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世界のでん粉需給動向(2019年度)

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最終更新日:2021年1月12日

世界のでん粉需給動向(2019年度)

2021年1月

調査情報部

【要約】

 2019年の世界のでん粉生産量は、前年からやや増加し、2000年以降、一貫して増加傾向にある。種類別に見ると、ばれいしょでん粉が前年をかなりの程度下回ったが、その他の種類で前年を上回り、特に市場規模が3番目に大きいタピオカでん粉が、最も高い増加率を示した。消費量も生産量と同様、増加傾向にあり、2019年にばれいしょでん粉を除いたすべてのでん粉で増加した。2020年は、新型コロナウイルス感染症の影響により需要は落ち込むものの、2021年には、いずれのでん粉においても回復すると予測されている。

はじめに

 本稿では、世界の主要な天然でん粉(コーンスターチ、タピオカでん粉、ばれいしょでん粉、小麦でん粉)および化工でん粉の2019年の生産・消費動向および2021年までの消費見通しについて、農産物の需給などを調査する英国の調査会社LMC Internationalの調査結果を中心に報告する。

○本稿に関する留意点
・でん粉は、需要に応じ生産・供給される状況にあり、世界全体でみるとおおむね生産量≒消費量であることから、本稿においては、在庫については考慮していない。
・本稿における報告対象は、天然でん粉および化工でん粉であり、糖化製品は、含まない。
・重量は、すべて製品ベースである。

1.生産概況

 2019年の世界のでん粉生産量は、4398万トン(前年比3.3%増)とやや増加した(図1)。このうち、コーンスターチが全体の約44%と最も多く、次いで、化工でん粉とタピオカでん粉がともに約21%、小麦でん粉が約7%、ばれいしょでん粉が約4%となっている。

 増減の推移を見ると、でん粉全体では、2000年の調査以降、一貫して増加傾向にある。種類別に見ると、ばれいしょでん粉は前年比6.2%減とかなりの程度減少したものの、その他のでん粉が前年を上回り、特に市場規模がコーンスターチ、化工でん粉に次いで大きいタピオカでん粉は、前年比6.0%増と最も高い増加率を示した(表1)。

 でん粉は、需要に応じ生産・供給される状況にあることから、その価格は需給バランスよりも原料価格の変動による影響を大きく受ける。2019年の各種でん粉の輸出単価(世界平均:米ドル換算)を見ると、タピオカでん粉のみ前年を下回った(図2)。これは、主要輸出国のタイで原料となるキャッサバが豊作であったことが背景にある。しかし、下落傾向にあった2017年までの価格と比較すると、依然として高い水準にある。

 

 

 

2.種類別動向

(1)コーンスターチ

 コーンスターチの生産は、アジアが生産量全体の7割強を占め、次いで北米、欧州とそれぞれ1割強となっている(表2)。2019年の地域別生産量を見ると、アフリカ、北米、大洋州以外の地域で前年を上回った。

 コーンスターチの最大の生産国である中国では、食品産業および工業分野からの需要の高まりにより、生産量が堅調に伸びており、2019年は世界の生産量の5割を超える約1050万トンに達した。輸出も2019年は堅調に推移し、ほとんどの製品はタイのキャッサバでん粉と競合する東南アジアの国々に出荷された。中国産コーンスターチがタイ産キャッサバでん粉に比べて安価であったため輸出が40%増加した。

 消費量は生産と同様、アジアが主要消費地域であり、2019年は北米以外のすべての地域で前年を上回った。2020年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によりにすべての地域で前年を下回るとされているものの、2021年には欧州を除くすべての地域で前年を上回る見込みである。

 コーンスターチの最大の消費国でもある中国の消費をみると、配送時の包装用途向けや製紙向けが堅調に推移してきたが、2020年初頭の都市封鎖の影響により、長期保存食品向けのでん粉需要は増加したものの、包装用途向けや製紙向けは減少した。需要はゆるやかに回復しているものの、経済の低迷によって、包装用途向けの需要は影響を受けると考えられる。

