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2013年のブラジルのトウモロコシ現地事情速報1 −マットグロッソ州を中心とした生産状況−

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 ブラジルでは、9月から翌年2月頃までの夏季(雨季)作と2月から8月頃までの冬季(乾季)作の年2回のトウモロコシ生産が行われている。夏季の第一期作トウモロコシは飼料用を中心とした国内消費に、冬季の第二期作(サフリーニャ)は主に輸出に仕向けられている。近年、第二期作トウモロコシの生産量が急速に増加しているが、これは同国中部以北の亜熱帯から熱帯にかけて第一期作に大豆が作付けできるようになり、さらに大豆の早生化とさび病対策として第二期作期間中の大豆栽培が禁止されているため、他の作物との比較収益性の高いトウモロコシの作付けが増えていることが要因だ。1〜2月に播種された第2期作トウモロコシは6月に入ってから順次収穫時期を迎え、例年であれば降水量のほとんどない4月以降にも降雨があったことから、生産量の増加が予想されている。2012年は米国が深刻な干ばつに見舞われ、トウモロコシが不作となったことから、日本のトウモロコシ輸入はブラジル産に大きくシフトしている。ブラジル産トウモロコシは、貯蔵、輸送を含むロジスティクスに問題を抱えていることが指摘されているため、ALICでは6月中旬、第二期作の主要生産州である中西部マットグロッソ州、主要輸出港であるサントス港、サントス港を代替する可能性のある北部アマゾン川の河川港を現地調査した。今回は、生産状況、貯蔵能力、輸出港の状況の3回に分けて調査結果を報告する。
図

第2期作トウモロコシの生産量は増加の見込み

 ブラジルのトウモロコシ生産者は、南部諸州では1戸当たり5ヘクタール以下の小規模農家が多く、ミナスジェライス州にある農業研究機構(EMBRAPA)トウモロコシ・ソルガム研究所の研究も、小規模農家対策が中心となっているが、第二期作トウモロコシ生産の中心となっているマットグロッソ州では1000ヘクタールの農家が小規模と称されるほど、国内でも状況が異なっている。
 食糧供給公社(CONAB)の推計では、2012/13年度(10月〜翌9月)のトウモロコシ生産量は、過去最高となった前年度を7.5%上回る7847万トンとされているが、これは地方事務所、農協、銀行などにアンケート調査を行い、その結果を取りまとめたものなので、収穫終了前の推計値としては精度にやや疑問が残る。実際、延べ3万キロメートルにわたる現地調査と肥料、種子、農業機械への投資状況を基に推計している農業調査会社であるアグロコンサルト社は、食糧供給公社の推計値を500万トン程度上回る8300万トンとしている。いずれにしても、今年度のトウモロコシ生産量は、国内需要量の増加分を大幅に上回ることが予想されており、米国産の新穀が出回り始める今年10月以降の輸出が不調となれば、現在既に下落している国内価格がさらに低下し、来年度のトウモロコシの作付けが大幅に減少する可能性がある。
 大豆は、中国がブラジルから大量に輸入を続けており、安定的な市場が確保できる作物と考えられている。このため、マットグロッソ州では、第一期作はほとんどが大豆であり、大豆の収穫期の遅れ具合や価格動向を考慮して第二期作の作目が決められる。第二期作の作目としては、トウモロコシ、ソルガム、綿花、フェイジョン豆、ヒマワリなどがある。食糧供給公社によれば、前年度は全国第2位であった同州のトウモロコシ生産量が、今年度は第二期作の増加によって前年度比18.0%増の1842万トンと、第1位になることが見込まれている。マットグロッソ州南東部のカンポ・ベルデ(Campo Verde)と中北部のソヒーゾ(Sorrisoのポルトガル語読み)での現地調査でも生産は良好であり、6月中旬で10%程度の収穫進捗状況ではあったが、穀粒の水分含量も17%以下と低く、順調な収穫作業が行われていた。単収は、マットグロッソ州の平均では、ヘクタール当り6トン程度だが、大規模農家では同10トン程度に達しているものも多い。
図1 収穫間近のトウモロコシ畑(マットグロッソ州カンポ・ベルデ、セロン農場)
図1 収穫間近のトウモロコシ畑(マットグロッソ州カンポ・ベルデ、セロン農場)
図2 トウモロコシの収穫作業(マットグロッソ州ソヒーゾ市ファーゴ農場)
図2 トウモロコシの収穫作業(マットグロッソ州ソヒーゾ市ファーゴ農場)
図3 収穫前のトウモロコシ
図3 収穫前のトウモロコシ
図4 収穫前のトウモロコシの断面
図4 収穫前のトウモロコシの断面

