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かんしょでん粉(さつまいもでん粉)の食品用途拡大に向けた展望と課題

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最終更新日:2017年3月10日

かんしょでん粉(さつまいもでん粉)の食品用途拡大に向けた展望と課題
〜グルテンフリーへの用途拡大の可能性〜

2017年3月

調査情報部

【要約】

 でん粉を使用する食品製造企業への聞き取り調査を行った結果、近年のトレンドとして、「グルテンフリー」に対する注目度、関心が高まっていることが分かった。市場拡大の可能性や、消費者の国産志向の高さなどを鑑みると、グルテンフリー食品は、かんしょでん粉の用途拡大のターゲットとして今後の有望な分野となり得る。

はじめに

 でん粉の価格調整制度が開始された当初、かんしょでん粉の用途は、異性化糖、水あめ、ぶどう糖などの糖化製品向けの比率が高く、海外から輸入される安価なトウモロコシを原料とするコーンスターチとの競合にさらされる状況にあったが、現在は、麺類、菓子などの食品向けが用途全体の約3割を占めるまでに拡大している(図1)。これは、でん粉原料用かんしょの生産およびでん粉関連産業の経営安定、発展を図るため、市場評価が高い食品用途などへの販売拡大や食品用途に適した品種の開発、食品用途のでん粉を製造する大規模工場の整備など、産地である鹿児島県の関係者が連携して行った品質向上や用途拡大への取り組みが結実した成果と言える。
図1 国内産かんしょでん粉の用途別仕向け割合
 当機構が平成20年度から食品製造企業などを対象に毎年実施しているアンケート調査1)では、かんしょでん粉を使用する企業においては一貫して国産原料の訴求力を評価しての利用が多い一方、非使用の企業においては「供給が安定せず、必要量を確保できるか不安」「年産によって白度や水分率のバラツキがあり使いづらい」といったかんしょでん粉に対する供給面、品質面への懸念がいまだに払拭されていないことも明らかとなっている。

 このような現状を踏まえ、アンケート調査で得られた食品用途拡大に向けての課題と新たな需要創出の可能性についてさらに掘り下げるべく、でん粉を使用する食品製造企業12社(注)への聞き取り調査を行った結果、近年のトレンドとして、「グルテンフリー」に対する注目度、関心が高まっていることが分かった。

 そこで本稿では、食品製造企業におけるグルテンフリーへの取り組みの状況と、グルテンフリー食品へのかんしょでん粉の利用可能性などについて考察したので、報告する。

(注)製パン3社、製麺3社、菓子類2社、水産練製品1社、製粉1社、調味料1社、糖化製品1社

1.グルテンフリーをめぐる状況

(1)欧米を中心に広がるグルテンフリー

 わが国におけるグルテンフリーは、ダイエット食や健康志向といったイメージが先行しているような印象を受けるが、一般社団法人グルテンフリーライフ協会によると、もともと小麦アレルギーやセリアック病(小麦や大麦に含まれるグルテンに対する過敏症を主な症状として生ずる自己免疫疾患2)、3))の患者向けの食事療法として欧米で始まったものである。欧米におけるセリアック病の正確な有症率ははっきり分かっていないものの、米国食品医薬品局(FDA)の推計では、約300万人の米国人がこの病気に苦しんでいるとされる4)。この疾患に対する一般的な対処法は、食事から一切のグルテンを除去することといわれていることから、患者にとってグルテンフリーであることが食生活において非常に重要な意味を持つこととなる。このため米国およびEUでは、セリアック病患者が食品に含まれるグルテン含有量について正確な情報が得られるようにするため、「グルテンフリー」と表示することができる食品基準が定められている5)、6)

 また最近は、海外の著名人らがグルテンフリー食品を食生活に取り入れ、美と健康に役立てていることなどが話題となったことで、認知度が一気に広がり、健康意識の高い消費者を中心に幅広い層からの支持を得ている。

(2)グルテンフリーとでん粉

 欧米でのブームを受けて、日本でもグルテンフリーに対する関心が高まりつつある。こうしたニーズに対応するため、国内の食品メーカーが参入する動きも少しずつ出始めており、ここ1、2年前からスーパーマーケットや百貨店などで「グルテンフリー」と表示された商品を見かけるようになってきた。

