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2013年のブラジルのトウモロコシ現地事情速報3 −輸出港の現状と今後の展望−

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 ブラジルのトウモロコシは、生産力は非常に高いものの、貯蔵キャパシティに懸念があることを現地事情速報1及び2で報告した。鉄道、道路、水路が未整備のため、国内輸送コストが非常に高いことも併せて報告したが、主要輸出港であるサントス港、パラナグア港が輸出の主体となる第二期作トウモロコシの主産地から極めて遠いことが、このような高コスト体質の原因となっている。
 中西部の第二期作トウモロコシ生産地帯は、穀物生産の歴史が浅く、南部諸州に近いサントス港、パラナグア港が主要輸出港となっていることは歴史上避けがたいことではあるが、中西部の穀物生産が急成長している現在、北部のアマゾン川流域の輸出港の活用が急務とされている。

 参考 飼料穀物の輸送コスト上昇と港湾混雑によるブラジルコストの上昇(ブラジル)
表

サントス港の状況

 ブラジル最大の港であるサントス港は、全長が約13キロメートルあり、湾内に突き出た形となっているサントス市の対岸を含め、55バースが設置されている。穀物関係の輸出量でブラジル国内第6位のADM社は第38バースを専用バースとしているほか、隣接の第39バースをカラムル社、ルイ・ドレフェス社と共同で運用している。サントス港での取扱いは、大豆、大豆かす、トウモロコシなどであり、2012年は合計500万トンを輸出している。貯蔵施設は20万トンあり(一部他社と共有)、今後さらにこれを増加させる計画だ。
 ブラジルの港湾では、港湾労働者のストなどで昨年末から1月にかけて40〜50日程度の滞船が発生するなど、いわゆるブラジルコストの問題が取りあげられることが多い。しかし、同社ではシップローダーの故障による40日間の滞船が発生しただけで、これ以外は通常の積み込み期間である6日程度で作業を終了しているという。穀物の搬入は、鉄道網が限定的なことから、トラックが中心となっており、トラックによる市内の渋滞を避けるため、現地とのスケジュール調整を行っているほか、サントス港の手前のクバタン市にトラック40台が駐車できる専用ヤードを設けている。このような対策を講じてはいるものの、バースの数が多いことによる混雑は回避し難く、また、輸出用トウモロコシの主産地であるマットグロッソ州からの距離は2000キロメートル以上に及ぶことが、輸送コスト上昇の要因となっている現実は避けがたい状況にある。
図1 第38バース構内へのトウモロコシの搬入
図1 第38バース構内へのトウモロコシの搬入
図2 中国船への大豆積み込み作業風景
図2 中国船への大豆積み込み作業風景

北部領域の港湾利用の拡大

 長距離のトラック輸送を行うことによる高い国内輸送コストを削減するため、(1)マットグロッソ州を南北に縦貫する国道163号線の全線舗装化によるアマゾン川のサンタレン港の活用、(2)サンタレン港から国道163号線沿いに南方360キロメートルのところにあるミリチトゥバ(Miritituba)から、サンタレン港やアマパ州サンタナ港までバージで輸送する方法、(3)中国の投資による163号線沿いの鉄道の敷設、が注目されている。このうち、(1)と(2)は2014年にも実現可能とされているが、(3)については、6月中旬に中国からの代表団がマットグロッソ州の州都クイアバ市を訪問し、100億レアル(4500億円)の投資を行う協議を行った段階であり、実現には相当の時間がかかるとみられる。
 なお、(2)のバージを利用する方法の中で、ミリチトゥバから最も近いサンタレン港ではなく、大西洋沿岸に近いアマパ州サンタナ港まで輸送する案があるのは、アマゾン川の水先案内人の経費が非常に高いため、アマゾン川の輸送は水先案内人を使わなくてもよいバージで運んでしまおう、ということのためだ。
 今回、サンタレン港に注目したのは、同港が国道163号線の起点となっており、既に穀物メジャーのカーギルが穀物ターミナルを構えているためだ。カーギルは、現在、年間300万トンの穀物をサンタレン港から出荷しており、2012年のトウモロコシの輸出実績は38万トンだった。同社は、8400万レアル(約38億円)を投資して、今後3年で取扱量を年間540万トンまで増加させる計画だ。同港では、バースを4区画新たに入札にかける予定であり、穀物メジャーや生産者団体であるAPROSOJAなどが、穀物や肥料のターミナル設置に意欲を示している。同港を管理するパラ州港湾管理公社(ベレン市が本部)では、3区画合計で5億4000万レアル(約243億円)の投資を見込んでいる。
図3 サンタレン港(右手倉庫はカーギルのもの)
図3 サンタレン港(右手倉庫はカーギルのもの)
 サンタレン港よりさらにアマゾン川の支流を350キロメートル遡ったミリチトゥバには、既にブンゲ、カラムル、アマギといった穀物メジャーや穀物集荷業者が進出しており、バージを使った穀物輸送が行われている。マットグロッソ州からミリチトゥバまでは国道163号線で結ばれており、マットグロッソ州農業経済研究所(IMEA)によると、マットグロッソ州の中部から北部にかけて生産されたトウモロコシは、南部のサントス港やパラナグア港から北部のサンタレン港やミリチトゥバ港からの輸出に移り変わることが期待されている。
図
【岡 千晴、小林 誠 平成25年6月28日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8609