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2. 日本の品目別主要輸入先国の動向

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最終更新日:2020年11月10日

2. 日本の品目別主要輸入先国の動向

2020年11月

 本稿中の為替レートは2020年9月末日TTS相場の値であり、1米ドル=107円(106.80円)、1タイバーツ=3.42円、1ユーロ=126円(125.67円)である。

トウモロコシ・コーンスターチ

世界

【需給動向:トウモロコシ】
2020/21年度の世界のトウモロコシ期末在庫量、前月予測からわずかに下方修正し、前年度比1.2%減

 2020年10月9日、米国農務省世界農業観測ボード(USDA/WAOB)および米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は、2020/21年度の世界のトウモロコシ需給予測値を更新した(表2)。

 これによると、2020/21年度の世界のトウモロコシ生産量は11億5882万トン(前年度比3.8%増、前月比0.3%減)へわずかに下方修正された。国別に見ると、米国が収穫面積および単収の下方修正により452万トン、ウクライナが乾燥・高温気候により単収の減少が見込まれるため200万トン、それぞれ前月から下方修正された。下方修正されたとは言え、米国(3億7395万トン、前年度比8.1%増)、ブラジル(1億1000万トン、同7.8%増)およびウクライナ(3650万トン、同1.7%増)で前年度の生産量を上回ることから、記録的に大きな生産量となる見通しである。

 輸出量は、世界全体で1億8447万トン(前年度比8.2%増、前月比0.8%減)へわずかに下方修正された。国・地域別に見ると、ウクライナおよびEUが生産量の見直しで下方修正された。輸入量は、世界全体で1億7781万トン(同6.4%増、同0.9%減)へわずかに下方修正された。地域別に見ると、EUで100万トン下方修正された。その要因として、EU域内においてトウモロコシの収穫への期待感が残されていることや、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により宿泊施設や飲食店などの需要が減退していることが挙げられている。

 消費量は、世界全体で11億6260万トン(同2.7%増、同0.2%減)へわずかに下方修正されたものの、生産量を378万トン上回ることとなった。国別に見ると、米国がCOVID-19による移動規制などでガソリン需要が低下したことにより、エタノール向けが減少し、254万トン下方修正された。

 期末在庫は、世界全体で634万トン下方修正された結果、3億45万トン(同1.2%減、同2.1%減)と見込まれている。国別に見ると、生産量および消費量が引き下げられる米国で853万トン、前年度の期末在庫が引き下げられる中国で15万トン下方修正された。
 

米国

【需給、価格動向:トウモロコシ】
2020/21年度の米国トウモロコシ生産量、前月予測からわずかに下方修正

 2020年10月9日、USDA/WAOBは、2020/21年度(9月〜翌8月)の米国の主要農作物需給予測値を更新した。このうち、米国のトウモロコシ需給見通しは、次のとおりである(表3)。

 生産量は、収穫面積および単収がわずかに下方修正されたことから、147億2200万ブッシェル(3億7395万トン、前年度比8.1%増、前月比1.2%減)へわずかに下方修正された。しかし、前年度からはかなりの程度増加する見込みであり、これまでの統計で最も生産量の多かった2016/17年度の151億4800万ブッシェル(3億8477万トン)をわずかに下回る水準となっている。

  国内消費量は、エタノール向けがガソリン需要の伸び悩みにより、飼料など向けが生産者平均販売価格の上昇により、それぞれ5000万ブッシェル下方修正されたため、122億5000万ブッシェル(3億1116万トン、同1.2%増、同0.8%減)へわずかに下方修正された。

 輸出量は、前月の予測から変わらず、23億2500万ブッシェル(5906万トン、同30.8%増、前月同)と前年度から大幅に増加すると見込まれている。

 期末在庫は、9月1日現在の在庫調査に基づく、前年度の総消費量(主に飼料など向け)の上方修正により期首在庫が下方修正されたことや、生産量の下方修正により、21億6700万ブッシェル(5504万トン、同8.6%増、前月比13.4%減)とかなり大きく下方修正された。その結果、期末在庫率(総消費量に対する期末在庫量)は14.9%(同0.5ポイント増、同2.2ポイント減)へ下方修正された。

 また、生産者平均販売価格は、生産量が下方修正されたことを受けて、前月より0.1米ドル高い1ブッシェル当たり3.60米ドル(385円。1キログラム当たり15.2円)と予測された。

