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4. 日本の主要輸入先国の動向(2017年7月時点予測)

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最終更新日:2017年8月10日

4. 日本の主要輸入先国の動向(2017年7月時点予測)

2017年8月

 近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、タイ、豪州、南アフリカ、フィリピン、グアテマラであったが、2016年の主要輸入先国ごとの割合は、豪州が52.2%(前年比13.2ポイント増)、タイが47.7%(同8.3ポイント減)と、この2カ国でほぼ全量を占めている(財務省「貿易統計」)。

 豪州およびタイは毎月の報告、南アフリカ、フィリピン、グアテマラについては、原則として3カ月に1回の報告とし、今回は南アフリカを報告する。

豪州

2016/17年度の砂糖生産量はわずかに減少、輸出量はやや減少の見込み
 2016/17砂糖年度(7月〜翌6月)のサトウキビ収穫面積は39万ヘクタール(前年度比3.2%増)とやや増加し、生産量は3550万トン(同1.9%増)とわずかな増加が見込まれている(表6)。5〜6月に収穫されたサトウキビについては、3月に襲来したサイクロンの影響により、製糖歩留まりの低下が見られることから、砂糖生産量は494万トン(同2.2%減)とわずかな減少が見込まれている(注1)
 また、輸出量も、中国向けの減少などに伴い、400万トン(同3.8%減)とやや減少が見込まれている。

2017/18年度の砂糖生産量はかなり増加、輸出量は前年度並みの見込み
 2017/18年度のサトウキビ収穫面積は40万ヘクタール(前年度比1.8%増)とわずかな増加が見込まれるものの、サイクロンの影響による単収の低下から、生産量は3556万トン(同0.2%増)と前年度並みにとどまると見込まれている。砂糖生産量は531万トン(同7.5%増)とかなりの増加が見込まれているものの、サイクロンの被害状況によっては、今後下方修正される可能性がある。輸出量は、生産量が増加するものの、中国向けの需要が減少すると見込まれることなどに伴い、400万トン(同0.1%増)と前年度並みが見込まれている。

 豪州農業資源経済科学局(ABARES)が6月中旬に公表した2017/18年度の生産予測によると、サトウキビ栽培面積は38万ヘクタール(同2.2%増)とわずかに増加するものの、サイクロンの被害に伴い、砂糖生産量は、482万トン(同0.4%増)と前年度並みが見込まれている。輸出量についても、407万トン(同0.3%増)と前年度並みが見込まれている。

 豪州砂糖製造業者協議会(ASMC)が発表した生産実績によると、5月下旬〜7月上旬のサトウキビ圧搾量は422万トンであった。なお、ASMCは先ごろ、2017年のサトウキビ圧搾量見込みを3400万トンと発表している。

 クイーンズランド(QLD)州砂糖公社(QSL)(注2)は7月4日、2017/18年度以降の新たな輸出契約に基づく砂糖の輸出見通しを発表した。これによると、QSLの砂糖輸出量は約190万トンと、豪州最大の輸出企業としての地位を維持すると見込まれている。

 QSLは6月7日、Sugar Terminal Limited(STL)(注3)と2017/18年度以降の砂糖輸出ターミナルの管理に関する新たな契約を締結した。QSL以外の企業も砂糖輸出ターミナルを利用するようになることから、QSLは、砂糖輸出ターミナルの管理に係る機密事項や利害の対立について対処できるよう業務を物流部門と輸出部門に分割した。QSLは、今後もQLD州の砂糖産業の繁栄に資するため、ターミナルの業務を注意深く管理しつつ、コスト削減や管理体制の合理化に努めたいとの姿勢を示している。


(注1)豪州の砂糖年度は7月〜翌6月とされているが、例年5〜6月ごろから製糖が開始される。5〜6月の数量は、前年度の数量に含まれる。
(注2)QLD州産砂糖の輸出を担う公社。同州産砂糖輸出の9割を扱っていたが、2015年の砂糖産業法改正により、2017/18年度以降、製糖企業を介してQSLが輸出する従来の形態に加え、砂糖を輸出する企業を生産者が選択できるようになった。
(注3)QLD州内の製糖企業や生産者が出資し、六つの砂糖輸出ターミナルを所有する企業。砂糖輸出ターミナルの管理については、QSLに委託。

表6 豪州の砂糖需給の推移

タイ

2016/17年度の砂糖生産量はわずかに増加、輸出量はかなり減少の見込み
 2016/17砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は、141万ヘクタール(前年度比0.2%減)と前年度並みと見込まれる一方、単収が低下することから、生産量は9300万トン(同1.1%減)とわずかな減少が見込まれる(表7)。

