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2. 日本の品目別主要輸入先国の動向

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最終更新日:2022年6月10日

2. 日本の品目別主要輸入先国の動向

2022年6月

 本稿中の為替レートは2022年4月末日TTS相場(注)の値であり、1米ドル=129.86円、1タイバーツ=3.83円、1ユーロ=137.33円である。

(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の月末TTS相場。

トウモロコシ・コーンスターチ

世界

【需給動向:トウモロコシ】
2022/23年度の世界のトウモロコシ生産量、わずかに減少見込み

 米国農務省世界農業観測ボード(USDA/WAOB)および米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は2022年5月12日、2022/23年度最初の世界のトウモロコシ需給予測値を公表した(表2)。

 これによると、同年度の世界のトウモロコシ生産量は11億8072万トン(前年度比2.9%減)と過去最高となる前年度の生産量をわずかに下回ると見込まれている。国別に見ると、ブラジル(1億2600万トン、同8.6%増)やアルゼンチン(5500万トン、同3.8%増)などで生産量が増加する一方、米国(3億6730万トン、同4.3%減)、中国(2億7100万トン、同0.6%減)およびロシアによる侵攻を受けるウクライナ(1950万トン、同53.7%減)などの生産量の減少が世界の生産量に影響するとみられる。

 輸出量は、世界全体で1億8270万トン(同7.6%減)と前年度からかなりの程度減少が見込まれている。アルゼンチン(4100万トン、同5.1%増)とブラジル(4700万トン、同5.6%増)でやや増加するものの、ウクライナ(900万トン、同60.9%減)の輸出量の大幅な減少が世界全体の輸出量の減少の主な要因となっている。

 輸入量は、世界全体で1億7684万トン(同2.3%減)と前年度からわずかに減少する見込みである。世界最大の輸入国である中国(1800万トン、同21.7%減)は、ウクライナからの輸入が減少することから前年度を大幅に下回ると見込まれているほか、カナダ、EU、ブラジル、英国でも同様に減少する見込みである。

 消費量は、世界全体で11億8497万トン(同1.2%減)と前年度からわずかに減少する見込みである。国別に見ると、ブラジル(7700万トン、同5.5%増)、アルゼンチン(1400万トン、同2.2%増)および中国(2億9500万トン、同1.4%増)などで増加する一方、米国(3億901万トン、同2.2%減)やウクライナ(920万トン、同30.3%減)などで減少が見込まれている。

 この結果、期末在庫は3億513万トン(同1.4%減)と前年度をわずかに下回ると見込まれている。
 
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米国

【需給、価格動向:トウモロコシ】
2022/23年度の米国トウモロコシ生産者平均販売価格、12/13年度以来の高値予想

 USDA/WAOBは2022年5月12日、2022/23年度(9月〜翌8月)最初の米国のトウモロコシ需給見通しを公表した(表3)。

 生産量は、5月中旬までの作付け遅れにより単収が前年度並みの見込みであることから、144億6000万ブッシェル(3億6730万トン(注)、前年度比4.3%減)と前年度の生産量をやや下回る見込みである。

 消費量は、自動車のガソリン消費が横ばいとの見込みからエタノール向けが前年度並みである一方、飼料など向けがやや減少する影響を受けて、全体では121億6500万ブッシェル(3億900万トン、同2.2%減)とわずかに減少する見込みである。飼料など向けの減少は、減産に加え生産者平均販売価格の上昇や家畜頭数の減少が主な要因であると考えられている 。

 輸出量は、先述の通り国内消費量はわずかに減少するものの、総供給量も減少することから、24億ブッシェル(6096万トン、同4.0%減)とやや減少する見込みである。一方で、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で世界的にも輸出量が減少し、活発な取引による高値相場が想定され、比較的単価の高い米国産のシェアは拡大する見込みである。

 この結果、期末在庫は、13億6000万ブッシェル(3454万トン、同5.6%減)と前年度をやや下回る見込みである。

 また期末在庫率(総消費量に対する期末在庫量)は9.3%(同0.3ポイント減)と前年度と同じく10%台を割り込む見込みである。

 このような状況のもと、国際相場が上昇傾向にあることから、生産者平均販売価格も上昇が見込まれ、1ブッシェル当たり6.75米ドル(877円。1キログラム当たり34.5円)と前年度からかなり大きく上昇し、12/13年度に記録した6.89米ドル以来の高値が予測されている。

(注)1ブッシェルを約25.401キログラムとして農畜産業振興機構が換算。

 
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【貿易動向:トウモロコシ】
2月の輸出量は前年同月からやや、前月からかなり大きく増加し、価格はやや上昇

 米国のトウモロコシ輸出量は2021年10月から増加傾向が続き、22年2月は666万5578トン(前年同月比5.5%増、前月比12.8%増)と前年同月からやや、前月からかなり大きく増加した。同月の主要国別輸出量は表4の通りである。

