。難消化性デキストリン配合飲料では、食後中性脂肪の上昇が抑制されていた7)。メカニズムはin vitroにおける試験から胆汁酸ミセルの安定化、つまり難消化性デキストリンが存在することでミセルへの脂質の取り込み抑制と、ミセルからの脂肪酸、グリセロールの放出抑制であると考えられる8)
 
 3つ目は中性脂肪、コレステロールを低下させる作用である。難消化性デキストリン10グラムを1日3回3カ月間とり続けた結果、高かった中性脂肪と総コレステロールが低下したことが報告されている9)

 4つ目は内臓脂肪の蓄積を低減する効果である。難消化性デキストリン10グラムを1日3回食事と共に12週間とり続けた結果、内臓脂肪面積が減少したことが報告されている10)

 5つ目はおなかの調子を整える整腸作用である。一般的に食物繊維は便秘を改善することが知られているが、水溶性食物繊維である難消化性デキストリンも便秘を改善する作用を有する(図511)。また、高齢者では食事量の減少、運動不足、筋力の衰えなどの理由から、便秘になる方が多い。難消化性デキストリンを還元した還元難消化性デキストリンの高齢者に対する有効性について、特別養護老人ホームにおいて評価したところ、排便回数や排便日数の増加、便の性状の改善効果が認められた12)。高齢者の排便を改善することは、本人のためのみならず、介護者の負担軽減にもつながることから、今後ますます重要であると考える。さらに、難消化性デキストリンは腸内でビフィズス菌などの善玉菌を増やし、腸内菌叢(きんそう)を改善し、下痢を改善できることも明らかとなっている13)
 
 6つ目はミネラル吸収促進作用である。食物繊維はミネラルの吸収を阻害すると認識されてきたが、低粘度で腸内細菌に利用されやすい難消化性デキストリンは、大腸でミネラルの吸収を促進することが明らかとされている14)

 以上6つの生理機能に加え、最近では難消化性デキストリンの持つ免疫機能に焦点を当てた研究が精力的になされている。

5. 難消化性デキストリンを利用した商品開発

 難消化性デキストリンを利用したさまざまな商品が開発されている。それらは大きく 1)食物繊維素材として、 2)物性を利用して、 3)生理機能を利用しての3つに分類される。

(1)食物繊維素材として
 難消化性デキストリンは85〜95%の食物繊維を含むため、食物繊維としての利用が可能である。消費者庁が定める食品表示基準制度において、食物繊維入りと表示するためには、食品100グラム当たり3グラム(飲料の場合は100ミリリットル当たり1.5グラム)、食物繊維高含有と表示するためには、食品100グラム当たり6グラム(飲料の場合は100ミリリットル当たり3グラム)の食物繊維の含有が必要である。難消化性デキストリンはあらゆる加工食品に配合しやすい物性であるため、食物繊維入り表示をするのに必要な量を容易に添加可能である。

(2)物性を利用して
 近年、メタボリックシンドロームや生活習慣病の増加に伴い、摂取カロリーや糖質を減らしたいという消費者の要望が強くなっており、カロリーゼロ、糖質ゼロや低糖質を訴求した商品の開発が盛んである。カロリーや糖質を抑えた食品は食感や味質が劣ることが多く、従来のおいしさを維持することは困難であるが、難消化性デキストリンを利用することで、カロリーや糖質を抑えながらもおいしい食品を実現することが可能となる。

 難消化性デキストリンは脂肪と類似のテクスチャーを有するため、アイスクリーム、カレールウ、ソーセージなどで脂肪代替機能を持つ低カロリーデキストリンとしての利用が可能である。また、カロリーオフ、ノンカロリー飲料は高甘味度甘味料を用いることでカロリー低減を図っているが、高甘味度甘味料は特有の後味があり、味切れが悪いことが問題となる場合がある。難消化性デキストリンを添加することで、甘みの強さがピークに達する時間が前方に移行し、まろやかな甘味となるなど、優れた味質改善効果を得られる。

 さらに、コラーゲンペプチドのような独特の風味のマスキングなどにもよく利用されている。アルコール飲料においては、難消化性デキストリンは麦芽由来の酵素や酵母による利用を受けにくいという特徴があるため、糖質ゼロを実現したアルコール飲料などの設計が可能となる。通常、低カロリーのビールなどは水っぽいものになりがちであるが、醸造原料として難消化性デキストリンを使用すると非醗酵成分がもたらすコク味を付与することができる。さらに、二次的な効果として、泡がクリーミーになり口当たりが向上する。

(3)生理機能を利用して
 難消化性デキストリンを関与成分とし、整腸作用を表示した特定保健用食品は1992年の素材認定以来、175品目に上る。「血糖値が気になる方に適した特定保健用食品」として許可を取得しているものは182品目に上る(2015年7月現在)。これらの実績を基に、整腸と血糖のいずれにおいても規格基準型特定保健用食品に利用可能な成分として認められており、添加量の目安は、整腸では1日当たり3〜8グラム、血糖では1食当たり4〜6グラムである。2007年から難消化性デキストリンが食事由来の脂質の吸収を抑えることが明らかとなり、その作用を利用した特定保健用食品が2012年から販売されている。例えば、「脂肪の吸収を抑える トクホコーラ」で話題の飲料は、難消化性デキストリンを関与成分としている。

 さらに、本年より始まった機能性食品表示においても、これまでの豊富なエビデンスを基に、弊社の研究レビューを利用した機能性表示が整腸作用、食後血糖上昇抑制作用および食後中性脂肪上昇抑制作用で可能である(※弊社と所定の手続きを経る必要があります)。

おわりに

 今回ご紹介した難消化性デキストリン「ファイバーソル2」だけでなく、弊社には水不溶性の食物繊維レジスタントスターチ、希少糖含有シロップ「レアシュガースウィート」など、健康で豊かな食生活に寄与する商品開発に役立つ食品素材がある。今後もより良い素材をお客様に提供できるよう、さらなる素材開発、用途開発に励みたい。

参考文献
1)J Nutr Sci Vitaminol 59 No. 4, 352-357(2013)
2)消費者庁 食品の新たな機能性表示制度に関する検討会報告書 p8 平成26年7月30日
3)Am J Clin Nutr Vol. 83, 1321-1330(2006)
4)Codex Alimentarius Commission. Guidelines on Nutrition Labelling. CAC/GL2-1985,(2013)
5)J. Nutritional Food 5(2), 31 -39(2002)
6)糖尿病. 42(1), 61-65(1999)
7)Eur J Nutr. 46, 133-138(2007)
8)J Health Science. 55(5), 838-844(2009)
9)日本食物繊維研究会誌. 4(2), 59-65(2000)
10)肥満研究. 13(1), 34-41(2007)
11)健康・栄養食品研究. 3(4), 31-38(2000)
12)前嶋さゆり,第21回全国介護老人保健施設大会発表要旨(2010)
13)第28回日本臨床栄養学会総会 講演要旨集225(2008)
14)Eur J Nutr. 49, 165-171(2010)
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