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EU砂糖産業の構造

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最終更新日:2011年3月2日

EU砂糖産業の構造 〜制度改革が砂糖産業に与えた影響〜

2011年3月

調査情報部調査課

 
 
【要約】
 
 2006年に開始されたEUの砂糖制度改革は、WTO裁定による輸出量の制限、共通農業政策(CAP)への砂糖分野の適応、輸入増加による域内供給の過剰などの諸課題に対応するため行われた。この制度改革の結果、EUは、世界有数の砂糖輸出地域から世界最大規模の輸入地域の一つへと転換することとなった。これが最近の砂糖価格高騰の根幹的な原因の一つとなっている。
 
 生産割当数量の削減により、てん菜生産者は、他作目の栽培、家畜の飼養などへの転換を余議なくされた。一方、製糖企業は、生き残りを図るため、工場の集約化、企業間の合併・買収などで対応した。減少率は加盟国間で異なるものの、全ての国で作付面積が減少した。てん菜生産から完全に撤退した国やてん菜糖生産から精製事業へと転換する企業もあった。
 
 現行の砂糖制度の適用期間終了となる2015年9月末以降の新しい制度は、現在議論されている2013年以降のCAP政策の行方に大きく左右される。
 
注:本稿の年度は、断りがない限りEU砂糖年度(10月〜翌9月)である。
 

1.はじめに

 EUは、主要な生産地域、消費地域として、またその輸入動向によって砂糖の世界需給に与える影響が依然大きい。
 
 本稿では、英国の調査会社Agra CEAS Consulting社からの報告を基に、4年間にわたった砂糖制度改革およびその後の制度において、砂糖産業がどのように変化したのかについて紹介する。
 
 

2.砂糖制度改革の概要

 砂糖制度改革は、2006/07年度から2009/10年度までの4年間で完了することとされ、改革後のスキームは、2014/15年度末(2015年9月末)まで適用されることとなっている。この改革は、生産割当数量を600万トン削減するとともに、市場価格の基準となる価格を36%引き下げる一方、工場を閉鎖し生産割当数量を放棄した者に対しては助成金を交付するという、いわば構造改革でもあった。
 
 改革が行われた理由としては、3つの点が挙げられる。第1に、砂糖の補助金付き輸出およびアフリカ・カリブ・太平洋諸国(African, Caribbean and Pacific Countries:ACP諸国)産砂糖の再輸出が、2005年5月、WTO上違反とされたこと。第2に、EUの共通農業政策(Common Agricultural Policy : CAP)の改革に砂糖分野も対応する必要があったこと。第3に、後発開発途上国(Least Developed Countries:LDC)や、ACP諸国からの輸入自由化に対応しなければならなかったことである。
 
 制度改革の主な内容は以下のとおりである。
 

(1)価格支持水準の引き下げ

 ア.砂糖
 
 欧州委員会は、2006/07年度、従来の介入価格制度(いわゆる最低価格保証制度)を廃止し、市場価格の基準となる参考価格を新たに導入した。市場価格が参考価格を下回った場合、セーフティネットとして、民間在庫に対する補助が実施される。
 
 
 イ.てん菜
 
 製糖業者は、加盟国政府から生産割当を受け、砂糖を食用に販売するためには、定められた最低価格を上回る価格で、てん菜を買い取らなければならない。
 
 てん菜の最低価格は、1トン当たり32.9ユーロから26.3ユーロに引き下げられる一方、てん菜生産者の所得減少分の約60%相当額については、直接支払いにより、CAP予算から補償されることとなった。さらに、加盟国単位で見て、国別生産割当数量の50%以上を放棄した場合には、50%の基準に達した年から5年間(ただし最長2013/14年度まで)、当該加盟国の生産者に対する直接支払額は30%上乗せされる。
 
 

(2)生産割当数量の削減

 砂糖制度改革は、2009/10年度までに砂糖、異性化糖およびイヌリンシロップの生産割当数量を合計600万トン削減することを目標とした。
 
 生産割当の削減は、製糖業者による任意の割当の返還および割当を返還した製糖業者に対する補償金(再構築助成金)に支援されつつ推進された。再構築助成金のうち90%は製糖業者が、10%はてん菜生産者が受け取ることとなっている。再構築助成金の財源は、製糖業者から徴収される再構築賦課金である。再構築助成金と再構築賦課金の単価は、表2のとおり漸次引き下げられた。
 
