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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2018年8月時点予測)

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最終更新日:2018年9月10日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2018年8月時点予測)

2018年9月

 本稿中の為替レートは2018年7月末日TTS相場の値であり、1ブラジル・レアル=30円(29.83円)、1インド・ルピー=1.78円、1ユーロ=131円(131.43円)である。

ブラジル

2018/19年度、乾燥気候とエタノール仕向けの増加を受け砂糖生産量は減少見通し
 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)の2018年8月現在の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2018/19砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、869万ヘクタール(前年度比1.3%増)とわずかな増加が見込まれている(表2)。しかし、サトウキビ生産量は、北東部を中心に乾燥気候が長く続いている影響から、5億9500万トン(同7.2%減)とかなりの程度の減少が見込まれている。

 砂糖生産量(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉)は、国際価格が低迷を続ける中、エタノール需要の高まりに伴い、サトウキビのエタノール仕向け割合の増加が見込まれることなどを受け、3257万トン(同21.5%減)と大幅な減少が見込まれている。砂糖輸出量についても、生産量の減少を受け、2116万トン(同31.7%減)と大幅な減少が見込まれている。

中国政府と輸入関税の引き下げをめぐり協議
 7月25日から27日にかけて開催された第10回BRICS(注)首脳会議で、ブラジルと中国の首脳は、両国間における農産品の貿易について、通算5度目の協議を行った。ブラジルのミシェル・テメル大統領は中国に対し、砂糖や鶏肉の輸入関税の引き下げや、大豆油・大豆かすの輸入枠の開放を要請した。現地報道によると、中国の習近平国家主席は、この提案に対し前向きに協議したいと回答したとしている。

(注)近年目覚ましい経済発展を遂げている、ブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、 中国(China)、南アフリカ(South Africa)の 5カ国の頭文字に由来。

北東部の州でサトウキビ関連産業に対する減税措置
 ブラジル砂糖生産量の1割を占める北東部に位置するアラゴアス州政府は7月26日、製糖企業やエタノール製造企業に対し、法人税の減税措置を実施すると発表した。減税総額は70億ブラジル・レアル(2100億円)に及び、州GDPの8%に相当する。長年の課題とされてきた製糖産業の競争力強化や操業率の改善を図ろうとするものとみられる。

 州政府は、減税措置により、歩留まりや製造能力の向上に伴う生産量の増加や雇用の創出がもたらされるとしており、地元のサトウキビ生産者団体も、技術革新や価格競争力の強化に伴う砂糖やエタノールの出荷拡大に期待を寄せている。

表2 ブラジルの砂糖需給の推移

(参考)ブラジルの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

インド

2018/19年度、砂糖生産量は増加見通しも、在庫増が課題
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ生産については、収穫面積は512万ヘクタール(前年度比6.1%増)とかなりの程度の増加が見込まれている。生産量は、主要生産州で潤沢な降雨を得られる見通しであるものの、4億443万トン(同2.8%増)と、面積の増加に比して増加はわずかなものと見込まれている(表3)。

 砂糖生産量は、サトウキビの増産を受け、3558万トン(同2.5%増)とわずかな増加が見込まれている。砂糖輸出量は、386万トン(同64.6%増)と、積み上がった在庫を輸出増によって処理する政府の方針もあり(後述)、大幅な増加が見込まれている。

供給過剰の砂糖、輸出先を模索
 インド政府は、生産増加によって緩慢になった国内需給に対し、輸出増によって需給の引き締めを図ろうとしている。

 現地報道によると、インド政府は現在、バングラデシュ、マレーシア、インドネシア、中国の4カ国に対し、同国産砂糖のさらなる市場開放を求めたとされる。このうち、バングラデシュは、距離的な近接性を生かし、10〜12月にかけて220万トンの砂糖を輸入する意向を伝えており、マレーシアも同様に、同国からの輸入を前向きに検討しているとされる。

 一方、世界でも有数の砂糖輸入国であるインドネシアとの交渉については、インドネシア側が、インドが一方的に輸入関税を引き上げたパーム油関連製品の関税引き下げが先であるとして譲らず、難航している。中国についても、潜在的に150万〜200万トンの輸入需要があるものの、輸入枠の数量上限が厳しく、市場開拓は容易ではないとしている。

 インド産の砂糖は、政府が定めるサトウキビ買取価格の水準が高いこともあり、生産コストが高く、国際市場における価格競争力が低いとされている。現地報道によると、2017/18年度の期末在庫が1000万トン超に積み上がる中、2018/19年度は、生産量も3500万トンに上ると見込まれている。このため、国内消費が前年度並みの水準で推移した場合、前年度を大幅に上回る期末在庫が生じることから、需給の引き締めが急務となっている。

政府、サトウキビ圧搾汁からのエタノール生産を認可へ
 インド政府は7月27日、製糖業者に対し、糖蜜やバガス(サトウキビの搾りかす)といった副産物からの製造しか認めていなかったエタノールについて、サトウキビの圧搾汁からの直接生産を認めると発表した。また、政府は、エタノールの最低買取価格の引き上げを併せて発表し、2018年12月以降、副産物由来のエタノールについては1リットル当たり43.70インド・ルピー(78円)、圧搾汁から生産されたエタノールについては同47.49インド・ルピー(85円)となる。