 また中国では、2019年第4四半期以降、トウモロコシ価格が上昇している。これは、アフリカ豚熱の影響で大幅に減少していた豚飼養頭数が、ここにきて急速に回復する一方で、飼料に仕向けられる国内のトウモロコシ在庫量が予想よりも低いことが要因と考えられる。近年、中国は膨大なトウモロコシ備蓄量を活用してトウモロコシの需要を満たしていたが、需要に対し生産が追い付いていないため、国内の生産量と消費量との乖離(かいり)が、今後はさらに拡大するものとみられている。

 

(2)タピオカでん粉

 タピオカでん粉の生産は、アジアが生産量全体の9割弱を占めている(表3)。2019年の地域別生産量を見ると、中米・カリブ海で前年を下回ったものの、それ以外の生産地域では増加している。

 世界最大のタピオカでん粉の生産・輸出国であるタイでは、2018年後半から2019年初めにかけて、天候回復や、収益性の劣るサトウキビからのタピオカでん粉の原料作物であるキャッサバへの転作などによって作付面積が増加しており、2019年、2020年は、ともに豊作となったことから原料価格は下落傾向にある。一方、タイに次ぐ主産地であるカンボジアやベトナムでは、キャッサバモザイク病(注)の流行や頻発する異常気象による影響を受け、カンボジアでは減産となった。

(注)ウイルスの感染によって葉に斑点ができる病気で、光合成が十分に行われず、最終的には作物自体が枯れてしまうことから、収穫量が大幅に減少する。ベトナムのほかに、近隣国のタイでも流行している。

 消費量は生産と同様、アジアが主要消費地域であり、消費量全体の約9割弱を占めている。同年の消費量は、主要消費地域であるアジアを中心に多くの地域で増加したことにより、全体でも前年に比べかなりの程度増加している。2020年の消費量は、COVID-19の影響によりいずれの地域も前年を下回るとされている。

 

コラム1 日本に輸入されるタピオカ『でん粉』とタピオカ『調製品』の関係


 2019年といえば、ラグビーワールドカップの日本大会が開催され、日本代表チームが活躍したことから「ONE TEAM」という言葉が流行した年である。また、街中ではその食感や見た目の新鮮さが評価され、タピオカドリンク店が次々に開店するなか、購入するための長蛇の列ができ、その流行に対し「タピる」という言葉も造られたほどであった。

 そのドリンクにトッピングされていたパール(粒)状タピオカの多くは、タピオカでん粉に砂糖などを加えた調製品として、台湾、タイ、中国などから加工されて輸入されている(注1)

 輸入量を見ると、タピオカ調製品は2019年に前年比で3.9倍と大幅に増加したが、2020年はCOVID-19の影響などを背景に、前年比で60%近く大幅に減少する見込みとなっている(コラム1−図)。また、同年の輸入単価は2016年と比べて2倍と大幅に上昇しており、近年のタピオカブームによる調製品需要の増加が影響したと考えられる。

 他方、本稿で取り扱う「タピオカでん粉」は、タピオカ調製品の原料でもある。ばれいしょでん粉などと同じ白色の粉末状のもので、タイからの輸入量が圧倒的に多く、次いでベトナムからとなっている(注2)。輸入単価は、タピオカ調製品が1トン当たり41万120円(2020年10月時点)に対して、原料であるタピオカでん粉は同4万6049円(時点同じ)と安価であり、輸入量をみると、2019年は、タピオカ調製品に比べて6.1倍もあり、タピオカでん粉の利用性の高さがうかがえる。

注1:輸入統計品目番号1903.00「タピオカ及びでん粉から製造したタピオカ代用物(フレーク状、粒状、真珠形、ふるいかす状その他これらに類する形状のものに限る。)」
注2:輸入統計品目番号1108.14「マニオカ(カッサバ)でん粉」。なお、キャッサバはマニオカ、カッサバなどとも表記される。菓子や加工食品などの食品産業用の他に、製紙や段ボールなどの工業用にも使われる。