 
 
 
 2007/08年度までの2年間では、目標の600万トンに対して220万トンの割当しか返還されなかった。しかしながら、3年目の2008/09年度には220万トンを大きく上回る割当が返還される結果となり、順調に割当の削減が行われたかたちとなった。このように2008/09年度に削減が進んだ理由として、以下の欧州委員会の措置が挙げられる。
 
○ 2009/10年度末までに削減数量が目標の600万トンに達しなかった場合には、最終削減(Final Cut)が行われることとなっていた。この最終削減は、それまでの自発的な削減に対して、一律かつ強制的なものとなる上、再構築助成金も交付されない。結果的にこれは実施されなかった。
 
○ 生産割当数量の一定割合について、1年間に限り生産を認めない一時凍結措置が行われたこと。この措置は実際に行われ、2006/07年度に250万トン、2007/08年度には200万トンの生産割当が一時凍結の対象となった。製糖業者にとっては、生産割当を保持していても、生産が行えない上、再構築賦課金は徴収されたことから、この措置が生産割当の削減に大きく貢献することとなった。なお、製糖業者が一時凍結数量を上回る割当を返還した場合は、再構築賦課金の支払いを免除された。
 
○ 2008/09年度限りの時限措置として、てん菜生産者に対する再構築助成金の追加交付(237.5ユーロ/トン)の措置が行われたこと。これにより、てん菜生産者は、最高で割当1トン当たり300ユーロ(625ユーロ×10% + 237.5ユーロ)を受け取ることとなった。また、てん菜生産者は、製糖業者が保有する生産割当数量の10%を限度として、製糖業者を通さず、生産割当数量の削減を加盟国政府に直接申請できることも認められた。
 
 
 
 
 このように、2009/10年度末までに削減目標が達成されなかった場合は、2010/11年度に補償の無い最終削減を義務付ける一方、2008/09年度までに割当を返還すれば補償額が上乗せされるという、欧州委員会の硬軟織り交ぜた対策により、生産割当の削減は進んだのである。
 
 
 
 

(3)輸出払戻金制度の縮小

 割当糖の輸出払戻金の対象数量は、WTOの裁定により137万4000トン(白糖換算)に輸出上限枠が設定され、2007/08年度までの2年間は輸出払戻金が交付されていた。しかし、2008/09年度以降、輸出払戻金は交付されていない。
 
 

(4)生産賦課金の導入

 改革2年目である2007/08年度、生産割当数量枠内の砂糖・異性化糖生産者への直接支払いに充当する財源として、生産賦課金が導入された(白糖12ユーロ/トン、異性化糖6ユーロ/トン)。この賦課金は、生産者と製糖業者が生産賦課金を平等に負担するため、生産者は製糖業者が負担した生産賦課金の最高50%を製糖業者に支払うこととした。
 
 

(5)精製事業参入機会の拡大

 精製糖生産に係る数量制限は撤廃されることとなった。また、製糖業者も粗糖を輸入し、自らの施設で精製糖を生産できることが認められた。
 

(6)割当外糖の産業用利用

 生産割当数量を上回って生産される砂糖(割当外糖)の域内流通については、化学、医薬品などの産業用向けに限って認められることとなった。また、2008/09年度以降、産業用砂糖については、無税輸入割当枠として40万トン(白糖と粗糖の計)が認められている。このため、基本的には割当外糖の価格が輸入砂糖の価格を上回ることはなく、域内のユーザーは、国際価格並みの水準で、産業用砂糖を調達できるようになった。
 
 

3.制度改革が砂糖産業に与えた影響

(1)てん菜生産への影響

 砂糖制度改革によって製糖工場数が減少したため、てん菜生産も大きく縮小されることとなった。
 
 てん菜生産者数は減少傾向で推移しており、改革直前の2005/06年度の30万4000戸から改革後4年を経た2009/10年度には16万2000戸(2005/06年比46.6%減)まで減少した。てん菜生産をやめた農家はほかの作目、例えばイギリスでは、穀類、ナタネ、ばれいしょ、豆類の栽培や家畜の飼養に転換した。
 
 てん菜の作付面積は220万ヘクタールから140万ヘクタール(同年比37.1%減)、生産量は1億3200万トンから9000万トン(同年比31.8%減)まで減少した。作付面積は、すべての加盟国で減少したが、その率は加盟国間によりかなり異なる。生産効率の低い国(ブルガリア、アイルランド、ラトビア、ポルトガル(本土)、スロベニア)は、てん菜生産から完全に撤退した。
 
