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2012年の世界のでん粉需給動向

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最終更新日:2014年5月9日

2012年の世界のでん粉需給動向

2014年5月

調査情報部 植田 彩

【要約】

 2012年の世界の天然でん粉生産量(製品重量ベース)は、コーンスターチ1609万トン、タピオカでん粉818万トン、ばれいしょでん粉162万トン、小麦でん粉138万トンであった。また、デキストリンを含む化工でん粉は786万トンであった。

 世界的にでん粉需要が拡大する中、主要生産国であるインドの生産増により、アジア地域は3年ぶりにコーンスターチの輸出量が輸入量を上回った。EUでは、前年に天候不順により不作となったばれいしょでん粉の生産は回復する一方で、小麦でん粉は原料不作のため減産となった。また、タイのタピオカでん粉は史上最高の生産量となった。

 今後は、EUの景気回復やアジア地域の堅調な需要を背景に世界のでん粉需要の増加が予測される。

はじめに

 トウモロコシ、小麦、ばれいしょ、キャッサバ、コメ、かんしょ、ヤシなどを原料に生産されたもので植物組織体中に存在するままの物性を有しているものを天然でん粉と呼び、それら原料作物の栽培条件に合った地域が天然でん粉の主要生産地となる。天然でん粉は、片栗粉、麺類、ビールなどといった食品の原料だけでなく、繊維、製紙、段ボールといった工業用品の原料にもなる。天然でん粉を加工したものが糖化製品(異性化糖、水あめ、ブドウ糖)、化工でん粉(可溶性でん粉、でん粉誘導体、デキストリン、アルファでん粉)であり、一般的にはこれら加工品が市場で流通している。2012年の世界のでん粉生産量は3566万トン(製品重量ベース、前年比2.8%増)で、各でん粉の生産割合は、コーンスターチが最も多く45パーセント、次いでタピオカでん粉が23パーセント、デキストリンおよび化工でん粉が22パーセント、ばれいしょでん粉が5パーセント、小麦でん粉が4パーセントとなっている(図1)。
 
 近年、アジア地域を中心とした経済発展と人口増加などを背景に、でん粉需要は堅調に推移している。世界的なでん粉価格の推移を見ると、2011年はEUの天候不順によるばれいしょの不作、さらに翌年には、米国の干ばつの影響によるトウモロコシの不作により、でん粉需給はひっ迫し、価格は高水準で推移した。でん粉輸入国であるわが国にとって、これら世界の需給や価格動向は、注目されるところである。

 そこで本稿では、世界の主要な天然でん粉(コーンスターチ、タピオカでん粉、ばれいしょでん粉、小麦でん粉)およびデキストリンを含む化工でん粉について、2012年の生産状況と今後の消費見通しについて、農産物の需給などを調査する英国の大手民間調査会社LMC社の報告に基づき紹介する。

 なお、本稿中の数値については、すべて製品重量ベースである。

1.天然でん粉

(1)コーンスターチ

 コーンスターチは天然でん粉の中で最も生産量が多く、2012年は、世界全体で1609万トン(前年比2.0%増)と、前年から増加した(表1)。このうち、アジア地域の生産量は1167万トン(同3.2%増)と、全体の7割以上を占めており、次いで、北アメリカ地域が236万トン(同2.2%減)、ヨーロッパ地域は132万トン(同0.3%増)となり、この3地域で、生産量全体の95パーセントを占めている。北アメリカ地域の減産は、メキシコのトウモロコシが2011年に過去70年間で、最悪の干ばつに見舞われて不作となったことにより、生産量が2万9000トン(同56.7%減)と、前年から大幅に減少したことに起因する。

 一方、2012年の消費量も、同1608万トン(同2.1%増)と増加した。生産量と同様にアジア地域が1166万トン(同3.0%増)と最も多く、最大の消費地域となっている。世界で一番消費量の多い国は中国であり、年間881万トンと、世界の消費量の過半を占めた。また、北アメリカ地域が226万トン(同1.5%減)、ヨーロッパ地域が127万トン(同0.9%減)となった。

 トウモロコシ価格の高騰によりこれまで停滞していた北アメリカ地域のコーンスターチの需要は、最近、価格が下落したことで、北米自由協定(NAFTA)加盟国を中心とした需要回復が見込まれており、2014年の消費量は232万トン(2012年比2.5%増)の見込みである。ヨーロッパ地域では、消費量はほぼ横ばいで推移するとみられ、需給がだぶつき状態となっている。一方、アジア地域、アフリカ地域、南アメリカ地域の新興国では、今後も堅調な需要が見込まれ、2014年の世界全体の消費量は1704万トン(同6.0%増)と見込まれている。
 
 2012年のアジア地域は、3年ぶりにコーンスターチの輸出量が輸入量を上回った(図2)。これは、アジア地域最大の輸出国であるインドの輸出量が13万トン(前年比74.3%増)と、前年から大幅に増加したことによる。また、同地域の主要輸入国であるインドネシア、マレーシア、フィリピンの輸入量が、前年から大きく減少したことも要因である。