今後の生産拡大可能性は価格次第

 マットグロッソ州は、州の68%が森林であり、まだ開発の余地が残されている他、いわゆるマトピバ(マットグロッソ州、トカンチンス州、ピアウイ州、バイア州)にパラ州を加えた中北部の新興農業地域での穀物生産拡大の可能性は高い。しかし、これらの地域では、同時に環境問題や先住民との権利問題を抱えているため、短期的には農業研究機構トウモロコシ・ソルガム研究所の推計による400万ヘクタールの荒廃草地の畑地化が穀物の増産可能性につながるものとみられる。
 ただし、これら内陸の新興農業地域では、道路網、鉄道網、水路が未発達であり、穀物の主要輸出港である南部のサントス港やパラナグア港まで数千キロをトラック輸送する必要がある。ソヒーゾ市の大規模生産者で構成する組合との会合では、出席者から、6月12日に行った取り引きの実態として、トウモロコシの販売価格がトン当たり183レアル(約8250円)、これを約2000キロ離れたサントス港まで運ぶのに同233レアル(約1万500円)かかっており、来年の第二期作にトウモロコシを作付けするかどうかは価格次第だ、との見方が支配していた。

アフラトキシンの発生の可能性は低い

 2012年の米国産トウモロコシでは、カビ毒アフラトキシンが発生し、含有率の低いロットとの混合・希釈が認められるなどの措置が取られた。しかし、ブラジルでは第二期作トウモロコシの収穫時期が乾季であるため、これまでアフラトキシンが問題とされた事例は報告されていない。ただし、ブラジル政府もアフラトキシンの含有量の上限は米国と同様、20ppb以下との基準を定めている。穀物メジャーのADMによれば、主に南部で雨季に収穫される第一期作トウモロコシでは、アフラトキシンの発生事例もあるということだが、国の基準以下の含有量であり、第一期作は国内消費がほとんどのため、輸出用トウモロコシで問題となったことはない、ということだ。農業研究機構トウモロコシ・ソルガム研究所は、ブラジルのトウモロコシは、品種の育成過程でフリント種が交配されているものが多いので、米国産のデント種よりも穀粒が堅く、カビの付着の原因となる穀粒への傷がつきにくいことも、アフラトキシン汚染がほとんどない要因だとみている。
 アフラトキシン汚染は、通常、収穫作業中についた穀粒への傷へカビ胞子が付着し、その後の貯蔵過程にカビが繁殖することで発生する。マットグロッソ州では農家の経営規模が大きく、2500ヘクタール程度の中規模農家でもコンバイン5、6台と乾燥・貯蔵施設を持っているが、大型コンバインでも収穫効率は1時間当たり24トン程度しかない。単収が6トンとすると、1時間に1台が収穫できるのはわずかに4ヘクタールにしかならない。一方、農家に限らず、マットグロッソ州の乾燥機は、ユーカリの薪を熱源としており、農家の場合、1時間当たりの乾燥能力は40〜60トン程度しかない。コンバインがフル稼働すれば、1時間に100トン以上の収穫が行われることや、収穫作業が長くかかることを見越して収穫適期が長期間にわたるように調整していることを考慮すると、20%以上の比較的高い水分含量で収穫された穀実が乾燥待ちで野積みされる可能性があり、今後、第二期作トウモロコシでもアフラトキシン汚染が発生する可能性はある。

害虫被害の発生の懸念

 マットグロッソ州では、大豆にモスカ・ブランカ(学名:Beminsia tabaci)と呼ばれるコナジラミの一種による被害が発生している。今年1月末のトウモロコシの播種期にマットグロッソ州を調査した際、トウモロコシの幼苗にこの虫が多数発生しており、訪問した農家が問題視していた。収穫段階での調査では、特にこの虫の被害を指摘した農家はいなかったが、トウモロコシの場合、コナジラミのような吸汁性の害虫に対する抵抗性品種は育成されていないため、今後、問題となる可能性がある。

 参考 2012/13年度のトウモロコシ生産量予測を引き続き上方修正(ブラジル)
           
   2013年のブラジルのトウモロコシ現地事情速報2 −増産の足かせとなる貯蔵キャパシティ不足−
   2013年のブラジルのトウモロコシ現地事情速報3 −輸出港の現状と今後の展望−
【岡 千晴、小林 誠 平成25年6月28日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8609



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