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かんしょの機械化を取り巻く状況

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最終更新日:2016年3月10日

かんしょの機械化を取り巻く状況

2016年3月

鹿児島県農業開発総合センター大隅支場 農機研究室長 大村 幸次

 近年の鹿児島県のかんしょ栽培面積は約1万4000ヘクタールで推移し、そのうちでん粉原料用が約4割、焼酎用が4割、青果用・加工用が2割程度である。かんしょの機械化については、それぞれの用途に合わせた機械化体系が定着している。かつて大きなネックとなっていた畦立てや収穫などの重労働作業については、乗用トラクタ用の畦立機や数種の収穫機の実用化、マルチフィルムや肥料・農薬など各種資材の発達とともに飛躍的に進んできている。労働時間も機械化による短縮効果が顕著に現れ、でん粉原料用の場合で1989年に10アール当たり77時間を要していたものが、2008年の先進農家体系では同35時間、試験段階での最新省力化体系では同26時間となっている。しかしながら、育苗に係る作業や植え付けに係る作業はいまだ人力に依存するものが多く、全体としては完全機械化までには至っていないのが現状である(表1図1)。
 

1. 育苗・採苗

 鹿児島県における一般的な育苗は1月ごろから開始され、ハウスや簡易トンネルを利用する形態が多いが、近年は1戸当たりの栽培面積拡大により、大量増殖が可能なハウス育苗にその主流が移行しつつある。本ぽ作業の機械化が進む中で、育苗と採苗に係る機械化はほとんど進んでいないのが実態で、その労働時間は本ぽ10アール相当分の苗を確保するのに16.5時間を要する。これは現在のかんしょ栽培に係る全労働時間の約5割を占める(表1)。

 今後の機械化を進める上で避けて通れない課題としては、いかにして均一な苗を大量生産し、機械で本ぽに効率的に移植できるかが鍵となる。かつて、水稲は成苗移植を前提とした折衷苗代などが主流だったが、現在は田植機利用を前提とした箱育苗による稚苗移植が主流で、これにより機械化が大きく前進した。かんしょにおいても水稲と同様に、育苗の工程から本ぽ植え付け工程まで機械化を前提とした総合的な技術体系の確立が必要な時代に来ている。これらの問題に対処すべく、鹿児島県農業開発総合センターでは新たな育苗法について検討しているのでその一端を図2に示す。この方法の大きな特徴は、苗床を造成する苗床造成機を用いて種いもを伏せ込むベッドを成形しながら両側に畦波シートで簡易な防壁を設けることにある。これにより、苗が倒伏しにくくなり曲がりがなく真っ直ぐで揃いが良い苗が確保しやすくなり、生育制御も容易になる。また、一般的に種いもは横伏せ込みが行われるが、頂芽を上にして垂直方向に伏せ込む縦伏せ込みを行うことで密植が可能になり発芽も一定程度揃う。
 

2. 畦立作業

 鹿児島県におけるかんしょの植え付けは、一部を除き霜害が少なくなる3月上旬ごろに始まり7月中旬ごろまで続く。この期間中の本ぽ畦立て作業の山場は3月上旬〜5月で、苗の植え付けまでに 1)耕うん、 2)土壌消毒、 3)鎮圧、 4)堆肥散布、 5)肥料散布、 6)施薬、 7)耕うん整地、 8)畦立マルチ被覆の作業を短期間に行わなければならない。個々生産者の規模拡大が進む中で、本ぽ植え付けまでの多くの作業は天候に左右されやすく、作業遅延による収量の低下や労働負担の増加が課題とされ、近年はいくつかの作業を同時工程化し、作業の省力・効率化を図る作業機の実用化と普及が進んでいる(図3図4図5)。
 

3. 植え付け

 かんしょの植え付けは、いまだ人力に依存しており、腰を曲げた姿勢で長時間に及ぶ作業であることから機械化が強く望まれている。現在、慣行苗に対応するかんしょ挿苗機が市販されているが(図6)、不揃いな苗が多い場合はその能力が発揮できない。苗を選別して上手に利用している生産者もいるが、全体的な普及・利用面積は数%にとどまっている。これらの課題を解決すべく、鹿児島県農業開発総合センターにおいては、国の研究機関や農機製造企業と連携しながら、茎長15センチメートル程度の「小苗」を使った育苗・移植技術の開発・実用化を進めている。
 

4. 肥培管理

 本ぽ植え付け後の管理作業は、マルチ栽培の場合、茎葉が繁茂するまでの期間は畦間(通路)の除草、茎葉が繁茂した後は病害虫防除作業が主となる。裸地栽培では、除草作業や防除作業に加えて茎葉が繁茂するまでの期間に数回の培土作業を行う。マルチ栽培における畦間の除草剤散布は、背負い式噴霧機が主流であるが、近年は歩行用畦間除草剤散布機も一部利用されている(図7)。生育中の薬剤散布については、動力噴霧機、ブームスプレーヤ、乗用管理機などが利用されている(図8)。
 

5. 収穫

(1)茎葉処理、マルチフィルム除去
 かんしょの収穫作業は、茎葉処理、マルチフィルム除去、掘り取りの順に行われ、近年はそれぞれの工程に対応する作業機械の普及が進んでいる。茎葉はその大半がフレールモアタイプの茎葉処理機で細断処理され、歩行用または乗用トラクタ用のいずれかが利用されている(図9)。茎葉処理後は、マルチフィルムを剥ぎ取り回収を行う。回収を行う作業機械は剥取回収機、人力で剥ぎ取った後回収する定置式の巻取機などが利用されている(図11図12)。

 また、かつてかんしょ茎葉は家畜の粗飼料として利用されていたが、近年は生産者の規模拡大とともにその利用はほとんどない。この理由として、茎葉収穫作業の機械化が進んでいないことが大きな要因となっていることから、現在「かんしょ茎葉収穫機」の実用化と普及に向けた取り組みなども進めている(図10)。
 
(2)塊根掘り取り
 かんしょの掘取機は他のいも類の掘り取りと併用されるものが多く、掘り取り部の構造と土のふるい分け法や選別法によって、分離形と分離調製形に大別される。分離形は掘り取って土壌を分離するのみで、塊根の回収は人力で行うのに対して、分離調製形は土壌分離から塊根の回収までを行う(図13)。生産現場においては1980年代まで、分離形の簡易掘取機が主流であったが、近年は分離調製形の自走式ハーベスタの実用化により、大幅な省力化が可能となってきている。また畦幅や植え付け株間などの栽培様式が、青果用、加工用(焼酎用)、でん粉原料用で異なることから、それぞれの掘取機の特徴を生かした利用が行われている(表2図14〜17)。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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