 インド政府は、ガソリンへのエタノール混合率10%を目指していることもあり、同国におけるエタノール生産は、近年急速に増加しているものの、それでも需要に供給が追い付かず、混合率は4%程度にとどまっているとされる。

 現地報道によると、今回の制度変更によって、サトウキビからのエタノール生産の拡大が進めば、結果的に砂糖需給の引き締めも期待できるとしている。

表3インドの砂糖需給の推移

(参考)インドの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

中国

2018/19年度、砂糖生産量は増加見通しも、国内需要を賄うには至らず
 サトウキビについては、2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)の収穫面積は125万ヘクタール(前年度比1.1%増)、生産量は7775万トン(同1.3%増)と、ともにわずかな増加が見込まれている(表4)。同年度のてん菜の収穫面積は22万ヘクタール(同20.5%増)、生産量は1118万トン(同16.6%増)と、ともに大幅な増加が見込まれている。

 砂糖生産量は、サトウキビ、てん菜の生産量がともに増加すると見込まれていることを受け、1142万トン(同2.4%増)とわずかな増加が見込まれているが、依然として国内消費量を大きく下回る水準となっている。こうしたことから、砂糖輸入量は645万トン(同12.1%増)とかなり大きな増加が見込まれている。

肥満の原因は、糖質ではなく脂質との調査結果を発表
 新華社通信の報道によると、中国の研究機関は、肥満には、糖質ではなく脂質の摂取が影響しているという実験結果を発表した。

 この実験は、マウスに異なる29種類の食事(脂質、糖質、タンパク質のいずれかのみ)を、3カ月間(人間の寿命に換算すると9年程度)にわたって一定の量を給与し続けるというものである。実験の結果、脂質を給与されたマウスだけが、エネルギー摂取量や体重が増加した一方、糖質またはタンパク質を給与されたマウスは、給与量に関わらず体重の増加が確認されなかった。

 肥満や体重増加の要因については、1980年代以降さまざまな論争が巻き起こってきたが、この実験結果によると、これまでしばしば主因としてやり玉に挙げられてきた糖質については、その疑惑が晴れたとされる。

 今回の実験を実施した研究者らによると、この実験はあくまでもマウスによるもので、同じような臨床実験を長期にわたって実施することは現実的ではないものの、この実験をきっかけに食生活についての理解を深めてほしいとしている。

表4 中国の砂糖需給の推移

(参考)中国の砂糖(粗糖・精製糖別)の輸入量および輸入単価の推移

EU

2018/19年度、乾燥気候と高温を受け、砂糖生産量は減少見通し
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は、172万ヘクタール(前年度比0.6%減)とわずかな減少が見込まれている。生産量は、乾燥気候と高温による単収減の影響から、1億2734万トン(同5.4%減)とやや減少が見込まれている (表5)。

 てん菜生産量の減少を受け、砂糖生産量は2002万トン(同7.1%減)、輸出量は326万トン(同9.1%減)と、生産割当廃止によって大幅な増加を記録した2017/18年度と比べると、ともにかなりの程度の減少が見込まれている。今夏、熱波による記録的な高温と乾燥が続いており、今後もこの状況が続くようであれば、生産見通しがさらに下振れする可能性もあるとしている。なお、2017/18年度は、生産割当廃止に伴い、砂糖生産量が飛躍的に増加したことを受け、砂糖の輸入量は半減した。砂糖生産量の減少が見込まれている2018/19年度についても、前年度の期末在庫が潤沢なことを受け、輸入量は減少傾向で推移すると見込まれている。このため、EUに砂糖を多く輸出してきたアフリカや大洋州島しょ部の各国は、苦境に立たされている。

 現地報道によると、これらの国は、国際価格が下落を続ける中、生産コストが高いため価格競争力が低いこともあり、欧州以外の市場の開拓も難航している。このため、アフリカのモーリシャスでは、サトウキビをラムの醸造に用いるなど代替需要の創出を試みている。また、同じくアフリカのエスワティニ(旧国名:スワジランド)では、製糖工場の統廃合を進め、生産効率の向上を図るなど、各国は対応を迫られている。

砂糖の工場出荷価格、低迷続く
 欧州委員会によると、5月の工場出荷価格は1トン当たり368ユーロ(4万8208円)と、2017年10月以降、8カ月連続で前年同月を下回った(図3)。現地報道によると、生産過剰となっているEUの市況を反映し、スポット価格は一時的に同320ユーロ(4万1920円)程度まで下落しており、製糖業者の中には、調整保管の実施を欧州委員会に求める声もある。なお、この月別工場出荷価格は毎月更新されているが、今回の更新から、三つの地域に分けられ、それぞれの地域別価格についても公表されるようになった(図4)。地域別価格については、2017年10月分までさかのぼって取得することができる。

表5 EUの砂糖需給の推移

図3 砂糖の月別工場出荷価格の推移

図4砂糖の月別工場出荷価格の推移(地域別)

(参考)EUの主要国別砂糖生産見通しおよび生産割合(2018年4月時点)

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