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〜かんしょ由来の食物繊維〜

かんしょでん粉残渣を原料とした食品素材の可能性
〜かんしょ由来の食物繊維〜

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最終更新日:2026年6月10日

かんしょでん粉残渣を原料とした食品素材の可能性
〜かんしょ由来の食物繊維〜

2026年6月

株式会社サナス 開発研究部 チーフ 川上 拓也
開発研究部 米盛 裕希子

【要約】

 でん粉原料用かんしょから作られる製品の価値向上を図るため、でん粉製造時に発生する副産物であるかんしょでん粉残渣(ざん さ)に着目し、その食品素材としての利用可能性を評価した。本稿では、かんしょでん粉残渣を乾燥した「サツマイモファイバー」と、その食物繊維成分の一つである「サツマイモペクチン」について紹介する。いずれも柑橘(かん きつ)類やリンゴ由来の試料と比較して異なる特徴を有し、かんしょでん粉残渣を原料とした食品素材の可能性を見いだした。

はじめに

 かんしょは台風に強く、作物の作付けに不向きなシラス土壌でも栽培できることから、南九州で長年にわたり基幹作物として栽培され、主にいも焼酎やかんしょでん粉の原料として地域産業を支えてきた。かんしょでん粉は南九州において年間で約1万トン(令和6年度)が生産されており1)、北海道のばれいしょでん粉とともに国産いも類でん粉として食品原料のほか、糖化製品や化工でん粉の原料など多くの用途で利用されている。しかし、近年、サツマイモ基腐(もと ぐされ)病(以下「基腐病」という)のまん延や生産者の高齢化などにより、かんしょの生産量は減少し、焼酎・でん粉産業においては原料の確保に苦慮している。基腐病に対しては抵抗品種への切り替えや防除対策が進んだことにより、その被害は減少したが、でん粉原料用かんしょ(以下「でん粉用かんしょ」という)は他の用途の原料価格高騰などの影響も受け、生産量が回復せず、でん粉産業にとっては引き続き安定した原料確保が課題となっている2)

 でん粉用かんしょの栽培を、生産者にとって魅力あるものにするためには、でん粉用かんしょから生産される製品の価値を向上させる取り組みが必要であると感じている。生産されるでん粉自体の付加価値を高める取り組みは、これまでも行われてきた。一例として、固有のでん粉特性を生かした食品加工用途で使用される「こなみずき」、「こなみらい」でん粉の開発が挙げられる3)4)

 このような背景から、さらにでん粉用かんしょからの製品価値向上を図るため、でん粉製造工程で副産物として発生するかんしょでん粉残渣に着目した。かんしょでん粉残渣には、現在の消費者ニーズに応えられる価値の高い食物繊維成分が多量に含まれているが、有効利用されていない。そこで本稿では、かんしょでん粉残渣を原料とした食物繊維素材である「サツマイモファイバー」と「サツマイモペクチン」の特性とそのアプリケーション(活用)例を中心に紹介する。

1 かんしょでん粉残渣について

 かんしょでん粉の製造工程の概略図を図1に示す。かんしょでん粉製造は、原料のかんしょを高速磨砕機で微細に磨砕することから始まる。この磨砕液は遠心ふるいにより、でん粉乳と残渣にふるい分けされ、この分離された残渣を脱水したものが、かんしょでん粉残渣となる。かんしょでん粉残渣は、原料となるいもの重量当たり、16〜18%ほど発生する。でん粉乳は、遠心分離機などを用いた比重分離により不純物を除去しながら精製・濃縮され、この濃縮液を脱水・乾燥することで、かんしょでん粉は製造される。




 
 かんしょでん粉残渣の脱水時には、脱水効率を高めるため、消石灰(水酸化カルシウム)を添加することが一般的である。これは、かんしょでん粉残渣に含まれるペクチンがアルカリ溶液中でけん化(注1)され、カルシウムを包括し、強固な高分子ゲルを形成することを利用している6)。そのためかんしょでん粉残渣には、相当量のカルシウムが含まれる。乾燥したかんしょでん粉残渣の栄養成分分析結果を表1に示す。

 (注1)アルカリ溶液を用いたエステルの加水分解のこと。

 鹿児島県におけるかんしょでん粉残渣の発生量は、令和4年度で約8300トンであり、その40%程度が畜産飼料に利用されている7)。かんしょでん粉残渣の発生時期はでん粉工場操業期間の9〜12月ごろに限られ、また、水分を80%程度含み貯蔵性も悪いことから、かんしょでん粉残渣を給餌できる期間が限られているという課題がある。その他の利用方法として、肥料用としての農地還元やクエン酸原料としても用いられるが、いずれにしてもでん粉工場にとって経済価値の高い用途とは言い難い。
 


