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国内外におけるキャッサバ生産とその諸問題

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最終更新日:2020年12月10日

国内外におけるキャッサバ生産とその諸問題

2020年12月

鹿児島大学農学部 教授 坂上 潤一
教授 北原 兼文
農林水産学研究科 修士課程 田丸 翔太朗

【要約】

 地球規模の気候変動にあって、農業生産を大きく転換せざるを得ない時代がすぐ近くまで迫っているのではないか。また、それに伴って食生活の変化をも覚悟をしなければいけない。「21世紀の作物」と評される熱帯作物のキャッサバは、不良環境に強く高収量であることから、アフリカ、アジアおよび中南米など熱帯の広範囲で栽培されている。キャッサバは、収穫物のすべての部位を利用できる点で、農業・工業的価値は高い。われわれは、将来的な環境変化を見据えて、国内でキャッサバ生産を持続的に営む方法を開発している。また、国産キャッサバからとれるでん粉には他にはない高機能、高品質な特徴があり、今後の地域振興にも期待が持てる。

はじめに

 地球温暖化にあって、南九州においては、長期の気温上昇によって将来的に熱帯化の可能性が十分に考えられることから、熱帯原産作物の適応性を明らかにして、地域資源化に取り組むことは重要である。また、近年は食の多様化が進み、料理のバリエーションが豊富になってきており、国内においてもさまざまな熱帯作物を材料にした食材が活用されている。近年ブームとなっているタピオカドリンクはその一例である。タピオカドリンクに含まれる粒状のタピオカパールは、熱帯原産のキャッサバ(Manihot esculenta Crantz)の生産物をでん粉に加工した原料(タピオカでん粉)から製造したものである。キャッサバは、キントラノオ目トウダイグサ科イモノキ属の多年性低木であり、現在は世界中の熱帯および亜熱帯地域で広く栽培され、世界5億もの人々の主要な食料となっている1)。マニオク、マンジョカ、カサーバとも呼ばれている。キャッサバは高温や乾燥に強く、酸性土壌や低肥沃(ひよく)土壌でも生育可能であることから、将来的に地球温暖化や食料問題の解決に大きく貢献する作物として注目され、FAO(Food Agriculture Organization)において「21世紀の作物」と評されるなど、世界的な期待が高まっている。キャッサバの用途は、食用、飼料用の他、工業用でん粉や、バイオマス燃料の原料など多岐にわたる。キャッサバには複数の原産地があることを示す研究結果がある一方で、栽培種はブラジルのアマゾンの南端地域に由来することを示唆する報告もある2)。栽培化は約1万年前とされており、最も古くから栽培されている作物の一つである1)。日本におけるタピオカパールは輸入品で、タピオカでん粉も輸入品だが、安全・安心、高品質に対する消費者の関心に対応した、国内産キャッサバは一定の需要が見込める。また、SDGs(持続可能な開発目標)を実現させていくためにも、環境と調和したキャッサバ栽培が実施できれば温室効果ガス削減などに効果があり、キャッサバ加工品の普及は、観光資源としても有望であることは間違いない。本稿は、世界的に高いニーズのある熱帯作物キャッサバについて、その栽培の特徴を紹介するとともに、新しいでん粉資源としての可能性について、筆者の見聞を踏まえて紹介したい。

1.キャッサバの収穫面積、収量および生産量の動向

 熱帯・亜熱帯地域の主食として世界の食を支えるキャッサバの生産量(2018年)は、全世界で2億7800万トンあり、地域別に見ると、生産量全体の61%はアフリカ、次いで29%はアジア、10%は中南米が占めている(図1)。全世界のキャッサバ生産量は1961年から2018年までの間で3.9倍に増加した。地域別では、アフリカが5.4倍、アジアが4.5倍増加した。その他の主要作物と比較すると、キャッサバはトウモロコシ(同期間の増加率5.6倍)の次に増加率が大きい。収穫面積については、同期間に世界全体で2.6倍に拡大し、その中でも2011年以降急激に拡大したアフリカの増加率が最も大きく(3.4倍)、それ以外の地域の増加率は比較的小さかった(1.2〜1.7倍)(図2)。一方で、収量については、同期間に世界全体で1.5倍に増加し、地域別ではアジアの2.7倍、次にアフリカの1.6倍の順に増加した(図3)。これら過去約半世紀のキャッサバ生産の動向からは、アフリカでは面積拡大、アジアでは収量の増加によって生産量が増大したことが分かる。特にアジアでは1995年以降に急激に収量が増大したことが特徴的である。

