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さつまいも生産における機械化の推進等・経営合理化への取り組み状況

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最終更新日:2010年3月6日

さつまいも生産における機械化の推進等・経営合理化への取り組み状況
〜最近の機械化技術の開発と普及状況などについて〜

[2009年5月]

【調査報告】

鹿児島県農業開発総合センター・大隅支場 農機研究室 前室長 飛松 義博


1.はじめに

 さつまいもは台風などによる自然災害が多い上、シラスなどの火山灰性不良土壌が広く分布するという自然条件が不利な鹿児島県の畑作地域において、輪作体系や防災営農上重要な作物である。そのため地域の基幹作物として低コストによる生産が望まれている。新たな食料・農業・農村基本計画(平成17年3月)においても、農業者やその他のさつまいも生産の関係者が積極的に取り組むべき課題として「労働時間の4割程度低減」が示されており、これを踏まえ農業者および関係者が高性能作業機械などの開発導入による省力化の推進を図ってきている。

 こうした状況の中、本県ではさつまいもの省力化機械化体系の確立を目指して様々な機械の開発および機械を利用した作業体系の効率化などが図られてきた。本稿では、こうした近年に開発された機械化技術などについて、それぞれの背景・目的、成果の内容および普及状況などについて紹介することにより、平成19年度から開始された品目別経営安定化対策における、さつまいも生産農家の経営合理化、経営規模の拡大、作業の受委託作業などの円滑な推進に資する。


2.用途拡大・原料確保に対応した高品質いも安定生産のための省力・低コスト化技術

(1) 植え付け前作業一工程化による省力化と経費削減化技術の開発

「背景・目的」

 さつまいも栽培規模拡大のためには、効率的に早期から植え付けを行うことが必要であるが、植え付け時期の3月下旬〜4月は天候不順に加え、さつまいも植え付け前の複数の作業(土壌消毒、施肥、施薬、畦立マルチなど)と水稲作などとの労力競合から適期植え付けができにくい状況にある。そこで、植え付け前に集中する複数作業を同時に行う一工程作業機が開発され、作付面積拡大と低コスト生産技術が確立された。

「成果の内容」

 慣行の植え付け前作業は、耕うん(ロータリ)、土壌消毒(土壌消毒機)、鎮圧(ローラ)、堆肥散布(マニアスプレッダ)、肥料散布(ブロードキャスタ)、害虫防除剤散布(動噴)、ガス抜き(ロータリ)、畦立マルチ(畦立マルチャ)の8工程で、それぞれの機械を利用して行われており、また肥料・農薬などの資材はほ場全面散布で実施されている。

 開発された一工程作業機は、堆肥散布と耕うんを行った後、残された作業が同一工程で作業可能となるように、基軸となる畦立マルチャとトラクタフロントにトラクタバッテリ電源を利用して駆動する畦内土壌消毒機・施肥機・薬剤施薬機などを搭載した機械で、肥料・農薬などの資材は畦内局所施用する構造である(図1)。


図1 植え付け前作業の一工程作業機

 本開発機を使用した植え付け前作業体系は、慣行8工程から3工程に効率化され、10アール当たりの作業時間は慣行体系5.3時間(延べ7.4h時間)が2.4h時間(延べ3.3h時間)に省力化され、作業期間における作業工程の作業可能面積は3.7ヘクタールから7.8ヘクタールに増加し、約2倍以上の規模拡大効果が期待できる(表1)。


表1 植え付け前作業一工程化による省力効果など
注)作業期間:3月1日〜5月20日

 一工程体系の全体的な経費削減効果や肥料・農薬などの資材が全ほ散布から畦内局所散布になることにより、10アール当たりの経費は慣行体系46,762円が26,223円に減少し、44%の経費削減が可能である(表2)。

 植え付け前作業一工程化に必要な2畦用畦立マルチャ・フロント施肥機・畦内土壌消毒機・施薬機の導入コストは約110万円で、慣行体系に比べ約1/2で導入できる装備である(表2)。

表2 植え付け前作業一工程化による経費削減効果
(10a当たり、経費:円)
注)経費:平成20年8月現在の単価で試算

「普及状況など」

 さつまいも栽培においては大規模経営農家ほど資材費削減に向けた取り組みに関心が高く、特に、フロント施肥機・粒剤用施薬機などの導入が急速に進められている。また、本技術の基軸となる畦立マルチャも大規模化に対応して2畦用の導入が見られ、現在まで県内で約100台の機械が普及している。

 さつまいもの高品質安定生産や省力・低コスト化の時代背景に対応した技術として、今後更に普及が進むと思われる。


(2) さつまいも挿苗機植え付け同時かん水による活着安定技術の開発


「背景・目的」

 さつまいもの挿苗後の活着は気象条件に左右され、品質・収量が安定しないなどの問題があり、植え付け作業は、朝夕、曇天、降雨前、小雨中などの短期間に行う必要がある。一方、挿苗機の開発が進み県内に約250台が普及しているが、気象条件により植え付け期間が制限され挿苗機を効率的に稼働できないなどの課題が残されている。これらの課題に対し、条件の悪い晴天日における活着安定対策として、挿苗機植え付けと同時にかん水ができる装置が開発され、品質・収量向上と挿苗機の作業可能期間を延長できる技術が確立された。


「成果の内容」

 開発されたかん水装置は、船底植仕様さつまいも挿苗機にかん水用ピストンポンプを装着し、挿苗機に積載したポリタンクから吸水して植え付け爪先端から吐出・かん水する機構である。植え付けと同時に苗基部周囲に苗1本当たり23ミリリットルのかん水が行える(図2)。