 

 かんしょでん粉残渣の付加価値を高める検討は、これまでもいくつか報告されてきたが、実用化には至っていない。表1で示した通り、食物繊維を50%以上含有するため、その用途開発が検討の中心になっている。例えば、酵素分解により、かんしょでん粉残渣を可溶化させ、水溶性食物繊維を調製した報告8)や含まれるでん粉を除去した食物繊維を調製した報告9)、ペクチン抽出の報告10)などが挙げられる。なお、かんしょでん粉残渣に含まれる主な食物繊維は、セルロース33%、ヘミセルロース23%、ペクチン41%と報告されている9)

 

2 サツマイモファイバー

 加工食品の分野では、保水性や保油性、保形性などの物性改良を目的とした食物繊維素材の利用機会が増えている。これらの食物繊維素材は、柑橘、リンゴ果皮や木材パルプなどさまざまな原料から製造されており、機能・価格などの面から選ばれている。

 かんしょでん粉残渣は、表1で示した通り、食物繊維の他にでん粉(糖質)を35%程度含有している。市販の食物繊維素材は、でん粉を含まないことが多いが、でん粉は加熱調理の際、糊化(こ か)することによって、保水性や保形性の向上などの物性改良効果をもたらす。そのため、あえてでん粉を除去することは行わず、乾燥および粉砕工程のみの簡易な製造法で調製し、その機能性や利用特性を評価することにした。比較対象として、市販の食物繊維素材(木材パルプ由来)や、酵素法にてでん粉を除去したかんしょでん粉残渣乾燥物を使用した。

 各試料に水あるいは油を添加した後の保水性・保油性・膨潤性を比較した結果を図2に示す。この試験では加熱工程が無く、でん粉が機能を発揮しないため、でん粉を除去し食物繊維含量を高めたかんしょでん粉残渣の方が、同じ重量当たりでは高い機能性を示した。しかしながら、でん粉を除去していない試料についても、市販の食物繊維素材と遜色ない機能を有し、物性改良剤として利用できるものと考えられる。

 また、加熱工程のある試験においては、でん粉が糊化し機能を発揮することで、保水性などが向上し、でん粉を除去したかんしょでん粉残渣と比較して、図3のようにハンバーグや包あん食品の焼成前後の重量変化が少なくなる(肉汁の流出を抑制する)という結果を得ている。



 
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3 サツマイモペクチン

 ペクチンは代表的な水溶性食物繊維の一種であり、食品加工分野においては、ジャム類などのゲル化剤、とろみ(ボディ感)を付与する増粘剤、酸性乳飲料などの安定化剤などに用いられている。産業的に利用されるペクチンは、食品加工残渣を原料とすることが一般的で、世界的には、主に柑橘類果皮(85.5%)やリンゴ搾汁残渣(14.0%)から抽出されている11)。ペクチンの需要は世界的に伸び続けており、また、2010年代には、柑橘類不作によってペクチン原料がひっ迫したこともあることから、新たなペクチン原料が求められており、さまざまな食品加工残渣からのペクチン抽出とその特性評価が行われている。

 ペクチンは、ガラクツロン酸(GalA)という糖が、直鎖上に結合した多糖が主成分であり、日本国内における既存添加物のペクチンに関する基準を満たすためには、GalAの含有量が65%以上であることが必要とされている12)。GalA残基の6位のカルボキシ基は、部分的にメトキシ化(メチルエステル化)され、その置換率はエステル化度(degree of esterification; DE)と表される。DEは、ペクチンの産業利用特性を評価する上で重要視されるパラメーターの一つであり、DEが50%以上のものを高メトキシペクチン(HMペクチン)、50%未満のものを低メトキシペクチン(LMペクチン)と称し、それぞれゲル化のメカニズムが異なるとされている。HMペクチンは、酸性下(pH 3.5以下)での糖の添加(糖度55%以上)によりゲル化し、LMペクチンは、カルシウムなどの多価イオン存在下でゲル化する。