(注)1ブッシェルを約25.401キログラムとして農畜産業振興機構が換算。
 

表3

【貿易動向:トウモロコシ】
7月の輸出量、前年同月から大幅に増加するも、前月よりかなり大きく減少

 2020年7月のトウモロコシ輸出量は、435万4454トン(前年同月比41.5%増、前月比13.7%減)と前年同月から大幅に増加したものの、前月よりかなり大きく減少した。同月の主要国別輸出量は、表4の通りである。

 また、同月の輸出価格(FAS(注))は、1トン当たり166.7米ドル(1万7837円、同16.2%安、同1.9%安)と前年同月からは大幅に、前月からはわずかに下落した。

(注)Free Alongside Shipの略。貨物を船側に付けた段階で支払われる価格。FOB価格と異なり、横持ち料(倉庫間の移動費)、積み込み料などは含まれない。





【貿易動向:コーンスターチ】
7月の輸出量は前年同月および前月から大幅に増加

 2020年7月のコーンスターチ輸出量は、1万2662トン(前年同月比44.2%増、前月比32.8%増)と前年同月および前月から大幅に増加した。同月の主要国別輸出量は、表5の通りである。

 同月の輸出価格(FAS)は、1トン当たり635.9米ドル(6万8041円、同3.4%安、同9.2%安)と前年同月からはやや、前月からはかなりの程度下落した。

 なお、米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると(注1)、同国の代表的市場の一つである中西部市場における2020年7月の製粉業者の純費用は、1ポンド(注2)当たり4.14セント(4.4円、前年同月比52.0%安、前月比15.1%高)と前年同月から大幅に下落したものの、前月よりかなり大きく上昇し、2018年の水準に近づいた。

(注1)直近の情報を入手できなかったため、9月号の内容を再掲載する。
(注2)1ポンドは約0.45キログラム。

 


タピオカでん粉

タイ

【生産動向】
2019/20年度のキャッサバ生産量を下方修正

 タイ農業協同組合省農業経済局(OAE)の2020年9月現在の予測によると、2019/20年度(10月〜翌9月)のキャッサバの収穫面積は870万ライ(139万ヘクタール、前年度比0.3%増、前月比0.5%減)と前年度からほぼ横ばいで推移すると見込まれる。しかし、干ばつの影響により、単収は1ライ当たり3.14トン(同12.5%減、同4.0%減)、生産量は2735万トン(同12.0%減、同4.1%減)と、ともに前月予測からやや下方修正され、前年度からかなり大きく減少すると見込まれる(表6)。

(注)1ライを約0.16ヘクタールとして農畜産業振興機構が換算。
 


【価格動向】
国内価格、前年同期をわずかに下回るも、安定して推移

 タイタピオカでん粉協会(TTSA)によると、2020年10月第2週のタピオカでん粉の国内価格は、1キログラム当たり13.1バーツ(45円、前年同期比1.5%安、前週同)であった。2020年は同12.6〜13.1バーツ(43〜45円)の間で安定して推移している(図3)。

図3

【貿易動向】
8月の輸出量、前年同月からはかなりの程度、前月からは大幅に増加

 2020年8月のタピオカでん粉輸出量は、24万7893トン(前年同月比8.5%増、前月比44.1%増)と、前年同月からはかなりの程度、前月からは大幅に増加した。同月の主要国別輸出量は、表7の通りである。

  同月の輸出価格(FOB・バンコク)は、1トン当たり448.8米ドル(4万8022円、同0.3%安、同0.8%高)と、前年同月からわずかに下落したものの、前月よりわずかに上昇した。

表7

図 タイのタピオカ

ベトナム

【生産動向(注1)
キャッサバモザイク病が拡大

 ベトナムの調査会社AgroMonitorによると、2020年3月より同国北部、4月より同国南部で作付けされた2020/21年度(8月〜翌7月)のキャッサバは、塊根の成長期にある。しかし、8月下旬においても、中央直轄5都市および58省のうち、1市18省の合計5万7986ヘクタールでキャッサバモザイク病(注2)が確認されている。そのうち7725ヘクタールで特に被害が大きく、今後も注視する必要がある。

(注1)2020年8月15日時点の推計値が公表されなかったため、今月号ではベトナムのキャッサバ作付面積の表は掲載しない。
(注2)ウイルスの感染によって葉に黄化斑ができる病気で、光合成が十分に行われず、最終的には作物自体が枯れてしまうことから、収穫量が大幅に減少する。ベトナムのほかに、近隣国のタイ、カンボジアでも流行している。



【貿易動向】
8月の輸出量は前年同月および前月から大幅に減少

 AgroMonitorによると、2020年8月のタピオカでん粉輸出量は、11万8644トン(前年同月比31.0%減、前月比31.4%減)と、前年同月および前月から大幅に減少した。同国の主要国別輸出量は、表8の通りである。

