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平成27年産でん粉原料用いも交付金の交付実績などについて

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最終更新日:2016年6月10日

平成27年産でん粉原料用いも交付金の交付実績などについて

2016年6月

特産業務部でん粉原料課

【要約】

 平成27年産においては、でん粉原料用いも交付金の交付対象となったでん粉原料用かんしょの収穫面積が前年産に比べ8.2%増加したものの、交付金の交付対象となったでん粉原料用かんしょの数量は6月から8月にかけての低温・多雨と日射量不足の影響を受け、前年産に比べ7.3%減少の11万5503トンとなった。これに伴い、でん粉原料用いも交付金の交付決定額も30億297万7000円と前年産に比べ7.3%の減少となった。  

 また、交付金の交付が決定した対象生産者の総数は前年産と比べ5.1%減少の5401人となり、交付金の交付が決定した対象生産者1人当たりの交付対象収穫面積は前年産と比べ14.1%増加の105アールとなった。

はじめに

 当機構では「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」に基づき、でん粉原料用かんしょの生産者に対し、その生産コストのうち、かんしょでん粉の原料代としてでん粉製造事業者から生産者に支払われる額では賄えない部分について、経営安定対策としてでん粉原料用いも交付金(以下「交付金」という)を交付している。
 本稿では、平成27年産の交付金の交付実績などについて、その概要を報告する。
 

1. 交付金の交付実績

 27年産のでん粉原料用かんしょは、交付金の交付対象となった収穫面積(以下「交付対象収穫面積」という)が前年産に比べ8.2%(429ヘクタール)増加した一方で、6月から8月にかけての天候不順の影響により、交付金の交付対象となったでん粉原料用かんしょの数量(以下「交付決定数量」という)は前年産に比べ7.3%減少した。

 鹿児島県内の地域別の交付対象収穫面積としては最大となった大隅半島(2364ヘクタール)でも、低温・多雨の影響により地上部の茎葉の生育の遅れが目立った。平成27年11月17日に鹿児島県農業開発総合センター大隅支場園芸作物研究室が発表した「平成27年度サツマイモ生育概況」によると、当該期間中の平均気温は平年比で6月がマイナス1.2度、7月はマイナス2.1度、8月もマイナス1.3度となり、降水量も平年比で6月が249%、7月は180%、8月も157%に達した。特に集中的な連続降雨に見舞われた6月には、無マルチの畦の一部が崩壊して根の一部が露出する被害も見られた。同月は、日照時間も平年の94%にとどまった。

 このような天候上の影響を受け、27年産の交付決定数量は前年産と比べ7.3%減少の11万5503トンとなり、交付金の交付決定額(以下「交付決定額」という)は前年産と比べ7.3%減少の30億297万7000円となった(表1)。
 
 

2. 交付金の交付決定者数および交付対象収穫面積

(1)27年産の交付金の交付が決定した対象生産者(以下「交付決定者」という)の数は、前年産(5691人)と比べ5.1%(290人)減少の5401人となった(表2)。
 
 
 交付決定者数は、制度が開始された19年産の1万537人から毎年連続で減少している。23年産から25年産にかけては前年産に比べほぼ1割前後の減少が続いていたが、26年産は3.9%の減少率(減少人数234人)にとどまった。27年産においては再び、前年産より1.2ポイント増加の5.1%と減少率が拡大に転じたものの、減少人数としては過去2番目に少ない290人の減少となった。

(2)27年産の交付対象収穫面積は、前年産と比べ8.2%増加の5681ヘクタールとなった(表3)。
 
 
 交付対象収穫面積は、制度が開始された19年産の6663ヘクタールから22年産には制度発足以降最高の6972ヘクタールに達したが、23年産以降は4年連続で減少し、26年産には最低の5252ヘクタール(19年産比で21.2%減少)に減少した。

 鹿児島県農産園芸課の調べによると、焼酎原料用かんしょの作付面積が23年産の5400ヘクタールから26年産の5723ヘクタールへとおおむね増加傾向にあり、離農などに加え、このような傾向も23年産以降の交付対象収穫面積の減少に影響しているものと思われる。

 一転して、27年産の交付対象収穫面積は5681ヘクタールと前年産と比べ8.2%も増加し、19年産比の減少率を14.7%にまで押し戻した。

 一方、交付決定者1人当たりの交付対象収穫面積は、(1)で見たような交付決定者数の減少傾向を背景として、19年産(63アール)以降ほぼ毎年拡大している。27年産の交付決定者1人当たりの交付対象収穫面積は過去最大の105アール(19年産比で66.7%増加)に達し、26年産の92アールを13アール上回った。
 

3. 収穫面積規模別の交付決定者数および交付対象収穫面積

(1)収穫面積規模別の交付決定者数

 27年産の交付決定者数は5401人で、このうち交付対象収穫面積が0.5ヘクタール未満の交付決定者数は1715人と交付決定者全体(5401人)の31.8%を占め、1ヘクタール以上の交付決定者数は1681人と31.1%を占めている(表4)。

 交付決定者の総数は、制度が開始された19年産の1万537人から5割近く減少しているにもかかわらず、1ヘクタール以上の交付決定者数は19年産から1割しか減少しておらず、ほぼ横ばいで推移している。一方で、0.5ヘクタール以上1ヘクタール未満の交付決定者数は19年産から3割近く減少し、0.5ヘクタール未満の交付決定者は19年産の5603人から7割近くも減少している。

