最終更新日:2025年6月5日
広報webマガジン「alic」2025年6月号
6月1日は、牛乳の日、6月は、牛乳月間です。これは、FAO(国連食糧農業機関)が2001年に6月1日を「世界牛乳の日(World Milk Day)」とすることを提唱したことに由来します。日本では、2007年、日本酪農乳業協会(現・一般社団法人Jミルク)が6月1日を「牛乳の日」、6月を「牛乳月間」と定め、多種多様な事業者が参画して活動をしています。
FAOは、「牛乳は地球上で最も広く生産され、価値のある農産物のひとつです。牛乳には必須栄養素が豊富に含まれており、食料安全保障、栄養、経済発展の原動力となっています。」と述べており、もともと各国で、6月1日前後で牛乳にまつわるイベントが開催されることが多かったことから、この日にしたとのことです。
今回は、牛乳の容器、牛乳パックのまめ知識をご紹介します。 |
1. 牛乳といえば紙パック、その歴史は?
日本での牛乳の販売は、1870年ごろにブリキ缶で運んだ牛乳を「ひしゃく」ですくって5勺(90ml)ずつ量り売りしたところから始まったそうです。その後、1877年ごろに、1合(180ml)のブリキ缶や瓶を使った牛乳配達が始まりました。1928年には東京警視庁から「牛乳営業取締規則」が改正され、殺菌を義務づけ、着色びんの利用を禁止、無色透明の広口びんで紙栓をするように決定をされています。
1951年には、厚生省(現厚生労働省)が「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)」を定め、無色透明のガラスびんの使用を義務化しました。
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※令和6年4月1日より、食品衛生基準行政に関わる権限が、厚生労働省から消費者庁に移管されたことに伴い「乳及び乳製品の成分規格等に関する命令」に改められました。
その一方世界では、1938年に米国のエクセロ社が紙容器であるピュアパックを開発します。当時は、カートン紙の底を糊でとめた後、ワックスに浸して漏れないようにしていました。その後、ポリエチレンの発明や法律の改正などにより、徐々に今の形態に改良されていきます。
また、1952年スウェーデンでルーベン・ラウジング博士らによる「テトラパック®紙容器」が開発されます。無菌充填技術を初めて活用したのはテトラパックです。この技術により、滅菌した食品を工場で充填包装できるようになりました。この4面体、三角パックとも呼ばれ、学校給食の思い出となっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
紙パックの開発が世界で進む中、日本でも1962年ごろから紙容器の利用が始まり、1964年東京オリンピックや1970年大阪万博での採用をきっかけに普及が加速しました。前述の乳等省令にも容器として定められ、長く紙パックによる流通が主流となります。しかし、2007年の乳等省令改正によりプラスチック容器の利用が可能となり、現在は、様々な容器の製品も出てきました。
昔ながらの牛乳瓶は今でも見かけることがありますね。漫画などで、銭湯で片手を腰にあてて一気に牛乳を飲み干すシーンがありますが、やはり牛乳瓶であるからこそ何とも美味しそうに見えるのでしょうか。
2. 牛乳パックの切り込みについて
牛乳パックの屋根の頂上のところに小さな切り込みが入っているのをご存じですか?
これは、「切欠き(きりかき)」と言われるもので、目の不自由な方や高齢の方が触っただけで「牛乳」と分かるように入れているものです。また、この切欠きの反対側が開けやすい開け口ともなっています。
「切欠き」の導入の発端は、バリアフリー社会実現への取組が進展するなか、農林水産省で平成5〜7年度の3カ年で行われた、視覚障害者の食品へのアクセス改善を図るための実態把握・改善手法の検討です。
この実態調査の中で「飲み物容器に関する不便さ調査」が発表され、紙パック飲料への不便さが一番多く、紙パック飲料では牛乳と他の飲料との区別を望む声が76.8%と際だって高い結果になりました。この調査結果をうけ、業界団体や行政などが協力し、検討を続けました。
その結果、2001年から紙パックの牛乳に「切欠き」がつけられるようになりました。
(出典:Jミルク)
3. 牛乳パックのリサイクル
牛乳パックをリサイクルする習慣は、今は当たり前になっていますが、その始まりは、一つの市民グループからだったそうです。
1984年に、山梨県大月市の市民グループが牛乳パックの紙は白くて上質であり、こんな上質なパルプを使っているのに、ポイッと捨てるのはもったいない、ではこれを集めて何とかリサイクルできないかということで始めたそうです。
受け入れ先を探したところ、静岡県にあるポリエチレンを剥がす技術を持っている製紙メーカーに行き当たり、そこに集めた牛乳パックを持ち込もうとしたそうです。ただ、この工場では、きれいな紙パックはリサイクルをしていたのですが、飲んだ後の紙パックのリサイクルについてはやったことがなく、「洗って乾かしただけでは本当にきれいになっているのかどうか分からない、もし牛乳が残っていたら腐って臭ってしまう。ちゃんときれいであるか分かるようにして欲しい」という要望を出したそうです。そこで、市民グループの代表は、洗って乾かすだけではなく、開いて平らにして、ちゃんときれいだということが分かるようにしたとのことです。また、このルールを全国で徹底させますと約束したそうです。
これが、現在、「洗って開いて乾かして」となり、飲み終わった後の牛乳パックリサイクルのルールになったようです。
さて、このようにリサイクルが始まった牛乳パックですが、リサイクル率の目標は50%ですが、近年は停滞しています。使用済紙パックの回収率は29.8%となっており、3回に1回しかリサイクルされていないようです。
限られた資源、洗って乾かすのは少し手間がかかりますが、消費者である私たちも協力をしあってつなげていくことが大事ですね。
出典:全国牛乳容器環境協議会「2023年度 リサイクル実態」飲料用紙容器(紙パック)リサイクルの現状と動向に関する基本調査
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