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還元澱粉糖化物液剤の製品特性と施設園芸作物での使用場面

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最終更新日:2013年2月12日

還元澱粉糖化物液剤の製品特性と施設園芸作物での使用場面

2013年2月

協友アグリ株式会社 普及部 花田 浩平

1.はじめに

 当社開発の殺虫・殺菌剤(商品名:エコピタ液剤)は、還元澱粉糖化物を有効成分とし、対象病害虫を物理的に被膜することで効果を発揮する資材です。人畜・有用生物に対して安全性が高く、総合的病害虫管理(Integrated Pest Management、以下IPM)に適した資材です。今回、その開発背景と特長、使用場面について紹介いたします。

2.還元澱粉糖化物液剤の開発背景

 近年、農作物の病害虫管理は、化学合成農薬に頼った防除方法から、病害虫の発生しにくい環境整備(耕種的防除や物理的防除)や、交信かく乱物質(性フェロモン)をはじめ、微生物農薬や天敵農薬などIPM関連資材を活用するIPMの概念が急速に普及しています。

 還元澱粉糖化物液剤は、「安全・安心な農産物生産の一助となりうる防除資材」、「天敵や訪花昆虫等の有用生物に影響が少なく、環境負荷の少ない防除資材」を念頭に置き、化学合成農薬とは性質が異なる防除資材として開発を行いました。また、後述する「薬剤抵抗性害虫・耐性菌出現の回避」という観点からも、大きな意味合いをもつ資材です。同液剤は、2006年4月に上市し、2012年は約45k(社団法人日本植物防疫協会 2012年農薬要覧より)の出荷実績があり、主として施設園芸場面で使用されています。

3.製品特性

 還元澱粉糖化物液剤は、有効成分として還元澱粉糖化物(60%)および、その他成分として水と界面活性剤(40%)からなります。還元澱粉糖化物は、オリゴ糖を高温高圧下で水素還元することにより得られる多糖類で、還元水あめとも称されます。清涼飲料水、菓子、マヨネーズ、ケチャップやつくだ煮など、種々の食品に甘味料として使用されています。
 
 同液剤はハダニ類やアブラムシ類、うどんこ病菌の病害虫に対して高い殺虫・殺菌活性を示したことから、2000年より社団法人日本植物防疫協会で評価を開始し、2005年12月14日に農薬登録を取得しました。その後、コナジラミ類に対しても活性を示すことが確認され、コナジラミ類を対象に適用拡大を行いました。2013年1月現在の同液剤の適用内容を表−1に示します。
 
 同液剤は、捕食性天敵であるカブリダニ類とハナカメムシ類、また寄生バチ類に対する影響はほとんど認められませんでした(表−2)。そのため、天敵農薬の普及が進むピーマン、なす、いちごなどの施設果菜類栽培において同液剤との併用などの形で、IPMに組み入れやすい特長をもちます。また、その製品特性上使用回数に制限がなく、収穫前日まで使用できる薬剤です。
 

4−1.適用病害虫に対する作用

 還元澱粉糖化物液剤は有効成分が高い粘性を有します。うどんこ病菌に対しては胞子や菌糸を被膜し、胞子の飛散および発芽、菌糸の伸展を阻害することで効果を発揮します(田村、2009)。

 害虫に対しては体表を被覆し、アブラムシ類やハダニ類およびコナジラミ類幼虫の気門経路を物理的にふさぐことで呼吸を阻害し、殺虫効果を発揮します(太田、2008)。同液剤によって被膜されたアブラムシ類やハダニ類は、散布1〜2日後には死亡して乾燥している姿が確認されます。さらに、ミカンハダニに対しては特異的に殺卵活性が認められ、他の気門封鎖剤にはない特長を有しています。また、コナジラミ類成虫などは、翅を絡め取られて死亡する姿も確認されます(写真−1)。

 これらの害虫は、作物を吸汁することで直接的な被害を出したり、ウイルス病を媒介するため非常に問題視されています。また、同一系統の化学農薬の連用によって薬剤抵抗性の発達が大きな問題となっていますが、物理的に作用する同液剤は、薬剤抵抗性発達のリスクがほとんど無いと考えられます。そのため、同液剤を防除体系に組み込むことで、薬剤抵抗性発達回避の一助となると考えます。
 

4−2.施設いちごでの使用例(天敵との併用)

 施設いちごで還元澱粉糖化物液剤と天敵(カブリダニ類)を併用したハダニ類の防除イメージを図−1に示します。天敵を使用するポイントは、(1)放飼前後に天敵に影響のある農薬を散布しないこと、(2)放飼前のハダニ類を低密度に管理することです。したがって、上記の特長を兼ね備えた同液剤を放飼前に使用することで有効な病害虫管理が可能となります。また、散布回数に制限がないため、放飼後も害虫の発生した場所にスポット的に散布することができます。ただし、同液剤は直接病害虫にかからなければ効果がないため、葉裏など散布むらがないように注意する必要があります。
 

5.今後の展望

 還元澱粉糖化物液剤は、2012年4月27日より農林水産省の定める日本農林規格(有機JAS規格)適合資材となり、特別栽培農産物(注)への使用が可能になりました。現在、天敵農薬との体系防除に加え、微生物殺虫剤との混用効果を狙い試験を行っています。

 同液剤は、消費者の食の安全に対する声の高まりや、薬剤抵抗性の発達した病害虫のレスキュー防除の両方の声に答えられる農薬です。さらに重要性の高まるIPMにおいて、同液剤がその一助となれば幸甚です。


(注)特別栽培農産物:その農産物が生産された地域の慣行レベル(各地域の慣行的に行われている節減対象農薬及び化学肥料の使用状況)に比べて、節減対象農薬の使用回数が50%以下、化学肥料の窒素成分量が50%以下で栽培された農産物。

参考文献

田村幸之(2009)今月の農業 53(3), 54-58.
太田泰宏(2008)植物防疫 62(11), 619-623.
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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