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新しいかんしょでん粉の特徴と食品への利用

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最終更新日:2012年7月10日

新しいかんしょでん粉の特徴と食品への利用

2012年7月

鹿児島県農業開発総合センター 農産物加工研究指導センター 研究専門員 時村 金愛
 

【要約】

 かんしょでん粉は糖化製品用への販売が7〜8割を占め、食品用等への用途拡大が喫緊の課題となっている。近年、従来のかんしょでん粉やばれいしょでん粉より低温(58〜60℃)で糊化するでん粉を有する品種(「こなみずき」、「クイックスイート」など)が育成された。この低温糊化特性のかんしょでん粉は、落花生豆腐などゲル性食品の耐老化性や離水抑制効果及び麺類の食味向上効果などに優れた利用適性を示すことから、新しいかんしょでん粉として用途拡大に寄与することが期待される。

1.はじめに

 鹿児島県におけるかんしょの収穫量は2011年度で約35万トンと、鹿児島県の農業及び地域経済にとって重要な基幹作物となっている。収穫量の約4割はかんしょでん粉原料用として生産され、約4万5千トンのかんしょでん粉が生産されている。そのうち約8割(約3万6千トン)が糖化用として利用されており、残りの約2割(約9千トン)は主にわらび餅やくず餅などの食品用として利用されている。しかし、同じいも類のばれいしょでん粉の食品などへの用途が約6割(約12万トン)であるのに対してかんしょでん粉では極めて少ない。

 今後、かんしょでん粉の需要を確保し、かんしょ生産を維持するためには、従来の糖化用原料から付加価値の高い食品用などへの用途の拡大が必須である。一方、通常のかんしょでん粉より15℃程度低い温度で糊化(粘度が上昇)するでん粉を有する品種(「クイックスイート」、「こなみずき」)が育成され、新たなかんしょでん粉として注目されている。ここでは、低温糊化特性を有する新たなかんしょでん粉の特徴と食品用途への利用適性について紹介する。

2.新しいかんしょでん粉の育成経緯について

 従来のかんしょでん粉は、粘度特性やゲルの老化速度(硬くなりやすさ)がばれいしょでん粉やタピオカでん粉の中間的な性質で特徴に乏しいとされてきた。しかし、「シロユタカ」や「ダイチノユメ」などでん粉原料用として育成された品種のでん粉特性を比較した結果、粘度特性やでん粉ゲルの老化速度に品種間差があることが示された1)。さらに2002年に青果用品種として育成された「クイックスイート」のでん粉は、でん粉ゲルの老化がタピオカでん粉と同程度に遅く、粘度上昇温度が他品種よりも15℃程度低かった。「クイックスイート」のでん粉は、耐老化性や糖化酵素による分解性に優れた特性を示す2)3)が、赤皮の青果用品種であるため、でん粉原料用品種としてはでん粉収量やでん粉白度に課題があった。そこで、原料用かんしょの育成地である九州沖縄農業研究センターにおいて2003年から低温糊化特性系統と多収系統の交配組合せによる育種が進められ4)、従来の原料用品種である「シロユタカ」と同等のでん粉収量で白皮の品種「こなみずき」が2010年に品種登録申請された(図1)。本品種は早急に現場に普及すべき研究成果として農林水産省が選定する「農業新技術2011」にも選定され、現在は鹿児島県で導入が始まった。
 
 