 北アメリカ地域の2012年の純輸出量は、10万トン(同15.5%減)と減少した。これは、同地域の主要輸出国である米国で純輸出量が大幅に増加したものの、メキシコのコーンスターチ減産により輸出量が大幅に減少したことに起因する。

 ヨーロッパ地域における2012年の純輸出量は、5万トン(同44.0%増)であった。これは、同地域の主要輸出国であるフランスの純輸出量が、前年比で大幅に増加したことによる。EUでは、フランス、スペインといった南部の国がコーンスターチを生産および輸出をし、ドイツ、オランダ、英国といったコーンスターチのユーザー企業が多い北部の国が輸入するといった、域内貿易が大半である。
 

(2)タピオカでん粉

 天然でん粉の中で、タピオカでん粉はコーンスターチの次に生産が多く、2012年の生産量は、世界全体で818万トン(前年比4.3%増)であった(表2)。このうち、アジア地域が750万トン(同4.5%増)と、生産量全体の9割以上を占めており、次いで、南アメリカ地域が55万トン(同1.5%増)、アフリカ地域が13万トン(同2.3%増)となった。キャッサバの害虫コナカイガラムシの被害により2008年に減産となったタイでは生産量が回復し、2012年には史上最高の418万トン(同11.0%増)となったことなどが、アジア地域の生産増加の要因である。

 一方、2012年の消費量は、同818万トン(同4.3%増)であった。生産量と同じくアジア地域が736万トン(同4.5%増)と最も多く、次いで、南アメリカ地域が55万トン(同1.5%増)、アフリカ地域が15万トン(同2.7%増)となった。

 アジア地域の需要は依然堅調であることから、2014年の消費量は783万トン(2012年比6.4%増)と見込まれている。その他の地域では、ほぼ横ばいで推移することが見込まれており、2014年の消費量は、世界全体で869万トン(同6.2%増)と予測されている。
 
 タピオカでん粉を最も多く輸出しているアジア地域について、2012年の純輸出量は14万トン(前年比3.2%増)となった(図3)。これは、同地域の輸入国である中国、インドネシア、台湾、マレーシア、日本などで、前年よりも輸入量が増加したものの、輸出上位2国であるタイ、ベトナムの輸出量がそれ以上に増加したことによる。インドネシアでは、人口増加と経済成長により需要が拡大しているが、トウモロコシなどへの作付け転換により、キャッサバの生産は近年伸び悩んでいる。同国の2012年の生産量は130万トン(同18.2%減)と、前年から大きく落ち込んだことから、同国の純輸入量は大幅に増加している。

 北アメリカ地域の2012年の純輸入量は、米国の純輸入量が前年比71.4パーセント増と大幅に増加したことにより、7万トン(同57.1%増)と増加した。ヨーロッパ地域の2012年の純輸入量は、同地域の輸入上位2国であるオランダ、ドイツがともに減少したことから、3万トン(同47.7%減)と前年から減少した。同地域の景気は回復基調にあるものの、工業用のでん粉消費の回復が遅れていることから、タピオカでん粉の純輸入量は大幅に減少した。なお、ヨーロッパ地域の中で、EUではタイ産タピオカでん粉は1万トン、それ以外は1万500トンの関税割当数量が設定されており、割当内の関税は1トン当たり66ユーロ(9,438円)、割当外は同166ユーロ(23,738円)である。

注:1ユーロ=143円(2014年3月末TTS相場)
 

(3)ばれいしょでん粉

 2012年のばれいしょでん粉の生産量は、世界全体で162万トン(前年比8.3%増)であった(表3)。全体の生産量の7割を占めるヨーロッパ地域では、2012年が114万トン(同14.9%増)となり、天候不順によりばれいしょが不作であった前年から大幅に増加した。EUでは、共通農業政策(CAP)の見直しにより、2012年7月1日をもってばれいしょの生産割当制度が廃止されたものの、直接支払制度が措置されたことで、ばれいしょ生産者の生産意欲は持続すると見込まれている。一方、でん粉製造事業者への補助金(プレミアム)は廃止されていることから、小麦でん粉やコーンスターチとの価格競争力が低下し、今後、でん粉生産への影響が懸念されている。

 ばれいしょでん粉が生産される3地域のうち、ヨーロッパ地域の次に生産量の多いアジア地域の同年の生産量は43万トン(同2.3%減)、北アメリカ地域では6万トン(同21.4%減)となっている。一方、2012年の消費量は、162万トン(同8.5%増)となった。消費量が最も多いアジア地域は71万トン(同14.0%増)となっており、初めて、ヨーロッパ地域70万トン(同3.1%増)を上回った。次いで、北アメリカ地域は16万トン(同4.5%増)となった。

 景気が回復基調にあるヨーロッパ地域と、経済成長が著しいアジア地域の需要は、今後も堅調に推移すると見込まれており、2014年の消費量は、世界全体で171万トン(2012年比5.2%増)と予測されている。
 
