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未利用のさつまいも茎葉を家畜の飼料に向けて

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最終更新日:2010年5月10日

未利用のさつまいも茎葉を家畜の飼料に向けて

2010年4月

社団法人 鹿児島県畜産協会 専門考査役 森永 弘文

 

1 はじめに

 日本の畜産業は、海外の飼料資源に依存しながら着実に進展してきたが、バイオエネルギーとして配合飼料の主原料であるとうもろこしが高騰し、それに伴い原油や船舶費等まで値上がりし、そして、今日の世界的不況の影響で高級牛肉をはじめとして豚肉等の消費が落ち込むことで枝肉価格や子牛価格まで低迷するなど、外部要因により畜産経営体は厳しい状況に直面している。
 
 これらの状況に対応するため、国は海外の情勢に左右されない自給飼料作物の増産や生産性の向上、未利用資源の確保対策等々各種の緊急施策を創設した。
 
 鹿児島県では、さつまいもを原料としたでん粉や焼酎製造後の搾りかすといったさつまいも由来の副産物が家畜飼料として以前から注目されていたが、取り扱い面や季節が限定されるなどの理由でごく一部の畜産農家にしか利用されていなかった。
 
 今日では発酵技術の進展によりこうしたさつまいも由来の副産物はリキッドフィードとして養豚場等で既に実用化されているが、茎葉部位についてはほとんどが畑地にすき込まれか、焼却処理されていた。
 
 そのようなおり、鹿児島県農業開発総合センター大隅支場(以下大隅支場)において、さつまいもの茎葉回収機が開発されたことから、平成20年度から社団法人鹿児島県畜産協会が事業主体となり(独)農畜産業振興機構の補助事業(地域エコフィード利用体制確立支援事業)に各関係機関と一体となり取り組み、さつまいも茎葉が家畜の粗飼料として充分に活用出来ることが明らかとなったので、その概要について報告する。
 

2 さつまいも茎葉の家畜飼料としての活用

 鹿児島県におけるさつまいもは、気象災害に強く土地利用型の作物として輪作体系上重要な作物として位置づけられ、でん粉用、焼酎用、青果用として1万4000ヘクタール(平成20年度県農産園芸課)で栽培されている。
 
 今日の焼酎ブームに支えられ作付面積は毎年増加しているが、推定で37万トン生産される茎葉についてはほとんどがその畑にすき込まれるか、焼却で処理され、畜産用としてはおおよそ7.3%しか利用されてなかった(表1、表2)。
 
 
 一方、大隅支場において生産者からの低コストで省力化が可能な機械化作業体系の開発要望を受け、さつまいも茎葉回収機が開発されたことから、南薩地域農政推進協議会および大隈支場が中心となりさつまいも栽培農家及び畜産農家へ呼びかけ各地で実演研修会を行ってきた。
 
 さつまいも栽培農家にとってはツルの切断回収の重労働作業が解消されること、畑から茎葉を持ち出すことから病気等次年度の栽培の不安解消につながる等の利点があり、畜産農家においても安価で粗飼料が確保でき飼料コストの削減が期待できる等のメリットが想定されたことから生産者の関心も高く、指宿地区や大隅地区、種子島地区での実演研修会には多数の参加者が集まった。

3 現地での取り組み状況と耕畜連携

 さつまいもの茎葉回収の取り組みは、サイレージ化を目指し、鹿屋地区、指宿地区及び熊毛(種子島)地区を中心として始まっている。
 
 鹿屋市では、南部の獅子目地区で、JA鹿児島県経済連肉用牛課が中心となって取り組んでおり、茎葉回収部門を(有)アグリーン鹿屋、サイレージ部門を甫与志(ほよし)生産組合に委託している。現在、約23ヘクタールのさつまいも栽培ほ場を対象に、茎葉回収とサイレージ化が進められている。
 
 また、指宿市開聞地区では、さつまいも栽培農家5戸と畜産農家6戸が「開聞さつまいも茎葉利用組合」を設立しており、畜産農家が、さつまいも栽培農家の畑から茎葉を回収し、サイレージ化をすすめ、肉用牛に供給することとしている。組合は、回収する畑や日程調整の役割を果たし、作業の効率化が図られている。
 
 種子島地区では、中種子町の農業生産法人が中心となって、茎葉の回収と飼料化の取り組みが始まっている。どの地域でも、さつまいも栽培農家と畜産農家との話し合いのもと、「耕畜連携」の取り組みがスタートしている。
 

4 さつまいも茎葉のサイレージ化への検討

 さつまいも茎葉のサイレージまでの作業工程は、さつまいも茎葉回収機で渡りツルの切断・搬送ベルトで巻き上げ・藷梗(なり口付近)切断と茎葉細断し、収納庫に入れる。
 
 そして細断型ロールベーラーに移し替え時に水分調整剤を混合、圧縮梱包し、ラッピングマシンでラップサイロ(注1)化する方法および回収機の収納庫からトラックに移しバンカーサイロ(注2)(スタック、トレンチ)でサイロ化の方法を検討した(写真1、2、3、4、5、6)。
 
 
 さつまいも茎葉回収機で切断された生の茎葉の水分は85%以上と高く、サイレージ化への問題点は、水分調整剤の種類であり、添加量であった。そこで、水分調整剤としてワラ、乾草、フスマおよびビートパルプ(酪農家向け)の各サンプルにより検討した。サイレージは、ラップサイレージやバンカーサイロで試みた。
 
