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肉用牛農家になるには?

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最終更新日:2026年1月5日
広報webマガジン「alic」2026年1月号

 家庭や飲食店に届けられる牛肉を生産しているのは「肉用牛農家」です。
 今回は、肉用牛農家になるにはどうしたらよいかを紹介します。
 

1 肉用牛農家とは

 まず、肉用牛農家はどのようなものなのか、簡単に紹介します。
 肉用牛農家は、繁殖雌牛(子牛を産む用の母牛)を飼い、子牛を生産して販売する繁殖経営と、子牛を購入し育てて肥育牛として出荷する肥育経営に分かれています。肥育経営は、黒毛和種の場合では、9〜10カ月齢の子牛を18〜22カ月間肥育して出荷します。また、繁殖と肥育を一緒に行う経営は一貫経営といいます(注1)。 

 また、牛には複数の品種があり、主に肉用牛農家で飼われているのは、黒毛和牛になる「黒毛和種」を中心とした肉専用種(肉向けの牛の種類のこと)です。また、牛乳を搾るための牛である乳用種(ホルスタインなど)のうち雄牛や乳量の低下した雌牛のほか、乳用種と黒毛和種を掛け合わせた交雑種も牛肉となります。これらの肉になる牛を育てるのが、「肉用牛農家」です。

(注1)肉用牛 | 畜産のお仕事 | 公益社団法人 中央畜産会
図1「繁殖と肥育」(中央畜産会)

2 肉用牛農家として就農するには

 就農や牛を飼うことを考え始めたら、まずは情報収集が不可欠です。資料やインターネットのみならず、農業や就農をテーマにしたイベントやインターンシップに行き、体験したり直接話を聞くことで、より理解が深まります。これらの経験を経ることで、肉用牛農家として就農する意思が固い人もそこまででもない人も、農家によって異なる経営や飼養管理の方針を知ることで、現実的な視点で就農をイメージできるようになると思います。

 さて、就農の形態には、大きく以下の2種類があります。

・農業生産法人(農家)や肉用牛ヘルパー利用組合に雇用されること。
・自営として起業し、自らが経営主となること。=“自営就農”

 皆さんが一般的に就農でイメージするのは後者かもしれません。もちろん、自分の理想に基づいて牛を飼うことができるという点では魅力的です。しかし、牛や牛舎の導入には高額な初期投資が必要であり、牛を販売して資金を回収するまでには長い期間を要します。このため、綿密な経営計画と多額の資金、そして経営や飼養管理の技術が必要となります。したがって、自営就農を目指す人も、前段階として農業生産法人などで働き、知識や経験を習得するのが近道になるかもしれません。ほかにも、農業高校や農業大学校、民間の就農塾などに通えば、必要となる技能を身に付けることもできます。

 あわせて、行政機関などに相談し、情報収集や就農への支援を得ることも重要です。地域の状況によっては、経営を継承することで、初期費用を抑えて営農を開始することができます(注2)。 


(注2)牛飼いになりませんか -肉用牛編 公益社団法人 中央畜産会
 
図2「就農フロー図」(中央畜産会)

3 肉用牛農家への就農支援について

牛舎を見学しながら意見交換している様子
講師の平川さんが説明している様子
  alicでは、将来の畜産農家の育成に向けたPR活動やイベントの開催、また新規就農者向けの研修会の実施などの取組に支援をしています。今回は事業を活用して、9月に大分県で開催された多様な担い手育成支援事業の研修会を取材しました。

 肉用牛農家の生産現場では、どのような課題があり、またそれをどのように解決していくのか。肉用牛農家への就農に関心がある農業高校、農業大学校の学生など50名が参加し、実際の農場で開催された研修会(バーンミーティング)の内容を紹介します。

 バーンミーティングは、大分県内の生産者ネットワーク組織である「大分畜産Net“鼓動”」(以下「鼓動」という。)のベテラン生産者を講師に、会員である「長野ファーム」の経営主を中心に、鼓動会員、賛助会員、行政とともに農業高校生、農業大学校生に加え、飼料メーカーや農業機械メーカーの担当者など50名が参加して行われました。

 残暑の中、鼓動の理事で今回の研修会の講師である平川修さんが、長野ファーム代表の長野由治さんに確認しながら、牛や牛舎の状況を説明し、それに対する意見やアドバイスを、参加者に求める形で進みました。

 長野ファームは、稲作を中心とした経営ですが、祖父の代に肉用牛繁殖雌牛を飼養していた背景もあり、平成28年から兼業として、肉用牛繁殖経営を開始しました。その後、alicの肉用牛経営安定対策補完事業の簡易牛舎の事業などさまざまな事業を活用して、規模拡大し、現在は繁殖母牛72頭規模の経営となっています。
 研修会の中での代表の長野さんの飼養管理の課題は、田植えや稲刈り等の稲作の繁忙期は人手不足となるため、繁殖雌牛の発情期の見逃しをしてしまうことでした。このことについては、他の参加者から具体的な有効事例を出してもらうなど、活発に意見を交わしていました。
 また、飼料会社からの牛の成長段階による給餌管理や自社製品の説明には、農業学生も興味を持って耳を傾けている様子でした。
 今回の研修会の事務局である(公社)大分県畜産協会の担当者によると、「学生には技術的な勉強の機会としてほしいが、それ以外にも農家や畜産関連会社と顔見知りになっておくという、地域内の『つながり』をつくることを重視している。」とのことでした。
 参加した学生からは「遠方にある実家が畜産農家だが、地元では、各々で経営しており、このような生産者同士が学び合う組織はなく、新鮮に感じた。」というコメントがありました。

 最後に、講師の平川さんから「現場はこのように現実と向き合い、もがきながらも夢と希望を持ってやっている。正解はないが、今回の研修のように刺激を受け合いながら、農家の先輩である我々は日々の作業を見直し、また頑張ろうという思いになる。学生のみなさんも、現場を見る中で、勉強していることを、どのように生かすのかを考えて、自分の将来を描いてほしい。」との挨拶で、バーンミーティングは閉会となりました。
 

4 まとめ


 肉用牛経営を巡るコストが上昇する中、新規就農のハードルは高いのが現状です。しかしながら、今回の長野さんの例のように、就農時はもちろん、その後も長く経営を支援する体制を地域全体で作ることで、担い手となる将来の牛飼いが増えることが期待されます。

 肉用牛農家になるための支援は、地方自治体をはじめとした公的機関、(公社)中央畜産会や道府県畜産会が中心となって実施しています。さらには、農協、先輩の農家や飼料・機械メーカーといった地域の方も、就農者を支援できる物的資源や情報資源を持っています。


 
あなたも肉用牛農家になってみませんか?
多くの方があなたのことを応援します。

 
 

(畜産経営対策部)


 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 総務部 (担当:総務広報課)
Tel:03-3583-8196