 

 

(3)ばれいしょでん粉

 ばれいしょでん粉の生産は、欧州が生産量全体の6割強を占め、次ぐアジアが3割強となっている(表4)。2019年の地域別生産量を見ると、北米は前年を上回ったものの、欧州とアジアは前年を下回った。

 主産地である欧州では、2018年の干ばつによって、でん粉用ばれいしょが減産となったことにより、ばれいしょでん粉市場は縮小した。しかし、2019年の収穫量は回復し、2020年の生育も良好であることから、ばれいしょでん粉市場の再興が見込まれる。

 一方、消費量を見ると、アジアが最大の消費地域で全体の5割弱を占め、その他、欧州、北米が主要消費地域となっている。2019年は、北米を除く主要消費地域を中心に前年を下回った一方、北米や大洋州は前年を上回った。2020年の消費量はCOVID-19の影響によりすべての地域で減少するものの、2021年はいずれの地域も前年を上回る見通しとされている。

 

(4)小麦でん粉

 小麦でん粉の生産は、欧州が生産量全体の4割強を占め、次いでアジアが3割強、北米が2割弱となっている(表5)。2019年の地域別生産量を見ると、大洋州で減少したものの、その他の地域では軒並み増加した。消費量を見ても、欧州、アジアが主要消費地域であり、2019年は消費量が比較的少ないアフリカを除いて、すべての地域で前年を上回った。2020年の消費量はCOVID-19の影響によりアジアを除くすべての地域での減少が見込まれるものの、2021年にはこれらすべての地域で回復することが予測されている。

 小麦でん粉は、コーンスターチやタピオカでん粉に比べて生産量が少ないが、植物性たんぱく質需要の高まりにより、副産物として生産されるグルテンがさまざまな用途に利用できることから収益性が良いとされている(注)。この流れを受け、欧州ではでん粉原料をトウモロコシから小麦に切り替えたり、新たな製造工場への投資が行われたりする動きが見られるなど、今後の成長が期待されている。

注:小麦グルテンは、ボリュームが出にくい米粉パンに入れて膨らみを助けるなど食品のほか、ペットフードや水産養殖用飼料などさまざまな用途に利用されている。

 

(5)化工でん粉

 化工でん粉の生産は、アジアが生産量全体の約45%を占め、次いで欧州と北米がそれぞれ約25%となっている(表6)。2019年の地域別生産量を見ると、北米を除いたすべての地域で増加した。消費量を見ると、生産地域と同様、アジア、北米、欧米が主要消費地域であり、2019年は北米を除いたすべての地域で前年を上回った。アジアでの増加が目立つ背景には、中国における需要の増加が挙げられる。また消費量は、2020年はCOVID-19の影響によりすべての地域での減少が見込まれるものの、2021年には欧米を除いたすべての地域で前年を上回ると予測されている。

 化工でん粉は、全てのでん粉の中で、コーンスターチに次いで大きな市場であり、消費量の増加率は前年比2.7%と、前年に引き続き増加傾向にある。欧米では、政府によって安全性が確認されているものであっても、化学的な添加物を避ける傾向にある消費者が増加する傾向にあり、食品製造企業はクリーンラベル(添加物を含まず、消費者に分かりやすく食品成分を表示すること)への対応が求められている。こういった状況下で、特に化工でん粉の中でも化学変性を加えず、加熱などの物理的な変性を加えたものは、機能性を持ちつつも自然な食品原料とみなされることから、需要が高まる傾向にある。

 

