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コーンスターチの特性と新加工・利用技術

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最終更新日:2017年5月15日

でん粉情報

[2008年5月]

【話題】
日本食品化工株式会社 研究所 安東竜一

1.はじめに

 植物は光合成によって空気中の二酸化炭素と水からグルコースを合成するが、そのグルコースは酵素の働きによってでん粉として貯蔵される。でん粉は種子、果実、茎、根などに見られるが、どの部位に多くのでん粉を貯蔵するかは植物によって異なる。例えば、ジャガイモ(馬鈴薯)、サツマイモ(甘藷)、キャッサバ芋は地中の根にでん粉を貯蔵するため、これらのでん粉は地下でん粉とも呼ばれている。一方、トウモロコシ(コーン)、小麦、米においては、地表に現れた種子からでん粉が得られるので、地上でん粉として分類される。でん粉の形状や性質は、起源となる植物や貯蔵部位によって大きく異なる。従って、でん粉の種類は無数に存在すると言うことができる。本稿では、これらのでん粉の中でも世界的に最も生産量が多いトウモロコシでん粉(コーンスターチ)について、その特性と加工および利用技術の一端を紹介する。

2.でん粉とは

 コーンスターチについて論じる前に、まずはでん粉の基本的な組成や性質を紹介する。でん粉とは、多数のグルコースが重合した天然の高分子であり、グルコースが直鎖状に連なった分子であるアミロースと、枝分かれの多い分子であるアミロペクチンによって構成される。さらに、アミロースとアミロペクチンが水素結合により規則的に配列されることで、でん粉の結晶構造が保たれている。でん粉は白色の粉状物質であるが、水に分散しても溶解することはなく、そのまま放置すると沈澱していく(この性状がでん粉という名称の由来となっている)。
  でん粉の最大の特徴は、水を加えて加熱することで溶解することにある。水存在下のでん粉粒子は、ある一定の温度以上に達すると吸水を始めて膨潤し、その膨潤が最大になると崩壊して分散する(図1)。この現象をでん粉の糊化と呼び、糊化によって粘性が得られる。この特性を利用して、でん粉は食品・工業における様々な分野に利用されている。また、糊化でん粉に酵素を反応させることにより、ブドウ糖や各種オリゴ糖が製造されている。
<strong>図1 でん粉の糊化の模式図</strong>
図1 でん粉の糊化の模式図

3.コーンスターチの製造方法

 でん粉の製造方法は、原料農産物をすりつぶした後、でん粉以外の成分(繊維、油分、タンパク質)を取り除いてでん粉の純度を高めることが基本となる。芋類は比較的水分が高いので容易にすりつぶすことができるが、トウモロコシや米のように水分が低く固い種子をすりつぶす為には、あらかじめ種子を柔らかくしておくことで作業性が高まる。
  従って、工業的に大規模なコーンスターチの製造方法として、1875年に米国で開発された亜硫酸水による浸漬法が採用されている。まず、穏やかに加温した亜硫酸水中にコーンを漬け込んで柔らかくし(浸漬工程)、柔らかくなったコーンを粗く粉砕する(磨砕工程)。次に、油分を多く含むコーンの胚芽部分を、比重差を利用して分離する(胚芽分離工程)。さらに、胚芽を除去したものに強い磨砕をかけ、ふるい分け洗浄によってコーンの外皮部分を分離する(外皮部ふるい別洗浄工程)。外皮を除去することで得られた胚乳液は、遠心分離によってタンパク質が分離される(タンパク質分離工程)。タンパク質を分離した後、さらにでん粉の純度を高めるため、水洗いを行って夾雑物を除去する(でん粉洗浄工程)。このようにして精製されたでん粉は、脱水、乾燥、ふるい分けを経て、コーンスターチとなる。
  なお、当社では、胚芽からは油分を回収してコーンオイルを製造し、外皮、タンパク質や油分回収後の胚芽を飼料、発酵培地、食物繊維素材などに用い、コーンの各種成分を余すところなく活用している。

