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2. 日本の品目別主要輸入先国の動向

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最終更新日:2016年12月9日

2. 日本の品目別主要輸入先国の動向

2016年12月

 本稿中の為替レートは10月末日TTS相場の値であり、1米ドル=105円(104.81円)、1タイバーツ=3.05円、1ユーロ=117円(116.55円)である。

トウモロコシ・コーンスターチ

米国

【需給動向:トウモロコシ】
生産量、総消費量ともに上方修正

  2016年11月時点のUSDA(米国農務省)による2016/17穀物年度(9月〜翌8月)のトウモロコシ需給予測によると、10月時点に比べ、単収が上方修正された結果、国内生産量は152億2600万ブッシェル(3億8674万トン、前年比11.9%増)と、3カ月ぶりに上方修正された。一方、総消費量は、エタノール向けを中心に食品・種子・その他工業向けが上方修正された結果、146億1000万ブッシェル(3億7109万トン、同6.9%増)となった。また、輸出量は、22億2500万ブッシェル(5652万トン、同17.2%増)に据え置かれたものの、全国トウモロコシ生産者協会は、現在の予測値が実現すれば、2007/08年度以降では最大、1980年以降では過去5番目の記録的な数量になると強調している。その一方、総消費量の上方修正よりも生産量の上方修正の方が大きいことから、期末在庫は、24億300万ブッシェル(6104万トン、同38.3%増)と、同協会によると1980年代以来の記録的な数量となっている。

【価格動向:トウモロコシ】
生産者価格は、3カ月連続で上方修正

  同じく2016/17穀物年度のトウモロコシ生産者平均販売価格は、生産量の上方修正よりも、総消費量の上方修正を重く見て、1ブッシェル当たり3.00〜3.60米ドル(315円〜378円)と、3カ月連続で上方修正された(表2)。しかしながら、引き続き前年を下回って推移していることから、全国トウモロコシ生産者協会は、厳しい経営環境の中、奮闘している生産者のため、トウモロコシ市場の拡大が必要としている。

表2 米国のトウモロコシの需給見通し

【貿易動向:トウモロコシ】
9月の輸出量は、4カ月連続で前年比増

 2016年9月のトウモロコシ輸出量は、637万3955トン(前年同月比88.8%増、前月比12.4%増)と、4カ月連続で前年同月を上回った(図3)。米国穀物協会は、日本、韓国をはじめ台湾、メキシコ、ペルー向けの増加幅の大きさを強調している。また、トウモロコシを含む飼料穀物全般で輸出が増加したことから、厳しい経営環境にある生産者にとって朗報であるとしている。同月の国別輸出量は、次の通り。

日本  164万4749トン
 (前年同月比2.0倍、前月比34.9%増)
メキシコ 125万4905トン
 (同27.1%増、同2.9%増)
韓国  98万2119トン
 (同15倍、同73.9%増)
中国  949トン
 (同74.3%減、同3.1倍)

 なお、同月の輸出価格(FAS(注))は、1トン当たり173.05米ドル(1万8170円、前年同月比5.8%安、前月比1.1%安)と、前年同月を下回った。

(注)Free Alongside Shipの略。貨物を船側に付けた段階で支払われる価格。FOB価格と異なり、横持ち料(倉庫間の移動費)、積み込み料などは含まれていない。
 

図3 米国のトウモロコシ輸出量および輸出価格の推移

【貿易動向:コーンスターチ】
9月の輸出量は、3カ月ぶりに前年比増

 2016年9月のコーンスターチ輸出量は、7354トン(前年同月比27.3%増、前月比5.2%増)と、3カ月ぶりに前年同月を上回った(図4)。同月の国別輸出量は、次の通り。

カナダ  3347トン
 (前年同月比24.5%増、前月比4.6%増)
メキシコ 1452トン
 (同90.6%増、同12.5%減)
ドイツ  44トン
 (同61.7%減、同8.3%減)

 なお、同月の中西部市場のコーンスターチ価格は、1ポンド当たり4.22セント(4.4円、前年同月比 18.3%安、前月比10.5%高)と、3カ月連続で前年同月を下回った。
 

図4 米国のコーンスターチ輸出量および市場価格の推移

タピオカでん粉

タイ

【生産動向】
キャッサバの供給は季節的に減少

 タイタピオカ取引協会によると、11月上旬現在、多くの労働者が米の収穫に従事しており、キャッサバの収穫、流通に係る労働力が不足しているため、季節的にキャッサバの供給量も減少している。こうした状況を反映して、タピオカでん粉製造工場は、キャッサバ買い取り価格の引き上げにより、原料の確保に努めている。

