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カッティングドレーン工法による無材暗きょの施工とてん菜およびばれいしょ栽培への効果

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最終更新日:2010年3月6日

でん粉情報

[2009年10月]

【生産地から】

財団法人北海道農業開発公社経営企画室 丸山 健次
独立行政法人農業・食品産業総合研究機構 農村工学研究所 北川  巌


1.背景

 これまで、北海道では特殊土壌に対して各種の排水改良法や土層改良法が開発され、現地で導入や改善が進められてきました。これらの改良法の多くは、多量の資材を使用するため高コスト型の整備が中心でありました。しかし、北海道農業の競争力を高めるには、冷湿害時の生産性維持のための効果的な農地整備をより安価に実施することが求められています。特に、経営規模が大きな畑・草地において低コストな農地整備の技術の確立が急務となっています。

 従来の排水改良には、疎水材暗きょ(注1)や心土破砕(注2)、弾丸暗きょ(注3)があり、疎水材暗きょは費用が高いこと、心土破砕や弾丸暗きょは耐久性に劣る欠点がありました。近年、これらの欠点を解決した、暗きょ管や疎水材などの資材を用いないで耐久性と排水効果の高い無材暗きょ技術が進展しています1)。しかし、従来の無材暗きょ技術では北海道の畑・草地に多い堅密な台地土や黒ボク土に対しては対応が困難でありました。そこで、低地土(河川流域の低地土壌)はもとより、堅密な台地土にも適用可能で、より施工効率を高めた、低コストに施工できる「カッティングドレーン工法」を開発しましたので、適用可能な土壌条件、耐久性、効果について報告します。


2.カッティングドレーン工法の概要

 低コストな排水改良については、北海道において弾丸暗きょが昭和初期に普及に移され泥炭地で広く行われていました。しかし、穴が小さくなる問題を抱えていました。その後、1960年頃には営農で行えるモミガラ心破(注4)が実用化しましたが、モミガラ収集や施工に手間がかかるためあまり普及していません。1975年頃に2連式無材型暗きょ(注5)2)が実用化されました。現在は、数種類のトレンチャー掘削式無材暗きょ(注5)が、泥炭土を中心に全道で年間500〜1000ヘクタール程度施工されています。トレンチャー式無材暗きょは、掘削性能や空洞を塞ぐ土蓋を作る機構などが堅密土壌に不適であり、施工効率も0.1〜0.3km/hと低い状況です。

 図1に示した新工法3)であるカッティングドレーン工法は、切断刃により深さ90センチまでを幅10センチの長方形に切断し、長方形の土塊を15〜25センチ持ち上げ、落下しないよう土塊下部を固定し、細溝の最下部に通水孔となる細溝空洞(穴の大きさは2種類から選択)を形成する「直下穴型」と、最下部にできた細溝空洞横の壁面から幅10〜25センチ×高さ10〜20センチの土を細溝空洞内に寄せ、切断掘削した溝の横に通水空洞(穴の大きさは3種類から選択)を形成する「横穴型」の工法があります。これらはいずれも一台の同一施工機により施工ができ、土壌条件の変化に応じて施工の途中で空洞の形状を変更することも容易であり、土中に最も適した空洞の形状を形成することが可能となります(図3)。また、カッティングドレーン工法は、心土破砕と同様に、作業機の牽引力により掘削、空洞を形成し、他の動力を用いないことで施工効率を高めることに成功しました。

図1 カッティングドレーン工法の施工機外観と施工概要

図2 施工状況

図3 カッティングドレーン工法の土壌断面

 カッティングドレーン工法の空洞形成については、掘削部は土壌を切断刃で切削し、切断部の外側の土壌を破砕しないように掘削します。そのため、空洞周辺への土壌圧縮は少なく、破砕による土壁崩壊が起こりにくいようになっています。

 カッティングドレーン工法の基本型である耐久性のある横穴型は掘削部横から、空洞と同じ形状の土塊をブロック状に切り抜き掘削部に押寄せします。そのため、空洞部の上面や側面の土壌は破砕作用を受けないことから空洞周辺の土壌はたい積した条件が乱されず、空洞の形状を維持しやすい状態になります。


3.カッティングドレーン工法の効果

1)排水効果

 岩見沢市の泥炭土ほ場において、10メートル間隔で無材暗きょの調査を行った結果、施工後半年までの無材暗きょは、ピークの排水量が0.1〜1.0mm/hで、降水量に対する暗きょの流出率は24%でありました。これは、無材暗きょの排水性が一般的な暗きょ排水の排水性(排水量で0.4mm/h以上)に匹敵することを意味しており、排水機能が高いことが明らかとなりました。