 また、同月の輸出価格(FAS(注))は、1トン当たり281.5米ドル(3万6556円、同12.0%高、同4.6%高)と前年同月からかなり大きく、前月からやや上昇した。

(注)Free Alongside Shipの略。貨物を船側に付けた段階で支払われる(FOB※価格から横持ち料〈倉庫間の移動費〉、積み込み料、保険料などを差し引いた)価格。
※Free On Board:貨物を船に乗せた段階で支払われる取引条件。
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【貿易動向:コーンスターチ】
2月の輸出量は前年同月から大幅に、前月からかなり大きく増加

 2022年2月の米国のコーンスターチ輸出量は、1万6594トン(前年同月比30.5%増、前月比11.5%増)と前年同月から大幅に、前月からかなり大きく増加した。同月の主要国別輸出量は表5の通りである。

 同月の輸出価格(FAS)は、1トン当たり695.5米ドル(9万318円、同4.0%高、同2.7%高)と前年同月からやや、前月からわずかに上昇した。

 なお、米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、同国の代表的市場の一つである中西部市場における22年2月の製粉業者の純費用(Net Cost)は、1ポンド(注)当たり11.06セント(14.4円、前年同月比22.4%高、前月比8.9%高)と依然として前年同月比では大幅に、前月からかなりの程度上昇し、高い水準となった。

(注)1ポンドは約0.45キログラム。
 




タピオカでん粉

タイ

【生産動向】
2021/22年度のキャッサバ生産量は前年度からわずかに減少する見込み

 タイ農業協同組合省農業経済局(OAE)の予測(2022年4月現在)によると、2021/22年度(10月〜翌9月)のキャッサバの収穫面積が1018万ライ(163万ヘクタール(注)、前年度比2.2%減、前月同5.4%増)とわずかに減少することが影響し、単収は1ライ当たり3.41トン(同1.2%増、同0.6%増)と前年度からわずかに増加するものの、生産量は3469万トン(同1.1%減、同6.0%増)と前年度をわずかに下回ると見込まれている(表6)。

(注)1ライを約0.16ヘクタールとして農畜産業振興機構が換算。



【価格動向】
国内価格は、続騰で2018年の最高値を更新

 タイタピオカでん粉協会(TTSA)によると、22年5月第2週のタピオカでん粉の国内価格は、1キログラム当たり16.80バーツ(64円、前年同期比20.0%高、前週比1.8%高)と前年同期から大幅に上昇し、17バーツ目前となった(図3)。20年後半から上昇傾向にあったが、22年4月以降は原料費や燃料費の上昇により急騰しており、タイ農業・農業協同組合銀行(BAAC)研究・イノベーション開発センターによると、輸出需要が引き続き高いことから、キャッサバ製品の価格は今後も高い水準で推移すると予測されている。
 


【貿易動向】
3月の輸出量は前年同月からかなり大きく減少するも、前月からかなりの程度増加

 22年3月のタピオカでん粉輸出量は、38万9099トン(前年同月比12.7%減、前月比9.8%増)と前年同月からかなり大きく減少したものの、前月からはかなりの程度増加した。同月の主要国別輸出量は表7の通りである。

 同月の輸出価格(FOB・バンコク)は、1トン当たり495.0米ドル(6万4281円、同2.1%高、同0.5%高)と前年同月、前月からいずれもわずかに上昇した。




ベトナム

【生産動向】
2021年は前年から推定2.0%の増産

 ベトナム農業農村開発省(MARD)は4月13日、同省と同国で最もキャッサバの生産量の多いザライ省人民委員会によるキャッサバ生産に関する会議を開催し、21年の同国のキャッサバ作付面積は52万8000ヘクタール、生産量は約1070万トンであることを公表した(いずれも推計値。なお、国連食糧農業機関(FAO)によると、20年の同国におけるキャッサバの生産量は約1049万トンであることから、前年比で2.0%程度の増産と推定される)。

 また、ベトナムの調査会社(AgroMonitor)によると、2月に南部南東地域の主要なキャッサバ産地であるタイニン省の21/22年産冬春キャッサバ5258ヘクタールでキャッサバモザイク病(注1)感染が確認され、そのうち4719ヘクタールは軽度だったが、539ヘクタールには中程度の被害が見られた。

 なお、3月25日現在、中央直轄5都市および58省のうち1市14省(前月から1省減少)などの合計6万6194ヘクタール(2月27日比37.1%増)でキャッサバモザイク病の感染が確認され、増加傾向を示している(注2)

(注1)ウイルスの感染によって葉に黄化斑ができる病気で、光合成が十分に行われず、最悪の場合には作物自体が枯れてしまうことから、収穫量が大幅に減少する。ベトナムのほかに、近隣国のタイやカンボジアの一部で流行が確認されている。
(注2)同国のキャッサバ作付面積は、近年、おおむね50万ヘクタール程度で推移している。