4.コーンスターチの糊化特性

 家庭で食されるほのかに甘いコーンはスウィート種であるが、コーンスターチの原料には最も生産量の多いデント種のコーンが一般的に用いられている。また、品種改良技術を駆使して開発されたワキシー種やハイアミロース種もコーンスターチの原料として用いられているが、品種が変わることによってコーンスターチの特性は大きく変化する。デント種由来のコーンスターチ(以下、コーンスターチと呼ぶ)のアミロース含有量は約26%であるが、ワキシー種由来のコーンスターチ(以下、ワキシーコーンスターチと呼ぶ)はアミロースを含まず、アミロペクチンを100%含有する。一方で、ハイアミロース種由来のコーンスターチ(以下、ハイアミロースコーンスターチと呼ぶ)は、50〜90%のアミロースを含有し、そのアミロース含量によってクラス分けされている。
  でん粉の糊化特性はアミロースとアミロペクチンの比率によって大きく異なり、コーンスターチと比較して、ワキシーコーンスターチやハイアミロースコーンスターチは極めて特徴的な糊化挙動を示す。図2にコーンスターチ(商品名;日食コーンスターチY)、ワキシーコーンスターチ(商品名;日食ワキシースターチY)、アミロース含量が約70%のハイアミロースコーンスターチ(商品名;日食ハイアミローススターチ)のラピッド・ビスコ・アナライザー(RVA)による測定例を示した。RVAとは、でん粉の水懸濁液を攪拌しながら加熱・冷却し、その際の粘度を連続的に測定してでん粉の糊化挙動を分析する装置である。
  図2のコーンスターチのRVAパターンから、でん粉粒の膨潤による粘度の発現、でん粉粒の崩壊によるピーク粘度の発現と粘度低下、でん粉の老化による冷却時の急激な粘度上昇を観察することができる。なお、でん粉の老化とは、図3に示したように、糊化によって分散したアミロースやアミロペクチンが再び水素結合で集合する現象を意味する。
  RVA測定では一般的に、でん粉懸濁液の濃度が低いほどでん粉粒同士の摩擦が少なくなるため、糊化温度は高くなる。ところが、コーンスターチと比較して、ワキシーコーンスターチは低濃度にもかかわらず糊化温度が低い。また、冷却時でも粘度はほとんど上昇しない。これはワキシーコーンスターチの糊化のしやすさと老化の起こり難さを示したものであり、アミロースを含有しない独特のでん粉組成に由来する。でん粉の糊化が容易であれば、少ない熱量で食品の調理をすばやく完了することが可能となり、加工食品の工業的生産の観点から非常に有利である。また、でん粉の老化は食品の食感・風味の経時変化や離水をもたらして大きな問題となるが、老化し難いでん粉を用いることで、加工食品の長期保存が可能となる。以上のように、食品中のでん粉を糊化させて用いる場合、ワキシーコーンスターチは極めて優れた適性を有している。
  一方、ハイアミロースコーンスターチは高濃度でなければ粘度が発現せず、糊化温度も非常に高い。これはハイアミロースコーンスターチの糊化のし難さを示したものであり、アミロース含量が非常に高いでん粉組成に由来する。また、コーンスターチやワキシーコーンスターチよりも老化しやすい性質を有するものの、未糊化のでん粉粒や溶出したアミロースが乾燥後にフィルムを形成し、パリパリとしたクリスピーな食感をもたらす。このような性質から、ハイアミロースコーンスターチはフライ食品への利用価値が高い。さらに、詳細は後述するが、ハイアミロースコーンスターチは食物繊維の含有量が高いため、難消化性でん粉やレジスタントスターチという名称でも認知されつつある。
<strong>図1 でん粉の糊化の模式図</strong>
図1 でん粉の糊化の模式図
<strong>図1 でん粉の糊化の模式図</strong>
図1 でん粉の糊化の模式図

5.コーンスターチの加工方法とその用途

5.1 化学修飾

  食品用途においては、国連食糧農業機関(FAO)/世界保健機関合同食品添加物専門家会議(JECFA)が示す規格の範囲内にある化学修飾でん粉11品目(表1)が国際的に広く流通しており、日本国内においてはこれらの化学修飾でん粉が食品として流通している。なお、厚生労働省はJECFA規格と整合性のある国内規格の設定を検討中であるが、安全性に懸念がないことから、許容摂取量を設定する必要がないという見解を示している。
  表1に示されるように化学修飾でん粉の加工方法は様々であるが、化学修飾の主たる目的として「老化耐性の付与」と「糊化の抑制」が挙げられる。そこで、これらの機能を付与することができるアセチル化と架橋について以下に説明する。
  アセチル化でん粉とは、アセチル基という官能基が結合しているでん粉である(図4)。でん粉はアミロースとアミロペクチンの水素結合によって結晶構造を維持しているが、アセチル基の導入によって水素結合が弱まり、結晶構造が緩くなると考えられている。従って、でん粉をアセチル化することで糊化温度を低下させることができる。また、糊化によって分散したアミロースやアミロペクチンは、水素結合によってランダムに集合して老化現象を引き起こすが、アセチル基の存在が水素結合による集合を妨げて老化を抑制する。従って、でん粉のアセチル化によって、老化が起こりやすい冷蔵や冷凍での長期保存も可能となる。
  架橋でん粉とは、リン酸基やアジピン酸基と呼ばれる官能基がブリッジ状に導入されたでん粉である(図4)。このような架橋構造の導入によってでん粉の結晶性が高まり、糊化が抑制される。また、架橋でん粉はでん粉粒が崩壊し難い性質であるため、化学的・物理的負荷に対する糊の粘度安定性が向上する。
  当社では、ワキシーコーンスターチにアセチル化や架橋を施し、老化耐性と粘度安定性を高めた製品を用途に応じて各種ラインナップしている。これらを用いることで、タレ、ソース、ドレッシング、フィリング、クリーム、ヨーグルト等に最適な粘度、艶、ボディ感、滑らかさを付与し、酸・レトルト・物理的なシェアに対する耐性を高め、冷凍・冷蔵での保存安定性が向上する。
<strong>表1 化学修飾でん粉11品目の構造および物性の特徴</strong>
表1 化学修飾でん粉11品目の構造および物性の特徴
<strong>図4 でん粉の化学修飾(アセチル化および架橋)の模式図</strong>
図4 でん粉の化学修飾(アセチル化および架橋)の模式図

