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世界のでん粉需給動向(2021年)

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最終更新日:2023年1月10日

世界のでん粉需給動向(2021年)

2023年1月

調査情報部

【要約】

 2021年の世界のでん粉生産量は、コロナ禍において各国で実施された都市封鎖などが解除され、経済活動が活性化されると、食品用途のでん粉需要が増加し、前年を4.3%上回った。品目別では、全品目のでん粉が前年の生産量を上回り、主産国におけるばれいしょの増産を背景に、ばれいしょでん粉が最も高い増加率を示した。消費量は生産量と同様、増加傾向にあり、21年は全品目のでん粉で増加し、今後も堅調に推移するものと見込まれている。

はじめに

 本稿では、世界の主要な天然でん粉(コーンスターチ、タピオカでん粉、小麦でん粉、ばれいしょでん粉)および化工でん粉における2021年の生産・消費動向および2023年までの消費見通しについて、農産物の需給などを調査する英国の調査会社LMC Internationalの調査結果を中心に報告する。

 なお、図表については、特段の記載がない限り、LMC Internationalの資料を基に農畜産業振興機構が作成している。

1.需給概況など

 2021年は、世界的な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のために講じられた都市封鎖などが解除され、前年に減少した食品向けのでん粉需要が回復した。さらに、電子商取引(EC)の拡大により配送資材などの原料として前年に大幅に増加した工業向けのでん粉需要も引き続き拡大した。

 その結果、世界のでん粉生産量は4653万トン(前年比4.3%増)と前年をやや上回った。このうち、コーンスターチが全体の約43%と最も多く、次いで、タピオカでん粉と化工でん粉がともに約21%、小麦でん粉が約7%、ばれいしょでん粉が約4%となっている(図1)。

 また、同年の世界のでん粉消費量は、上記要因から4649万トン(同4.3%増)と前年をやや上回った。このうちコーンスターチが全体の約43%と最も多く、タピオカでん粉と化工でん粉がともに約21%、小麦でん粉が約7%、ばれいしょでん粉が約4%となっている。

 生産量の増減の推移を見ると、でん粉全体では、02年の調査以降、一貫して増加傾向にあり、品目別では、21年は全品目のでん粉で前年を上回った。特に、ばれいしょでん粉は、主産地である欧州のばれいしょが豊作だったことなどから、前年比9.2%増と最も高い増加率を示した(表1)。

 また、品目別でん粉生産量を国別に見ると、中国はタピオカでん粉生産量では世界第6位となったものの、それ以外はいずれも上位2位以内に入っている。特に、コーンスターチ生産量は、前年に比べて減少しつつも依然として2位以下に大差をつけている(表2)。

 でん粉は、従来、需要に応じ生産・供給される状況にあることから、その価格は需給バランスよりも原料価格の変動による影響を大きく受ける傾向にある。21年の各種でん粉の輸出単価(世界平均:米ドル換算)を見ると、ばれいしょでん粉のみ前年比12.1%安とかなり大きく下回った(図2)。20年の需要減少を受けて欧州が在庫を抱えていたことに加え、でん粉原料用ばれいしょの豊作が要因と考えられる。一方で、その他の種類は前年を上回り、中でもコーンスターチは、トウモロコシ価格の上昇およびでん粉の需要増加を背景に同14.3%高となった。また、タピオカでん粉は、前年(19/20年)産のタイのキャッサバの不作により原料が不足したことが影響し、同10.8%高となった。

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2.天然でん粉および化工でん粉の動向

(1)コーンスターチ

 コーンスターチの生産量は、アジアが世界全体の7割強を占め、北米と欧州がそれぞれ1割強と続いている(表3)。2021年の地域別生産量は、南米以外の地域で前年を上回った。

 国別にみると世界最大のコーンスターチ生産・消費国である中国の生産量は、995万トンと4年ぶりに1000万トンを下回った(図3)。同国内では20年後半からトウモロコシの価格が上昇しており、21年も高値で推移したことなどが生産量減少の要因と考えられる。原料価格の高騰により、同国のコーンスターチは主要輸出先である東南アジアで競争力を失い、21年の輸出量は前年から約48万トン減少した。一方でインドは、インドネシアやマレーシアなど東南アジア向け輸出を前年の2倍以上に増加させた。近年、インドのトウモロコシは豊作が続いているため、コーンスターチの輸出価格は比較的安定しており、中国より有利に輸出を進められたとみられる。