 これまでに発売されているグルテンフリー食品は、主に米粉パスタや製粉・製麺用の米粉など小麦製品の代わりになるものが中心であるが、こうした商品の多くは粘りとコシを補う目的ででん粉が使われている(写真1)。また、わが国の食文化に根付く食材はそもそもグルテンフリーであるものが多いことから、既存の商品をグルテンフリーとして売り出す企業も現れている。その中でも特に、フォー、ビーフン、春雨などのでん粉麺を製造・販売する企業において、グルテンフリーを全面に打ち出した商品の品ぞろえを強化する動きが強まっている。
写真1 グルテンフリー食品に使われているでん粉(熊本製粉提供)
 こうした流れに、行政もグルテンフリーへの対応に乗り出している。農林水産省では、国産米の消費拡大を推進する観点から、米加工品などに「ノングルテン」と表示するためのガイドラインづくりを進めている(図2)。

 これを契機に、グルテンフリーに対する認知度が広がれば、市場はさらに拡大する可能性があり、でん粉の新たな需要創出の起爆剤となることが期待される。
 
図2 農林水産省が検討する「ノングルテン表示」の概要

(3)グルテンフリーに取り組む食品製造事業者の動向

 今回調査した企業のうち、グルテンフリーに取り組む2社の動向について調査した。その状況は以下の通り。

ア.森井食品
(ア)会社概要

 森井食品は、奈良県桜井市に所在し、春雨や葛きりなどの製造・販売を行う1888年(明治20年)創業の老舗食品会社である。同社はわが国で初めて春雨の国内生産に成功した会社で、春雨にはかんしょでん粉とばれいしょでん粉を使用している。現在、国内での生産のほか、中国の契約工場で緑豆春雨も生産しており、同工場の春雨は米国などに輸出されている。

(イ)グルテンフリーへの取り組み
 春雨は、2000年代前半から低カロリーで、ヘルシーな食材として女性を中心に人気を集め、今ではカップ入り即席スープの定番になりつつある。しかし、そのほとんどは中国産の緑豆春雨で、森井食品によると、国内に流通する春雨全体に占める国産の割合は4割程度であるという。「カップ入り即席スープの登場によって、春雨の購入層の間口が広がり、学校給食や病院などこれまでになかった顧客からの引き合いが生まれたものの、その反面、安価な中国産が市場を席巻したことで、国内のメーカー数は減少に次ぐ減少で、今では数社しか残っていない」と担当者は語る。また、緑豆春雨が持つコリコリとした食感が春雨であるという認識が消費者に広く定着している今、もちもちの食感が特長の国産春雨は実需者側で緑豆春雨の代用にはなり得ない別物として扱われることが多く、「国産」というブランドだけでは生き残れない状況になりつつあるという。

 そこで同社は、かんしょでん粉を原料としながらも緑豆春雨の持つコリコリとした食感が得られる独自の製法を開発するとともに、全国農業協同組合連合会と合弁で設立した新会社の工場にその技術を導入し、2017年4月から春雨の製造を開始する予定である(写真2)。これにより、かんしょでん粉の新たな需要創出が期待される。
写真2 従来の春雨(左)と新工場で製造予定の春雨(右)

 新工場で製造する春雨は、食感が緑豆春雨に似ているほかに、従来品の欠点であった緑豆春雨に比べて麺が太い、高温でゆでると軟らかくなり過ぎるという点を改善しているため、緑豆春雨の置き換え需要を喚起するだけでなく、新たな用途の開拓にも取り組む。

 
この取り組みの追い風になっているのが「グルテンフリー」である。すでに数社から商談を持ちかけられているといい、関西圏で飲食チェーン店を展開する企業では同社の春雨を使ったメニューを提供することも決まっている。

 これを好機に、国産プラスαの要素としてグルテンフリーであることを訴求した商品提案を積極的に行う方針である。同社は、女性の社会進出と高齢単身世帯の増加などを背景に中食需要が伸びていることから、グルテンフリーの業務用ニーズも高まっていくものと見ており、「総菜メーカーや総菜を製造する小売店などのメインターゲットにしっかりと訴求していきたい」と話す。

イ.熊本製粉
(ア)会社概要

 熊本製粉は、熊本県熊本市に所在し、製麺、製パン、製菓向けのプレミックスの製造・販売を行う製粉会社である。地元の九州産の原料を積極的に採用しており、製パンに向く米粉の製粉技術を用いて米の消費拡大にも寄与している。

