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鹿児島県における令和2年産原料用さつまいもの生産状況などについて

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最終更新日:2021年11月10日

鹿児島県における令和2年産原料用さつまいもの生産状況などについて

2021年11月

鹿児島県さつまいも・でん粉対策協議会

【要約】

 鹿児島県における令和2年産さつまいも全体の生産量は21万4700トン(対前年産比82%)で、このうち、でん粉原料用さつまいもの生産量は7万2400トンであった(同77%)。

はじめに

 鹿児島県におけるさつまいもは、でん粉や焼酎などの原料用、ほかに青果や菓子(加工)用として利用されており、本県普通畑の約2割に作付けされている。また、さつまいもは、夏場の土地利用型作物として、輪作体系や防災営農の面からも重要な品目として位置付けられている。

 本稿では、令和2年産原料用さつまいもの生産状況やでん粉工場の操業状況、当協議会における取り組みについて報告する。

1.令和2年産さつまいもの生産状況

(1)作付面積

 令和2年産さつまいもの作付面積は、1万900ヘクタール(対前年産比97%)(図1)であり、全国のさつまいもの作付面積3万3100ヘクタールのうち約3割を占め、全国1位である。

 このうちでん粉原料用は、県全体の約4割を占める3980ヘクタール(同92%)で栽培されている。
 

(2)生産量

 令和2年産さつまいもの生産量は、高齢化などの影響で作付面積が昨年より300ヘクタール減少したことに加え、7月の豪雨・長雨の影響、さらには、サツマイモ(もと)(ぐされ病(以下「基腐病」という)の影響などもあり、21万4700トン(対前年産比82%)(図1)となった。

 このうち、でん粉原料用いもの生産量は7万2400トン(同77%)で、10アール当たりの収量(単収)は、1820キログラム(同84%)(図2)であった。
 

(3)用途別仕向け量

 鹿児島県におけるさつまいもの用途は、でん粉原料用と焼酎原料用が全体の約8割を占めており、令和2年産におけるでん粉原料用の生産量は、全体の34%となる7万2400トン、焼酎原料用は、全体の46%の9万8389トンとなっている(表)。
 

2.でん粉工場の操業状況

 鹿児島県内のさつまいもでん粉工場は、これまで主産地である南薩、大隅、種子島地域を中心に、農協系3工場、民間12工場の計15工場で操業していたが、令和3年産では、農協系の1工場と民間の1工場の計2工場が操業を休止することとなった。

 令和2年産のでん粉原料用さつまいもは、先述のように、前年に比べ生産量が大きく減少したことから、でん粉工場の操業率も低迷が続いている。

 でん粉工場の経営安定に向けては、さつまいもの作付面積の維持と単収向上対策などを図った上での原料の安定確保が必要となるが、近年基腐病の影響もあり、生産量の確保が危惧されている。

3.生産振興に向けた取り組み

(1)需給調整

 本協議会では、実需者と生産者とで実効性のある契約取引に資するための活動を行っており、でん粉や焼酎などのさつまいもの用途別原料の需要量調査を行っている。毎年3月に「原料用さつまいもの需要希望量等について」として、各地域における原料用さつまいもの翌年産の需要希望量を取りまとめ、関係機関に通知を行っており、県・地域段階において情報の共有化を図っている。

 また、「でん粉原料用」として出荷を予定している方に対しては、独立行政法人農畜産業振興機構鹿児島事務所の協力のもと、国の支援制度(品目別経営安定対策)(図3)などの周知を図っており、令和4年産に向けても同様の取り組みを行うこととしている。また、生産状況などについて酒造組合を筆頭に、酒造会社にも情報共有の強化に取り組んでいるところである。
 

(2)サツマイモ基腐病対策

 沖縄県に次いで、平成30年12月に本県で基腐病が確認されて以降、令和3年10月7日現在21都道県で発生しており、全国的に広がりを見せている。病気の発症は、まず、葉が変色しはじめ、加えて茎の地際部が黒変する。さらに病状が進むと、なり口(つるとつながっている部分)から地中のいもまで腐ってしまうため、大きな減収となり、農業者の経営にも大きな影響を及ぼしている。

 本協議会では、関係機関・団体と連携し、これまで病害対策や単収向上に向けたリーフレットの配布や、栽培技術研修会の開催などに取り組んできたが、令和2年からは、基腐病対策に重きを置き、病気のまん延を抑えるための取り組みを周知してきた。種いも・種苗からの発病をまず無くすことが重要であるとの考えから、次年産対策として「健全苗・種いも確保対策リーフレット」(図4)を今年7月に作成し、周知に取り組んだ。
 

おわりに

 原料用さつまいもの生産振興において「サツマイモ基腐病」の防除対策は大変重要な取り組みとなったが、いまだ決定的な解決策が見いだせない状況である。しかし、対策の基礎は、病原菌を「持ち込まない」「増やさない」「残さない」取り組みである。この基本的な取り組みを周知することにより基腐病の発生を軽減させるとともに、さつまいもの生産回復につながるよう、今後とも関係機関・団体と一体となり啓発活動や研修会活動、情報共有を図っていきたいと考えている。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel: 03-3583-9272