 消費量は生産量と同様にアジアが多く、主要消費地域となっている。経済活動の回復とともにアジアを中心に世界的に食品用途のコーンスターチ需要が増えている。特に21年後半の消費量の急増は目覚ましく、すべての地域で前年を上回った。この傾向は22年も続いており、欧州を除くすべての地域で前年を上回る見込みである。欧州では、原料のトウモロコシをウクライナから輸入しでん粉を製造している企業もあり、ロシアのウクライナ侵攻により輸入量が減少したことに加え、燃料価格の高騰などが生産に影響を及ぼしたとみられる。また、トウモロコシ生産国のウクライナでは、最も製造されているでん粉はコーンスターチであり、近年は年間6〜8万トンが輸出されている。深化した包括的自由貿易協定(DCFTA)を含む連合協定(注1)に基づき、EUはそのうち約1万トンを無税で輸入する。その他、アラブ首長国連邦やサウジアラビア、中国などが主な輸出先である。ウクライナのトウモロコシ輸出量の減少が欧州のコーンスターチ需給に及ぼす影響について、引き続き注視が必要である。

 アジア第3位の消費国であるインドネシアでは、13年以降コーンスターチの消費量が伸び続けている。この消費量の増加は、コーンスターチの増産に向けた投資を後押ししており、21年の生産量は60万トン(前年比62.1%増)と大幅に増加した。今後もコーンスターチ生産工場の建設などが計画されており、コーンスターチの消費は増加すると見込まれている。

(注1)EUと非EU諸国との間の政治、貿易、社会、文化、安全保障上の結びつきを強める協定。DCFTAは連合協定の一部として、双方間の貿易経済活動にEUのルールを浸透させてヒト、モノ、カネの動きを活発化させようとするもの。

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(2)タピオカでん粉

 タピオカでん粉の生産量は、アジアが世界全体の9割弱を占めている(表4)。2021年の地域別生産量は、すべての生産地域で前年を上回った。

 世界最大のタピオカでん粉の生産・輸出国であるタイでは、近年、干ばつやキャッサバモザイク病(注2)の被害(写真)により、原料作物であるキャッサバの生産量が減少していたが、2020/21年度(10月〜翌9月)は単収が改善されたことなどから生産量が回復した。また、キャッサバの増産によりタピオカでん粉やチップの価格が下落し、タイ産タピオカでん粉の輸出量は前年比で3割増加した。特に、輸出先の中国では、トウモロコシ価格の上昇でコーンスターチをタピオカでん粉へ置き換える代替需要が増加し輸出を後押ししたことで、同国向け輸出量は前年比5割増と大幅に増加した。また、近年、タピオカでん粉の生産量が世界第3位であったインドネシアは、キャッサバの豊作を受け、生産量が224万5000トン(前年比22.7%増)と大幅に増加し、世界第2位に返り咲いた。しかし、国内のタピオカでん粉生産工場は多数存在するものの、その多くが小規模である。また、現地では、収益に対してキャッサバを工場まで輸送するコストが多大である点など、さまざまな課題があるとされている。

 消費量は生産量と同様、アジアが世界全体の9割弱を占める。21年の消費量は、中米・カリブ海を除き、主要消費地域であるアジアを中心に増加した。22年以降は、前年を下回る地域はあるものの、全体としては増加傾向で推移するとみられる。また、タピオカでん粉は、価格競争力を有するコーンスターチの代替でん粉である。特に、経済が成長している東南アジアや中国での需要が継続すると見込まれている。

(注2)ウイルス感染により葉に黄斑を呈する病気で、ウイルスはコナジラミによって媒介される。黄斑により、光合成が十分に行われず、最悪の場合には作物自体が枯れてしまうことから、収穫量が大幅に減少する。タイの他、近隣のベトナムやカンボジアでも流行している。

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コラム1 日本のキャッサバ生産(群馬県邑楽町)


 タピオカでん粉の原料であるキャッサバは、主に熱帯地域で栽培されている中南米原産のイモ類であり、南米やアフリカの一部では主食として食べられている。日本では、食材としてのなじみは薄いが、いくつかの地域で生産されている。今回は群馬県南部に位置する邑楽(おうら)町のキャッサバ生産について紹介する。