【貿易動向】
3月の輸出量は前年同月、前月から大幅に増加

 AgroMonitorによると、22年3月のタピオカでん粉輸出量は、30万2202トン(前年同月比84.1%増、前月比2.1倍)と前年同月、前月から大幅に増加した。同国の主要国別輸出量は表8の通りである。

 同月の輸出価格(CFR(注)・中国向け)は、1トン当たり506米ドル(6万5709円、同5.6%高、同1.0%高)と前年同月からはやや、前月からはわずかに上昇した。

(注)Cost and Freightの略。輸入港までの海上運賃を売主が負担し、危険負担は物品を引き渡した際に売主から買主に移転される取引条件であり、コンテナ輸送貨物に使われることが多い。



ばれいしょでん粉

EU

【貿易動向】
2月の輸出量、前年同月、前月と同水準

 2022年2月のばれいしょでん粉輸出量(注)は、2万8905トン(前年同月比0.1%増、前月比0.2%増)と前年同月、前月ともに同水準となった。同月の主要国別輸出量は表9の通りである。

 また、同月の輸出価格(FOB)は、1トン当たり685ユーロ(9万4071円、同11.6%高、同0.1%高)と前年同月からかなり大きく上昇し、前月並みとなった。

(注)EU27カ国による輸出。輸出先の不明なものを除く。

 

 

コラム スウェーデンのばれいしょ、ばれいしょでん粉の生産動向について

 スウェーデンは日本の約1.2倍の45万平方キロメートルの面積を有し、日本と同様、比較的はっきりと四季が分かれている国である。人口の約90%が同国の南半分に居住しており、ばれいしょの生産も最南端のスコーネ県など南部地域において行われている(コラム−図1)。そのうち、でん粉原料用ばれいしょは、スコーネ県が同国における2020年のでん粉原料用ばれいしょ生産量の60%以上を占めるほか、ブレーキング県およびカルマル県を合わせた3県で約99%を占めている(コラム−図2)。




 

 また、でん粉原料用ばれいしょ生産について過去5年のデータを見ると、大きな変動はなく、生産量は約30万トン、作付面積は約7000ヘクタール前後で推移している(コラム−表)。


 

 同国のでん粉製造企業は、Lyckeby社およびLantmännen Reppe社の2社である。そのうちLyckeby社は、南部のでん粉原料用ばれいしょ生産農家800戸で経営される組合的組織で、スウェーデンで唯一ばれいしょでん粉を製造している企業である。同社では、食品産業や製紙産業向けに年間6万〜8万トン程度のばれいしょでん粉を製造していると見込まれている。
 

 また、Lantmännen Reppe社は、小麦でん粉を製造しているほか、食用エタノールや飼料原料を製造し、小麦でん粉はLyckeby社と同様、主に食品業界と製紙業界に供給されている。

 

 

化工でん粉

 デキストリンおよびその他の化工でん粉(以下「化工でん粉」という)の主要輸出国による主要仕向け先国別輸出量および輸出価格は、以下の通りである。

タイ

【貿易動向】
3月の輸出量は前年同月からわずかに、前月から大幅に増加

 2022年3月の化工でん粉の輸出量は、11万1356トン(前年同月比2.3%増、前月比18.1%増)と前年同月からわずかに、前月から大幅に増加した。同月の主要輸出先別の輸出量は表10の通りである。


米国

【貿易動向】
2月の輸出量は前年同月からかなりの程度増加し、前月並み

 2022年2月の化工でん粉の輸出量は、2万8597トン(前年同月比10.6%増、前月比0.1%増)と前年同月からかなりの程度増加し、前月並みであった。同月の主要国別輸出量は表11の通りである。



中国

【貿易動向】
3月の輸出量は前年同月からはわずかに減少するも、前月からはわずかに増加

 2022年3月の化工でん粉の輸出量は、8035トン(前年同月比1.0%減、前月比2.7%増)と前年同月からはわずかに減少したものの、前月からはわずかに増加した。同月の主要輸出先別の輸出量は表12の通りである。



 

EU

【貿易動向】
2月の輸出量は前年同月からはやや減少するも、前月からはやや増加

 2022年2月の化工でん粉の輸出量(注)は、5万310トン(前年同月比5.4%減、前月比3.7%増)と前年同月からやや減少したものの、前月からはやや増加した。同月の主要輸出先別の輸出量は表13の通りである。

(注)EU27カ国による輸出。輸出先の不明なものを除く。



豪州

【貿易動向】
2月の輸出量は前年同月から大幅に増加したものの、前月からはやや減少

 2022年2月の化工でん粉の輸出量は、2924トン(前年同月比76.0%増、前月比3.8%減)と前年同月から大幅に増加したものの、前月からはやや減少した。同月の主要輸出先別の輸出量は表14の通りである。



 
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