コラム2 でん粉から作られるスイーツの数々


 でん粉ならではの食感が楽しめるスイーツをいくつかご紹介したい。

 まず、見た目にもきれいなトルコの伝統的なお菓子「ロクム」。世界では”ターキッシュデライト(トルコの喜び)”という名前で広く知られているお菓子だ。15世紀頃にオスマン帝国の宮廷で出されるようになったことが始まりと言われている。当時は宮殿で皇帝たちに出されるいわば宮廷スイーツで、贅沢(ぜいたく)な砂糖菓子の一つだったという。今では、トルコのレストランやカフェで、食後のトルココーヒーやチャイとともに「ロクム」を添えて出すお店もあり、日本のお茶請けのような一品として、トルコではなじみの深いお菓子である。

 原料は、でん粉と砂糖と水とナッツ(クルミ、ピスタチオ、アーモンド、ヘーゼルナッツ、ココナッツなど)で、これらを加えて小さなキューブ状に成型する。ゆべし(柚餅子)やグミに近いもちもちとした食感が特徴のお菓子である。

 次に、フランス発祥といわれている伝統あるスイーツのブラマンジェについて紹介する。ブラマンジェはフランス語で白い食べ物の意で、ゼラチンをゲル化剤としアーモンドミルクを用いるフランス風のブラマンジェと、コーンスターチに砂糖・牛乳を加えて作る英国風のブラマンジェ(コーンスターチプディング)の2種がある。英国風のブラマンジェは、身近な素材を用いて家庭で簡単に作ることのできる代表的な冷菓といえる。作り方は、でん粉と砂糖を混ぜ、牛乳を少しずつ加えて、ダマのないように溶き伸ばし撹拌(かくはん)しながら加熱する。コーンスターチは糊化する温度が96度と高く、糊化されると粘弾性のある、求肥(ぎゅうひ)に似た食感が得られる。

 最後に、最近メディアで取り上げられることが多く、でん粉由来のスイーツとしてタピオカの次に日本で流行するのではないか、といわれている台湾カステラを紹介する。台湾カステラとは、もともと台北市近郊の淡水名物だった台湾式のスポンジケーキのことである。ふわふわプルプルで、口の中に入れると空気を多く含んでいるためシュワっと消えていくような食感が特徴である。日本のカステラと比べて、ふわふわとして、きめ細かい生地のため、焼き立てを揺らすと、プルプルと揺れるほど柔らかい。通常であれば、そのような柔らかさやふくらみは、冷めると同時にしぼんでしまうのだが、焼き上がり後も持続させるために、原材料にでん粉が使われている。カステラの生地を混ぜ合わせた際にできるでん粉の架橋構造(注)が、焼き上がり後の特徴的な食感を維持するために役立っている。

(注)でん粉の分子内または分子間の水酸基が橋を架けたように結合すること。これにより、弾力などの特徴が現れる。








 

おわりに

 世界のでん粉消費量は2020年に一旦大きく落ち込むものの、傾向としては、2019年以降、2020年を除いて1年あたり約2%の割合で増加し、2024年には4648万トンとなり、2019年と比べ6%上回って増加する勢いであると予測される(図3)。種類別では、特にグルテン需要の高まりによって、価格が安定している小麦でん粉で19%増加するほか、ばれいしょでん粉も14%増加すると見込まれている。また、化工でん粉は経済情勢の影響を受けやすい傾向にあるため正確な見通しを立てづらいものの、2021年以降の消費量は堅調に推移すると見込まれる。

 世界的なでん粉需要の高まりの一方で、2018年は干ばつによってのタイのタピオカでん粉は減産した。また、欧州においても干ばつの影響によって、2018年のでん粉用ばれいしょが不足したことから、ばれいしょでん粉の価格が高騰した。2019年は良好な気候により回復し、世界的なでん粉需要も高まりを見せていたところに、2020年はCOVID-19が発生、拡大した影響により、でん粉業界全体の需要が落ち込んだ。長期的にはでん粉の需要は増加傾向にあるとみられるものの、COVID-19の拡大が続いているといったマイナス要因も危惧されるところ、COVID-19の動静を見据えつつ、今後の需給動向について注視する必要がある。

 

このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272



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