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平成21年度ばれいしょの生育概況について

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最終更新日:2010年3月6日

でん粉情報

[2009年11月]

【生産地から】

北海道立十勝農業試験場
北海道立北見農業試験場



1 十勝地域のばれいしょの生育概況について


(1) 十勝農業試験場作況調査の概況

 十勝地域での生育状況について、十勝農業試験場で実施している作況調査の結果を中心に述べていきます。作況調査はばれいしょの場合6月から毎月20日に茎長や収量などについて、平年値と比べ本年の生育状況を調査するものです。平年値は過去7年の結果のうち最も収量が高かった年と最も収量が低かった年を除く5年の平均値を用いています。本年の場合平成16年(豊作年)と平成14年(凶作年)が除かれています。調査を行っている品種は生食用の「男爵薯」、加工用の「トヨシロ」、でん粉原料用の「コナフブキ」の3品種です。

 本年の気象経過(芽室町アメダスによる)を図1、図2に示しました。


図1 本年の気温の推移
図2 本年の降水量と日照時間の推移

 気温は平年に比べ5月上旬、6月下旬、7月上旬、8月上旬が高く、6月中旬はかなり低く経過しました。降水量は6月中旬、7月が多く、7月の降水量は平年のほぼ2倍でした。日照時間は6月中旬、7月下旬を除き平年並みから多く経過しました。

 本年のばれいしょの生育状況を表1に示しました。


表1 十勝農業試験場におけるばれいしょの生育

 植え付けは、平年より2日遅い5月11日に行いました。植え付け後はやや高温に経過したため萌芽期は平年に比べ1〜4日早くなりました。6月中旬からの低温の影響で6月20日の茎長は「コナフブキ」を除きやや短く、開花始も1〜4日遅く初期の生育は遅れ気味に経過しました。7月以降は気温も平年並みに経過し、降水量も多かったことから茎長は7月以降は平年を上回りました。塊茎の肥大は6月に初期生育が遅れたこと、7月中旬以降曇雨天の日が多かったことから平年より遅れ、7月の調査では上いも重(1個が20グラム以上のいもの収量)が平年を下回りました。8月に入り日照時間は平年を上回り、塊茎の肥大は順調に進み、8月の調査では上いも重はほぼ平年並みとなりました。枯凋期(茎や葉がほとんど枯れた日)は「男爵薯」で2日遅く「トヨシロ」で4日早く「コナフブキ」で2日遅くなりました。「男爵薯」では1株当たりのいも数が少ないため上いも重は平年をやや下回り、「トヨシロ」では一個重が重く上いも重は平年を上回りました。また「コナフブキ」では一個重は軽かったものの、いも数が多かったため、上いも重はほぼ平年並みとなりました。でん粉価は3品種とも平年を上回りました。でん粉原料用の「コナフブキ」のでん粉重はほぼ平年並みとなりました。本年の十勝農業試験場でのばれいしょは品種により傾向に差はありますが、総じて収量はほぼ平年並みとなりました。なお十勝農業試験場作況の結果は必ずしも十勝全体を代表するものではないことに注意して下さい。これは同じ十勝地域内でも気象条件に差があったり、土壌条件(水はけなど)、栽培条件(施肥量など)に違いがあるためです。


(2) 農作物の生育状況(北海道農政部発表)による概況

 十勝農業試験場の作況調査以外に、北海道庁農政部で発表している農作物の生育状況があります。これは各地の普及センターで調査されているもので、調査は農業試験場とは違い毎月1日、15日の2回実施されています。公表は生育遅速と農作業遅速について平年と比べ何日早い(または遅い)かで示されています。生育遅速は萌芽期、開花期、黄変期などのばれいしょの生育について、農作業遅速は植え付け、収穫などの作業についての調査に基づいています。本年の十勝の生育状況を表2に示します。

 4月下旬に降雪があり植え付け作業が遅れたため、5月15日の農作業は2日遅れとなりました。植え付け後高温に経過したため萌芽、その後の生育も良好で生育はやや早く進みました。しかし6月中旬の低温、7月の天候不順のため、開花期などその後の生育は8月上旬までやや遅れました。8月に入り天候が回復したため、生育はほぼ平年並みとなりました。9月上旬に雨天の日が多く、収穫作業はやや遅れ気味に進みました。この調査の9月1日公表によると、本年の一株当たりのいも数は多く、塊茎の大きさを表す一個重は大きいと報告されています。収量はまだ公表されていませんが、平年並みからやや少ないと予想されます。

 以上の調査では触れられていませんが、本年の特徴として湿害の発生があります。これは6月中旬から7月にかけて降水量が平年に比べ非常に多かったことによるものです。被害の程度はほ場の排水性により大きく違うのですが、排水性が悪く水がたまったほ場では、根の生育阻害により地上部が生育不良となり収量が減少したり、塊茎の腐敗が問題となります。湿害の発生には地域差が見られ、十勝では南部および東部の沿海地域で多い傾向にあります。これはこの地域で降水量が多くなることと、排水の悪い土壌が多いことによります。過去の事例では平成5年に湿害の影響を受けており、地域により10〜15%の減収が見られました。


表2 農作物の生育状況(十勝)

 十勝農業試験場作況、農政部農作物の生育調査は、共にホームページ上で閲覧することができますので以下のURLを参考にして下さい。
十勝農業試験場作況 http://www.agri.pref.hokkaido.jp/tokachi/sakukyo/
農政部生育調査 http://www.agri.pref.hokkaido.jp/center/sakkyo/kairyou/seiiku/seiiku.htm


