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でん粉の国内需給

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最終更新日:2019年11月11日

でん粉の国内需給

2019年11月

調査情報部

1. 需給見通し

 農林水産省は、「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」(昭和40年法律第109号)により、でん粉に関して適切な価格調整を図るため、半期ごとにでん粉の需給見通しを公表している。9月に公表したでん粉の需給見通しの概要は、次の通り。

 

 

 

(1)でん粉の需要量の見通し

用途ごとのでん粉の需要量の見通しは以下の通り。

【糖化用向けでん粉の需要量】
平成30でん粉年度は、前年度からわずかに増加の見込み

 30でん粉年度は、上期は平年よりも気温が高い傾向で推移していることから、前年度比1万1000トン増、下期は異性化糖の需要の約6割を占める清涼飲料などの家計消費支出が増加傾向であることから、前年度比3万9000トン増と見込まれ、年度計では前年度を4万9000トン上回る178万6000トンと見込まれる。

 令和元でん粉年度は、東京オリンピック・パラリンピックが開催されるため、清涼飲料向けの需要の増加が予想されることから、前年度を2万8000トン上回る181万4000トンと見通している。

【化工でん粉用向けでん粉の需要量】
平成30でん粉年度は、前年度からわずかに増加の見込み

 30でん粉年度は、仕向け先ごとの需要の変動は想定されるものの、全体としては近年の需要がおおむね維持されるとみられ、前年度を2000トン上回る32万5000トンと見込まれる。

 令和元でん粉年度は、仕向け先ごとの需要の変動は想定されるものの、全体としては近年の需要がおおむね維持されるとみられ、前年度を5000トン上回る33万トンと見通している。

【その他用途向けでん粉の需要量】
平成30でん粉年度は、前年度からかなりの程度減少の見込み

 30でん粉年度は、ビール向けの需要が減少したことなどから、前年度を4万4000トン下回る57万トンと見込まれる。

 令和元でん粉年度は、仕向け先ごとの需要の変動は想定されるものの、全体としては近年の需要がおおむね維持されるとみられ、前年度を1万2000トン上回る58万2000トンと見通している。

(2)でん粉の供給量の見通し

各種でん粉の供給量の見通しは以下の通り。

【かんしょでん粉の生産量】
平成30年産は、前年からかなりの程度減少の見込み

 30年産の原料かんしょについては、台風24号による塩害や、収穫圃(ほ)場(じょう)において新たな病害による立枯症状や塊根の腐敗が発生したことから、かんしょでん粉の生産量は、前年を2000トン下回る2万7000トンと見込まれている。

 令和元年産については、作付面積は前年並みが見込まれ、生育も順調であることから、かんしょでん粉の生産量は前年を3000トン上回る3万トンと見通している。

【ばれいしょでん粉の生産量】
平成30年産は、前年からかなりの程度減少の見込み

 30年産の原料ばれいしょについては、夏場の低温などにより小玉傾向となったことに加え、北海道胆振東部地震の発生に伴う停電の影響により、一部の工場で中間生産物(でん粉乳)の廃棄が発生したことから、ばれいしょでん粉の生産量は前年を1万4000トン下回る16万8000トンと見込まれている。

 令和元年産については、作付面積は前年並みが見込まれ、生育も順調であることから、ばれいしょでん粉の生産量は前年を1万5000トン上回る18万3000トンと見通している。

【コーンスターチの供給量】
平成30年でん粉年度は、前年度からわずかに増加の見込み

 コーンスターチの原料となるトウモロコシ(2018年産)は、わが国のコーンスターチ用トウモロコシの過半を供給する米国において、前年から500万トン減の3億6600万トンと見込まれているが、これまでの生産量と比較して高い水準が維持されていること、また、近年の異性化糖生産量が増加傾向であることから、30でん粉年度の供給量はでん粉ベースで前年度を1万1000トン上回る231万4000トンと見込まれる。

 令和元でん粉年度については、2019年産の米国のトウモロコシ生産量は、前年から1300万トン減の3億5300万トンと見込まれているが、これまでの生産量と比較して高い水準であることや、東京オリンピック・パラリンピックの開催に伴い清涼飲料向けの需要の増加が予想されることから、前年度を2万4000トン上回る233万8000トンと見通している。

【輸入でん粉の供給量】(糖化製品、化工でん粉用)
平成30でん粉年度は、前年度からかなりの程度増加の見込み

 30でん粉年度は、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)および日EU経済連携協定(EPA)に基づき新たに設定された関税割当枠が活用されることなどを見込み、前年度を9000トン上回る14万4000トンと見込まれる。

 令和元でん粉年度も、前年度と同様に関税割当枠が活用されることなどを見込み、前年度を9000トン下回る15万3000トンと見通している。

【輸入でん粉の供給量】(その他用)
平成30でん粉年度は、前年度から大幅な増加の見込み

 30でん粉年度は、TPP11協定および日EU・EPAに基づき新たに設定された関税割当枠が活用されることなどを見込み、前年度を3000トン上回る1万2000トンと見込まれる。

 令和元でん粉年度も、前年度と同様に関税割当枠が活用されることなどを見込み、前年度を5000トン上回る1万7000トンと見通している。

【小麦でん粉の供給量】
平成30でん粉年度は、前年度と同水準の見込み

 小麦でん粉は、主に畜水産練製品向けとして供給されており、30でん粉年度は直近までの製造実績の傾向から1万7000トンと見込まれる。

 令和元でん粉年度についても、安定した供給がなされると見込まれ、1万7000トンと見通している。

2. 輸入動向

【タピオカでん粉の輸入動向】
8月の輸入量は前年同月および前月から大幅に減少
 
財務省「貿易統計」によると、2020年8月のタピオカでん粉の輸入量は、7120トン(前年同月比35.7%減、前月比54.7%減)と、前年同月および前月から大幅に減少した(図1)。