 
 
 
 
 

(2)製糖企業への影響

 ア)企業・工場の集約化
 
 EUにおける製糖および精製糖企業数・工場数は、改革4年後の2009/10年度には60社、105工場へ減少した。その中でも、最も多くの工場が閉鎖されたポーランドでは22工場が閉鎖され、改革前の2005/06年度から半減した。次に閉鎖工場が多かった国は、生産割当数量の60%以上の放棄を選択したイタリアであり、小規模、かつ高コスト体質であった15工場が閉鎖された。
 
 製糖企業の多くは、低コスト化による生き残りを図るため、工場の処理能力の向上や操業期間の延長などで対応しており、EU内の工場の平均処理能力は約23%上昇し、現在は、1工場当たり約9200トン/日となっている。処理能力が最も上昇した国はイタリアで、1日当たり従来の倍以上となる1万4000トン以上の処理能力を有している。
 
 さらに、工場における稼働率の向上を目指し操業日数を延ばしており、2008/09年度におけるEU全体平均の操業日数は、2005/06年度の90日から98.7日へと増加した(表7)。
 
 
 
 
 イ)製糖企業の合併・買収
 
 EU内の小規模な製糖企業の多くは砂糖生産から撤退するか、他の大規模企業と合併した。主な合併や買収の例は表8のとおりである。
 
 てん菜生産者は製糖工場と契約販売をしているため、工場が廃止されると、新たな取引先となる工場を探すこととなる。製糖工場側は原料を安定的に確保するために、よりよい取引条件を生産者に提示した。製糖工場とてん菜生産者のあいだの契約は、合併する企業間の合併契約の一部として含まれていることが一般的である。
 
 
 
 
 ウ)精製事業への転換
 
 砂糖制度の改革により、精製糖生産に関する規制が撤廃された。改革以前は、ACP諸国から輸入された砂糖を精製することが認められていたのは、域内の精製事業者のみだったが、改革によりこの規制が撤廃され、2009年以降、製糖業者も粗糖を輸入して精製糖の生産ができるようになった。LDC諸国産は2009年10月から粗糖輸入が自由化されていることもあり、Pfeifer & Langen(ドイツ)、 Nordzucker(ドイツ)、 Acor(スペイン)、Azucarera Ebro(スペイン)など域内の多くのてん菜糖企業が、精製事業に参入する計画を発表した。ポルトガルのDAIのように、てん菜糖生産から撤退し、精製事業へと転換した事例もある。
 
 

4.今後の展望

 現行のEU砂糖制度の適用期間は、2015年9月までとなっている。これ以降の新しい枠組みについては、現在議論されている2013年以降のCAP政策の行方に大きく左右されると考えられる。また、今後の国際交渉(WTO、FTAなど)の動向にも大きく影響されよう。いずれにせよ、砂糖生産については加盟国間で立場が大きく異なるため、欧州委員会は難しい舵取りを迫られることとなる。なお、現在のところ、てん菜生産者団体は、市場管理のツールとしての生産割当制度の維持を支持している。
 
 2015年以降の砂糖制度がどのようなものになるかについて、CAP政策の議論と併せ、今後も引き続きその推移について注視していきたい。
 
 
【参考資料】
 
 
 
 
 
 
【参考】
 
その他の甘味料の動向
 
1.異性化糖およびイヌリンシロップ
 
 異性化糖の生産は、1977年にEU砂糖制度の対象となって以来、割当数量により制限されている。制度改革によって6カ国(ドイツ、フランス、オランダ、ルーマニア、フィンランド、イギリス)では割当数量を完全に放棄したものの、工業用・化学用など食用以外の用途は、生産割当数量の対象外ということもあり生産量が増加している。
 
 イヌリンシロップについても制度改革によって大きな影響を受け、32万トンあった割当数量は、完全に撤廃された。しかしながら、主に食用以外の用途として、現在のところ生産量、輸出量ともに増加傾向にある。
 
 
 
 
2.人工甘味料
 
 EUでは、食品産業における甘味料として利用が認められるのは、欧州食品安全機関(EFSA)による安全性評価を取得したものに限られている。
 
 主な人工甘味料の輸出入量の推移を表Bに示した。
 
 
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
Tel:03-3583-8713



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