 

 

 

2.アフリカにおけるキャッサバ栽培と加工

 アフリカは世界的に見てイモ類の大消費地域で、西アフリカから中部アフリカを中心に、キャッサバやヤムイモが大量生産されている(写真1)。キャッサバの収量は他の主要作物と比較して高いことが知られており、また、収穫面積当たりのカロリー生産量は、他のイモ類や穀類より多く、でん粉質の生産効率は高いことが特徴である。これらのことが熱帯の開発途上地域でキャッサバが長年にわたり普及・栽培されている要因の一つであると考えられる。通常は、収穫後に切り取った茎をさらに20センチメートル程度に切り分けた苗を挿し木して栄養繁殖が行われるが、茎の部位によって発芽力は異なっている。ウガンダの国立作物資源研究所で実施したフィールド試験では、茎の中央部位から切り取った苗木の発芽およびその後の成長がその他の部位と比較して優れていた。キャッサバ生産は、苗木の調達以外に初期コストが掛からず、栽培管理や手入れも複雑ではない。特に、生育中期から後期にかけては、樹冠が拡張することで遮光効果が得られ、雑草競合に利点がある。また、乾燥土壌や高温条件においても適応しており、熱帯の少雨地域に欠かせない主要作物となっている。一方で、耐寒性はさほど強くなく、日本など温帯地域における導入・普及の足かせとなっている。

 キャッサバは、甘味種と苦味種がある。苦味種には青酸性の毒(青酸配糖体、シアン化合物)があり、生で食べると危険だが、甘味種の青酸配糖体含量は比較的少ないため、現地では生で食べる人もいる。アフリカでは、青酸量の多い苦味種が多く栽培される傾向がある。品種によっては、特に外皮に高レベルの青酸配糖体が含まれているため、その対策として収穫後、キャッサバの塊根の表皮をむき調理するか、あるいはすりおろして水に浸して発酵させ揮発性シアン化合物を除去する方法、さらには天日干しで乾燥させる方法を用いる。いずれにしても、食用とするためには毒抜き処理が必要なことや、表皮や芯を除去した芋はその場で加工しなければ腐ってしまうなど、制約が大きい作物でもある。キャッサバ塊根は炭水化物が主成分であり、その加工品は高エネルギーな食材である。一方で、キャッサバは塊根だけでなく、葉も重要な食材として利用されている3)

 

