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北海道におけるスマート農業の推進について

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最終更新日:2017年4月10日

北海道におけるスマート農業の推進について

2017年4月

北海道農政部生産振興局技術普及課研究連携グループ 主幹 大塚 真一

【要約】

 北海道においても担い手の減少や高齢化が進んでおり、北海道農業の将来を切り拓くため“スマート農業”の推進に大きな期待が寄せられている。そこで北海道におけるスマート農業の現状と取り組み状況について紹介する。

1.スマート農業とは

 スマート農業は、平成27年3月に農林水産省が策定した「食料・農業・農村基本計画」の中で「ロボット技術やICT(情報通信技術)(注)を活用した超省力生産、高品質生産を実現する新たな農業」と定義されており、GPSを活用した自動走行システムやセンシング技術を活用した作物の精密管理、アシストスーツによる軽労化、除草ロボットなどによる自動化、作業ノウハウのデータ化など、大変幅広い内容が含まれている(図1)。

(注)Information and Communication Technologyの略。

図1 スマート農業の将来像

 国全体で高齢化が進展しつつある現在、農林水産業をはじめとする多くの産業分野で労働力不足が深刻な問題となっており、わが国最大の農業地域である北海道においても、農業の担い手の減少、高齢化といった課題が確実に進行している(図2)。

図2 北海道の年齢別基幹的農業従事者数の推移(男女計)

 2015年農林業センサスの北海道の年齢別基幹的農業従事者数を見ると、およそ2万5000人を占める60歳代が人数ピークとなっており、今後、この60歳代がリタイアに向かうことから、地域によっては、近い将来、規模拡大への限界感から作付けや農業生産の維持が難しくなるのではないかと危惧されている。こうした地域農業の課題に対応し、省力化や効率化による生産力の強化を図る手段のひとつとしてスマート農業には大きな役割が期待されている。

2.全国に先駆けて技術導入が進む北海道

 さまざまなスマート農業技術がある中で、大型()場で効率的な農作業を進める大規模な水田経営や畑作経営を中心に、人工衛星からの位置情報を基に作業経路を表示するGPSガイダンスシステムや作業経路の保持を自動的に行う自動操舵装置の導入が進んでいる。

 北海道向けの導入台数を見ると、平成20年度から27年度までの累計でGPSガイダンスシステムが5350台、自動操舵装置が1620台となっており(図3)、2015年農林業センサスの道内のトラクター保有台数約12万5000台を分母に導入率を試算すると、GPSガイダンスシステムが4%強、自動操舵装置が1%強となっていることから、この技術は一部の農業者による実証試験的な段階から、多くの農業者に活用が広がる段階に入りつつあると考えている。

図3 GPSガイダンスシステムなどの出荷台数の推移(5社、道内向け)

 今後さらに導入機運が高まると考えられるが、このような新技術は地域の営農の仕組みにマッチさせることで真価を発揮するので、導入に当たっては十分な検討が必要である。

 導入した農業者の事例では、経験の浅い運転者や夜間でも重複や欠落のない正確な農作業が可能となり、作業者の疲労も軽減されるなどの導入効果が確認されている一方、機器が高価で安定した位置情報の取得には電波受信環境の整備が必要なこと、トラクターや作業機械ごとに機器類の設定が異なり、使いこなしが難しいことなど、課題も報告されている。

 早くから取り組みを進めている農業者グループからは「地域の仲間と情報交換をしながら、技術を使いこなすことが重要」との意見が寄せられており、これからの導入に当たっては技術情報の取り込みや導入コストなどを地域全体で検討できるよう、市町村やJAが一定の役割を果たしながら、地域課題の優先順位と将来を見据えて議論を進めることが大切である。

 北海道としては、各地域において実情に合った技術導入が図られるよう、地域農業を考える方々をさまざまな手法でサポートする役割を果たしていきたいと考えている。

3.北海道における取り組み

 そこで道では、平成28年6月に関係者相互の情報交換や共有を目的とした「北海道スマート農業推進協議体」を設置している。この協議体は団体、企業、個人を問わず誰でも参画可能なホームページ上のバーチャルな協議体で、イベント情報や技術情報を発信するほか、これまで農業現場との関係が少なかったITなど先端企業の皆さんと農業関係者の距離を縮め、共同研究や技術支援など協働を促進する場としていきたい。
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ns/gjf/sisinnkyougitai.htm

 また、道は7月に、本別町の道立農業大学校を会場に約500人の来場者を集めた「スマート農業技術現地実演会」を開催し、北海道大学の野口伸教授が開発中のロボットトラクターの実演をはじめ、リモートセンシングやドローンなどの展示・実演を行ったところである(写真12)。

 同校では、この実演会に合わせてJAや市町村の担当者や普及指導員を対象に、座学とGPS装着トラクターの運転実習を組み合わせた「ICT農作業機実践研修」を実施し、地域で検討をリードする人材育成を図っており、29年度は研修内容を一層充実するとともに、7月開催に9月開催を加え研修機会を拡大することとしている。
 

写真1 開発中のロボットトラクター

写真2 北海道大学野口教授(左)と高橋はるみ北海道知事

 さらに、道とホクレンなどで結成した実行委員会が主催して11月30日と12月1日の2日間「北海道スマート農業フェア」を札幌市内の総合展示場で開催した。企業、大学、研究機関など61者の参加をいただき、GPSやリモートセンシング、アシストスーツ、搾乳ロボットなどさまざまな先端技術を分かりやすく展示したほか、大型機械やドローンなどの実演、充実した講師陣によるJA、市町村、普及指導員を対象にした専門セミナー、来場者向けの一般セミナーを実施することができた。2日間で約5000人に来場いただき先端技術と農業現場との距離を縮める一助にできたのではないかと考えている(写真34)。

写真3 スマート農業フェアの会場

写真4 熱気あふれる来場者セミナー

 フェアの来場者アンケートでは「省力化」「経営の効率化」「コスト削減」につながる技術への期待が高まっており、実演や展示で注目を集めたのは「GPSガイダンスシステム」「自動操舵」「ドローン」であることが分かった。

 広い北海道では地域ごとに農業特性が大きく異なることから、地域のニーズに合わせた情報発信に力を入れていきたいと考えている。

おわりに

 先に申し上げたように、担い手の減少や高齢化の進行から地域農業の弱体化が懸念されており、各地域では将来の課題を見越した協業化や法人化、土地基盤整備や農地の集積、省力化技術の例では水稲の直播栽培など、さまざまなチャレンジが始まっている。

 こうしたチャレンジをスマート農業は力強くサポートできると考えており、技術を地域の営農システムに組み込んで「道具」として使いこなすことで、魅力ある地域産業として農業の新たな可能性を引き出すことができるものと期待している。

 今後は、関係の皆さまのお力をお借りしながら北海道スマート農業推進協議体を中核とした取り組みを一層充実していきたい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713