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令和元年度てん菜そう根病抵抗性検定試験現地調査について

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最終更新日:2019年10月24日

2019年9月

札幌事務所 小島 康斉

 一般社団法人北海道てん菜協会の主催による令和元年度てん菜そう(こん)病抵抗性検定試験の現地調査が、9月25日(水)から26日(木)にかけて行われた。
 
 てん菜そう根病は、土壌菌によって媒介される土壌伝染性ウィルス病であり、発病すると、根重が低下し、根中糖分が著しく低下することにより収量が低下するなど、日本はもとよりヨーロッパ、アメリカ及び中国等の世界中のてん菜生産地では、最も重要な病害の一つとして位置づけられている。一度土壌が汚染されると絶滅させることが難しく、防除も困難となることから、土壌拡散の予防対策や品種改良による抵抗性品種の利用が重要とされている。
 てん菜そう根病が発生すると、葉全体が黄色く変色し、被害が著しくなると根は壊死する。
 
 現地調査は、品種改良による優良品種認定における検定試験の一環として、オホーツク地域及び十勝地域の試験圃場のうち罹病(りびょう)圃場において、供試されている品種(系統)比較を行うことで発病(抵抗性遺伝子の効果)状況を調査し、てん菜そう根病抵抗性に関する試験成績を集めるために行われている。
 当日は、行政、研究機関、製糖企業など専門的知識を有した関係者約20名が参加し、圃場では、供試されている品種(系統)の概要や栽培概要、当該圃場の気象経過についての説明がされた後、品種(系統)ごとに発病状況の調査が行われ、圃場毎に抵抗性品種の生育及び発病状況を確認した。
 また、本調査と併せて、てん菜の(ちゅう)(たい)耐性試験の調査も実施した。
 本来、てん菜は二年生植物であるため、初年度は専ら栄養成長に終始するため根部が肥大し、越冬後抽苔・開花に至る。通常は肥大した根部を初年度に収穫するのが一般的であるが、北海道内では夏季に長日・冷涼となるため、栄養成長を早々に切り上げて初年度に抽苔・開花が起こる個体が出現し、そう根病と同様に糖収量の減少要因となっている。
 抽苔耐性試験とは、発芽後すぐに低温条件に触れさせることにより、抽苔が起こりやすい環境を作り出し、供試されている品種(系統)比較を行うことで、抽苔株率を数値化する試験であり、これらの試験を行うことでより良い品種の改良に繋げている。
 ※抽苔:気温や日長などにより、花茎の成長が始まることを指す。抽苔が発生すると、植物体内の多くの栄養分を消費するため、食味の低下や
    収量減少に繋がる。

 なお、本試験の関係者に北海道内における令和元年産の生育状況の話を聞くと、今年度は全体的に好天に恵まれ生育状況は良好とのことであった。
 

写真1 そう根病抵抗性「弱」品種は葉色が退緑、そう根病抵抗性「強」品種は葉色が深緑
写真1 そう根病抵抗性「弱」品種は葉色が退緑、そう根病抵抗性「強」品種は葉色が深緑

写真2 そう根病抵抗性「弱」品種
写真2 そう根病抵抗性「弱」品種

写真3 抽苔耐性が「弱」品種は抽苔が発生
写真3 抽苔耐性が「弱」品種は抽苔が発生

写真4 抽苔の様子
写真4 抽苔の様子

写真5 健全な発育のてん菜
写真5 健全な発育のてん菜

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