 邑楽町にある農事組合法人アグリファームの島田信成氏は、インドネシア出身の弟の妻に、故郷の味を日本でも食べさせたいと考えたことをきっかけにキャッサバの栽培を思い立ち、2011年から生産に取り組んでいる(コラム1−写真1)。キャッサバの生産は、当初0.1ヘクタールから始まったが、生産を始める組合員の仲間も増え、22年には法人全体で約8ヘクタールの規模となった。販売は、()場のそばに直売所を設ける他、インターネットや電話での注文も受け付けており、主な顧客は日系ブラジル人など日本に住む外国人が9割を占めている。例年10月から11月の収穫期には、故郷の味を求めて多くの問い合わせが寄せられる。

 

 このように安定した販売が可能な量を確保できるようになるには5年程度を要したという。生産当初は、沖縄県と鹿児島県(徳之島)で栽培されていたキャッサバの苗木を入手し、それぞれを試験的に栽培、収穫した。最終的には顧客の意見も反映し、徳之島で栽培されていた苗木を導入することとした。しかし、熱帯植物であるキャッサバは暑さに強いものの寒さには弱く、キャッサバの越冬のために温室環境を整備するなど、四季のある日本では生産に工夫が必要であった。島田氏は、関東平野の内陸に位置する邑楽町の夏は暑く、キャッサバの生産に向いている地域であると判断し、安定生産に向け工夫や改良を図ってきた。現在は、春に苗木を定植し、夏の間に地中大きく成長したキャッサバを秋に収穫し、冬は温室で次期作に向けた苗木を育てるという栽培サイクルで、安定した生産を確保するに至っている(コラム1−写真2)。 
 

 また、邑楽町の公民館事業ではキャッサバ掘り体験講座が企画されるなど、キャッサバに対する町民の関心も徐々に高まっている。アグリファームでは、キャッサバの他に白菜なども生産しているが、消費者の顔を見る機会は限られていた。しかし、キャッサバの生産を始めたことで直売所での販売や公民館事業などを通じて消費者との関わりが増え、交流の輪が広がったとしている。今後、生産圃場の確保などの課題はあるものの、キャッサバを待つ人々の要望に応えていくために、生産の拡大を目指している。

 キャッサバは、人体に有毒な物質(青酸配糖体)を多量に含む苦味種と、毒性の低い甘味種の2種に分けられる。甘味種はそのまま摂食できるが、苦味種は毒素を取り除く必要があることから、食用には向かず、工業用途での利用が中心となっている。アグリファームでは、食用での利用を前提に中身がやや黄色みがかった甘味種を生産している(コラム1−写真3)。
 

 キャッサバは暑さに強いだけではなく、栄養の少ない痩せた土地でも栽培が可能であり、少量の農薬で生産できるという特長を有している。さらに、近年関心の高まっているグルテンフリーの食材でもあるため、日本人にもぜひ食べてみてほしい、と島田氏は語っていた。

 キャッサバは、ほのかに甘く栗のような風味があり、ばれいしょやかんしょなどのいも類と同様に蒸す・揚げるなどの調理方法が一般的で、邑楽町は、キャッサバカレーのレシピを紹介している(コラム1−写真4)。
 

 同町は「2020東京オリンピック」でポリネシアに位置するトンガ王国のホストタウンとなった経緯があるが、同国でもキャッサバが主食として一般的に食されている。コロナ禍の影響で直接交流する機会は得られていないものの、NPO法人日本トンガ友好協会を通じた在日トンガ人とのさまざまな交流を行っている。このような背景から、同町はキャッサバに着目したカレーのレシピ開発に至り、野菜などの直売を行っている邑楽町あいあいセンター内の農村レストランで提供したこともある。レシピは同町ホームページやYouTubeで公開しており、皆さまも機会があればぜひご賞味いただきたい。

(参考)キャッサバカレーの調理動画
https://www.town.ora.gunma.jp/s028/cassavacurry.html

(3)小麦でん粉

 小麦でん粉の生産量は、欧州が世界全体の4割以上を占め、アジアが同3割強、北米が同2割弱と続いている(表5)。2021年の地域別生産量は、オセアニア以外で前年を上回った。