2 網走管内のばれいしょの生育概況について


(1) はじめに

 北海道立北見農業試験場では5月〜10月まで、毎月20日に地域の代表的な品種について作況調査を実施し、関係機関に報告を行っています。また、北海道農政部では、各地の農業改良普及センターの調査結果を集計し、毎月2回の発表を行っています。今回は、平成21年産ばれいしょについて9月20日現在までの生育概況を報告します。


(2) 北見農試における生育経過

 北見農試におけるでん粉原料用品種「コナフブキ」の作況を表3に、気象経過を図3に示しました。


表3 北見農試における平成21年の「コナフブキ」の生育経過

注1)平年値は前7か年中、平成15年(最凶)、17年(最豊)を除く5か年の平均。
 2)北見農試圃場における生育調査結果に基づき,調査時点における平年との比較を示したものですので、網走管内全体の作況とは必ずしも一致しない場合があります。


図3 平成21年4〜9月(アメダス境野)の気象経過

 植え付け期は平年より2日早い5月11日でした。植え付け後の気温は平年並みからやや高く推移し、適度な降雨もあったことから萌芽期は平年並でした。6月〜7月の平均気温は旬ごとの変動がやや大きかったものの開花始は平年並となりましたが、多雨少照に経過したため、土壌水分は高く、茎長はやや徒長(徒長:窒素や水分の過多や日照不足などから、作物の茎や枝が通常以上に長く軟らかく伸びること。早期の倒伏や病害が発生・まん延しやすくなる場合があります。)しました。8月以降の平均気温は平年並に推移し、降水量は少なく、日照時間は平年並から多く経過しましたが、引き続き土壌は過湿でやや湿害傾向であったことから、茎葉の黄変は早まり、枯凋期は平年に比べ9日早まりました。

 生育期間を通じて、土壌水分が高く推移したことから、株当たり上いも数は平年を上回っていますが、上いも1個重は平年を下回っています。でん粉価は7月が日照不足であったことから低く推移し、8月以降、日照時間は平年並み以上となったものの、回復には至っていません。9月20日現在でのでん粉重は平年をやや下回っています。


(3) 網走管内における生育経過

 生育期節、作業と生育経過について、網走管内のでん粉原料用主産地並びに支庁平均、全道平均を表4〜5に示しました。


表4 網走及び全道のばれいしょの生育期節及び作業
注1. 北海道農政部、各地区普及センター調べ。
 2. 各生育期節、作業の( )内数値は平年対比の遅速日数を示す。
 3. 網走支庁平均及び全道平均の調査、集計にはでん粉原料用以外の品種を含む

表5 網走及び全道のばれいしょの生育経過
注1. 北海道農政部、各地区普及センター調べ。
 2. 各項目の( )内数値は平年との差。
 3. 網走支庁平均及び全道平均の調査、集計にはでん粉原料用以外の品種を含む。

 平成21年は積雪が少なく、春の融雪も早かったことから、植え付け作業は平年より早く始まりました。網走管内では4月26〜27日にまとまった降雪が観測され、作業が一時停滞した地域もありましたが、降雪前後は好天であったため、植え付けは平年並みからやや早く終了しました。生育は、開花期まではおおむね平年並みから早く進みましたが、7月の日照不足と多雨により開花期以降の生育はやや停滞し、以後は1〜2日程度の遅れとなりました。茎数は生育期間を通して平年並みに推移しましたが、茎長は、6月〜7月の降水量が特に多かった網走管内ではやや徒長しました。9月1日現在では、各地とも株当たり上いも数は平年よりやや多く、上いも1個重は平年を下回っています。でん粉価は平年並み程度と予想されます。病害虫では疫病の発生が例年よりやや早く、また発生量も多い傾向でしたが、被害程度は初期防除のタイミングなどでほ場により差が認められました。


図4 滞水したばれいしょほ場
(網走農業改良普及センター本所提供 平成21年7月19日撮影)

(4) 網走管内の生育の特徴

 ばれいしょは生育中期頃までの土壌水分が比較的多いと、株当たりいも数が増加しやすくなりますが、反面、1個重は軽くなる傾向にあります。平成21年は植え付け直後を除き、生育期間全般にわたってほ場は湿潤〜過湿に推移しました。8月〜9月は少雨多照でしたが、夜間に微量の降雨のある日が多かったなど、土壌の乾燥する時期がほとんどなく、こうした特徴をよく現す気象経過であったと言えそうです。一方、7月以降は防除畦などが長期間にわたり滞水したほ場が散見されました(図4)。また、茎葉の黄変、枯凋が平年に比べかなり早かったほ場も一部で見られました。こうしたところでは、根張りの不良や軽度の湿害を生じていた可能性があり、一個重の増加やでん粉価に影響があったものと推察されます。

 北見農業試験場の定期作況報告、北海道農政部発表の農作物の生育状況は、共にホームページ上で閲覧することができますので以下のURLを参考にして下さい。

北見農業試験場作況報告
http://www.agri.pref.hokkaido.jp/kitami/sakkyou/index.htm
農政部発表の農作物の生育状況
http://www.agri.pref.hokkaido.jp/center/sakkyo/kairyou/seiiku/seiiku.htm




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