3.国内におけるキャッサバ栽培

 筆者らは、国内におけるキャッサバ栽培が、本州の一部で取り組まれていることを確認しているが、その栽培面積や生産量など正確な実態については明らかでない。本稿においては、鹿児島県の徳之島でキャッサバの生産・加工から販売までを行っている合同会社あまみ徳之島絆ファーム(以下「徳之島絆ファーム」という)の取り組みについて紹介する。鹿児島市から南へ468キロメートルに位置する徳之島は、徳之島町、伊仙町、天城町の3町で構成され、面積が248平方キロメートル、海岸延長(周囲) 89キロメートル、人口約2.3万人(2019年)の農業が中心の島(しょ)である。農業は主にさとうきびを基幹作物に、ばれいしょ、野菜や果樹などと肉用牛との複合経営が行われている。徳之島絆ファームは、株式会社カネタ・グループの一つで、キャッサバの他にたんかん、ばれいしょ、落花生やきくらげなどを生産・販売している。徳之島でキャッサバ栽培を本格的に始めた吉玉誠一氏によると、1983年ごろに伊仙町にて自生しているキャッサバを発見し、それを持ち帰り6年間栽培したところ、生育の安定性と収量の増加が認められたために、その後に栽培面積を拡大した。この自生していたキャッサバについては、戦時中に沖縄やサイパンから持ち込まれた可能性が高いとのことである。また、食料難の時期に島内においてキャッサバが実際に食べられていたことなどから、戦後もある一定期間にわたって栽培を継続していたと推察される。その後の農業の多角化や食料供給量の安定化などにより、島内のキャッサバ栽培が衰退していったと考えられる。現在、徳之島絆ファームでは、生産者5人が約40アールの栽培面積で、年間に約1500キログラムの生産量を上げている(写真2)。作付けしているキャッサバ種は、島内で自生していた在来で細葉のホワイト、ブラジル原産で広葉のイエロー、およびペルー原産で沖縄から持ち込まれた細葉のイエローの3種である(写真3)。栽培法は、植え付け前に苗木に殺菌・殺虫剤と発根剤を施し、ビニールハウスまたは露地の(うね)に斜め植えする。また、雑草発生防止と保温の目的で、植え付け前にはポリマルチを畝に設置する(写真4)。通常は、3・4月に植え付け、翌年の1・2月に収穫する。塊根の収穫後は直ちに苗木の採取を行う(写真5)。肥料は堆肥および鶏ふんを施用し、化学肥料の投入を抑制している。栽培上の制限要因は、葉の縮れ状態から、キャッサバ・モザイク病に類似したウイルス病や不特定な病害虫などが挙げられる。その他に、冬の低温、台風による風害などの気象条件が考えられる。

 

 

 

 

4.鹿児島大学でのキャッサバの研究の概要

(1)キャッサバ栽培技術体系の開発

 鹿児島大学農学部の熱帯作物学研究室では、国内外の研究機関や生産者らと共同でキャッサバ研究を進めている。まず、国内のキャッサバ栽培技術体系の開発において、キャッサバの生育の特徴を明らかにするために、生育状態を簡易的に評価する方法として、葉緑素計を用いて葉色を診断し、クロロフィル含量を推定することによって、植物体の健康状態を非破壊でモニタリングするという方法を開発した4)。この方法を活用して、キャッサバの生育状態や施肥時期の判定に応用することが可能となった(写真6)。アフリカのウガンダにおけるキャッサバの安定的高収量の維持を目的に、苗木の植え付け方法の最適化を試みた。その結果、苗木の髄部分の大きさと採取部位が、挿し木後の初期生育に影響を及ぼしていることを明らかにした。また、地域の農家圃場(ほじょう)における栽培実証のために、南さつま市の農家圃場においてキャッサバ収量の品種間の比較を試みた(写真7)。現在は、外国産と国産のキャッサバの生産ポテンシャルと品質についての比較検討を行っている(写真8)。

 

 

 

(2)キャッサバでん粉の特徴の評価

 キャッサバでん粉の粒径は2〜30マイクロメートルの幅を持ち、粒子の形状は多面形や釣鐘形をしたものが多く、比較的かんしょでん粉に似ている。表には、でん粉の基本特性値5)とラピッドビスコアナライザー(RVA)による粘度特性値を示す。3種の根茎でん粉において、キャッサバでん粉はアミロース含量が低く、グルコースの水酸基に結合するリン酸含量が低い。粘度特性では、粘度上昇温度がばれいしょでん粉と類似し、最高粘度はやや低く、老化性の指標であるセットバック値は低い。キャッサバでん粉の糊液は、透明度が高く、えい糸性に優れる一方、ゲル形成能は弱いなどの特徴を持つ。また、キャッサバでん粉のアミロースとアミロペクチンは両成分ともに老化性の低い分子であることや6)、構造的にはアミロペクチンに短い構成単位鎖の多いことが報告されている7)。筆者らは、アミロペクチンの短鎖(重合度<10)は、短すぎて会合しにくく、でん粉粒としては不安定要素となるため糊化しやすくなり、一方、糊化後に水和した短鎖は保水性が保たれるため老化しにくくなると考察している。キャッサバでん粉は、アミロペクチンに短鎖が多く、加えてアミロース含量が低いことから優れた耐老化性を示すものと思われる。その他、キャッサバにはさまざまな系統が存在することが知られており、それらのでん粉特性には多様性のあることが報告されている。特に、モチ種のキャッサバでん粉も見出されており、その物理化学特性と用途開発には興味が持たれる。これらの系統別キャッサバでん粉の多様性が報告されている8)