 成分分析は、刈り取り時、サイレージ途中そして家畜への給与前と3回、各一般成分やミネラル・ビタミン、硝酸態窒素の推移及び農薬の残留性、更に乳質・乳量及び血液の性状検査等について専門機関で測定し、黒牛生産農家2戸と酪農家1戸で1頭当たり1日5kgのサイレージ飼料を給与し、食い込み状況や便の状等について毎日の観察・記録(黒牛生産農家12/22〜3/23、酪農家12/23〜3/31)をお願いした。
 
(注1)ラップサイロ:円筒状にまとめた牧草を、ポリエチレンなどの伸縮性フィルムでラップしてサイレージ化する方法
(注2)バンカーサイロ:水平型のサイロで、牧草を堆積し、上部をビニールシートなどで被覆してサイレージ化する方法
 

5 家畜飼料としての栄養性及び安全性の確認

1)さつまいも生の茎葉の飼料成分は、乾物中の粗タンパク質は13%前後、推定可消化養分総量(TDN)は64%程度であった(表3)。
 
 
2)さつまいも茎葉に各種水分調整資材剤を2.5〜5%添加したサイレージの水分は3%程度しか減少しなかったが、品質は概ね良好であった。
 
3)さつまいも生の茎葉のビタミンE含量は約250mg/乾物1kg、βカロテン含量は230mg/乾物1kgと高かったが、サイレージ化でビタミンEは1/5、βカロテン含量は約1/3に減少していた(表3)。
 
4)硝酸態窒素は、今回の農場では問題は無かったが、堆肥等の散布量によっては注意を要することが必要と思われた。(0.15以上は要注意)
 
5)バンカーサイロでは、開封間口が広い場合にカビの発生が見られ、廃棄を必要とした事から、大型バンカーサイロでは仕切盤等の工夫が必要とされた。
 
6)サイレージは、甘ずっぱい臭いで黒毛和牛もホルスタインも飼槽を舐めるように食べ、嗜好性は良好と判断された(写真7)。
 
<DIV><STRONG>写真7 黒毛和牛へ給与</STRONG></DIV>
写真7 黒毛和牛へ給与
7)血液検査でも給与前・給与中・給与後において3戸とも大きな変動もなく異常は指摘されなかった(表4)。また、乳量・乳質共に問題無いことが実証された(図1)。
<DIV><STRONG>表4 血液検査成績(一部抜粋)</STRONG></DIV>
表4 血液検査成績(一部抜粋)
<DIV><STRONG>図1 乳量の推移</STRONG></DIV>
図1 乳量の推移
8)農薬の残留性について、一般的にさつまいもに使用される農薬の検査をしたところ、一部で微量の農薬が検出された。しかし、当該農家では使用されていないことから周辺からの飛散によるものと思われた。今後は隣接農地に注意を促すために「さつまいも茎葉は家畜飼料とします」等の看板等で周知する必要があると思われた。

6 さつまいも茎葉回収機利用の効果と留意点

 さつまいも栽培農家の収穫作業の中で、いもつるの切断、回収作業は重労働であることから、自給飼料として活用することは、なかなか困難な状況にあった。これが、回収機の開発とサイレージ化のシステムが開発されたことにより、(1)栽培農家としては、茎葉回収時間が短縮されるため、計画的かつ効率的に収穫作業ができる(2)畜産農家から良質の堆肥を供給してもらうことにより、土づくりがすすみ、さつまいもの単位当りの収穫量の向上が図られる(3)畜産農家としては、いもづるとでん粉かすや焼酎かすを混入することにより、飼料コストの削減になるうえ、良質の飼料ができ、牛にもよい−など効果が発揮されている。
 
 なお、回収機を効率的に利用するためには、1日の回収可能面積が限られているので、さつまいも栽培ほ場の団地化か大区画化が必要である。
 
 また、回収機は、機体長が4.3メートルあり、機械の旋回する枕地(最低5メートル)を確保することが必要であることから、連続的な回収作業を行うためには、枕地の収穫作業を工夫(マルチを剥がしてさつまいもを収穫するなど)することが大事である。
 

7 今後の課題

 さつまいも茎葉は、これまで家畜の飼料としての利用は少なかったが、大隅支場の茎葉回収機の開発に伴い、水分調整剤を添加することで飼料として長期保存が可能で栄養的にも価値があることが実証された。
 
 また、平成21年度には水分調整剤として乾燥焼酎かすや乾燥でん粉かすを用いた試験も実施しており、より高品質のサイレージの可能性が示唆される(写真8)。
 
<DIV><STRONG>写真8 乾燥焼酎粕</STRONG></DIV>
写真8 乾燥焼酎粕
 当該機械の作業能率は1.1〜1.6h/10a(手作業の15〜20倍)とさつまいも栽培農家においても刈り取りに係る重労働時間が軽減されると共に連作障害も改善出来る等双方にメリットがあるが、現状での茎葉回収機は概ね700万円程度と試算されており、利用期間も限定されることから、個人での所有には負担が大きいと思われる。
 
 そこで、さつまいも栽培農家の栽培面積や収穫時期、天候条件、刈り取り料金の設定、更に飼料原料として希望者の確保、購入価格の設定などの課題もあることから、既存の農業機械化銀行やコントラクター等調整機能を持った組織が所有し、運用されることが無難と思われる。
 
 また、よりコストを軽減するためには、地域内の畜産農家と栽培農家で連携協議会を設立し、その中で機器を共同購入し刈り取り時期の調整、オペレーター、運搬、サイロの詰め込み等作業人の出役等共同作業を旨とした組織を構築することを期待したい。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
Tel:03-3583-8713



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