(イ)グルテンフリーへの取り組み
 同社のグルテンフリーの取り組みは、小麦アレルギーに悩む人々にもおいしいパンを食べてもらいたいと思ったことがきっかけ。従来の米粉(上新粉)は、米を粉砕する過程で発生する熱や摩擦などによりでん粉粒の表面が削れているため、それでパンを作ると、生地が膨らまない、焼成してもパサつく・老化が早いなどの問題点があった。そこで、でん粉粒を傷つけない粉砕技術を開発し、小麦粉と同じように使える製パン用の米粉の製造に成功した。

 その後、2015年に米国のグルテンフリー認証(認証基準:グルテン含有率10ppm未満)を取得(注)し、グルテンフリー事業に乗り出した。「メード・イン・ジャパン」を強みに米国などの海外市場に打って出るという方針を開発当初から掲げていたことから、商品パッケージは英語と日本語の両方を用意している(写真3)。米国などの展示会に出展した際は、現地のグルテンフリー食品に比べて、ふっくらしたパンや、しっとり・ふんわりしたお菓子ができることに来場者の関心が集まり、連日多くの客でにぎわったという(写真4)。同社は、2017年11月の米国輸出を皮切りに、提携販売業者を通じて海外での販売活動を本格化させている。

(注)通常の認証基準よりも厳しい基準を持つ認証団体「Gluten-Free Certification Organization」による認証を取得。

写真3 左側が海外向け、右側が国内向けのグルテンフリー食品(熊本製粉提供)
 同社の担当者は「米国における私たちの商品の品質に対する評価は予想以上の反応。今後も地元九州産の原料を使って、日本国内のみならず、世界中の人々に喜んでもらえるような食材を提供していきたい」と話す。
写真4 米国での展示会の様子(熊本製粉提供)
 現在、国内で販売しているグルテンフリー食品は、ホットケーキミックス、パン用ミックス、玄米粉の3種類で、2017年3月には、お好み焼き粉、天ぷら粉を発売する予定である。同社の商品は、でん粉を使用しているものが多かったが、でん粉の種類は非公表であった。でん粉を使用する目的は、もっちりした食感を得ることと、でん粉がグルテンと同じような役割を果たすためであると思われる。

(4)グルテンフリーの展望と課題

 わが国でのグルテンフリー市場の拡大により影響を受けると考えられる製パン会社に、グルテンフリーをめぐる状況をどのように見ているのか調査したところ、ある担当者は、「小麦粉以外を主原料とするパンは、本来のパンとは全く別物であることから、主流にはならない」としながらも「日本人は、しっとり、もっちりとした食感を好み、近年はその嗜好性が強く反映された商品の売れ行きが好調であることから、米粉やでん粉を主原料とするパンが持つもちもちとした食感は、今の消費者の嗜好に合うだろう」との認識を示した。また、今回調査した製パン会社の中にはすでに試作、検討を行っているケースも見られ、共存共栄を模索する動きもある。

 一方、グルテンフリーには課題もある。原料や中間原料がグルテンフリーであっても二次加工メーカーがそれに対応できなければグルテンフリーそのものの価値を失う。また、わが国におけるグルテンフリーに関する基準や認証制度が未整備である段階において、イメージ戦略としての安易な使用は消費者の混乱を招き、かえって消費者の信頼を損なう危険性もある。そして何より、欧米のグルテンフリーの表示基準は、わが国の食品アレルギー表示制度の基準と異なることから、商品選択に資する正確な情報を消費者に提供するよう努めなければならない(図3)。
図3 EU・米国などのグルテンフリー表示制度とわが国の食品のアレルギー表示制度の違い

(5)かんしょでん粉の用途拡大の可能性

 日本政策金融公庫が実施した調査7)によると、現在の消費者は食に対し、全世代で経済性や簡便化よりも健康に気を使う傾向が見られ、かつ、割高でも国産を優先して購入する意識が高いことから、グルテンフリー食品の原料には国産原料が採用される機会が増えることが期待される。このため、グルテンフリーは用途拡大のターゲットとして今後の有望な分野となり得る。

 他方、先に紹介した熊本製粉では、原料供給を行う企業に対してコンタミネーション(注)防止対策に関する厳格な審査を実施するとともに、定期的に証明書の提出を求めている。こうした取り組みは、グルテンフリー食品を取り扱う企業に共通するものであると考えられることから、これらの企業に原料を供給するでん粉工場は、適切に対応できる体制を整備することが必要不可欠である。