3.新しいでん粉用品種「こなみずき」のでん粉特性と利用適性

1)「こなみずき」のでん粉特性

 「こなみずき」や「クイックスイート」のでん粉特性は、でん粉の分子構造に由来する。アミロペクチン(注1)の側鎖の鎖長分布を比較すると、「シロユタカ」など従来の品種よりもブドウ糖の重合度6〜10の短い側鎖が多く、重合度12〜26の側鎖が少ない特徴を示している。このことから、熱糊化しやすくゲルの保水性が高いと考えられる1)。 RVA(注2)で測定した粘度特性では、「こなみずき」のでん粉は、「シロユタカ」など一般的な原料用品種のかんしょでん粉の粘度上昇温度(73〜75℃)よりも15℃程度低い粘度上昇温度(58〜60℃)を示した(表)。最高粘度は「シロユタカ」よりやや低く、冷却時の最終粘度は「シロユタカ」より高かった。また、でん粉粒子の平均粒径を比較すると、「シロユタカ」など従来の品種の平均粒径(15〜17μm程度)よりも大きかった(約21μm程度)。
 
 
(注1)でん粉はブドウ糖が直鎖状につながったアミロースと分岐してつながったアミロペクチンから構成される。通常はアミロースが20%、アミロペクチンが80%程度含まれ、糯種はアミロペクチンが100%となる。
(注2)ラピッドビスコアナライザー。でん粉糊の粘度を測定する装置。

2)「こなみずき」でん粉を用いた落花生豆腐の特徴

 かんしょでん粉は、わらび餅やくず餅など和菓子の他、ごま豆腐や鹿児島県の郷土料理である落花生豆腐などゲル性食品に用いられている。落花生豆腐は、落花生を搾った豆乳液にかんしょでん粉を加えて作られる。でん粉濃度4%と6%で調製した落花生豆腐の成形性を比較した結果、「シロユタカ」のでん粉はでん粉濃度6%でゲル成形が保たれなかったが、「こなみずき」のでん粉はでん粉濃度4%と低い濃度でも型くずれがなくゲル成形が保たれた(図2)。また、くずでん粉は6%濃度ではゲル成形が保てたが、4%濃度ではゲル成形が保てなかった。このことから、「こなみずき」のでん粉は、他のでん粉よりも低濃度で成形することが示された。
 
 
 また、「こなみずき」のでん粉を用いたレトルト落花生豆腐は、「シロユタカ」のでん粉を用いた落花生豆腐と比較して、90日間冷蔵保存しても離水せず弾性率が変化しないことから、長期間(3か月程度)品質を保持できることがわかった(図3)。
 
 

3)「こなみずき」でん粉を用いたうどんへの特徴

 タピオカでん粉は、うどんや中華麺などの麺類の食感(もちもち感)改良に用いられることから、「こなみずき」のでん粉をうどんに添加し官能評価を行った。

 うどんに用いる小麦粉に「こなみずき」、「シロユタカ」のでん粉を10%程度加えた場合、「こなみずき」を加えたうどんは、小麦粉のみや「シロユタカ」を加えたうどんに比べて、もちもち感、なめらかさ、硬さの評価が高かった(図4)。このことから「こなみずき」のでん粉を用いたうどんは食味向上効果が期待できる。
 
 

4)低温糊化特性でん粉の実用化に向けて

 「こなみずき」のでん粉は未加工で耐老化性や離水抑制など優れた特徴を示す一方、酸や酵素に対して高い分解性があり、糊化にかかるエネルギーも小さいことから、食品利用の他にも工業用や加工でん粉への利用などが期待される。

 「こなみずき」でん粉の実用化にあたっては、低コスト化を図るための安定的な栽培技術の確立やでん粉製造歩留りの向上及びでん粉白度や粘度特性の安定化といった課題がある。現在、鹿児島県では国、大学の研究機関及び民間企業と連携し、用途開発と併せてこれらの課題に取り組んでいる。

 今後も低温糊化特性かんしょでん粉の実用化に向けて研究を進め、かんしょでん粉産業および生産農家の経営安定が図られることを期待している。

引用文献

1)時村金愛ら、J.Appl.Glycosci.、49、305-312、2002
2)K.Katayama et al.、Starch/Starke、56、563-369、2004
3)K.kitahara et al.、 Starch/Starke、57、473-479、2005
4)片山健二、でん粉情報、43、25-28、2011
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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