 しかし、砂糖生産量は、長引く干ばつの影響があったものの、製糖歩留まりの向上が見られることなどから、1030万トン(同2.7%増)とわずかな増加が見込まれている。また、輸出量は、中国向けの減少などに伴い、684万トン(同12.4%減)とかなりの減少が見込まれている。

 タイ製糖協会によると、5月3日までに2016/ 17年度のサトウキビの圧搾が終了し、同年度のサトウキビ圧搾量は9295万トン(同1.2%減)とわずかに減少した。干ばつの影響によるサトウキビの減産に伴い、サトウキビ圧搾量が前年度比で8%減少した工場も見られた。

 政府は現在、砂糖産業関連法の改正(注1)に向けた手続きを行っている。この改正によって、砂糖産業全体の収益をサトウキビ生産者と製糖業者で7:3の割合で分配する現行の収益分配方式、販売割当(注2)、および政府が設定している国内砂糖価格は廃止されるとみられる。

 現地報道によると、サトウキビ・砂糖委員会事務局(OCSB)(注3)は5月中旬、各製糖企業に対し、国内供給用に、生産量の一定割合を常に在庫として確保するよう求めること、今後は、OCSBが国際価格を基に算出した基準価格を発表することなど、改正の方向性について関係者間で合意に達したと明らかにし、改正法は11月までに施行される見込みであるとした。

(注1)タイ政府は2016年4月初旬、国際砂糖価格の低迷時などに製糖企業を通じて生産者に支払われる補てん金や、砂糖の販売割当および国内販売価格の設定は、間接的な輸出補助金に当たり国際貿易協定に違反しているとして、ブラジル政府からWTOに提訴された。これを受け、タイ政府は同年11月3日、ブラジルとの2国間協議の場に、同年10月中旬に閣議承認された砂糖政策の改革案を提出した。
(注2)タイ産砂糖は、A割当と呼ばれる国内供給向けとB割当およびC割当と呼ばれる輸出向けなどの販売割当に基づき管理されている。
(注3)タイのサトウキビおよび砂糖関連政策の執行機関である3省(工業省〈製糖関係〉、農業協同組合省〈原料作物関係〉、商務省〈砂糖の売買関係〉)とサトウキビ生産者および製糖企業の代表で構成され、工業省内に設置された「サトウキビ・砂糖委員会(TCSB)」の事務局。

表7 タイの砂糖需給の推移

(参考) タイの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

南アフリカ

2016/17年度の砂糖生産量はやや減少、輸出量は大幅減の見込み
 2016/17砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、29万ヘクタール(前年度比4.2%減)、生産量は1623万トン(同4.9%減)と、ともにやや減少が見込まれている(表8)。

 砂糖生産量は、2014/15年度から続く干ばつの影響による製糖歩留まりの低下から、163万トン(同5.4%減)とやや減少が見込まれている。2015/16年度から砂糖の消費量が生産量を上回る状況が続き、在庫量が減少していることから、輸出量は22万トン(同29.1%減)と大幅に減少し、過去最低を記録すると見込まれる。

2017/18年度の砂糖生産量はかなり増加、輸出量は大幅増の見込み
 2017/18年度のサトウキビ収穫面積は、31万ヘクタール(前年度比5.9%増)、生産量は1719万トン(同5.9%増)と、ともにやや増加が見込まれている。干ばつ被害から回復し、平年並みの降雨が予想され、サトウキビが順調に生育することで、製糖歩留まりの向上が見込まれていることから、砂糖生産量は180万トン(同10.2%増)とかなりの増加が見込まれている。これに伴い、輸出量も30万トン(同37.9%増)と大幅に増加するものと見込まれている。

 なお、4月に開始予定であった糖類を含む飲料への課税(注)は、南アフリカ砂糖協会など業界団体の反対を受けて延期されている。業界団体は、課税がもたらす社会的経済的影響に関する分析に加え、砂糖の輸出や工場でのバガス発電の推進といった代替となる砂糖産業振興策を行わずに課税を行うべきではないと主張している。南アフリカサトウキビ生産者協会が先ごろ発表した試算では、課税により5800人以上の雇用が失われ、生産者収入が15〜30%減少するとしている。

(注)2月の南アフリカ財務省の発表によると、課税対象は、100ミリリットル当たり4グラム以上の糖類を含む飲料で、この飲料に含まれる糖類10グラム当たり0.21ランド(2円〈6月末日TTS:1ランド=10円〉)が課税される予定とされていた。

表8 南アフリカの砂糖需給の推移

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