 主要生産地である欧州では、天然でん粉の生産量のうち、小麦でん粉のみ過去5年間で約30%の大幅な増加をみせており、その背景には小麦でん粉の収益性の高さと用途があると考えられる。まず生産コストについて、原料である小麦はトウモロコシなどと比較して安価で生産コストが抑えられる上、小麦でん粉生産時に発生する副産物は、家畜飼料向けのたんぱく源などとしての需要が高く、小麦でん粉生産全体の収益拡大につながっている。用途については、小麦でん粉は包装資材や印刷用紙など、製紙の原料として主に工業向けで使用されており、食品向けではグルテン(注3)を含むため、小麦を使っている商品のみに利用する傾向がある。製紙部門では、コーンスターチやばれいしょでん粉も利用されるものの、この20年余りは安価な小麦でん粉が選択される傾向にある。さらに、近年は電子商取引の拡大により段ボールなどの包装需要が大きく増加していることなども追い風となり、小麦でん粉生産工場への投資が相次いでいる。例えば、オーストリアなどで工場の生産能力拡大の他、ドイツの工場では、コーンスターチから小麦でん粉生産への切り替えが実施される予定であり、今後も生産拡大が見込まれている。

 消費量は、欧州とアジアが多く、これらが主要消費地域となっており、21年はほとんど消費量のない中米・カリブ海を除くすべての地域で前年を上回った。22年以降も同様の傾向が続き、すべての地域で前年を上回るとされている。

 上記の通り、欧州では増産傾向が続いており、コーンスターチなど他のでん粉の消費量が減少傾向にある一方、小麦でん粉の消費量は今後も増加傾向が見込まれている。

(注3)グルテンとは小麦などに含まれるたんぱく質の一種で、自己免疫疾患(セリアック病)の発症の引き金となる他、小麦アレルギー患者のアレルゲン(アレルギー誘発物質)の一つでもある。

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(4)ばれいしょでん粉

 ばれいしょでん粉の生産量は、欧州が世界全体の7割弱を占め、アジアが同3割弱と続いている(表6)。2021年の地域別生産量は、アジアのみ前年を下回り、その他の生産地域では前年を上回った。

 主産地である欧州では、前年のCOVID-19感染拡大の影響で需要が低迷したことから、原料のばれいしょの作付面積が減少し、生産量が減少した地域も見られたが、オランダやフランスなどの主産国では前年を上回った。特に、オランダのでん粉製造企業では、ばれいしょの品質は良好で、でん粉の含有率は前年産よりも1.3ポイント高く、欧州のばれいしょでん粉生産量も前年比14.7%増と報告されている。

 一方、消費量は、最大の消費地域のアジアが世界全体の5割弱を占めており、欧州も同3割強と主要な消費地域となっている。21年は、アジアなどの主要消費地域を中心に消費量はすべての地域で前年を上回った。22年以降は欧州以外の地域で前年を上回ると見込まれる。

 北西ヨーロッパジャガイモ生産者協会(NEPG)によると、21年10月から22年10月の間に、燃料価格が平均で55%高騰するなど、ばれいしょの生産コストは上昇している。これはロシアによるウクライナ侵攻の影響と考えられ、欧州では22年の作付面積の減少が見込まれている。一方で、近年は消費者の健康志向などを背景に、植物性たんぱく質への関心と需要が高まっている。近年、ばれいしょでん粉の副産物であるばれいしょたんぱく質の抽出・応用技術の研究開発や、増産に向けた投資などが積極的に行われており、引き続きばれいしょたんぱく質の市場拡大が期待されている。

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コラム2 身近な紙製品とでん粉の関わり


 私たちの生活、身の回りではさまざまな紙製品が活躍しており、こうした紙は洋紙と板紙の二つに大きく分類される(コラム2−図1)。

 

 洋紙は、新聞紙をはじめ、書籍・漫画コミックス・雑誌などの印刷用紙から、コピー用紙、デパートでの包装などの包装用紙、生活必需品であるティッシュといった衛生用紙など、広範囲に及ぶ。また、板紙は、菓子や化粧品、ティッシュの箱などに使われる紙器の他、段ボールなどが代表例として挙げられる。

 その中で、でん粉はさまざまな紙製品に用いられており、紙製品の製造に欠くことのできない原料となっている。

 まず、洋紙の生産にでん粉を使用する目的は、主に紙の強度を向上させ、印刷、加工、包装用途により適した紙に改善することである。紙の原料段階であるパルプにでん粉を投入してパルプ繊維間の接着強度を高めたり、紙の表面にでん粉を塗る事により紙表面の強度を向上させたり、印刷適性を改善するためにも用いられる。また、カレンダーやカタログ雑誌などの高級塗工紙では、表面がツルツルで艶が出るようにするための「塗工層」を紙に定着させるための接着剤としても用いられる。

