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中国のばれいしょでん粉需給

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最終更新日:2010年11月4日

中国のばれいしょでん粉需給

2010年11月

調査情報部調査課

 
 
【要約】
 
 2009/10年度(9月〜翌8月)における中国のばれいしょでん粉の生産量は、天候不順による原料ばれいしょの減産やそれに伴う価格高騰から、前年度比5割減の15万トンとなった。一方、需要は経済発展に伴い増加しているため、EUからの輸入が急増している。
 
 2010/11年度は、天候の回復が見込まれるため、ばれいしょ生産量は例年の水準に回復すると予測されているが、でん粉需要も引き続き堅調に推移すると見込まれる。
 
 

はじめに

 アジア地域においては、でん粉の生産量、消費量ともに増加傾向にある。中国では、とうもろこし、ばれいしょなどの各種原料からでん粉が生産されており、経済の発展に伴って、食品だけでなく繊維や製紙などの工業製品向けの需要も急速に高まっている。
 
 中国は、ばれいしょの主要生産国の一つであり、2008年には世界のばれいしょ栽培面積の約25%、生産量の約20%を占めた。また、国内では、若い世代を中心とした食の洋風化に伴い、でん粉を含むばれいしょ加工品の需要が増加しているところである。
 
 本稿では、このような中国のばれいしょでん粉需給について、2010年8月に公表された米国農務省の報告などに基づき紹介する。
 
 

1. ばれいしょ

(1)生産動向

〜2009/10年度の生産量は、天候不順により前年度比1割減〜
 
 中国におけるばれいしょの栽培面積は年々拡大し、2009/10年度(9月〜翌8月)は前年度比0.8%増の470万ヘクタールとみられるものの、生産量は、同9.6%減の6400万トンと減少の見込みである。
 
 これは、国内生産の約6割を占める北東、北西地域の春ばれいしょ(作付け4月、収穫9月)の生産量が、主産地の内モンゴル自治区および甘粛省における乾燥した気候により減少したことに加え、冬ばれいしょ(作付け11月〜3月、収穫1月〜5月)についても、南西地域の貴州省、雲南省、広西壮族自治区において干ばつの影響で作付けが遅れたことが原因である。
 
 減産を受け、ばれいしょ価格は、2009年末から2010年初頭にかけて一時、ポンド当たり0.4米ドル(キログラム当たり6元、1米ドル=84.82円、1元=12.92円、平成22年9月末日TSS相場)と記録的な高値をつけた。
 
 しかしながら、2010/11年度は、天候の回復が見込まれることから、7300万トンまで増加すると予測される。
 
 
 
 
 

(2)生産をめぐる事情

〜単収向上のため、種いもへの補助制度を新設〜
 
 中国農業部によると、同国におけるばれいしょの単収は、米国の1ヘクタール当たり44トンに対して、品質の悪い種いもの使用が多いことなどから同15トンと低い水準にある。なお、一般的な種いもを使用した場合の単収は1ヘクタール当たり30〜33トン、ウイルスフリー種いもは同37〜42トンである。現在のところウイルスフリー種いもの使用は、栽培面積の2割に満たないが、中国政府は単収向上のため、2015年に5割まで拡大する目標を設定している。
 
 中国政府は2010年初めに、種いも生産に対する補助制度を新設した。これにより、1ヘクタール当たり220米ドル(1ム当たり100元、1ム=約666.7平方メートル)がウイルスフリー種いもの生産者に交付される。しかしながら、関係筋によると、この補助制度は、(ア)ウイルスフリー種いもに対する補助金が1キログラム当たり0.04元とわずかであること(イ)交付先が農家ではなく種いも生産者であること―などから、現在のところ当初期待したほどの効果が得られていない状況である。
 
 なお、中国政府は2010年5月、ばれいしょの増産によって、貧困の改善、食の安全性の向上、農家の所得増を図るため、関連研究や指導に注力すると発表した。このように、中国では今後ばれいしょの単収の向上や栽培面積の拡大に取り組む姿勢が見られる。
 
 

2.ばれいしょでん粉

(1)生産および消費の動向

〜2009/10年度生産量は、前年度比5割減〜
 
 中国におけるばれいしょの用途別の内訳は、家庭消費用60%、飼料用20%、加工用(でん粉を含む)10%、種いも用10%となっている。なお、中国政府は、でん粉、ポテトチップス、乾燥ポテトなど加工品向けとしての仕向割合を、2015年までに現行の10%から20%に拡大することを目標としている。
 
 中国における2009/10年度のばれいしょでん粉生産量は、前年度比約5割減となる15万トンと大幅な減産が見込まれている。これは、前述したように、原料のばれいしょ生産量の減少やそれに伴う価格高騰の影響によるものである。しかしながら、2010/11年度は、天候の回復が見込まれることから、従来と同水準の30万トン程度まで回復すると予測されている。
 
 中国国内のばれいしょでん粉工場は、零細な工場が9割を占めその数は数千にも上り、黒龍江省、内モンゴル自治区、寧夏回族自治区、甘粛省、雲南省、貴州省などに立地している。最近では、EU産ばれいしょでん粉へのアンチダンピング課税(詳細は後述)による国内産業保護などを背景に規模拡大が進んでいる。
 
 需要面では、食品産業をはじめ、繊維、製紙、化学薬品、製薬などの産業分野において、ばれいしょでん粉に対しての引き合いが高まっている。特に化工でん粉産業は成長が著しく、2009年末におけるばれいしょでん粉由来の化工でん粉の製造能力は年間34万トンに達した。現在のところ、主にコーティング剤やソースの原料として食品加工分野で用いられているが、今後、製薬、繊維、製紙などの分野におけるさらなる需要増が見込まれる。
 
 

(2)輸入動向

〜減産から輸入量が大幅に増加〜
 
 2009/10年度のばれいしょでん粉の大幅な減産によって、輸入量は大幅に増加している。2009年のばれいしょでん粉輸入量は前年比182.1%増となる3万5000トンであったが、2010年はさらに増加し、1〜8月で10万8000トンと前年同期の約8倍となっている。主な輸入先は、オランダ、ドイツ、フランス、デンマークなどのEU諸国となっており、これらが全体に占める割合は9割超である。
 
 中国政府は、2007年2月から5年間、EU産ばれいしょでん粉に対して17〜35%のアンチダンピング税を課している。にもかかわらず輸入量が増加しているため、ばれいしょでん粉業界団体である中国でん粉産業協会(China’s Starch Industry Association)は、2008年半ば以降EU産ばれいしょでん粉がアンチダンピング税率を超えてダンピングされていると商務部に訴えた。商務部はこれを受け、2009年4月1日から2010年3月31日の間に中間見直しを実施するとしたものの、現在のところその結果については公にされていない。
 
 
 
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
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