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でん粉原料用ばれいしょ「コナユキ」の安定多収栽培法

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最終更新日:2015年11月10日

でん粉原料用ばれいしょ「コナユキ」の安定多収栽培法

2015年11月

地方独立行政法人北海道立総合研究機構
農業研究本部 北見農業試験場 研究部 生産環境グループ
主査(栽培環境) 小野寺 政行

【要約】

 「コナユキ」はジャガイモシストセンチュウ抵抗性を有し、でん粉品質に優れる一方、優良品種の中では小粒なため、くずいも(20グラム未満)の多発が懸念される。これを改善するためには、催芽期間を7日間以上でできるだけ短い日数(芽が紫色で2〜3ミリメートルの長さとなる程度)とし、株間を現行主力品種「コナフブキ」より3センチメートル程度広く設定し、「コナフブキ」に準じた窒素施肥法(施肥標準、土壌診断に基づく施肥対応、追肥対応)を適用する。これらにより、くずいも数の抑制とでん粉収量の増加が期待できる。

はじめに

 北海道のでん粉原料用ばれいしょの作付面積は減少傾向で推移しているが、平成25年産の約1万5900ヘクタールのうち8割以上の約1万3600ヘクタールは、高でん粉価で熟期が中晩生の品種「コナフブキ」で占められている。

 しかし、「コナフブキ」はばれいしょの重要病害虫であるジャガイモシストセンチュウ(以下「シストセンチュウ」という)に対する抵抗性がない。このシストセンチュウはばれいしょの収量を最大で半減させるなど深刻な被害を引き起こす。北海道内ではすでに51市町村で発生が確認されており、発生確認面積も拡大傾向にあるため、ばれいしょ安定生産の面からシストセンチュウ抵抗性を有する品種(以下「抵抗性品種」という)への転換が課題となっている。

 一方、「コナユキ」は平成22年に北海道の優良品種となったでん粉原料用品種で、でん粉品質が「紅丸」並みに優れる特性を持つ。また、「コナフブキ」と同じ熟期の中晩生で、シストセンチュウの抵抗性を有することから、シストセンチュウ発生地域およびその周辺の「コナフブキ」の一部に置き換えることにより、北海道産ばれいしょでん粉の需要拡大と安定生産に寄与することが期待されている。

 しかし、「コナユキ」は優良品種の中でも小粒なため、生産現場では「くずいも(20グラム未満)」の収穫時掘り残しによる栽培翌年の野良生え増加が懸念されている。また、くずいもが多いことは収量の不安定要因に関与している可能性があり、この問題を改善し安定多収化を図ることが強く望まれている。野良生え対策としては土壌凍結を発達させて野良いもを死滅させる雪割り技術が普及し始めているが、収量性も考慮したくずいもが生じにくい栽培法については知見が不足している。

 そこで、塊茎(いも)の大きさに影響する要因として栽植方法(種いもの催芽期間、株間)と窒素施肥法に着目して、これらの最適化と組み合わせにより、くずいもを減らし安定多収を実現できる栽培法を開発したので紹介する。

1. 試験方法

 平成24〜26年の3カ年にわたり、北見農業試験場(以下「北見農試」という)およびオホーツク管内の3市町(小清水町、斜里町、網走市)の現地ほ場において、栽植方法(種いもの催芽期間、株間)と窒素施肥法(追肥対応)に関する試験を行った。

 種いも催芽期間は各年4水準の期間(1〜28日間)を設け、主に北見農試で検討した。株間は北見農試では標準の30センチメートルと疎植の36、40センチメートルの3水準について検討した。現地ほ場では標準の30センチメートルに対して疎植の33センチメートルあるいは36センチメートルについて比較を行った。

 窒素施肥法に関する試験は、「コナフブキ」で推奨されている施肥法の適用性について主に検討するとともに、増追肥時期(基肥増肥、開花期追肥、終花期追肥)の影響も検討した。なお、供試土壌は火山性土、低地土、泥炭土でオホーツク管内のでん粉原料用ばれいしょの栽培ほ場の土壌タイプをほぼ網羅した。

