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米国とうもろこしの生産状況について

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最終更新日:2010年3月6日

でん粉情報

[2009年1月]

【国内外の需給動向[海外]】

調査情報部 調査課


 2007年のわが国のコーンスターチ用とうもろこしの輸入量は349万9,000トンであったが、このうち96.7%に当たる338万4,600トンを米国から輸入している。このようにわが国にとって主要輸入先である米国の2008/09年度(9〜8月)の生産状況について、米国農務省(USDA)の見通しに基づき取りまとめた。

1.2008/09年度の生産状況
  〜歴史的な高水準であった前年度からは8.1%減少〜

 2008/09年度のとうもろこし作付面積は、第1回の見通しが発表された5月時点では、前年度から8.1%減少し8,600万エーカー(3,480万ヘクタール:1エーカー=40.5アール)になるとの見通しであった。一方、生産量は、これまでのペースで単収が増加すると仮定すると作付面積の減少分を一部補い、121億2,500万ブッシェル(3億798万トン:1ブッシェル=25.4キログラム)になるとみられていた。歴史的な高水準であった前年度の生産量の130億7,400万ブッシェル(3億3,208万トン)に比べると、7.3%減少するとの見通しであった。

 5月4日時点での作付率は、予定面積の27%と前年の45%、過去5年平均の59%よりも遅れていた。6月1日までには、全体の95%の作付けが終了したものの、主要生産地域での大雨による作付作業の遅れから、この時点での発芽率は74%と、前年の92%、過去5年平均の89%をともに下回り、生育の遅れが見られた。作付時期および生育期間は単収への影響が大きいことから、作付け、初期生育の遅れがどれだけ影響するかが懸念されていた。

 6月に入って、中西部では雨が続いたうえ暴風雨に見舞われ、アイオワ州などのほ場で冠水被害が発生し、生産量が減少するとみられたことから、シカゴ相場は1ブッシェル(25.4キログラム)当たり700セントを超えるまでに高騰した。これを受けて、6月中旬は作付けの終了時期であるにもかかわらず、作付けを積極的に行う農家も見られた。6月の冠水被害による影響も反映された8月時点での見通しでは、作付面積は8,700万エーカー(3,520万ヘクタール)になると上方修正され、前年度の9,360万エーカー(3,788万ヘクタール)からは7.1%減少するものの、1946年以来、第2位の面積になるとされた。

 8月にはコーンベルト地帯で降雨がほとんどなく、オハイオ川やテネシー川流域などではやや干ばつ気味であった。また、ミシシッピ川流域でも6月に冠水被害を受けたものの、その後は少雨となったことから、懸念されていた過剰な水分による被害は緩和されることになった。

 単収は、作付けの遅れや単収の高い主要生産地での作付面積の減少により、7月時点での見通しでは1エーカー(40.5アール)当たり148.4ブッシェル(3.77トン)にまで減少するとされていた。しかし、8月時点では、主要生産州での茎数調査の結果に基づき、前年度の151.1ブッシェル(3.84トン)を上回る155.0ブッシェル(3.94トン)になると一転して上方修正され、生産量も122億8,800万ブッシェル(3億1,212万トン)になると上方修正された。

 11月時点の見通しでは、作付面積は前年度比7.2%減の8,690万エーカー(3,517万ヘクタール)、1エーカー当たり収量は同1.8%増の153.8ブッシェル(3.91トン)、生産量は同8.1%減の120億2,000万ブッシェル(3億530万トン)になるとしている。


表1 米国とうもろこしの需給見通し
(単位:百万ブッシェル)
出典:USDA(ERS)、Feed Outlook

図1 生産量と作付面積の推移
出典:USDA(ERS)、Feed Grains Database
注:2007/08、2008/09年度は見込み

図2 2008年のシカゴとうもろこし相場(期近)の推移
出典:Chicago Board

2.2008/09年度の需要状況
  〜エタノール向けが増加する一方、輸出向けが大幅に減少〜

 2008/09年度のとうもろこし需要は、5月時点では前年度から1.9%減の127億6,000万ブッシェル(3億2,410万トン)になると予測された。用途別では、飼料用向け、輸出向けは前年度に比べて減少するが、エタノール向けが前年度の30億ブッシェル(7,620万トン)から40億ブッシェル(1億160万トン)へと大幅に増加するとしていた。特に、輸出向けの減少は、価格が高いこととブラジルやアルゼンチンでの増産によると見ていた。また、でん粉・糖化製品については、異性化糖、グルコースおよびデキストリン、でん粉とも前年度と変わらないが、でん粉については前年度から1%程度減少する可能性があるとしていた。

 その後、飼料向けについては、生産量が下方修正された結果、供給がタイトになり価格が上昇するとみられたことから、需要はさらに減少するとして見込まれ、いったんは下方修正された。しかし、8月時点の見通しで生産量が上方修正されたことを受けて、当初の5月時点での見込み数量の水準にまで上方修正された。

 また、エタノール向けについては、工場建設や稼働開始の遅れから、7月時点の見通しでは減少するとされたが、8月時点の見通しで工場の稼働の遅れが回復するとして上方修正された。しかし、10月時点の見通しでは、ガソリン消費の減少を背景に再度下方修正された。

 輸出向けについては、6月時点の見通しで生産量が下方修正されたことと他国での増産が予想されることから、さらに10月には世界のとうもろこし貿易の減少見込みと収穫作業の遅れにより年度初めの輸出が鈍るとみられたため、下方修正された。

 11月時点の見通しでは、需要量全体は前年度から1.9%減の125億3,500万ブッシェル(3億1,839万トン)とされ、うち食料・種子・工業向けが同22.3%増の53億3,500万ブッシェル(1億3,551万トン)に、輸出向けが同22.0%減の19億ブッシェル(4,826万トン)になるとしている。特に、食料・種子・工業向けのうち糖化製品向けでは、でん粉向けが同0.7%減の2億6,000万ブッシェル(660万トン)に、異性化糖向けが同0.1%減の4億9,000万ブッシェル(1,245万トン)に、グルコースおよびデキストリン向けが同0.3%減の2億3,500万ブッシェル(597万トン)になるとしている。


図3 用途別とうもろこし需要の推移
出典:USDA(ERS)、Feed Grains Database
注:2007/08、2008/09年度は見込み