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鹿児島県JAでん粉工場におけるISO22000の認証取得について

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最終更新日:2021年2月10日

鹿児島県JAでん粉工場におけるISO22000の認証取得について

2021年2月

鹿児島事務所 小笠原 健人

【要約】

 平成30年6月に「食品衛生法」の一部が改正され、原則として全ての食品等事業者において、HACCPに沿った衛生管理を実施することが義務化されたことから、鹿児島県JAでん粉工場では令和2年1月、ISO22000の第三者認証を取得した。

 労働力が限られる中で新たな規制への対応を求められたが、同認証の取得は、取引面ではもちろん、業務の効率化や従業員の育成といった労働力問題への対応としても役立っている。

はじめに

(1)かんしょでん粉の特徴

 かんしょでん粉は、南九州で生産されるでん粉原料用のさつまいもを原料として、鹿児島県内でのみ製造されている。

 国産の原料を使用して製造されるでん粉としては、北海道のばれいしょでん粉があるが、両者の販売数量を比較すると、平成30でん粉年度(注)では、ばれいしょでん粉が16万8000トンであるのに対し、かんしょでん粉は2万7000トンとばれいしょでん粉の約16%にとどまっている。

 また、それぞれの用途を比較すると、ばれいしょでん粉は、一般家庭でもなじみ深い「片栗粉」としての用途が最も多く、30でん粉年度では、全体の27%を占めている。さらに、菓子類や麺類、ミックス粉などの占める割合も高く、これら食品用途向けの割合が全体の67%を占めている(図1)。

(注)でん粉年度とは、10月から翌年9月までの期間

 

 一方、かんしょでん粉は、その多くが異性化糖、水あめ、ぶどう糖などの糖化製品に仕向けられており、30でん粉年度では、糖化製品仕向けの割合が1万3000トンと、全体の48%を占めている。そのほか、菓子類や麺類、水産練り製品などの販売もあるものの、これら食品用途向けの割合は41%と、ばれいしょでん粉と比較して低くなっている。また、片栗粉のように、製造したでん粉を加工せずに、家庭でそのまま利用することを想定した製品の販売はさらに限定的であるため、消費者の目に触れる機会は少ない。

 上述の通り、かんしょでん粉は、ばれいしょでん粉と比較すると、糖化製品に仕向けられる割合が高いことから、より高い収益性が期待できる、食品用途向けの割合を高めることが課題とされてきた。

 かんしょでん粉は、食品用途としては、ほど良い噛み応えやくちどけを生むことができる特性を生かし、従来からわらび餅や葛餅などの和菓子に使用されているほか、煎餅などの焼き菓子などにも使われている。近年では、こうしたかんしょでん粉の特性を生かした商品開発も行われており、かんしょでん粉の食品用途向けの販売数量は、24でん粉年度の6000トンから、30でん粉年度には1万1000トンまで増加しているものの、今後さらに食品用途向けの比率を高め、収益性の向上を図ることは依然として重要な課題である(図2)。

(2)食品衛生法の改正と鹿児島県JAでん粉工場のISO取得

 このような状況の中、令和2年に予定されていた、東京オリンピック・パラリンピックの開催を背景として、平成30年6月に、「食品衛生法」の一部が改正され、原則として全ての食品等事業者が、一般衛生管理に加えて、「HACCPに沿った衛生管理」を実施することが義務化されることとなった。改正食品衛生法は、令和2年6月に施行され、3年5月末まで、1年間の経過措置期間を経た後に完全施行される。

 こうした世間の動向もあり、かんしょでん粉の食品用途向けの販売数量を増加させる上で、製品の安全性を確保し、消費者や顧客の信頼性を向上することが重要な課題となっている。一方、工場としてはこうした課題に対し限られた労働力の中で、業務の効率化や従業員の育成にあたらなければならない。

 鹿児島県JAでん粉工場では、こうした状況を受け、2年1月、JAさつま日置、JA南さつま、JAいぶすきが運営する「JA南薩拠点(しも)(いで)澱粉工場」およびJA鹿児島きもつきが運営する「JA鹿児島きもつき新西南(しんせいなん)澱粉工場」において、食品安全マネジメントシステムの国際規格である「ISO22000」の第三者認証を取得した(写真1、2)。

 本稿では、ISO22000の認証取得によるメリットなどについて、鹿児島県JAでん粉工場の事例とともに紹介する。

 

 


コラム 〜HACCPとISO22000について〜


 HACCPとは、食品の衛生管理のための手法であり、原料の入荷〜製造〜出荷までの工程の中で、健康被害を起こす恐れのある要因をあらかじめ分析し、特に重大な影響を与え得る箇所については、重要(必須)管理点として継続的に監視・記録・問題点の改善を図ることで、健康上の問題発生を未然に防ごうとするものである。従来は、製造した製品の一部の抜き取り検査などにより出口でのみ安全性の確認を行っていたが、HACCPはそうした従来の方法と比較して、食品製造過程全体を対象として、より効果的に安全性に問題のある製品の出荷を防止できるといわれている。

 ISO22000は、ISO(国際標準化機構)が策定した、食品安全マネジメントシステムに関する国際規格を指し、HACCPを基礎として、より具体的な要求事項を定めている。ISO22000の規格を満たす食品安全マネジメントシステムを維持・運用していくためには、製品の安全確保に対して、企業が一体となって取り組んでいく必要があり、その企業の安全体制を評価する基準として、この認証を取得していることが取引条件として設定されることもある。
 

