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でん粉原料用ばれいしょ「コナユキ」の特性について

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最終更新日:2013年9月10日

でん粉原料用ばれいしょ「コナユキ」の特性について

2013年9月

北海道立総合研究機構農業研究本部北見農業試験場
作物育種グループ 主査(馬鈴しょ) 大波 正寿

【要約】

 「コナユキ」は、でん粉品質を主目標の一つとして育成された初めての品種で、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性をもつ。でん粉収量は「コナフブキ」並に多く、でん粉品質は「紅丸」並で、固有用途全般に適する。小粒塊茎が多くなりやすいため、収穫時の掘り残しの懸念があるが、種いも催芽管理や窒素施肥法の対策試験に取り組んでおり、改善を見込んでいる。

1.開発の背景

 ばれいしょでん粉の需要は糖化用途および固有用途(水産練り製品、片栗粉、麺類、菓子用、春雨、化工でん粉など)に大きく分けられ、固有用途は、ばれいしょでん粉特有の性質を活かして利用されている。しかし、でん粉原料用の主力品種が、固有用途需要の多い「紅丸」から、固有用途への適性が劣るものの収量性が高い「コナフブキ」に置き換わり、実需者の要望に十分応えられなくなったこともあって、近年、固有用途需要は減退してきている。今後も安定的にばれいしょでん粉生産を行うためには、固有用途の需要拡大が可能なでん粉原料用品種の育成が課題となっている。

 一方、生産地では、ばれいしょの重要病害虫であるジャガイモシストセンチュウ(Globodera rostochiensis)の汚染地域が拡大しており、抵抗性を持たない「コナフブキ」に置き換え可能な抵抗性品種の開発および普及が求められてきた。

2.来歴

 「コナユキ」は、高品質でん粉で収量性が高く、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つでん粉原料用品種の育成を目標として、平成10年(1998年)に北海道立総合研究機構農業研究本部北見農業試験場(以下「北見農試」という。)において人工交配を行い、選抜および道内関係機関の各種試験を経て、平成22年(2010年)に北海道の優良品種に採用された。母親はでん粉品質がばれいしょでん粉固有用途に適し、上いも重の多い「紅丸」で、父親は近縁野生種「S. Chacoence」由来の高でん粉価で、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つ中晩生系統「根育39号」である。

3.品種の特性

(1)形態的特性

 草姿はやや直立で、葉の形は「紅丸」に似ており、倒伏の発生は少ない(写真1)。花は白色で、花数は「コナフブキ」より少なく、果実の着生はほとんどない。茎長は「コナフブキ」並であるが、年次によって「コナフブキ」より短いことがある。茎数は「コナフブキ」より多く、ストロン(わき芽)の長さは短く、いも着生は浅い。塊茎は球形で、皮色は紫色である(写真2)。肉色は白色で紫色の斑が入るが、でん粉の白度および品質に悪影響はない。
 
(2)生態的特性

 休眠期間は「コナフブキ」より短く、植付け後の萌芽および初期生育は「コナフブキ」より早い。北見農試における4カ年の試験では、枯ちょう期(ばれいしょが自然に枯れた日)はほぼ「コナフブキ」並で、熟期は中晩生である(表1)。株あたり上いも数は「コナフブキ」より多く、上いもの平均重は軽い。いもの収量(上いも重)は「コナフブキ」よりやや多く、でん粉含有率(でん粉価)およびでん粉収量(でん粉重)は「コナフブキ」並である。でん粉収量の推移は「コナフブキ」と同等かやや上回るが、小粒塊茎が多いことから早期肥大性はほぼ同等である(図1)。
 
 
(3)病害虫抵抗性、障害耐性

 ジャガイモシストセンチュウ抵抗性遺伝子H1を持つ。疫病およびそうか病には「コナフブキ」と同様に弱い。Yウイルス抵抗性は「コナフブキ」の“強”に対して「紅丸」と同様の“弱”で、病徴は明瞭なれん葉モザイク症状を示すことが多い。

 褐色心腐は「コナフブキ」並に少なく、中心空洞、二次生長は「コナフブキ」より少ない。打撲黒変耐性は「コナフブキ」並である。

(4)でん粉品質特性

 でん粉粒子の大きさは「紅丸」より小さく、「コナフブキ」並である(表2)。離水率(注1)およびリン含量(注2)は「紅丸」並で、「コナフブキ」より低い。灰分含量は「コナフブキ」より低く、「紅丸」並である。ゲル物性および糊化特性はほぼ「紅丸」並である。以上のことから「コナユキ」のでん粉品質は「紅丸」に近い特性を持ち、固有用途全般に適すると考えられる(注3)。固有用途のうち、特に蒲鉾等の水産練り製品に用いた場合、「コナフブキ」より弾力性が高く貯蔵性も優れた。

(注1) 離水率は、塩水中で糊化させたでん粉ゲルを冷蔵貯蔵するときに水が分離する割合を示す。でん粉製品の貯蔵性の指標で、値が低いほど良い。また離水率が低くなると、固化する温度が低下する、でん粉製品の弾力性が向上するなど、他の品質も向上する。

(注2) リン含量は、でん粉に結合しているリンの含量で、糊化した時の糊の粘りの強さに関係しており、リン含量が高いと粘りが強くなる。粘りが強いことは、ばれいしょでん粉を他のでん粉と分ける重要な性質であるが、強すぎると安定性が低下するため、リン含量は高すぎない方がよい。

(注3) 「紅丸」が「コナフブキ」より固有用途に適するのは、離水率とリン含量が「コナフブキ」より低いためと考えられている。
 
(5)栽培上の注意

 「コナユキ」の栽培にあたり、注意する点として次の3点がある。

1) コナユキ」は小粒塊茎が多いことから、「コナフブキ」より収穫時の掘り残しが多く、野良生えの発生が増える懸念がある。このため、収穫作業後に秋起こしを控えるなど、土壌凍結を促進させる技術を用いて野良生えを抑制することが求められる。

2) 生育前半の降水量が多い地域や、湿害を受けやすい試験圃場で、「コナフブキ」よりでん粉重が低かった事例があったことから、圃場選定や排水対策に留意する。

3) 塊茎の休眠期間が「コナフブキ」より短く、芽が動き出すのが早いため、収穫後の種いもの保管に留意する。

4.「コナユキ」の安定生産にむけた取り組み

 「コナフブキ」並の収量性と「紅丸」並の品質とを併せ持つ「コナユキ」は、本年から本格的な栽培が開始されている。一方、小粒塊茎が多いことが不安定要因となっていることから、北見農試では、平成24年より(社)北海道馬鈴しょ生産安定基金協会からの研究費を得て、「コナユキ」の安定多収栽培法の研究を実施している。平成24年の北見農試圃場における結果の一部を示すと、「コナユキ」は種いも催芽期間の積算気温が高いほど株あたり茎数が多くなり、その結果として着生いも数が多く、くずいも数が増加する(図2)。このため、「コナユキ」は短期間の浴光催芽(出庫後速やかに植付ける)、あるいは気温が高くなりやすい場所での催芽管理を避けるのが望ましいと考えられる。窒素施肥法については、基肥の一部を開花期に分肥すると、上いもの平均重が重くなり、くずいも数が減少する傾向が認められている。

 これらの試験については、北海道オホーツク総合振興局、網走農業改良普及センターおよび地域のJAと連携して現地実証試験を実施中であり、試験結果を通じて「コナユキ」の普及および生産性向上が期待される。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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