 かんしょでん粉残渣中にも、乾燥重量当たり20%程度と豊富にペクチンが含まれているため、ペクチン原料として有望視され、その製造法と性状が検討されてきた10)13)14)。かんしょでん粉残渣から抽出されるペクチンは、DE1.4%のLMペクチンとされている13)。産業的に製造されるペクチンは、柑橘類果皮やリンゴ搾汁残渣から抽出されるHMペクチンを酸・アルカリ・酵素などを用いて脱エステル化して製造することが一般的であるが、サツマイモペクチンは、脱エステル化処理を行わず、LMペクチンを製造することができる。これは、かんしょでん粉残渣の脱水時に消石灰が添加されることによって、アルカリ性となり、脱エステル化が起きているためだと考えている。Frosiら15)は、さまざまな食品加工残渣(41種)からのペクチン収率とそのDEをグラフ化してまとめているが、DE10%未満のペクチンを抽出できる食品加工残渣はなく、収率面からも既存のペクチン原料に見劣りしないことからも、かんしょでん粉残渣は非常に期待の持てる原料であると考えている。

 上述した通り、LMペクチンのゲル化のメカニズムは、カルシウムなどの多価イオンとのイオン結合に基づくものである。サツマイモペクチンの抽出には、リン酸塩を用いることが効率的であると報告されているが10)、リン酸塩はキレート効果(注2)を有するため、最終のペクチンに残存すると、ゲル化が阻害され充分なゲル化力を得ることができない。そのため、残存するリン酸塩を低減させることが重要であるが、筆者らは既報の方法と異なる精製方法を用いることで、リン酸塩の残存を既報の15分の1以下に低減させたサツマイモペクチンを調製することができた。

 (注2)カルシウムなどの金属イオンを封鎖する効果のこと。ここではリン酸塩によってペクチンがイオン結合できず、ゲル化が阻害される。

 この調製法で得られたサツマイモペクチンは、GalAを76%含有し、食品添加物公定書で定められる規格値を満たすため、既存添加物として扱われるものと思われる。また、表2に示す通り、既報の調製法で得られるサツマイモペクチンや市販のLMペクチンと比較して、高いカルシウム反応性を有しているため、その特性を生かした食品への応用を検討した。
 
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 近年、植物性由来の原材料を使用したプラントベースフードと呼ばれる食品が急速な広がりを見せている。LMペクチンの用途の一つとして、ミルク中に含まれるカルシウムによるゲル化機能を生かした「ミルクデザート」があるが、カルシウム含量の少ない植物性ミルク(豆乳、オーツミルク、アーモンドミルクなど)はゲル化が困難であるという課題があった16)。そこで、前述の調製法により得られたサツマイモペクチンは高いカルシウム反応性を有していることから、種々の植物性ミルクでも容易にゲル化できるのではないかと考え、検討を行った。比較対象として、DEの異なる市販のLMペクチンを用いた。表3に示す通り、前述の調製法によるサツマイモペクチンは、市販のLMペクチンではゲル化することのできない種々の植物性ミルクに対してゲル化能を有することを確認した。実用化に当たっては、目的に応じて粘度やゲル化速度などを調整するために、その他原料を配合することになると思われるが、植物性ミルクを用いた加工食品の幅を広げることに貢献できるものと期待している。
 
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 その他、植物性原料に対するサツマイモペクチンの用途として、植物性油脂を用いたホイップクリームを評価した。製菓・製パンなどに用いるホイップクリームは、その保形性や離水に課題があり、LMペクチンと水溶性カルシウム塩などを配合することで、その課題を解決する技術がある17)。植物性油脂は、乳脂肪と比較するとカルシウム含量が少なく、水溶性カルシウム塩を添加する必要があるが、前述の調製法によるサツマイモペクチンであれば、カルシウム塩を添加することなく、保形性の高いホイップクリームを調製することができた(図4)。また、クリームを固めるための泡立て時間も大幅に短縮できるため、作業性にも優れており、既存のペクチンと比較して優位性があると思われる。

 また、このサツマイモペクチンは、市販の柑橘類やリンゴ由来のペクチンと遜色ない分子量であり、そのゲルは耐熱性が非常に高いことも確認している(表4)。これは、サツマイモペクチンのDEが非常に低いため、カルシウムと強固なゲルを形成しているためであると推測している。このことは、低濃度ジャムなどの一般的なゲル状食品にも用いることができるほか、これまで高温でのゲル化を諦めていた食品への応用も期待できることを示している。