 世界のばれいしょでん粉の輸出量(EU域内向け含む)の90パーセントはEUで生産されている。2012年のEUの輸出量(EU域内向け除く)は、 44万トン(前年比48.7%増)と、ばれいしょの不作により減産となった前年から大幅な増加となった(図4)。主な輸出先国は、韓国5万トン(同14.3%増)、米国4万トン(同21.0%減)、中国3万トン(同20.3%増)であった。2011年5月、中国はEU産ばれいしょでん粉に対し、これまでのアンチ・ダンピング(AD)措置に加え、相殺関税を課したことから2011年のEU産輸入量は減少していたが、依然として、国内の需給ひっ迫によりEU産の需要は強かったため、2012年輸入量は増加した。なお、2007年に発動されたAD措置は、5年間で期限切れを迎えた後2013年2月に再び延長されている。
 

(4)小麦でん粉

 2012年の小麦でん粉の生産量は、世界全体で138万トン(前年比1.1%増)であった。ばれいしょでん粉同様に、ヨーロッパ地域の生産量が最も多く、74万トン(同3.6%減)であったが、2012年夏季の高温と降雨不足から、小麦が不作となったため、前年から減産となった。次いで、アジア地域が42万トン(同8.5%増)となり、この2地域で全体生産量の8割以上を占めている(表4)。

 一方、2012年の消費量は同139万トン(同1.9%増)となった。生産と同様にヨーロッパ地域の消費が最も多く74万トン(同3.3%減)、次いでアジア地域の48万トン(同12.4%増)、北アメリカ地域の9万トン(同1.1%増)となっている。

 ヨーロッパ地域は、今後の景気回復による需要の伸びが予測されており、2014年の消費量は75万トン(2012年比2.2%増)と見込まれている。また、アジア地域の需要は、引き続き堅調に推移し、同年の消費量は56万トン(同16.9%増)と見込まれている。この結果、2014年の消費量は、世界全体で150万トン(同7.6%増)と予測されている。
 
 小麦でん粉を最も多く輸入している、アジア地域の2012年の純輸入量は、主要輸入国の日本が前年から大幅に減少したものの、タイおよびマレーシアが増加したことから、全体では6万トン(前年比47.6%増)と前年から増加した(図5)。一方、同年に最も多く小麦でん粉を輸出しているのはヨーロッパ地域で、純輸出量は1万トン(同152.0%増)と、前年に最も輸出が多かった北アメリカ地域2,000トン(同76.7%減)を上回った。ヨーロッパ地域の増加は、域内の小麦価格が高騰したことから、域内需要が減退し、これが輸出に仕向けられたこと、また、北アメリカ地域の減少は、米国の輸出量が大幅に減少したことに起因する。
 

2.デキストリンを含む化工でん粉

 2012年のデキストリンを含む化工でん粉の生産量は、世界全体で786万トン(前年比2.4%増)であった。このうち、アジア地域が310万トン(同2.9%増)となり、次いで、北アメリカ地域が229万トン(同0.8%減)、ヨーロッパ地域が205万トン(同5.0%増)となった(表5)。

 一方、2012年の消費量は、同786万トン(同2.4%増)であった。生産量と同様に、アジア地域の消費が最も多く332万トン(同5.6%増)、次いで、北アメリカ地域208万トン(同0.7%減)、ヨーロッパ地域191万トン(同0.4%増)となった。

 2014年の消費量は、アジア地域の消費増がけん引し、世界全体で844万トン(2012年比7.4%増)と見込まれている。
 
 2012年のデキストリンを含む化工でん粉の輸出量が最も多い国は、タイで87万トン(前年比7.5%増)であった(表6)。タイの輸出量の仕向先を見ると、日本向けは29万トン(同8.5%増)と、全体の34パーセントを占め最も多かった。タイに次ぐ輸出国のうち、オランダ52万トン(同3.1%増)、フランス42万トン(同0.3%増)、ドイツ28万トン(同0.2%増)はEU域内への輸出がほとんどとなった。米国40万トン(同4.5%減)は、カナダへの輸出が最も多く、次いで日本向けとなった。
 

おわりに

 世界のでん粉需要は、中国をはじめとしたアジア地域を中心に引き続き堅調であり、また、今後は景気回復によるEUの需要増も見込まれている。しかしながら、干ばつ、低温、多雨といった天候不順や害虫被害などによる原料作物の不作、また、ばれいしょでん粉の生産割当、および最低保証価格の廃止などEUの共通農業政策(CAP)見直しによる影響などから、でん粉原料が今後安定的に供給されるかどうかについては不透明な面が多い。このため、消費大国である中国の動向、交渉が開始されたEUとタイの自由貿易協定(FTA)、キャッサバ害虫被害の発生、EUのばれいしょでん粉関連政策の行方といった各国の生産動向や政策について注視していく必要がある。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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