  一方、現地報道によると、11月中旬、キャッサバおよびタピオカでん粉の価格が低水準で推移する中、タイ商務省は4日間にわたり、米、キャッサバおよびそれらの関連製品についての商談会を開催した。同商談会は、これらの製品の輸出拡大を目的としており、同省は、キャッサバとその関連製品だけで、総額で約10億ドル(1050億円)の契約につなげたいとしている。同省のアピラディ大臣は、「キャッサバはタイにとって重要な農産物であり、2016年1月〜9月のキャッサバ製品の輸出量は812万トン、輸出額は21億7000万米ドル(2278億5000万円)に達している」としている。

【価格動向】
国内価格は、わずかに回復

 タイタピオカでん粉協会(TTSA)によると、2016年11月第3週のタピオカでん粉の国内価格は、1キログラム当たり10.5バーツ(32円、前年同期比22.2%安、前週比1.9%高)と、前年同期に比べ下落しているものの、前週比では上昇傾向で推移している(図5)。

 一方、キャッサバ農家価格は、1キログラム当たり1.06バーツ(3.2円)(表1)と、前年同月比、前月比ともに下落している。現地報道によると、生産者の損益分岐点価格は、同1.9バーツ(5.8円)程度とされており、生産者にとって厳しい価格水準が継続している。
 

図5 タイのタピオカでん粉価格の推移

【貿易動向】
9月の輸出量は、3カ月連続で前年比増

 2016年9月のタピオカでん粉輸出量は、25万6343トン(前年同月比35.8%増、前月比3.7%増)と、3カ月連続で前年同月を上回った(図6)。同月の国別輸出量は、次の通り。

中国  12万4162トン
 (前年同月比42.6%増、前月比0.3%減)
インドネシア  3万888トン
 (6.6%減、同14.0%減)
台湾  2万7440トン
 (同29.3%増、同26.3%増)
マレーシア  2万3105トン
 (同58.4%増、同44.0%増)
日本  6679トン
 (同19.8%増、同47.2%減)

 また、同月の輸出価格(FOB・バンコク)は、1トン当たり335米ドル(3万5175円、前年同月比22.6%安、前月比6.2%安)と、引き続き前年同月を下回って推移している(図6)。
 

図6 タイのタピオカでん粉輸出量および輸出価格の推移

ベトナム

【生産動向】
9月の作付面積は、前年比増

 ベトナム農業農村開発省によると、2016年9月の調査では、キャッサバの作付面積は、49万1843ヘクタール(前年同月比2.4%増)と、前年同月を上回った(表3)。2015年から2016年の前半にかけて、キャッサバの取引価格が比較的高水準で推移したことが、作付面積の拡大につながっている。特に主要生産地域である中央高原地域のザライや南東地域のタイニンでは、作付面積の拡大が顕著となっている。その一方、タイニンでは、10月下旬からのまとまった降雨により、一部で作付けの遅れも見られている。

表3 ベトナムのキャッサバ作付面積

【貿易動向】
9月のタピオカでん粉輸出量は、2カ月連続で前年比減

 ベトナム税関総局によると、2016年9月のタピオカでん粉輸出量は、14万7075トン(前年同月比10.0%減、前月比8.4%減)と、2カ月連続で前年同月を下回った(図7)。

 最大の輸出先である中国の需要停滞の影響から、減少傾向が継続している。また、需要面の要因に加え、北部の工場では、調達するキャッサバのでん粉含有率が低い状態が続いているため、でん粉製造工場は例年より操業開始を遅らせており、タピオカでん粉の供給量そのものが不足していることも影響している。この傾向は10月から11月上旬まで続くとみられている。
 

図7  ベトナムのタピオカでん粉輸出量および輸出価格の推移

ばれいしょでん粉

EU

【貿易動向】
9月の輸出量は、3カ月連続で前年比減

 2016年9月のばれいしょでん粉輸出量は、2万7467トン(前年同月比5.8%減、前月比67.6%増)と、3カ月連続で前年同月を下回った(図8)。同月の国別輸出量は、次の通り。

韓国  6997トン
 (前年同月比60.7%増、前月比2.4倍)
米国  3749トン
 (同2.9%減、同3.6%増)
日本  669トン
 (同16倍、同2.1倍)
中国  603トン
 (同80.8%減、同6.9%減)

 2016年9月の輸出価格(FOB)は、1トン当たり628ユーロ(7万3476円、前年同月比10.4%高、前月比2.2%安)と前年同月を上回った。
 

図8  EUのばれいしょでん粉輸出量および輸出価格の推移

コラム 中国のでん粉輸出入

 中国は、世界のでん粉需給に影響を及ぼす世界有数のでん粉生産・消費国である。本稿では、中国のでん粉輸出入の概要について紹介する。

1. 輸出
 中国の天然でん粉輸出のうち、最大の割合を占めているのは、コーンスターチである。これは、中国が米国とともに世界有数のトウモロコシ生産国であることが関係しており、主な輸出先は東南アジア諸国である。一方、小麦でん粉、タピオカでん粉、ばれいしょでん粉も世界各国に輸出しているものの、数量はコーンスターチに比べて少ない。また、コーンスターチをはじめとした天然でん粉を原料とする化工でん粉も生産・輸出しており、コーンスターチに次ぐ輸出量となっている。化工でん粉は、日本を含む近隣のアジア諸国が主要輸出先である(表1)。




