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〜ローカロリー、ゼロカロリーに代わる新しい概念〜

「スローカロリー」
〜ローカロリー、ゼロカロリーに代わる新しい概念〜

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最終更新日:2015年4月10日

「スローカロリー」
〜ローカロリー、ゼロカロリーに代わる新しい概念〜

2015年4月

三井製糖株式会社商品開発部 宮崎 大地

1. 背景

 昔ながらの和食は五穀、魚肉、野菜中心で繊維質に富むため、体内で穏やかに吸収される健康的な食事として知られる。ところが近年、科学技術の発達による運動量の低下や、ライフスタイルの変化により手軽さ、時短性を重視した精製食品の摂取が増加した結果、日本人の平均エネルギー摂取量は1975年から減少しているにもかかわらず、特に男性において肥満者の割合が増加している(図1)。体内での吸収速度が速い精製食品は急激に血糖値を上げ、また脂肪合成を活性化させるインスリンの分泌を増加させるため、糖尿病や肥満の一因となる(注1)といわれているが、消化吸収を穏やかにすればこのような懸念を避けることができる。

 このような背景から、筆者らはローカロリー、ゼロカロリーに代表されるエネルギー摂取の“量”ではなく、エネルギーの種類や吸収速度といった、エネルギー摂取の“質”について考えることが重要であると考え、“スローカロリー”という概念を提案している。
 

2. スローカロリーとは

 スローカロリーとは、簡潔に言えば「ゆっくりと栄養を消化・吸収する」ということである。栄養の消化吸収を穏やかにすることで、血糖値の上昇を抑え、インスリンの分泌を抑えることができる。国際糖尿病連合による「食後血糖値の管理に関するガイドライン(2008)」では、食後高血糖は有害で対策を講じる必要があること、そしてゆっくり消化吸収される糖質といった、糖負荷の低い食事が食後血糖値の管理に有益であることが記載されており(注2)、既に糖尿病の医療現場などでは、ゆっくり消化吸収されるものを選ぶような指導が行われている。健常者においても、エネルギーがゆっくり吸収されることは満腹ホルモンの分泌を促しやすく、また集中力が持続しやすくなるなど、スローカロリーを心掛けることによる有益な効果が報告されている。

 スローカロリーの簡単な実践例として、食事を取る際にまず野菜から食べる“ベジファースト”が挙げられる。野菜に多く含まれる食物繊維は他の栄養素の吸収を阻害し、吸収速度を抑える効果がある。玄米や全粒粉の小麦粉といった精製度の低い食品は、不純物に富み咀嚼(そしゃく)や消化吸収に時間がかかるため、白米や小麦粉よりもスローカロリーな食品であるといえる。

3. 次世代の砂糖「パラチノースR」

 三井製糖では、スローカロリーな砂糖といえる“パラチノース”(写真1)という、砂糖を酵素処理してできる天然の糖に注目している。パラチノースは小腸の酵素で分解されて、砂糖の分解物と全く同じブドウ糖と果糖になる砂糖とよく似た二糖類である。パラチノースは消化吸収速度が砂糖の約5分の1とされ(注3)、非常にゆっくり吸収されるため、血糖値の上昇が穏やかである(図2)。さらに、砂糖やブドウ糖といった他の糖類と同時に摂取した場合、その吸収速度も遅らせる、つまり他の糖類への“スローカロリー化”能力があることも報告されている(注4)。パラチノースは、虫歯の原因にならない良質な味質を持つ糖であることから、一般向けの食品で20年以上前から広く利用されているが、近年では、糖尿病の患者が摂取できるエネルギー源として医療現場の流動食での利用が進み、最近では無駄な脂肪が蓄積せずにエネルギーを摂取できることから、アスリートやボディビルの体作り、エネルギーの供給がゆっくりと持続することを生かしマラソンなど持久力スポーツのサプリメント、飲料などにも利用が広がっている。
 

4. スローカロリープロジェクトについて

 パラチノースが有する健康機能を基に、三井製糖では「スローカロリープロジェクト」を2007年に立ち上げ、ゆっくりと糖を吸収することの重要性を訴えてきた。家森幸男先生(京都大学名誉教授、国際健康開発研究所長)、池田義雄先生(日本生活習慣病予防協会理事長、元・東京慈恵会医科大学教授)といった専門家の指導を頂戴しながら、主に医療現場を中心としてスローカロリーの概念の普及に努めた結果、現在では医療従事者による自発的なスローカロリーに関する勉強会やセミナーが行われるに至っている。

 また、肥満予防、満腹感持続、スポーツ時のエネルギー補給といったさまざまな商品が既にスローカロリープロジェクト賛同企業より発売されており、スローカロリーをコンセプトとした市場が広がりを見せている。三井製糖もマラソン大会での啓発活動や、マスメディアを通じた情報提供を積極的に推進している状況である(写真2)。
 

おわりに

 2015年3月4日、宮崎滋先生(新山手病院 生活習慣病センター長)を理事長とする一般社団法人スローカロリー研究会が設立され、産業的、学術的にスローカロリーへの関心が高まっている。三井製糖は精製糖メーカーとして、今後も砂糖とパラチノースの安定的な供給と研究開発活動と並行し、スローカロリー概念の啓発活動を続け、スローカロリーに関心を持つ企業、専門家らと一緒に消費者の健康意識の向上に努め、日本だけでなく世界中の人のQOL(Quality of life:生活の質)向上に寄与していきたいと考えている。

(注1) Health Professionals Follow-up StudyおよびNurses' Health Study I,II
 ハーバード大学公衆衛生学部、栄養疫学部のウィルター・ウィレットらの研究グループが主導する研究で、男性5万人以上、女性23万人以上、計30万人近くを平均20年間追跡して食事内容と総死亡の関係を解析し、毎年70編近くの論文が出ている研究群。精白された穀物、白米やパン、パスタ、ジャガイモ、砂糖の入った飲食品、赤肉やバターなど加工食品は控えることが推奨されている。
(注2)食後血糖値の管理に関するガイドライン(国際糖尿病連合,2008)
(注3)Journal of Nutritional Science and Vitaminology 32,93-100(1986)
(注4) 精糖技術研究会誌 51, 19-25(2003)
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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