1.工場の概要

 JA南薩拠点霜出澱粉工場(平成23年開設)とJA鹿児島きもつき新西南澱粉工場(平成21年開設)は、これまで稼働していた7つのJA系統でん粉工場の老朽化などに伴い、それらを再編、集約して新たに開設されたかんしょでん粉製造工場である。(図3)。

 新工場が開設されるまでは、食品用途としてのかんしょでん粉の認知度は現在より低く、糖化用原料としての販売が8割近くを占めていた。糖化用原料としての販売は、食品用途としての販売と比較すると、製品に求められる品質の水準を満たしやすく、製造コストを低く抑えられるということもあり、工場存続の方向性を検討する段階では、旧工場の設備を部分的に更新するという案も考えられたが、鹿児島県において重要な基幹作物であるさつまいもの作付けを維持するためには、かんしょでん粉の価値を最大化することで、“売れるでん粉づくり”を行っていくことが重要であるとして、製品の品質向上を目指し、新たな工場が開設されることとなった。

 旧工場では、原料の収穫後、摩砕、精製工程を経て精製したでん粉乳を、敷地内の貯留池に貯留しておき、その後に再度水洗い、脱水乾燥する、いわゆる「生粉溜め方式」をとっていたが、製品の品質が安定しないこともあったことから、新たな工場では、すり込みから脱水乾燥までを同時に行う「同時乾燥方式」を導入した。このことにより、両工場で製造されるかんしょでん粉の品質は飛躍的に向上し、現在では、製造された製品のほぼ全てが食品用途向けに出荷されているほか、海外への輸出も行っている(表、写真3)。

 

 

 

2.ISO22000の認証取得による効果

 前述の通り、鹿児島県JAでん粉工場は、食品衛生法の改正に伴い、HACCPに沿った衛生管理が義務化されることを受け、ISO22000の認証を取得した。このことによるメリットは以下の通りである。

(1)取引の円滑化

 食品の安全管理体制についての関心が高まる中、認証を取得する以前は、かんしょでん粉のユーザーから工程管理の方法などについての問い合わせが多くあったが、認証取得後は、そうした問い合わせが減少し、取引がスムーズに行えるようになった。

(2)計画的な教育訓練・研修による従業員の意識向上

 ISO22000では、食品安全マネジメントシステムに必要となる従業員について、その役割に応じた力量を明確にするとともに、必要な教育・訓練を実施することが要求事項の一つとなっている。

 そのため、両工場では、作成した教育訓練計画に基づいた教育・研修が全従業員に対して実施されている。実際、認証を取得するまでの間には、部門ごとに計18回の研修・教育が行われている。こうした研修・教育が認証取得の過程のみならず、取得後も確実に実施され、例えば、工場内の清掃や片付けがより徹底されるようになるなど、限られた労働力の中で、従業員の食品衛生に対する意識が向上している(写真4)。

 

(3)作業手順のマニュアル化による業務の“見える化”

 かんしょでん粉製造工場は、原料となるさつまいもの貯蔵が難しいことから、原料の収穫時期の開始と同時に稼働を開始し、収穫された原料は直ちに製造工程に移る。そのため、かんしょでん粉製造工場の稼働期間は、原料の収穫時期である、10〜12月ごろの3カ月ほどに限定されることから、両工場ともに、常時雇用職員は工場長1人のみであり、それ以外の従業員は固定化されていない。

 こうした状況は、他のかんしょでん粉製造工場でも多く見られるが、工場が操業を迎える都度、作業手順の引継ぎを行うことに苦労していたこともあり、両工場では、ISO22000の認証取得に向けた取り組みの中で、これまでマニュアル化されていなかった手順を洗い出し、マニュアル化を行った。

 これにより、毎年の操業開始時に必ず発生する作業手順の引継ぎが効率化されたほか、マニュアル化の過程で、これまで行っていた手順の効率性を再検討したことで、労働力が限られる中で業務効率の改善にもつながった。

 また、全ての従業員が統一した手順で作業を行うことは、作業中の事故防止にもつながると考えられる。

おわりに

 鹿児島県JAでん粉工場のISO22000の認証取得の取り組みでは、かんしょでん粉製造工場において限られた従業員が固定化されない中で、マニュアルの整備によって、作業の効率化を図るとともに、従業員の教育・育成の面で大きなメリットを生んでいる。

 また、ISO22000の認証を取得しているかんしょでん粉製造工場はまだ少ないことから、鹿児島県JAでん粉工場の今回の認証取得が、かんしょでん粉の知名度、イメージの向上につながり、今後の食品向けの販売数量増加を後押しすることを期待したい。

 最後に、お忙しい中、取材にご協力いただきましたJA南薩拠点霜出澱粉工場工場長門田さま、JA鹿児島きもつき新西南澱粉工場工場長堀之内さま、関係者の皆さまにこの場を借りて御礼申し上げます。

【参考文献】
1)室井孝仁(2012)「でん粉製造設備について〜かんしょでん粉とばれいしょでん粉製造における役割〜」『でん粉情報』(2012年8月号)独立行政法人農畜産業振興機構
2)JA鹿児島県経済連農産事業部米穀特産課(2012)「JA甘しょでん粉工場の再編と合理化推進について」『でん粉情報』(2012年7月号)独立行政法人農畜産業振興機構
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272



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