2. くずいも数と収量構成要素の関係

 「コナユキ」のくずいも数と収量構成要素の関係を検討したところ、くずいも数は上いも数(いも重20グラム以上)が多いほど(図1)、また上いも1個重が小さいほど(図2)多くなる。上いも数と密接な関係があることが知られている株当たり茎数について見ると、茎数が多いほどくずいも数が多い傾向がある(図3)。

 これらのことから、「コナユキ」のでん粉収量を維持しながら、くずいも数を減らすには、茎数および着生する上いも数を過剰とせず、上いも1個重を大きくすることが重要である。
 

3. 種いもの催芽とくずいも数

 浴光催芽は、主に生食用や加工用で用いられる生育促進技術である。貯蔵していた種いもを出庫した後、外気温にさらすことによって、休眠を覚まして芽の伸長を促進する。その一方で、光を当てることによって、芽の伸び過ぎを抑え茎葉への分化を促し、植え付け時に脱落しにくい丈夫な芽をつくる。浴光催芽を十分に行った種いもは、初期生育が促進され、株当たり茎数が多くなる。一方、「コナユキ」はもともと「コナフブキ」より初期生育が良い上に、茎数が多い。このため「コナユキ」はむしろ催芽期間を短くした方が、 1)茎数を抑制し、 2)着生する上いも数を少なくでき、その結果くずいも数を減らせる可能性がある。

 そこで催芽期間の有効積算温度(以下「積算温度」という、気温4.0℃を基準とした積算値)と収量構成要素(株当たり茎数)およびくずいも数との関係を検討した。

 その結果、積算温度が120℃未満では、株当たり茎数は少ない値でほぼ安定した(図4)。一方、平成24、26年では、積算温度160℃以上で株当たり茎数が多い傾向が認められた(平成26年の株当たり茎数がやや多いのは、全粒種いもを用いたため)。

 次に、積算温度とくずいも数との関係を見ると、積算温度が170℃を超えると、くずいも数は多くなる傾向があった(図5)。これは、茎数の増加で上いも数が多くなったためと考えられる。一方、積算温度50℃未満でもくずいも数は多くなった。これは、催芽期間が短いことで初期生育ひいては塊茎肥大の開始が遅れ、小粒ないも数が多くなったためと考えられる。

 これらの結果を整理すると、積算温度が50℃未満ではくずいも数が、また160〜170℃以上ではくずいも数および茎数が顕著に多い傾向を示すことから、望ましい催芽期間の積算温度を50〜160℃と設定した。

 この積算温度の範囲で催芽した種いもの芽は、植え付け時には紫色に着色しており、芽の長さが2〜3ミリメートル程度である(写真23)。なお、積算温度が50℃未満の種いもは芽が淡い紫色で短く(写真1)、積算温度が160℃以上の種いもは芽が5ミリメートル以上伸びているものが多い(写真4)。

 積算温度50〜160℃に相当する催芽期間はオホーツク沿岸地域の小清水町を例にとると、7〜23日程度が目安となる(表1)。ただし実際には、植え付け作業が降雨などの影響で遅延し、結果として催芽期間が長くなる場合がある。このため、催芽期間の長期化などで生じるくずいも数の増加リスク回避には、前述の催芽期間の範囲の中で、できるだけ短い日数とすることが望ましい。
 
 

4. 株間設定によるくずいも数軽減

 一般的に、植え付けの株間を広げると、 1)面積当たりの茎数が減少し、 2)着生する面積当たりの上いも数が減少するため、 3)上いも1個重は大きくなる。一方、栽植株数の低下により、でん粉収量が減少する懸念も生じる。

 北見農試における2カ年(平成24、25年)の結果では、株間を広げることで上記 1)、 2)、 3)の傾向が「コナユキ」、「コナフブキ」に共通して認められた(表2)。しかし、でん粉収量については、「コナフブキ」が株間30センチメートルで最も多かったのに対し、「コナユキ」では株間36センチメートルが最大であった。また、「コナフブキ」のくずいも数が株間40センチメートルで最も少なかったのに対し、「コナユキ」は株間36センチメートルで最も少なかった。「コナユキ」の株間36センチメートルと40センチメートルを比べると、株間40センチメートルでは上いも1個重の増加程度がわずかであることから、大いもが増える一方で、くずいも数も多くなったと考えられる。

 このように、北見農試の結果では、「コナユキ」は株間による収量反応が「コナフブキ」と異なり、「コナユキ」は「コナフブキ」の標準的な株間である30センチメートルよりやや広い株間が適することが示された。

