嚥下障害とは、食べ物や飲み物をうまくのみ込めなくなる状態で、脳卒中、神経や筋肉の病気、加齢や栄養不足による筋肉の衰えなどが原因とされています。嚥下障害が重度になると、食事が空気の通り道である気管の方へ入ってしまい「
誤嚥性肺炎」を生じることがあります。適切な対応をしないまま放置して誤嚥性肺炎を繰り返すと、最終的に口から食べることができなくなる恐れがあります。そのため、嚥下障害には、早期から対応することが重要となってきます。簡便に嚥下障害の有無をチェックする方法として、以下のスクリーニング検査があります。
(1)反復唾液嚥下テスト
30秒間に唾液を何回嚥下できるか測定し、3回未満の場合は嚥下障害の可能性があると判定する。
(2)改訂水飲みテスト
3ミリリットルの水を嚥下した後、ムセの有無や声・呼吸の変化を聴取し、5段階で判定する。
どちらも簡便に、そして自宅でも実施可能です。嚥下障害が疑われる場合には、病院で以下の精密検査を受けることが推奨されます。
(1)嚥下内視鏡検査
鼻からカメラを挿入し、喉の動きや食事が残っていないかなどを確認する。
(2)嚥下造影検査
レントゲンの動画を撮影しながら造影剤を含む食事を摂取し、
咀嚼嚥下の流れを動画で確認する。
精密検査は保険診療で実施可能ですが、対応できる医療機関が限られているため、かかりつけの先生への相談が望ましいです。
また、検査結果に基づき、以下のような対応を行います。
(1)訓練的アプローチ
口、舌、喉の筋肉を鍛えたり、感覚機能を向上させたりするなど、低下した機能の改善を目的とします。
(2)代償的アプローチ
食事をミキサーにかけ、のみ込みやすい形状に変更したり、喉に食べ物が残りやすい方では、水分と交互に摂取したりするといった方法が該当します。
(3)環境的アプローチ
気が散りやすく食事に集中できない方に対して、テレビを消す、静かな環境に移動するなど、食事に集中できる環境を整えます。
代償的アプローチとしての食事形態の調整は、近年ますます注目されています。一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会作成の「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」の「学会分類」では0から4まで7段階のコードに分類されており
(注1)、数字が大きくなるほど嚥下の難易度が上がります。また、水分のとろみに関しては、「薄いとろみ」「中間とろみ」「濃いとろみ」の三つに分類されます。
(注1)詳細については、一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会ホームページ
〈https://www.jsdr.or.jp/doc/classification2021.html〉をご参照ください。