 さらに、1年が経過した浦幌町のほ場群では、全ての無材暗きょの落水部から排水の流出を確認しました(図5)。このことは、掘削された溝空洞が崩落しないため、無材暗きょの排水機能が維持されることを示しています。


図4 カッティングドレーン工法の排水量(岩見沢市)

(落水部の保護無し)
(落水部の保護有り)
図5 施工後1年経過時の排水状況

2)土壌破砕効果

 カッティングドレーン工法は切断刃付き犁体により土層を切断掘削する工法で、掘削する縦溝の切断破砕部は地表面の余剰水を空洞部へ通水する作用があります。この縦溝の土壌物理性を周辺の心土と比較したものを表1に示すと、泥炭土では独自の高い透水性の性質から縦溝部の物理性の改善効果が認められませんでしたが、灰色低地土や褐色低地土では心土より容積重が減少、気相率が増加、透水係数が大きくなっていることから、縦溝部に対して心土破砕的な作用が働いたことが考えられます4)


表1 カッティングドレーン周辺の土壌物理性
注)ち密度*:山中式硬度計

 この効果は、堅密な土壌である灰色低地土で顕著に現れる場合が多く、特に土壌硬度の高い台地土では、土壌硬度の低下と気相率の増加、透水係数がやや高くなります。他方、黒ボク土では、台地土に比べ堅密でなく、透排水性が高いため心土破砕効果が小さいことが分かりました。

3)作物収量効果

 排水不良のほ場に対してカッティングドレーン工法を施工することは、作物生育の改善効果にも大きな期待が寄せられます。浦幌町で行った作物調査では、ばれいしょに対しては、カッティングドレーン区で降雨時の表面滞水が明らかに回避され、生育も良好で、収量の増加が認められました。また、湿害に弱いてん菜ではカッティングドレーン区で収量が増加し、排水不良により発生を助長する黒根病による腐敗株率が明らかに改善されました(表2)4)


表2 カッティングドレーン工法による収量への影響(2005)
注)ばれいしょ*:でん粉原料用(コナフブキ)

4.カッティングドレーンの施工性と耐久性

1)泥炭土

 本工法は泥炭土には適しています。泥炭土で施工された本工法の空洞は、全ての施工タイプで空洞の形状に変化がなく、依然として余剰水の排水が確認されています(図5)。この変化の程度は、従来のトレンチャー掘削式無材暗きょと変わらず、これまでの知見から10年程度は排水機能を有すると考えられます。

2)低地土および台地土

 従来の無材暗きょでは堅密な土壌で施工ができませんでしたが、本工法は低地土と台地土でも施工ができることがわかりました。本工法は堅密土壌に対して横穴型空洞を小さくして牽引抵抗を軽減することでこれを可能にしています。また、堅密性が高い場合は、施工時期を土壌水分がやや高い時期に施工することで、牽引抵抗を軽減させます。これにより堅密な重粘土である紋別市や滝川市の灰色台地土でも施工が可能でありました。さらに極端な堅密性を示し牽引抵抗が増す凝灰岩風化たい積物の台地土や堅密な多湿黒ボク土に対しては直下穴タイプでの対応が想定されます。低地土や台地土では、施工後の乾燥による土壌の崩落が泥炭土より発生しやすく、そのため空洞の施工タイプは横穴型を基本としますが、さらに耐久性を高めるためには、施工深度を深く、施工間隔を密にし、空洞内の通水量を減少させるなどの対応が必要です。

 耐久性はグライ土>細粒灰色低地土=細粒灰色台地土>中粗粒灰色低地土・台地土の順に高く、高水分条件と細粒質土壌の特徴が空洞の耐久性を増します。

3)火山性土

 火山性土に対してはこれまで無材暗きょは適用してきませんでした。これは掘削時から崩落する場合が多いためでありました。新工法は空洞形状が単純で、掘削土を再充填しない施工方法の特徴から、掘削時の崩落を最小限に抑えています。耐久性は他の土壌に比べ劣りますが、土壌が崩落しても掘削部および空洞部には粗大な隙間が残るため心土破砕と同様な補助暗きょ機能を有します。このことは、管を用いる一般的な暗きょに組み合わせる補助暗きょとして施工した場合では、土壌が崩落しても補助暗きょとしての効果が長期間継続することを裏付けています。これらにより本工法の適用可能な粒径の範囲は、図6のように従来型より明らかに広がることが分かりました。