 一方、網走市における結果では、平成24年には株間36センチメートルが株間30センチメートルよりくずいも数が少なく、上いも1個重はやや大きいものの、栽植株数が少ない影響ででん粉収量は少なかった(表3)。これを受けて平成25年は株間30センチメートルと33センチメートルを比較したところ、株間33センチメートルではでん粉収量は同等で、くずいも数は株間30センチメートルより少なかった。

 以上のことから、「コナユキ」は「コナフブキ」の慣行の株間より3センチメートル程度広くすると、でん粉収量を維持しながら、くずいも数を減らすことができることが示唆された。
 

5. 安定多収のための窒素施肥法

 「コナユキ」の窒素吸収過程は同一の気象・土壌条件で栽培した「コナフブキ」とほぼ同等であった(図6)。このことから、「コナユキ」に対する窒素施肥量(施肥標準と土壌診断に基づく施肥対応から求める施肥量)は「コナフブキ」と同程度で十分と判断した。

 そこで、「コナフブキ」で推奨される窒素追肥の効果を「コナユキ」で検討した。なお、「コナフブキ」では、開花期の窒素追肥(10アール当たり4キログラム施用)は普通掘りのでん粉収量を5〜15%高める効果がある(北海道施肥ガイド2010)。

 多様な地域・土壌条件で、開花期に10アール当たり窒素4キログラムを追肥した「コナユキ」は標肥区(追肥なし)に比べ、普通掘りでは上いも数とでん粉価は同等であるが、上いも収量の増加によりでん粉収量は9事例の平均で5%増加し、くずいも数は同等以下であった(表4)。一方、早掘りの場合は増収効果が認められないものの、上いも数を増やさずに上いも1個重が大きくなることから、くずいも数軽減効果が認められた。

 これらのことから、くずいも数を増やさずでん粉収量を増加させる「コナユキ」の窒素施肥法には「コナフブキ」の施肥基準(施肥標準、土壌診断に基づく施肥対応、追肥対応)を適用できる。なお、開花期以外の増追肥(基肥増肥、終花期追肥)はくずいも数を増やす恐れがあるため、「コナフブキ」と同様に開花期追肥を基本とする。また、泥炭土においては施肥反応が鈍いことから、「コナフブキ」と同様に施肥標準を遵守する施肥法(土壌診断に基づく施肥対応と追肥対応を行わない)が適していると判断された。
 

6. 催芽期間、株間設定、窒素施肥法の組み合わせによる安定多収とくずいも数軽減効果

 催芽期間と株間設定の最適化あるいは催芽期間と窒素施肥法の最適化による組み合わせ効果を検証した。

 その結果、催芽期間と株間設定を最適化した改善区(積算温度109℃、株間36センチメートル)は、未改善区(積算温度24℃・株間30センチメートル)に比べでん粉収量は有意に増加し、くずいも数も少ない傾向であった(図7)。また、催芽期間と窒素施肥法を最適化した改善区(積算温度50〜160℃・開花期追肥)は、未改善区(積算温度50℃未満、160℃以上・標肥)に比べ2カ年ともでん粉収量が有意に増加し、くずいも数も少ない傾向であった(図7)。特に、催芽期間を十分設けなかった未改善区と比べると、改善区のでん粉収量は12〜16%増収し、くずいも数は22〜33%減少した。これらのことから、栽植法と窒素施肥法の組み合わせ効果が確認された。
 

おわりに

 北海道では、これまでもでん粉原料用のシストセンチュウ抵抗性品種が育成され、優良品種に認定されているが、いもの生育速度やでん粉収量などが「コナフブキ」に劣るなどの理由から、広く普及するまでに至っていないのが現状であった。しかし、これらの欠点を改善した有望な品種が「コナユキ」をはじめとし、次々と育成され、優良品種として認定されている。

 今回紹介した安定多収栽培法を活用すると、「コナユキ」の収量性は普通掘りだけではなく秋まき小麦の前作として早掘りする場合でも「コナフブキ」並以上のでん粉収量を確保できる。今回の成果がシストセンチュウ抵抗性品種の普及拡大とばれいしょでん粉の生産拡大・安定生産の一助になれば幸いである。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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