 上述してきた通り、サツマイモペクチンは、市販されている柑橘類やリンゴ由来のペクチンと比較して、異なる特徴を有しており、その食品への応用も期待される。



 
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おわりに 今後の課題と展望

 今回の取り組みにおいて、かんしょでん粉残渣を原料とした食品素材の特徴を見いだし、かんしょ利用のさらなる可能性を広げることができた。一方、かんしょでん粉残渣は、貯蔵性が悪く、また副産物の扱いであるため、十分な衛生管理がなされているとは言えない部分もある。そのため、異物混入や微生物汚染を防ぐような手立てが必要となる。かんしょでん粉残渣発生直後のタイミングで、一度乾燥を行い、貯蔵性を高めることが最も取り扱いの良い方法であるが、かんしょでん粉の製造量自体が大幅に減少している中、でん粉工場操業時期の限られた期間しか稼働しない乾燥機を導入することは、コスト面でのハードルが高く、実用化に向けては、まだ課題が残存している。今後、より効率的な製造法の確立を目指し、でん粉用かんしょの付加価値向上を図っていきたい。
【引用文献】
1)農林水産省農産局地域作物課(2025)「令和6年度いも・でん粉に関する資料 8 でん粉の需給」pp. 182〈https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/r5shiryo.html)(2026/1/26アクセス)
2)鹿児島県さつまいも・でん粉対策協議会(2025)「鹿児島県における令和6年度産でん粉原料用さつまいもの生産状況について」『砂糖類・でん粉情報』2025年11月号pp.53-57、独立行政法人農畜産業振興機構
3)片山健二、小林晃、時村金愛、片野豊彦、横山公一、北原兼文(2018)「低温糊化性澱粉を有するサツマイモ品種「こなみずき」の育成、特性解明、澱粉製造および食品利用技術の開発」『応用糖質科学』2018年第8巻第1号pp.56-62、一般社団法人日本応用糖質科学会
4)川田ゆかり(2025)「低温糊化性でん粉原料用かんしょ新品種「こなみらい」〜「こなみずき」よりサツマイモ基腐病に強く、多収〜」『砂糖類・でん粉情報』2025年3月号pp.44-51、独立行政法人農畜産業振興機構
5)川上拓也、米盛裕希子、中村弘、石場秀人、吉永一浩、高田洋樹(2024)「サツマイモ由来の食物繊維の特性と食品への応用」『応用糖質科学』2024年第14巻第3号pp.156-161、一般社団法人日本応用糖質科学会
6)桜井直樹、山本良一、加藤陽治(1991)『植物細胞壁と多糖類」pp.34東京:培風館
7)鹿児島県農政部畜産課(2024)「地域低・未利用資源の飼料利用の状況、飼料に関する情報」〈https://www.pref.kagoshima.jp/ag07/sangyo-rodo/nogyo/tikusan/siryo/documents/8834_20240327155743-1.pdf)(2026/1/22アクセス)
8)T. Suganuma, K. Kitahara, and K. Fujita (2008)「Sugar analysis and utilization of dietary fiber from sweetpotato as a foodstuff―Application of un-utilized polysaccharide resources in southern kyushu」『FFI Jpn』Vol. 213 pp. 699-707
9)K. Takamine, J. Abe, A. Iwaya, S. Maseda, and S. Hizukuri(2000)「A new manufacturing process for dietary fiber from sweetpotato residue and its physical characteristics」『J. Appl. Glycosci』Vol.47 pp. 67-72
10)K. Takamine, J. Abe, A. Iwaya, K. Shimono, S. Maseda, and S. Hizukuri (2000)「Preparation of pectin from sweetpotato residue and its characterization」『J. Appl. Glycosci』Vol.47 pp.201-206
11)M.C.N. Picot-Allain, B. Ramasawmy, and M.N. Emmambux(2022)「Extraction,characterization and application of pectin from tropical and sub-tropical fruits」『Food Rev.Int』Vol.38 pp. 282-312
12)厚生労働省、消費者庁(2024)「第10版食品添加物公定書 D成分規格・保存条件各条」pp. 932-934〈https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/kouteisho10e.html〉 (2026/1/26アクセス)
13)K. Takamine, J. Abe, K. Shimono, Y. Sameshima, S. Morimura, and K. Kida(2007)「Physicochemical and gelling characterizations of pectin extracted from sweet potato pulp」『J. Appl. Glycosci』Vol.54 pp. 211-216
14)不二製油、戸邊順、中村彰宏、金森美知子、吉田隆治、前田裕一「ペクチンの製造法並びにそれを用いたゲル化剤及びゲル状食品」特許第5076889号、2008-12-25
15)I. Frosi, A. Balduzzi, G. Moretto, R. Colombo, and A. Papetti (2023)「Towards valorization of food-waste-derived pectin: Recent advances on their characterization and application」『Molecules』 6390
16)キッコーマン、高田優子、五十嵐俊教「豆乳用ゲル化剤及びそれを用いたゲル化組成物の製造方法」特許第4931155号、2009-10-15
17)三栄源エフ・エフ・アイ、増竹憲二、藤田康之「ホイップドクリーム」特許第6309241号、2015-05-07
 
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