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地域だより

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最終更新日:2016年1月5日

かんしょでん粉に関する出前講座の開催について

2016年1月

鹿児島事務所 山領 弥奈

 平成27年11月6日(金)、当事務所では薩摩川内市の鹿児島純心女子大学において、「かんしょでん粉に関する出前講座」(以下「出前講座」という)を開催した。今回の出前講座は、医療・福祉・教育などの食の現場で管理栄養士として働くことを目指す看護栄養学部健康栄養学科の学生方に、鹿児島県の特産物であるかんしょでん粉を支える価格調整制度や、かんしょでん粉の特性と利用方法について知ってもらうことで、将来、食の現場に出た際に、かんしょでん粉を広く活用してもらうことを目的に、鹿児島純心女子大学および鹿児島県大隅加工技術研究センター(以下「大隅加工技術研究センター」という)の協力を得て、実現した。

 最初に、当事務所の真弓所長が、「日本のでん粉を支える仕組み」と題する講演を行った。講演では 1)でん粉から作られる製品 2)需給などのかんしょでん粉をめぐる状況 3)でん粉原料用かんしょが南九州(鹿児島県・宮崎県)地域の経済を支える基幹作物であること 4)かんしょでん粉は唯一鹿児島県内で製造されていること 5)輸入でん粉などから徴収した調整金を財源として、国内のでん粉原料用かんしょ生産者やかんしょでん粉製造事業者に対し当機構から交付金を交付している価格調整制度の仕組みなどについて、説明を行った。
 
 次に、大隅加工技術研究センターの時村金愛参事付から、「かんしょでん粉の魅力と利用について―かんしょでん粉ってなに?どう使うの?―」と題して講演があった。まず、でん粉が原料によって粒子の形状や大きさ、粘度も異なるということについてクイズを交えて説明した後に、かんしょでん粉は各種でん粉と比較して中間的な特性を持つことが、データとともに紹介された。
 
 続いて、県内で生産されるかんしょの約4割がでん粉原料用向けである一方で、かんしょでん粉は、その約7割が糖化製品に利用されており、ばれいしょでん粉と比べて食品向けの固有用途が非常に少ないため、かんしょでん粉ならではの食品用途向けの需要拡大が急務であるとして、新品種「こなみずき」が開発されたことの紹介があった。「こなみずき」でん粉は、その分子構造から低温糊化性を有し、保水性が高いという特徴があり、食品に加工したときに、一般のかんしょでん粉と比べて、食感や耐老化性などに違いが現れることが説明された。加えて、学生に「こなみずき」でん粉と一般のかんしょでん粉、ばれいしょでん粉から作られたゲルに実際に触ってもらい、その違いを実感してもらうとともに、県下で開発・販売されているさまざまな食品利用の例や、適した使用割合などについて説明があった。
 
 また、平成27年5月にオープンした、大隅加工技術研究センターに整備された食品加工施設の紹介も行われ、学生は多種多様な機器に興味を抱いていた様子だった。

 続いて、時村参事付の指導の下、実際に「こなみずき」でん粉を使った調理実習が行われた。学生方はでん粉がだまになったり焦げ付いたりしないよう注意しながら、手際よく調理していた。今回調理したメニューは以下の通り。
 
 
 
 完成した料理を全員で試食したところ、「こなみずき」でん粉の特徴的な食感に対して、「もちもちしている」「弾力のある食感が魅力的」「プルプルとしていて食べやすい」といった声が上がった。また、当日は時村参事付が従来のかんしょでん粉と「こなみずき」でん粉をそれぞれ使用したういろうを用意し、食べ比べをした学生からは、でん粉の種類による食感の違いに対する驚きの声が聞かれた。
 
 質疑応答の時間には、学生からかんしょでん粉の料理への利用方法やダイエット食品への利用の可能性について質問があり、時村参事付からかたくり粉よりだまになりにくくとろみが付きやすいことや、小麦粉と比べて低カロリーであることの説明があった。
 
 最後に学生代表者から「かんしょでん粉について、制度の仕組み、特徴や調理方法などを学ぶ貴重な機会だった。将来現場に出た際も今日学んだことを生かすことができるようにしたい」とお礼の言葉をいただき、真弓所長からも「講座の開催について、ご理解・ご協力をいただいた健康栄養学科の森中房枝先生ならびに事前にご準備いただいたスタッフの皆さま、また、講師としてお越しいただいた時村先生にお礼申し上げる。将来、皆さんが、栄養士や栄養教諭として指導的立場につかれた際に、本日の講座の内容が役に立ち、的確な栄養指導と食教育に生かしていただければ、幸いである」とのあいさつがあった。
 
 終了後のアンケートでは「とてもわかりやすくて、かんしょでん粉を実際に使用してみたいと思った」「さつまいもでん粉とばれいしょでん粉の違いを知ることのできる機会に恵まれた」「通常かたくり粉を使っているような空揚げやあんかけなどに使ってみたい」といった意見があったほか、「嚥下(えんげ)困難の人への食事に利用したい」といった健康栄養学科で学ぶ学生ならではの意見もあった。

 当機構としては、今後も、生産者の方々が安心してでん粉原料用いもを生産し、経営の安定に資することができるよう、交付金交付業務の適切な運営と併せて、このようなかんしょでん粉の生産振興・普及に係る支援について、積極的に実施してまいりたい。

 改めて、鹿児島純心女子大学看護栄養学部の森中教授をはじめ健康栄養学科の方々、時村参事付をはじめ大隅加工技術研究センターの方々、協力いただいた県下の食品関係事業者の方々に感謝申し上げます。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713