 この結果、交付決定者の構成についても、19年産と比べ、過半を占めていた0.5ヘクタール未満の者が31.8%へ減少し、1ヘクタール以上の者が17.9%から31.1%を占めるようになるなど、徐々に規模の大きな者のシェアが拡大してきた。
 
 

(2)収穫面積規模別の交付対象収穫面積

 27年産の交付対象収穫面積(5681ヘクタール)のうち、交付対象収穫面積が0.5ヘクタール未満の交付決定者の交付対象収穫面積の合計は384ヘクタールと全体の6.8%にとどまる一方、交付対象収穫面積が1ヘクタール以上の交付決定者の交付対象収穫面積の合計は3961ヘクタールと全体の69.7%を占める(表5)。

 19年産と比べると、交付対象収穫面積が0.5ヘクタール未満の交付決定者の交付対象収穫面積の合計が全体に占める割合は16.8%から6.8%へと10ポイント減少しているのに対し、交付対象収穫面積が1ヘクタール以上の生産者の収穫面積の合計が全体に占める割合は52.4%から69.7%へと17.3ポイント増加しており、徐々に規模拡大が進んでいることが分かる。前年産と比べた増加率は4.8ポイントで、22年産の5.4ポイントに次いで過去2番目に大きい伸びとなった。
 
 

4. 要件区分別の交付決定者数および交付対象収穫面積

 交付金の対象となるでん粉原料用いも生産者(以下「対象生産者」という)の要件の区分(以下「要件区分」という)は、以下のとおりである。

B−1:認定農業者、認定新規就農者、特定農業団体、または、これと同様の要件を満たす組織
B−2:収穫面積の合計が0.5ヘクタール以上である対象生産者(法人を含む)、または、収穫面積の合計が3.5ヘクタール以上である協業組織
B−3:基幹作業(育苗、耕起・整地、畝立て・マルチ、植付け、防除、収穫)の面積の合計が3.5ヘクタール以上である共同利用組織の構成員または組合員
B−4:B−1、B−2の生産者または基幹作業面積の合計が3.5ヘクタール以上である受託組織、サービス事業体などに基幹作業を委託している者

 27年産の要件区分別の交付決定者数は、B−1が774人で全体の14.3%、B−2が3736人で同69.2%、B−3が155人で同2.9%、B−4が736人で同13.6%となっている。
 
 全体に占める割合を前年産と比べると、B−1が1.1ポイントの増加である一方で、B−2が0.5ポイントの減少、B−3が0.1ポイントの減少、B−4が0.6ポイントの減少となっている(表6)。

 また、B−5の要件が廃止された22年産(注)と比べると、B−1が12.1%から14.3%、B−2が66.7%から69.2%へと増加している一方で、B−3が3.5%から2.9%、B−4が17.7%から13.6%へと減少している。

 27年産の要件区分別の交付対象収穫面積は、B−1が1243ヘクタールで全体の21.9%、B−2が4200ヘクタールで同73.9%、B−3が34ヘクタールで同0.6%、B−4が204ヘクタールで同3.6%となっており、B−1とB−2を合わせると全体(5681ヘクタール)の96%を占めている。

(注)22年産から、受託組織などが存在しない地域における特例として認められていたB−5(担い手の育成を目的とする組織の参加者)の要件が廃止され、対象生産者が将来にわたって安定的な生産ができるよう、B−3やB−4の対象要件に係る基幹作業の追加などの見直しが行われた。
 

 
 

5. 年代別の交付決定者数

 27年産の交付決定者数を年代別に見ると、40代以下が580人で全体の10.7%、50代が1043人で同19.3%、60代が1529人で同28.3%、70代が1362人で同25.2%、80代以上が780人で、同14.4%となっている(表7)。

 前年産と比べると、40代以下が0.3ポイントの減少、50代が0.4ポイントの減少、60代が1.9ポイントの増加、70代が3.1ポイントの減少、80代以上が1.5ポイントの増加となっている。

 19年産以降、特に40代以下の若年層の構成比が減少する一方で、60代の割合が高くなっていることが見て取れる。また、70代の人数、構成比の連年の減少も顕著であり、この世代における生産離脱も多くなっていることをうかがわせる。

 法人数は、19年産以降、増加傾向にあり、27年産には107者となっており、経営体としての基盤強化の取り組みが一部では進んでいることがうかがえる。
 
 

おわりに

 でん粉原料用かんしょについては、高齢化などによる生産者数および収穫面積の減少に伴い生産量も減少傾向にあるが、生産回復に向けて、JA、製造事業者、市町村、県などの関係機関・団体においては、健苗育成、土づくり、適期植え付けなど、かんしょ栽培に係る基本的技術の励行を啓発し、生産性向上に向けた取り組みを行っている。

 当機構としても、でん粉原料用かんしょの生産者およびかんしょでん粉製造事業者の皆さまの経営が安定するよう、制度の円滑な実施に努めてまいります。

 なお、19年産から27年産までの統計資料を当機構ホームページ(http://www.alic.go.jp/operation/starch/operation-producer.html)にて公表しています。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713