図6 粒径によるカッティングドレーンの適用範囲

 従来のトレンチャー掘削式無材暗きょでは、土壌硬度の低い泥炭土と粘質な低地土で施工できますが、カッティングドレーン工法は、泥炭土と低地土に加えて、堅密な重粘土や火山性土でも施工が可能です。しかし、太い埋木のある泥炭土、施工深度までに砂礫層や径5センチを越える石礫、障害物がある場合は、適用できないことは変わりません。また、無材暗きょの出口である落水部は、強度の乾燥にさらされやすく、空洞の崩落が起こりやすいので、合成樹脂管を挿入し落水部を保護することが望ましいです。本工法は、土壌や地形に応じて、通水孔の形状を横穴型と直下穴型の5種類から選択して施工します。これにより、施工する間隔や深さ、方向、こう配などを自由に設定し、土壌条件に対応した最も耐久性の高い通水孔を構築します。また、既存の排水組織に対して補助暗きょとして活用できます。


図7 各土壌におけるカッティングドレーンの施工断面

5.カッティングドレーン工法の経済性

 カッティングドレーン工法の施工費は、機械運搬費を除いた施工費が1メートル当たり71円(税込み)で、1ヘクタール当たりの施工費は、施工間隔が12メートルの場合5万7000円、6メートル間隔の場合11万4000円となります(表3)。また、通常の暗きょ排水や弾丸暗きょの施工費と比較してみますと表4のようになります。カッティングドレーン工法と弾丸暗きょを比較すると、弾丸暗きょは7000〜1万1000円/10アールと安価ですが、その有効期間は数年と考えられています。一方、カッティングドレーン工法は6000〜1万2000円/10アールと弾丸暗きょとほぼ同じですが、実質的な効果は弾丸暗きょより明らかに長く続くものと予想されます。従ってカッティングドレーン工法は、営農における農薬や肥料費と同レベルの費用負担で排水改良が行えることになります。


表3 カッティングドレーン工法の概算施工費(1ha)
単位:円
表4 各排水改良法の施工費の比較

6.まとめ

 資材を用いない無材暗きょとしてカッティングドレーン工法を開発しました。カッティングドレーンには、土中60〜90センチの任意の深さに、掘削縦溝の横に空洞を構築する基本工法の横穴型と、掘削縦溝の直下に空洞を構築する補助工法の直下穴型があり、土壌条件に応じて使い分けます。カッティングドレーンの排水性は、管を用いた一般的な暗きょに匹敵します。カッティングドレーンは泥炭土と低地土、台地土、火山性土に対して適用できます。ただし、適用条件は、埋木のない泥炭土、石礫がなく、深さ50〜90センチの砂含量が65%未満の土壌としています。カッティングドレーンは、12メートル間隔で施工費が1ヘクタール当たり5万7000円と極めて安価です。このことから、カッティングドレーンは基盤整備への投資が困難な大規模な畑地に対する排水改良法として優位性があるといえます。


<引用文献>

1)北川巌・竹内晴信・横井義雄2004:無材暗渠による低コスト排水改良技術、日土肥誌、75(4)、483―486.

2)鈴木智久1989:無材暗渠排水、暗渠排水Q&A・施工事例、全国土地改良総合整備事業制度研究会、270―274.

3)北川巌・竹内晴信・千葉佳彦・堀川泰彰・小谷晴夫・榊佳一・大野稔彦・榎田謙「吸水渠施工装置及びその施工方法(特許第3871686号)」

4)2006年度普及奨励事項『切断掘削式無材暗渠「カッティングドレーン工法」による排水改良技術』、北海道農業試験会議


<用語説明>

(注1)疎水材暗きょ:土中の余分な水を通しやすくするため、モミガラや木材チップ、砂利や火山れき、貝殻などの資材を地下0.6〜1メートルに埋設する排水管の上に敷設した暗きょ。

(注2)心土破砕:耕盤層や堅い心土層に対して透水性、通気性、保水性などを良好にするため、破砕爪により土壌を破砕し膨軟にする作業。

(注3)弾丸暗きょ:心土破砕の破砕爪の最深部にモールボールという弾丸形状の成型具をつなげ、モールボールを地中に引き込み、排水孔となる円形の連続した空洞を作る暗きょ。

(注4)モミガラ心破:心土破砕やトレンチャー溝、弾丸暗きょの溝内にモミガラを通水材として埋設する工法で、弾丸暗きょの通水孔より長く通水溝が保たれ、長い効果が期待できる。

(注5)「2連式無材型暗きょ」や「トレンチャー掘削式無材暗きょ」等:農業トラクタに接続する専用掘削機により土中に、深さ60〜120センチ、幅5〜10センチの縦溝状や円形の空洞を掘り、空洞の上側を周りの土で自動的に蓋をして、崩れない空洞の排水路を作る排水技術。異なった施工方法が数種類あり、本報告のカッティングドレーンもその1つの種類。




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