寄稿
食育基本法が大きく変わりました!
〜食育を“健康のため”だけでなく、“食料安全保障”にもつながるものへ 〜
最終更新日:2026年10月5日
広報webマガジン「alic」2026年10月号
農林水産省 消費・安全局
消費者行政・食育課
食育基本法が改正された背景
昨今、働き方の多様化や世帯構成の変化等、社会情勢が目まぐるしく変化するなか、国民の食に対する価値観の多様化が進んでいます。食に対してタイパ・コスパを重視する傾向が強まり、「大人世代」における栄養バランスの偏りや食習慣の乱れが課題となっているほか、
食卓と農林水産業の生産現場の距離も遠くなり、生産者と消費者のつながりが希薄化していることが考えられています。
また、2024年には「食料・農業・農村基本法」が改正
(注1)され、食料安全保障の確保等が大きな柱として位置づけられました。この改正では、消費者が農業への理解を深めるとともに、消費に際して、食料の持続的な供給に資する物の選択に努めることが明確に求められるようになったほか、食料を安定的に届けるために必要な「合理的な費用」をきちんと考えることが基本理念に加えられ、関係者の理解増進も盛り込まれました。
さらに、2025年には「食料システム法」が成立しました。 米や野菜などの指定飲食料品等
(注2)について、国の認定を受けた民間団体が生産から販売までのコストを「見える化」した「コスト指標」を作成できるようになり、消費者のご理解をいただきながら、持続的な供給を可能にする価格での取引を促進することとしています。
こうした食や農を取り巻く状況の変化や法律改正の状況を踏まえ、食育の実効性を高め、全国のあらゆる世代に広く行き渡るようにするため、2026年5月、約20年ぶりに食育基本法の改正が行われました。
(注1)広報ウェブマガジン「alic」2024年10月号:
『【まめ知識】食料・農業・農村基本法が四半世紀ぶりに改正されました』ページをご参照ください。
(注2)指定飲食料品等とは、適正な価格形成のために国が指定した5品目「米穀、野菜、豆腐、納豆、飲料牛乳(成分調整牛乳を除く)」の飲食料品です(令和8年1月30日時点)。
改正のポイントは4つ
(1) 食料安全保障にもつながる食育へ
食育の目的に「食料安全保障の確保」が新たに加わりました。
食べ物が
・どこで
・どのように作られ
・どんな流れで店頭に並び
・どれくらいのコストがかかっているのか
を知り、合理的な価格形成への理解を深めることが、食育の基本理念として明確化されました。
農林水産省では「売る人にも、買う人にも、育てる人にも。フェアでいい値を考える。」をコンセプトに、動画配信やイベント、学校での授業などを通じて、生産者・販売者・消費者のすべての立場にとって納得できる“フェアな価格”について考える機会を促進する「フェアプライスプロジェクト」を展開しております。
→参考:別ウィンドウで開きます(
フェアプライスプロジェクト:農林水産省)
(2) 学校での「農林漁業教育」を新たに規定
学校での食育を強化するため、以下の点が盛り込まれました。
・栄養教諭を法律に明記 → 配置促進や地域間の格差解消が期待されます。
・「農林漁業教育」を新設 → 農業・林業・漁業の体験や、生産現場について学ぶ授業を通じて、食と農のつながりへの理解を深めます。
また、学校の教職員にすべてを任せるのではなく、農林漁業者や団体などの外部人材を積極的に活用することも規定されました。さらに、自治体の教育部局と農政部局をはじめとする部局間連携も新たに規定されました。
(3) 「大人の食育」が本格スタート ― 職場や大学も舞台に
食育は「子どものためのもの」というイメージが強いですが、実は20〜30代の働く世代は朝食欠食率が高く、栄養バランスの偏りも目立っています。
そこで改正法では、「大人」世代への食育として、
・大学
・職場
が食育の新たな場として位置づけられました。
また、企業と連携した食育を進めるため、官民連携の規定が追加されました。農林水産省は「官民連携食育プラットフォーム
(注3)」や「食育実践優良法人顕彰
(注4)」を通じて、企業の取り組みを後押ししています。
(注3)食を通じて大人の消費者と日々接している食品関連事業者等とともに、官民で連携し、消費者の食と農への理解醸成と行動変容を促す「大人の食育」を推進する体制です。
→参考:別ウィンドウで開きます(
官民連携食育プラットフォーム:農林水産省)
(注4)従業員に対し、食生活改善に向けた取り組みとその評価を行っている企業を顕彰し、企業内の活力向上および優良な取り組みの横展開を図ることを目的とした認定制度です。
→参考:別ウィンドウで開きます(
食育実践優良法人顕彰制度について:農林水産省)
(4) 国も地方も取り組みを“見える化”して食育を推進
食育推進基本計画のPDCA(計画→実行→評価→改善)をより確実に回すため、次の点が法に明記されました。
・目標の達成状況を毎年調査・公表する
・5年ごとに計画を見直す
また、自治体ごとの食育の取り組み状況を表す“見える化”の仕組みも新たに追加され、取り組みの促進が期待されています。
<改正食育基本法のポイント>
第5次食育推進基本計画(令和8年度〜)
今回の法改正を踏まえ、令和8年6月に第5次食育推進基本計画が決定しました。今後5年間で特に力を入れるのは以下の点です。
・学校等での食や農の学びの充実
・健全な食生活の実現に向けた「大人の食育」の推進
・国民の食卓と生産現場の距離を縮める取り組みの拡大
また、目標を、個人が実践する目標(個人目標)と地域等が取り組む目標(地域目標)に分けて整理し、目標の達成状況の調査や分析、評価を踏まえて施策を改善していきます。
<第5次食育推進基本計画の目標と具体的な施策>
最後に
これまで食料安全保障というと生産面に政策が注力されがちでしたが、食料安全保障を確立していくためには、消費者が食卓と農林漁業の現場のつながりに対する理解を深める行動が欠かせません。
・生産現場への関心を高める
・生産に必要なコストを適切に理解する
・国産品や地場産品を選ぶ人が増える
・生産者への感謝や尊敬の気持ちが広がる
といった変化は、農林漁業の現場を力強く支え、安定した農林水産物の食料供給につながります。
今回の食育基本法の改正は、その好循環を生み出すための大きな一歩です。消費と生産それぞれの視点から食育を進めることで、国民の健康で文化的な暮らし、豊かで活力ある社会の実現につながっていくと考えています。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 総務部 (担当:総務広報課)
Tel:03-3583-8196