表8

図 ベトナムのタピオカでん粉

ばれいしょでん粉

EU

【貿易動向】
7月の輸出量、前年同月からは大幅に、前月からはかなりの程度増加

 2020年7月のばれいしょでん粉輸出量(注)は、2万6805トン(前年同月比16.6%増、前月比7.4%増)と前年同月からは大幅に、前月からはかなりの程度増加した。同月の主要国別輸出量は、表9の通りである。

 また、同月の輸出価格(FOB)は、1トン当たり684ユーロ(8万6184円、同16.4%安、同0.1%高)と前年同月から大幅に下落したものの、前月よりわずかに上昇した。

(注)EU27カ国の輸出量。輸出先の不明なものを除く。

表9

図 EUのばれいしょでん粉


コラム デンマークにおけるでん粉原料用ばれいしょの生産動向


 世界最大のばれいしょでん粉生産地域である欧州では、ドイツ、オランダ、デンマークおよびフランスの4カ国がばれいしょでん粉の主産国として挙げられる。

 デンマークは、北欧の最南端に位置し、限られた作物しか育たない冷涼かつ多雨な気候環境にある。ばれいしょはこのような土地に適した作物であり、ユトランド半島を中心に生産が盛んに行われている。中でも、でん粉原料用ばれいしょは、ばれいしょでん粉工場が集中している中央ユラン地域で最も多く栽培されている(コラム−図1)。

 デンマーク統計局によると、干ばつの影響を受けて減産となった前年からの反動で、2019年のばれいしょ生産量は241万トン(前年比33.3%増)と大幅に増加した(コラム−図2)。そのうち、でん粉原料用ばれいしょは168万トン(同25.7%増)と7割を占め、近年、生産量は増加傾向で推移している。これは、2012年のEU共通農業政策(CAP)の改革により、でん粉の生産割当制度などが廃止されたことや(注)、近年、小麦や大麦といった穀物よりも買取価格が高いでん粉原料用ばれいしょへの転作が進んでいることなどが要因として挙げられる。


(注)詳細は、『砂糖類・でん粉情報』2016年3月号「CAP改革後のばれいしょでん粉主要生産国の動向〜大きな変革期を迎えたEU〜」(https://www.alic.go.jp/joho-d/joho08_000591.html)および同2020年1月号「EUのでん粉生産の状況〜ばれいしょでん粉を中心に〜」(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002121.html)を参照されたい。

 





 

化工でん粉

 デキストリンおよびその他の化工でん粉(以下「化工でん粉」という)の主要輸出国の、主要仕向け先国別輸出量および輸出価格は以下の通りである。

タイ

【貿易動向】
8月の輸出量、前年同月からはやや、前月からはかなり大きく増加

 2020年8月の化工でん粉の輸出量は、8万4694トン(前年同月比3.1%増、前月比15.9%増)と前年同月からはやや、前月からはかなり大きく増加した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表10の通りである。

表10

図 タイの化工でん粉

米国

【貿易動向】
7月の輸出量、前年同月からかなりの程度減少するも、前月よりかなりの程度増加

 2020年7月の化工でん粉の輸出量は、2万5195トン(前年同月比7.3%減、前月比7.5%増)と前年同月からかなりの程度減少したものの、前月よりかなりの程度増加した。同月の主要国別輸出量は、表11の通りである。

表11

図 米国の化工でんぷん

中国

【貿易動向】
8月の輸出量、前年同月からは大幅に、前月からはかなりの程度減少

 2020年8月の化工でん粉の輸出量は、5943トン(前年同月比51.1%減、前月比6.3%減)と前年同月からは大幅に、前月からはかなりの程度減少した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表12の通りである。

表12

図 中国の化工でん粉

EU

【貿易動向】
7月の輸出量、前年同月からかなりの程度減少するも、前月よりわずかに増加

 2020年7月の化工でん粉の輸出量(注)は、4万9668トン(前年同月比8.1%減、前月比2.0%増)と前年同月からかなりの程度減少したものの、前月よりわずかに増加した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表13の通りである。

(注)EU27カ国の輸出量。輸出先の不明なものを除く。

表13

図 EUのでん粉

豪州

【貿易動向】
7月の輸出量、前年同月から大幅に減少するも、前月よりかなりの程度増加

 2020年7月の化工でん粉の輸出量は、1937トン(前年同月比30.6%減、前月比7.5%増)と前年同月から大幅に減少したものの、前月よりかなりの程度増加した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表14の通りである。

表14

図 豪州の化工でん粉

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農畜産業振興機構  調査情報部  (担当:企画情報グループ)
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