5.2 油脂加工

 フライ食品の衣の食感を改良するため、バッター(粉に水を加えて調製した粘性のある懸濁液)や打ち粉(具材の表面にまぶして用いる粉)にでん粉がよく用いられているが、使用する小麦粉の一部もしくは全量を様々なでん粉に置き換えることで、衣の食感を自在にコントロールすることができる。例えば、コーンスターチやハイアミロースコーンスターチのように膨潤し難いでん粉を用いることで硬くサクサクとした食感に仕上げることができ、反対にワキシーコーンスターチのように糊化しやすいでん粉を用いればソフトで口溶けの良い食感にすることができる
 一方で、コンビニやスーパーマーケットで売られているトンカツは、カットされて切断面が見えるように陳列される場合が多い。トンカツの衣と肉がはがれやすいと、製造ラインでのカット時にロスが多くなり、商品の見栄えも非常に悪くなる。従って、フライ食品では衣と具材の結着性も重要視されているが、通常のでん粉では結着性を十分に改善することはできない。そこで、当社では衣と具材の結着を改良することを目的に、油脂加工でん粉を開発した。油脂加工でん粉とは、微量の植物性油脂類をでん粉に混合し、乾燥させることによって得ることができる。図5に示されるように、油脂加工でん粉を用いることで衣と具材との間に強力な結着性が得られる。油脂加工でん粉の結着効果は食品の加熱調理時に発現し、特にタンパク質成分と良好に結着する。従って、水産畜産練り製品に使用した場合にも、でん粉が食品中から分離し難くなり、良好な弾力を付与することができる。
 当社では、特にフライ食品向けの油脂加工でん粉のシリーズと、水産畜産練り製品向けの油脂加工でん粉のシリーズをラインナップしており、目的とする用途や食感に合わせて様々な種類を取り揃えている。
<strong>図5 油脂加工でん粉による衣と具材の結着性</strong>
図5 油脂加工でん粉による衣と具材の結着性

5.3 その他の加工

 粉状のでん粉を圧迫成形することによって、顆粒状のでん粉を得ることができる。この顆粒化コーンスターチは、粉状のでん粉よりもかさが小さく、水への分散が容易で空中への粉の飛散が少ないという性質を有しており、特に醸造用途で用いられている。
 α化でん粉は、加熱糊化したでん粉を乾燥・粉砕して製造される。通常のでん粉は加熱によって糊化させなければ増粘しないが、α化でん粉は水を加えるだけで膨潤して増粘効果を得ることができる。当社では、用途に応じて様々な粘度のα化でん粉を供給できるように、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチを原料とした各種α化でん粉をラインナップしている。なお、海外ではα化でん粉のことをPregelatinized starchやInstant starchと呼んでいる。

6.コーンスターチの保健機能

 コーンスターチやワキシーコーンスターチは加熱糊化後の消化性が高く、食物繊維成分を含まないが、アミロース含量が約70%のハイアミロースコーンスターチは約20%の食物繊維を含有し、難消化性でん粉(レジスタントスターチ)とも呼ばれている。この特性を生かして、ハイアミロースコーンスターチを食物繊維素材として添加した食品も数多く存在する。
 当社では、このハイアミロースコーンスターチに湿熱処理(でん粉が糊化しない程度の水分下で行う加熱処理)を施すことで、食物繊維含量を約3倍に高めた湿熱処理ハイアミロースコーンスターチ(商品名;日食ロードスター)を開発した。この湿熱処理ハイアミロースコーンスターチのカロリーは224kcal/100g(測定例)であり、コーンスターチ(355kcal/100g;測定例)、ワキシーコーンスターチ(352kcal/100g;測定例)、ハイアミロースコーンスターチ(314kcal/100g;測定例)と比べて、低カロリーなでん粉であると言える。さらに、「日食ロードスター」を添加した食パンやパスタは、臨床試験においてお通じの改善効果が認められており、厚生労働省の許可を受けた特定保健用食品の関与成分でもある。

7.おわりに

 最近、米国においてエタノールの原料にトウモロコシが大量に消費され、全世界の食糧需給に多大な影響を与えている。原料トウモロコシの価格は依然として高止まりしており、コーンスターチ製品の価格上昇は回避できない状況にある。しかしながら、本稿で紹介したようにコーンスターチ製品は高付加価値製品として進化を続けており、この機会にその価値が再認識されることを大いに期待する。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
Tel:03-3583-8713



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