(全体図)
(かん水ポンプ)
(植え付け爪・かん水ノズル)
図2 かん水装置付きさつまいも挿苗機

 晴天が続く条件下での慣行植え付け法(かん水無し)の活着率は90%前後で苗傷みが大きいが、植え付けと同時かん水することで欠株補植を必要としない97%以上の活着率が得られ、植え付け後の苗傷みも少なく発根が早いことから、初期生育が速く上いも収量が増加する結果が得られている(表3)。


表3 植え付け同時かん水による活着などへの効果
注)品種:コガネセンガン、栽植密度:畦幅90cm、株間35cm

 植え付け同時かん水を行うことで晴天日の植え付けが可能となり、さつまいも挿苗機による作業可能面積は約2倍に拡大された(表4)。


表4 植え付け同時かん水による挿苗機の作業面積拡大効果
注)大雨:10mm/日以上、小雨:10mm/日以下、翌日雨:当日午後3時以降植え付け可。

「普及状況など」

 本かん水装置は、さつまいも挿苗機に装備して利用することから、普及している挿苗機や新規導入される挿苗機が対象となるが、挿苗機販売メーカーから部品として供給できる体制が整い、平成21年からの導入利用が進むと思われる。


(3) さつまいも挿苗機の開発

 本技術については、「でん粉情報」2009年1月号に詳述しているため、同誌を参照されたい。


3.苗生産の省力・低コスト化技術

(1) 挿苗機植え付けに適した苗生産技術と省力育苗・採苗システムの開発


「背景・目的」

 さつまいも挿苗機は、現在約250台が県内で導入利用されており、植え付け作業は一定の省力化が実現されているが、慣行苗を人力供給して植え付ける半自動挿苗機であるため、苗性状(特に苗曲がり)が植え付け精度に及ぼす影響が大きく、挿苗機植え付けに適した苗生産技術の開発が必要となっている。また、さつまいも生産に必要な全労働時間は、先進農家体系で10アールあたり約35時間を要している。本ほ作業は機械開発が進み、大幅な省力・低コスト化が図られてきているが、苗生産に伴う省力・低コスト化技術は未開発で、現在これに必要な労力は50%以上を占める状況にある。大規模化が進む生産現場においては、大量の苗確保と低コスト苗の生産技術の開発の要望が高い。

 これらのことから、「挿苗機植え付けに適した苗生産技術」については、種いも伏せ込み方法と苗床構造について検討が行われ、挿苗機適応性の高い苗生産技術が確立されている。「省力的な育苗・採苗システム」については、苗床造成機、一斉採苗機、苗選別機などの開発を行いつつ現地実証が進められている。


「成果の内容」

① 「挿苗機植え付けに適した苗生産技術の開発」

 従来の育苗方法は人力植え付けを前提としたもので、種いもは横伏せ込みで密度も疎植にして苗は倒伏させる形態が多く、挿苗機適応性に逆行した育苗法であった。開発された育苗法は、種いも頂部をカットし、平方メートル当たり25個を縦に伏せ込むことで萌芽そろいが9日程度速まり、苗性状のそろいも良いことが判明した。また、苗床周囲に畔波シートなどを設置し、頭上かん水からかん水チューブを用いた地表面かん水に改めることで、苗倒伏による曲がり苗や葉柄が一方向に出た苗の発生が減少し、挿苗機適応性の高い苗生産技術が確立された(図3・4、表5・6)。


(種いも縦伏せ込み)
(地表面かん水)
(畔波シートの設置)
図3 苗床の種いも伏せ込み法と倒伏防止対策

(直立苗:良い)
(葉柄一方向:やや悪い)
(曲り苗:悪い)
図4 苗性状と挿苗機適応性

表5 種いも伏せ込み姿勢と萌芽率等
(単位:%)
注)□は発芽そろい日、( )内は種いも伏せ込みからの日数

表6 倒伏防止対策による挿苗機適応性苗の向上
(単位:本)
注)3回採苗合計。節間詰まり苗:極端な詰まりでホルダに供給困難な苗。曲り苗:40度以上。

② 「省力的な育苗・採苗システムの開発」

 苗床造成機・一斉採苗機・苗調整選別機などの開発(試作機)が行われ、現在、苗床準備・種いも伏せ込みから採苗までの作業時間は本ほ10アール当たり6.0時間程度で、慣行育苗法に比べ約60%の省力化が図られる段階まできている。更なる省力化を期待したい(図5、表7)。


(苗床造成機)
(一斉採苗機)
(苗調整選別機)
図5 育苗・採苗に必要な開発機械

表7 苗生産に係る労働時間
(単位:時間/本ほ10a)
注)開発機体系14㎡、慣行体系15.8㎡で試算

「普及状況および今後の課題など」

① 「挿苗機植え付けに適した苗生産技術」は、慣行の育苗方式に比べ萌芽そろいが速く採苗本数も多いことから、大規模生産農家においては早期からの大面積植え付けを可能にする技術として、本開発技術に大きな関心が寄せられている。

② 「省力育苗採苗システム」では、労働時間の大幅な省力化が期待でき、苗床面積が50〜70アール程度必要とされる大規模農家や、育苗センターなどに普及が見込まれる技術で、苗生産コストの低減に寄与できると思われる。上記の「挿苗機植え付けに適した苗生産技術」と併せて、現在、大規模生産農家において実用化に向けた現地実証が進められている。

このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
Tel:03-3583-8713



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