 輸入先国はタイ、ベトナムおよび台湾の3カ国で、輸入量は次の通りであった。

タイ       6791トン
 (前年同月比38.4%減、前月比56.1%減)
ベトナム      323トン
 (同6.3倍、同49.3%増)
台湾         6トン
 (同2.2倍、同12.5%増)

 

 2020年8月の1トン当たりの輸入価格は、4万5171円(前年同月比4.8%安、前月比0.6%安)と、前年同月からやや下落した(図2)。

 国別の1トン当たりの輸入価格は、次の通りであった。

タイ     4万4762円
 (前年同月比5.6%安、前月比1.0%安)
ベトナム  5万1208円
 (同9.5%高、同4.2%高)
台湾     17万4843円
 (同3.2%高、同51.9%安)

 

【サゴでん粉の輸入動向】
8月の輸入量は前年同月から大幅に減少
 
財務省「貿易統計」によると、2020年8月のサゴでん粉の輸入量は、1012トン(前年同月比55.2%減、前月比5.3%減)と、前年同月から大幅に減少した(図3)。

 輸入先国はマレーシアおよびインドネシアの2カ国で、輸入量は次の通りであった。

マレーシア   940トン
 (前年同月比50.1%減、前月比5.7%減)
インドネシア   72トン
 (同81.0%減、前月同)

 

 2019年8月の1トン当たりの輸入価格は、5万7750円(前年同月比5.8%安、前月比0.2%安)と、前年同月をやや下回った(図4)。

 国別の1トン当たりの輸入価格は、次の通りであった。

マレーシア   5万7959円
 (前年同月比6.6%安、前月比0.2%高)
インドネシア  5万6709円
 (同0.3%安、同2.7%安)

 

【ばれいしょでん粉の輸入動向】
8月の輸入量は前年同月からわずかに増加した一方、前月から大幅に減少

 財務省「貿易統計」によると、2020年8月のばれいしょでん粉の輸入量は1494トン(前年同月比1.2%増、前月比38.2%減)と、前年同月からわずかに増加した一方、前月から大幅に減少した(図5)。

 輸入先国はドイツ、デンマーク、オランダおよび米国の4カ国で、輸入量は次の通りであった。

ドイツ      748トン
 (前年同月比40.4%減、前月比35.8%減)
デンマーク  584トン
 (同26.5倍、同47.5%減)
オランダ    160トン
 (同20.0%減、同14.3%増)
米国        2トン
 (前年同月および前月輸入実績なし)

 

 2020年8月の1トン当たりの輸入価格は、8万8871円(前年同月比6.6%高、前月比6.5%高)と、前年同月をかなりの程度上回った(図6)。

 国別の1トン当たりの輸入価格は、次の通りであった。

ドイツ       8万9937円
(前年同月比7.9%高、前月比9.2%高)
デンマーク    8万7889円
(同6.6%高、同3.6%高)
オランダ      8万5463円
(同2.5%高、同4.3%高)
米国          25万円
(前年同月および前月輸入実績なし)

【でん粉誘導体の輸入動向】
8月の輸入量は前年同月からわずかに、前月から大幅に減少

 財務省「貿易統計」によると、2020年8月のでん粉誘導体の輸入量は、2万4852トン(前年同月比2.3%減、前月比26.0%減)と、前年同月からわずかに、前月から大幅に減少した(図7)。

 でん粉誘導体の輸入先国は19カ国で、最大の輸入先国はタイであった。主要輸入先国からの輸入量は次の通りで、タイが輸入量の約7割を占めており、次いでベトナム、ドイツとなっている(表3)。

 

 2020年8月の1トン当たりの輸入価格は、9万1533円(前年同月比3.6%安、前月比0.4%高)と、前年同月をやや下回った。

 

【デキストリンの輸入動向】
8月の輸入量は前年同月および前月から大幅に増加

 財務省「貿易統計」によると、2020年8月のデキストリンの輸入量は、1120トン(前年同月比50.9%増、前月比40.2%増)と、前年同月および前月から大幅に増加した(図8)。

 デキストリンの輸入先国は8カ国で、輸入量は上位輸入先国の数量および各国のシェアも含め、月ごとの変動が大きい。
 
 上位輸入先国からの輸入量は次の通りで、ベトナムで輸入量の約5割を占めている(表4)。

 

 2020年8月の1トン当たりの輸入価格は、9万8218円(前年同月比27.1%安、前月比10.0%安)と、前年同月を大幅に下回った。

 

【コーンスターチ用トウモロコシの輸入動向】
8月の輸入量は前年同月および前月から大幅に減少

 財務省「貿易統計」によると、2020年8月のコーンスターチ用トウモロコシの輸入量は、22万1065トン(前年同月比16.3%減、前月比19.9%減)となり、前年同月および前月から大幅に減少した(図9)。

 輸入先国は、米国および南アフリカの2カ国で、国別の輸入量は次の通りであった。

米国     19万1035トン
 (前年同月比24.3%減、前月比30.8%減)
南アフリカ    3万30トン
 (前年同月および前月輸入実績なし)

 2020年8月の1トン当たりの輸入価格は、2万1366円(前年同月比14.6%安、前月比6.8%安)と、前年同月をかなり大きく下回った。
 
 国別の1トン当たりの輸入価格は、次の通りであった。

米国      2万1467円
 (前年同月比14.5%安、前月比6.3%安)
南アフリカ    2万724円
 (前年同月および前月輸入実績なし)

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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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