 次に、板紙の生産にでん粉を使用する主な目的は、板紙の接着である。紙器用の板紙である白板紙は、重層構造となっており、でん粉は板紙の層の間の接着剤として使用される。また、段ボールは、ライナと呼ばれる外側の2枚の板紙の間に波状に加工された板紙(中しん)を挟む構造となっており、ライナと中しんを接着する接着剤としてでん粉が使われている(コラム2−図2)。



 なお、この段ボールは、今後注目される紙製品の一つである。段ボールは、ご存じの通り郵便や宅配便、電気器具、部品などのさまざまな梱包に使われている。私たちの日々の生活のみならず、日本の物流や経済活動をも支えており、非常に重要で欠かせないものである。近年、デジタル化が加速し、情報通信機器の普及やネット通販の拡大により梱包資材需要は確実に伸びており、今後も段ボール需要の増大が見込まれることから、重要性はさらに増すものと思われる。

 このように、紙製品は私たちの身近な生活から未来に渡って多様な価値を提供していくと考えられ、その中で、でん粉はさらに重要な役割を担っていくものと期待される。
 

(5)化工でん粉

 化工でん粉の生産量は、アジアが世界全体の5割弱を占め、北米が同3割弱、欧州が同2割強と続いている(表7)。2021年の地域別生産量は、すべての地域で前年を上回った。また、タイの化工でん粉輸出量は19年と比べて10%増加し、COVID-19以前の水準以上に回復した。タイでは、キャッサバモザイク病の影響でタピオカでん粉の生産量や輸出量は近年減少していた一方、化工でん粉の輸出量は15年以降増加傾向で推移している。COVID-19の影響を受けた20年は減少したものの、化工でん粉が天然でん粉よりも収益性が高く、用途によっては代替の利かない製品もあるため、タイで化工でん粉を優先した生産・出荷体制が取られた結果と考えられる。

 消費量は、生産量と同様、アジアや北米、欧州が主要消費地域となっており、21年はすべての地域で前年を上回った。

 化工でん粉は、物理的・化学的なプロセスによりでん粉本来の特性の改良などが行われたでん粉であり、天然でん粉よりも品質が安定しているなどの特徴を持っている。工業用から特殊な食品素材まで幅広い製品が含まれ、コーンスターチとタピオカでん粉に次いで大きな市場を形成している。欧州では、政府によって安全性が確認されているものであっても、化学的な添加物を避けようとする消費者が増加する傾向にあり、食品製造企業はクリーンラベル(添加物を含まず、消費者に分かりやすい食品成分表示をすること)への対応が求められている(注4)。このような状況で、特に化工でん粉の中でも化学薬品で処理するなどの化学的な変性を加えず、加熱や加圧など、物理的な変性を加えたものは、機能性を持ちつつも自然な食品原料とみなされることから、近年、需要が高まる傾向にある。

(注4)化工でん粉は食品添加物の一つであり、日本では、食品の原材料表示欄において、食品が列記された後に、食品添加物の境を示す「/」の後に「加工でん粉」と表記される。

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おわりに

 ロシアによるウクライナ侵攻により、原油や肥料、穀物などの供給に対する不確実性が高まっており、世界のでん粉生産への影響も懸念される。例えば欧州では、トウモロコシや小麦など取引価格の高い穀物への転作が進むことで、2022年のばれいしょ作付面積の減少が見込まれている。

 また、世界のでん粉消費量は、経済活動の活性化によりすべての地域で徐々に回復している。今後の世界人口や所得の増加などを考慮すると、21年以降、毎年約2%の割合で増加し、26年には5216万トン(21年比12.2%増)と、5000万トンの大台に達すると予測されている(図4)。

 品目別では、コーンスターチの代替品としての需要が続くとされるタピオカでん粉の増加率が15.1%と最も高く、生産拡大や工場への投資が実施されている小麦でん粉の増加率が14.4%、化工でん粉の増加率が14.0%と続く。化工でん粉は、経済情勢の影響を受けやすい傾向にあるため正確な見通しを立てづらいものの、22年以降の消費量は堅調に推移すると見込まれる。また、天然でん粉は高い代替性を有することから、原料の入手のしやすさなどによっても個々の需要は変動する可能性があり、今後の需給動向について注視する必要がある。

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このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272