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でん粉・糖化業界について

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最終更新日:2017年3月14日

でん粉情報

[2008年11月]

【話題】

日本スターチ・糖化工業会
会長 永井 司


 我々の日本スターチ・糖化工業会は、トウモロコシを輸入して、でん粉(コーンスターチ)を製造し、更に水飴や異性化糖などの糖化製品を主に製造している企業の業界団体です。業界では、「一貫メーカー」と呼ばれています。会員数は10月1日現在11社です。
  日本のコーンスターチ(以下「コンス」と呼びます)を巡る事情について、(1)原料トウモロコシ、(2)国内のでん粉需給、(3)でん粉制度の三点についてご説明します。


1.原料トウモロコシ

 我々は、主に原料トウモロコシを輸入し、コンスを製造しています。平均するとトウモロコシの約68%がコンスになります。残りの32%は油分やたんぱく質です。コンスはほぼ100%が炭水化物です。油分からコーン油を製造し、たんぱく質部分は主に飼料として販売しています。
  日本のコンス需要は約250万トンで、これに見合うトウモロコシは約350−370万トンですが、殆んどが米国から輸入されています。米国でのトウモロコシ作付面積は、日本の国土面積に近く、質・量共に安定した供給元であるためです。他の生産国からの調達は品質や安定供給など種々問題があるのが実情です。
  米国ではトウモロコシは豊作にも拘らず価格が急騰しています。これは、最近マスコミでも取り上げられていますが、米国では政策としてトウモロコシからバイオエタノールを製造しており、原油高騰が追い風となり、雨後の筍の如くエタノール工場が林立しました。今まで、家畜の飼料用や食品用が中心だった需要に、エタノール向けが激増し、需給が逼迫したのが原因です。家畜や人間の「胃袋」と自動車の「エンジン」との取り合いといっていい状況です。更に、中国などの商品需要が、海上運賃を引き上げています。日本に輸入されるトウモロコシは、2006年初め頃はトン当たり$120ぐらいだったのが、2008年に入り$400を超えたこともあります。
  更に米国では、遺伝子組み換えのトウモロコシが80%にも達しています。我々は、お客様のご要望で、非遺伝子組み換えの原料を分別輸送で輸入してきました。しかし、遺伝子組み換えの作付けはこれからも増えると予想されます。米国の農家にとっては収量が多くて農家収入面でも有利であることや、農薬の使用が減るため農民の健康面からもいいことがその理由です。風媒花であるトウモロコシにとって、遺伝子組み換えトウモロコシがこれ以上増えては、従来のような分別輸送が困難になると予想されます。


2.国内のでん粉需給

 消費者食品として小売されるのは、小袋に入った「コーンスターチ」か「片栗粉」ぐらいで、一般の方々にはでん粉のイメージは中々わからないのが実情だと思います。日本でのでん粉の需要は約300万トンです。そのうち、コンスが約256万トン、国産いもでん粉が28万トン、輸入でん粉が14万トン、小麦粉でん粉が2万トンの内訳になります。(国産いもでん粉については次項で取り上げます。)
  でん粉は副原料として使用されていますが、そのため約1000種を超える商品に利用されています。内訳は糖化用に193万トン(65%)、製紙・段ボールなどの工業用に68万トン(22%強)、ビール用に12万トン(4%)などが主な用途です。
  工業用は、簡単に言えば、パルプをつないで紙を作る助けをしたり、ダンボールをくっつける糊として使用されています。
  糖化用は、まず異性化糖の製造に93万トン、水飴に64万トン、ぶどう糖に36万トンが使用されています。異性化糖はその甘味の質から、清涼飲料などに使われています。この異性化糖に調整金が課されています。1982年に砂糖の調整金を軽減する為に導入されました。異性化糖は、1970年代後半に普及し、既に30年経っており、その独自の品質特性がユーザーに評価されている点を、よく認識されるべきです。更に、次項で述べるように、異性化糖の原料のトウモロコシは調整金の対象となっている点も考慮されるべきです。
  水飴は、近年、発泡酒や第三のビール向けに醗酵原料として使用され、その需要が増えています。異性化糖も含め、これらの糖化用は天候により需要が左右されます。ぶどう糖は医薬用が最大で、そのほかはパン・菓子類向け、調味料向けが続いています。
  国際化により、製品輸入が増え、工業用に使用される加工でん粉が輸入されており、これからの需要は大きく増えるとは考えられないのが現状です。


3.でん粉制度

 国内には、北海道で生産されるジャガイモからの馬鈴しょでん粉が23万トン、鹿児島県でのサツマイモからの甘しょでん粉が5万トン製造されています。北海道では、小麦やビート、大豆などとの輪作体系に組み込まれて製造されており、鹿児島県では農家の高齢化と芋焼酎用の需要がでん粉より上回ってくるという、それぞれ特有の事情があります。
  輸入トウモロコシから作られるコンスに比して、国産いもでん粉は割高であることから何らかの保護措置が必要となりました。その為、1968年から所謂「抱き合わせ」制度が導入されました。これは、国産いもでん粉を割高なコストで購入すると、一定割合で輸入トウモロコシや糖化製品用の輸入でん粉について、輸入関税が免除される制度です。これは2007年9月まで続きました。
  2007年10月からは、経営安定対策の導入で、いもでん粉の抱き合わせ制度が廃止され、輸入トウモロコシと一部の輸入でん粉に調整金が課されることになりました。基本的にこの負担は変わっていません。この調整金を原資として、北海道と鹿児島県の農家や製造業者に交付金が支払われることになりました。この仕組みは農畜産業振興機構によって運営されています。「物から金」への変更です。この制度を円滑かつ長期に亙って運用する為に、それぞれの関係者が個々の利益ではなく全体の調和を考えてゆく必要があります。



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