 
2. 輸入
 中国は、でん粉の主要輸出国である一方、主要輸入国でもある。天然でん粉輸入のうち、最大の割合を占めているのは、タピオカでん粉であり、全体の約4分の3をタイが占めている。また、ばれいしょでん粉も一定の数量を輸入しており、こちらは、オランダやドイツなどEU諸国が約9割を占めている。一方、国内生産が盛んなコーンスターチや一般に貿易量が限られる小麦でん粉は、わずかな数量となっている。化工でん粉については、タピオカでん粉に次ぐ数量が輸入されており、原料はタピオカでん粉(主な輸入先国タイ)、ばれいしょでん粉(同ドイツ)、コーンスターチ(同米国)などさまざまと考えられる(表2)。
 

 

化工でん粉

 デキストリンおよびその他の化工でん粉(HSコード:350510、以下「化工でん粉」という)の主要輸出国の、主要仕向け先国別輸出量および輸出価格は以下の通り。なお、データは「Global Trade Atlas」の出典である。

タイ

【貿易動向】
9月の輸出量は、4カ月連続で前年比増

 2016年9月の化工でん粉の輸出量は、8万2886トン(前年同月比6.5%増、前月比4.5%減)と、4カ月連続で前年同月を上回った(図9)。同月の国別輸出量は、次の通り。

日本  2万5966トン
 (前年同月比10.4%減、前月比2.0%増)
中国  2万279トン
 (同11.8%増、同4.6%減)
韓国  7742トン
 (同53.4%増、同22.2%増)
インドネシア  6257トン
 (同7.5%増、同10.3%減)
 

図9 タイの化工でん粉の輸出量および輸出価格の推移

米国

【貿易動向】
9月の輸出量は、3カ月連続で前年比増

 2016年9月の化工でん粉の輸出量は、2万4528トン(前年同月比6.6%増、前月比10.5%減)と、3カ月連続で前年同月を上回った(図10)。同月の国別輸出量は、次の通り。

カナダ  6700トン
 (前年同月比0.6%減、前月比10.8%減)
メキシコ 3114トン
 (同5.1%減、同10.7%増)
中国  2194トン
 (同2.2倍、同50.9%減)
ドイツ  1247トン
 (同34.5%増、同11.1%減)
日本  996トン
 (同96.1%増、同38.1%増)
 

図10  米国の化工でん粉の輸出量および輸出価格の推移

中国

【貿易動向】
9月の輸出量は、2カ月連続で前年比増

 2016年9月の化工でん粉の輸出量は、4459トン(前年同月比22.8%増、前月比0.5%減)と、2カ月連続で前年同月を上回った(図11)。同月の国別輸出量は、次の通り。

日本  719トン
 (前年同月比10.8%増、前月比43.5%増)
韓国  669トン
 (同33.4%減、同38.2%増)
インドネシア  571トン
 (同2.2倍、同15倍)
マレーシア  469トン
 (同2.1倍、同3.7%減)
 

図11 中国の化工でん粉の輸出量および輸出価格の推移

EU

【貿易動向】
9月の輸出量は、2カ月連続で前年比増

 2016年9月の化工でん粉の輸出量は、4万4982トン(前年同月比1.4%増、前月比6.5%増)と、2カ月連続で前年同月を上回った(図12)。同月の国別輸出量は、次の通り。

中国  7572トン
 (前年同月比22.3%増、前月比53.9%増)
トルコ  5618トン
 (同34.4%減、同35.2%減)
ロシア  5159トン
 (同18.8%増、同4.6%増)
日本  3424トン
 (同2.0%減、同11.9%増)

 

図12 EUの化工でん粉の輸出量および輸出価格の推移

豪州

【貿易動向】
9月の輸出量は、7カ月連続で前年比増

 2016年9月の化工でん粉の輸出量は、2189トン(前年同月比18.1%増、前月比21.1%減)と、7カ月連続で前年同月を上回った(図13)。同月の国別輸出量は、次の通り。

日本        1527トン
 (前年同月比33.5%増、前月比31.9%減)
マレーシア    162トン
 (同82.0%増、同4.5倍)
ニュージーランド 161トン
 (同3.2%増、同5.8%減)
 

図13 EUの化工でん粉の輸出量および輸出価格の推移

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