(注)食品を製造する際に、原材料としては使用していないにもかかわらず、特定原材料などが意図せずして最終加工食品に混入すること。

2.加工商品への用途拡大の可能性

 かんしょでん粉の用途拡大の可能性を考察する上で、もう一つ注目すべき動きとしては、加工食品の原料原産地表示の見直しをめぐる動向である。消費者庁・農林水産省の「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」は、2016年11月、全ての加工食品で重量割合1位の原材料を対象に、原料原産地表示の導入を決めた。これを受け、一部の企業では包材見直しの検討を始めるなど、対応に動き出している。

 今回の調査では、「度重なる安全問題によって中国産全般に対する風当たりがいまだに弱まっていないことから、中国産原料を使用する加工食品を中心に国産回帰の意識は確実に高まる」と多くが口をそろえるが、一方で、ユーザーは「安心・安全に対するこだわり志向」と「低価格志向」の二極化が顕著となってきていることから、「それぞれのニーズに応えるためには、現状を維持する」と、国産原料の積極的な置き換えには慎重な姿勢が目立った。

おわりに

 今回聞き取りをした企業は、グルテンフリーに対して、総じて高い関心を持っていることがうかがえた。ただ、わが国独自の公的な基準や認証がない中にあっては販売環境が十分整っているとは言えず、消費者ニーズを慎重に見極める必要があるとし、しばらくは様子見の姿勢が続くと考えられる。

 また、今回の調査を通して新たな気づきもあった。最近の消費者の嗜好性は、歯切れの良さや歯応えのあるものよりも口当たりがソフトで軟らかいものの方を好む傾向があるという。こうした需要に応えられる最適な素材として、新しい品種「こなみずき」(注)のでん粉を評価する声が多数寄せられた。しかし、その絶対量が少ないことから、原料不足リスクへの懸念が強く、また、従来のかんしょでん粉と比べての割高感も指摘されており、現実的にはタピオカでん粉を採用する例がほとんどであった。

 この点を踏まえると、でん粉に対する新たな期待や潮流が生まれつつある中で、安定供給に対する信頼感を示めすことが、かんしょでん粉への需要を獲得していくためのカギと言える。そのためには、でん粉原料用かんしょの作付け意欲を高めることが不可欠であることから、当機構としても産地関係者と連携を図りながら、引き続き、生産者の経営安定に資する取り組みを推進していきたい。

 最後に、今回の調査にご協力いただいた関係者の皆さまに改めて感謝申し上げます。

(注)でん粉原料用に開発されたかんしょで、そのでん粉は従来のかんしょでん粉と比べ、糊化温度が低く、糊化後冷却しても離水しにくい、弾力性を長期間保持するなどの特長を有する。



1)調査情報部「近年における甘味料・でん粉の需要動向〜人工甘味料・国内産かんしょでん粉〜」『砂糖類・でん粉情報』(2016年4月号)、独立行政法人農畜産業振興機構
2)Hideyuki Nakazawa、Hideki Makishima、Toshiro Ito、Hiroyoshi Ota、Kayoko Momose、Nodoka Sekiguchi、Kaname Yoshizawa、Taiji Akamatsu、Fumihiro Ishida「Screening Tests Using Serum Tissue Transglutaminase IgA May Facilitate the Identification of Undiagnosed Celiac Disease among Japanese Population」『International Journal of Medical Sciences』2014.Vol11(8)pp819-823、IVYSPRING
3)Hideki Makishima、Toshiro Ito、Ryo Kodama,a Naoko Asano、Hideyuki Nakazawa、Kazuko Hirabayashi、Shigeo Nakamura、Masao Ota、Taiji Akamatsu、Kendo Kiyosawa、Fumihiro Ishida「Intestinal Diffuse Large B-Cell Lymphoma Associated with Celiac Disease:A Japanese Case」International Journal of HEMATOLOGY
4)「米国食品医薬品局(FDA)」 http://www.fda.gov/ForConsumers/ConsumerUpdates/ucm363069 (アクセス日:2017.2.13)
5)ニューヨーク事務所、農林水産・食品部農林水産・食品課「米国規制情報調査-食品におけるグルテンフリー表示規則-」(2016年3月)独立行政法人日本貿易振興機構
6)田村典子「グルテンフリー市場に注目」『ジェトロセンサー』(2015年2月号)独立行政法人日本貿易振興機構
7)株式会社日本政策金融公庫「消費者動向調査:食の志向」(平成28年9月1日)
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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