 図4には、タイ産のキャッサバでん粉(タイ東北部産および中部産、品種不明)と徳之島で普及されているキャッサバ3品種(ホワイト、ペルー原産イエロー、ブラジル原産イエロー)の国産でん粉のRVA粘度曲線を示す。タイ産のキャッサバでん粉の粘度曲線は比較的類似していた。一方、3品種の国産でん粉は、いずれも最高粘度がタイ産でん粉より高く、高粘度タイプのでん粉も見出された。注目すべきは、国産でん粉は粘度上昇温度が低くなっていることである。このことは、同一種の植物でん粉において、生育温度が低くなると糊化温度が低くなることが知られており9)、タイと日本の気候条件に対応した変化と思われる。国産キャッサバでん粉は、生育環境の相違により分子構造と糊化・老化性の変化が示唆され、現在、物理化学特性について精査している。

 キャッサバは、熱帯性作物として多収・高でん粉であり、そのでん粉はコストパフォーマンスと固有特性の優位性を持つ。そのため、キャッサバでん粉の利用は多岐にわたり、天然でん粉や加工でん粉などの食品用途や繊維・製紙・段ボール製造などの工業用途、糖化・発酵原料として利用されている。

 

 

おわりに

 キャッサバの世界的潮流を見てみると、キャッサバでん粉の需要が急増していて、供給が追い付かなくなっている。これは、キャッサバの用途がバイオエタノールをはじめ、接着剤やバイオプラスチックなどの工業用原料にもなるなど多岐にわたるためである。また、食用に加えて、家畜の飼料にもなるなど、将来的な食料資源としても価値がある。キャッサバは適地であれば栽培が容易で、その導入は持続的な低投入作物栽培体系において効果的である。その点から、熱帯の開発途上地域におけるキャッサバ生産は、食料安全保障上の効果が大きいことが予想され、地域に合致した適正品種の導入と栽培管理方法の適性化は、今後の栽培地拡大、生産性の増大に貢献すると考えられる。国内においては、国産キャッサバの一定のニーズがあることからも、低温問題などを解決して国産キャッサバを安定的に栽培することが期待できる。その結果、利用の一端として食用やでん粉利用があり、鹿児島のかんしょでん粉産業とともに、国産、高機能、高品質をキーワードとして新しい地域産業の振興に大い役立てることが可能となる。

引用・参考文献

1)Ferguson ME, Shah T, Kulakow P, Ceballos H (2019) 「A global overview of cassava genetic diversity」 PLOS ONE 14(11): e0224763. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0224763
2)Olsen, K.M., Schaal, B.A. (1999)「Evidence on the origin of cassava: phylogeography of Manihot esculenta」『Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.』96:pp5586-5591.
3)志和地弘信(2008)「キャッサバとヤムイモにおける生産性向上の技術と利用の新展開」『熱帯農業研究』1:pp42-48.
4)田丸翔太朗、籔田伸、坂上潤一(2019)「キャッサバの葉の厚さがクロロフィル含量とSPAD値の相関性に及ぼす影響」『日本作物学会講演会要旨集』248:pp115-115.
5)Kitahara, K. et al.(1997)「Characteristics adsorption of some compounds into sweetpotato starch and their participation in starch quality」『Oyo Toshitsu Kagaku』44:pp497-504.
6)鈴木綾子、竹田靖史、檜作進(1985)「タピオカ,ジャガイモ,クズ澱粉の分子構造と老化性の関係」『澱粉科学』32:pp205-212.
7)不破英次ら編集(2003)『澱粉科学の事典』朝倉書店pp21-33.
8)Fan Zhu.(2015)「Composition, structure, physicochemical properties, and modification of cassava starch」『Carbohydrate Polymers』122:pp456-480.
9)野田高弘(2001)「サツマイモ澱粉特性と品種ならびに栽培環境要因に関する研究」『J. Appl. Glycosci.』48:pp233-238.
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